JIS K 5600_6_1 塗料一般試験方法‐第6部‐第1節:耐液体性(一般的方法)

 JIS K 5600-6-1 1999年版,2016年版  塗料一般試験方法−第6部:塗膜の化学的性質−第1節:耐液体性(一般的方法) ( Testing methods for paints−Part 6:Chemical property of film−Section 1:Resistance to liquids (General methods) )について  【序文・目次・適用範囲】,   【原理・必要な補足情報・試料採取方法】,   【試料採取(サンプリング)】,   【試験板(試験片)】,   【方法 1(浸せき法)】,   【方法 2(吸収媒体法)】,   【方法 3(点滴法)】,   【方法 4(温度勾配加熱法)】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲

 2007年に改定された ISO 2812 シリーズとの整合を図るため,これまで紹介していた 1999年版の JIS規格が 2016年に改定された。構成と表現が変更されているので,変更の大きい部分を中心に 1999年版と併記して紹介する。
 序文
 1999年版
 この規格は,ISO 2812-1:1993(Paints and varnishes – Dtermination of resistance to liquids – part1: General methods)を翻訳したものである。
 2016年版
 この規格は,2007年に第 2版として発行された ISO 2812-1(Paints and varnishes−Determination of resistance to liquids−Part 1: Immersion in liquids other than water),2012年に第 2版として発行された ISO 2812-3(Paints and varnishes−Determination of resistance to liquids−Part 3: Methodusing an absorbent medium)並びに 2007年に第 1版として発行された ISO 2812-4(Paints and varnishes−Determination of resistance to liquids−Part 4: Spottingmethods)及び ISO 2812-5(Paints and varnishes − Determination of resistance to liquids − Part 5:Temperature-gradient oven method)を基とし,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
 1999年版
 序文1 適用範囲,2 引用規格,3 原理4 必要な捕捉情報5 試料採取方法6 試験板(6.1 材料及び寸法,6.2 調整及び塗装,6.3 乾燥,6.4 塗膜厚)7 方法 1(浸漬法)(7.1 必要な材料,7.2 試験温度,7.3 必要な注意,7.4 手順 A(単一の液相を使用),7.5 手順 B(2液相を使用))8 方法 2(吸収媒体法)(8.1 必要な材料,8.2 試験温度,8.3 手順)9 方法 3(点滴法)(9.1 必要な材料,9.2 試験温度,9.3 手順),10 精度,11 試験報告
 附属書A(規定)必要な捕捉情報
 2016年版
 序文1 適用範囲,2 引用規格,3 原理4 必要な捕捉情報5 サンプリング6 試験片(6.1 材料及び寸法,6.2 調整及び塗装,6.3 乾燥,6.4 膜厚)7 方法 1(浸せき法)(7.1 材料及び器具,7.2 試験温度,7.3 必要な注意,7.4 手順 A(単一の液相を使用),7.5 手順 B( 2相液を使用))8 方法 2(吸収媒体法)(8.1 材料及び器具,8.2 試験温度,8.3 手順)9 方法 3(点滴法)(9.1 材料及び器具,9.2 試験温度,9.3 手順 A(水平法),9.4 手順 B(傾斜法))10 方法 4(温度勾配加熱法)(10.1 装置及び器具,10.2 試験温度,10.3 手順),11 精度,11 試験報告
 附属書A(参考)試験物質の例
 
 1 適用範囲
 1999 年版
 この規格は,液体の作用に対する,塗料又は関連製品の単一塗膜又は多層塗膜系の抵抗性(耐性)を測定するための一般的方法を規定する。
 ここには 3種の方法が規定されており,それらは,試験する材料の個々の必要性によって適用が異なる。
 方法 1は,方法 2又は方法 3によるよりも長期の暴露期間を要する,より抵抗性の高い塗膜に対して適用される。
 この方法は,塗膜に対する試験液の影響及び必要ならば,素地の損傷を評価することができる。
 
 2016年版
 この規格は,液体の作用に対する,塗料又は関連製品の単一塗膜又は多層塗膜系の抵抗性(耐性)を測定するための一般的方法について規定する。
 この規格では四つの試験方法を規定し,それらは,試験する材料の個々の必要性によって選択する。これらの方法は,塗膜への液体の影響,及び必要な場合には,素材の損傷を評価にも適用できる。
 注記 1 この規格は,塗料,ワニス及び関連製品の試料のサンプリング及び試験方法に関する一連の規格の一つである。

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 原理・補足事項・試料採取方法

 3 原理
 1999 年版
 塗装試験板を,三つの規定された方法の一つの方法で液体と接触させる。その影響を受渡当事者間の協定に基づく基準によって評価する。これらの規準は通常,主観的なものである。
 2016年版
 塗装試験板を,四つの試験方法から選択した一つの方法で液体と接触させる。その影響を受渡当事者間の協定に基づく基準によって評価する。これらの基準は通常,主観的なものである。
 
 4 必要な補足情報
 1999 年版
 試験方法は,いかなる特定の用途に対しても,補足情報によって補完しなければならない。補足情報の各項は,附属書 A(規定)必要な捕捉情報に規定する。
 附属書 A(規定) 必要な補足情報
 この附属書 Aの補足情報の各項目は,その方法の実施が適している場合に補足する。必要な情報は受渡当事者間で協定するのが望ましく,また,試験する製品について,国際規格又は国内規格若しくはその他の文書の一部又は全部が引用されることもある。
  a)  塗装する素地の性質。
  b)  素地への試験する塗料の適用方法,及び試験板の端部の被覆と裏面の保護の詳細。
  c)  塗膜の乾燥(又は焼付け)条件と乾燥期間及び(必要ならば)養生方法。
  d)  乾燥塗膜のマイクロメートル単位の膜厚,及びそのJIS K 5600-1-7「膜厚」による測定方法,及び単一塗膜系か多層塗膜系かの違い。
  e)  浸せき液又は試験に用いた溶液の詳細な記述。
  f)  用いた試験方法,試験期間及び試験温度(もし標準の 23±2℃とは異なるなら)のようにその詳細な記述。
 方法 1を用いた場合,補足する情報に浸せきの深さ,板か棒のどちらを用いたか,エアバブルかくはん又は循環のいずれか,及び初期の濃度か,体積のどちらを保持したかなどの詳細を含める。
 方法 2を用いた場合は,補足する情報に圧縮板紙の詳細と円盤の交換が必要であるかどうかを含める。
 また,方法 3を用いた場合は,試験面をカバーしたかどうかを情報に含める。
  g)  実施すべき試験塗膜の検査時期と方法,適用した場合,回復期間の詳細,必要ならば素地から塗膜をはく離する方法。
  h)  塗膜の抵抗性の評価に当たって考慮されなければならない,試験する塗膜及び素地の特性。
 
 2016年版
 この規格に規定する試験方法は,いかなる特定の用途に対しても,補足情報によって補完されなければならない。補足情報が必要な箇所の箇条を次に示す。
 なお,必要な補足情報は受渡当事者間で協定することが望ましい。また,試験する製品について,JIS 又は国際規格若しくはその他の文書の一部又は全部を引用してもよい。
  a)  塗装する素地の性質(6.1「材料及び寸法」参照)。
  b)  素地への試験する塗料の適用方法,並びに試験板の端部の被覆及び裏面の保護(6.2.1「調製」及び 6.2.2「塗装」参照)。
  c)  塗膜の乾燥(又は焼付け)条件及び乾燥期間並びに(必要ならば)養生方法(6.3 参照)。
  d)  乾燥塗膜のマイクロメートル(μm)単位の膜厚,膜厚の JIS K 5600-1-7「塗料一般試験方法−第 1部:通則−第 7節:膜厚」による測定方法,及び単一塗膜系又は多層塗膜系の違い(6.4「膜厚」参照)。
  e)  浸せき液及び試験に用いる物質の詳細な記載(附属書 A「試験物質の例」参照)。
  f)  用いた試験方法,試験期間及び試験温度(標準温度 23±2℃と異なる場合)などの詳細な記載。
    1) 方法 1(浸せき法)を用いる場合,補足する情報に,浸せきの深さ,試験板の形状(板又は棒),試験板のかくはんの方法(エアバブリング又は循環),試験中の状態管理(初期の濃度の確保又は体積の保持),などの詳細を含める(箇条 7「方法 1」参照)。
    2) 方法 2(吸収媒体法)を用いる場合,補足する情報に圧縮板紙の詳細及び円盤の必要性の有無を含める(箇条 8「方法 2」参照)。
    3) 方法 3(点滴法)を用いる場合,補足する情報に実施した手順(手順 A 又は手順 B)を含める(箇条 9「方法 3」参照)。
    4) 方法 4(温度勾配加温法)を用いる場合,補足する情報に炉内の温度勾配の詳細と試験板の厚さとを含める(箇条 10「方法 4」参照)。
  g)  実施する試験塗膜の検査時期及び方法,回復期間を適用した場合はその詳細,必要ならば素地から塗膜を剝離する方法(箇条 7~箇条 10「方法 1~4 」参照)。なお,ほかに規定がなければ,膨れ又はその他の損傷を検査してから 24時間を回復期間とする。
  h)  塗膜の抵抗性の評価に当たって考慮しなければならない試験する塗膜及び素地の特性(箇条 1「適用範囲」参照)。
 
 5 試料採取方法
 1999 年版
 試験する製品(又は多層塗膜系の場合は,各製品=塗料ごとに)の代表的試料をJIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」に従って採取する。
 それぞれの試験するサンプルは, JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」に従って検分し,調整する。
 
 2016年版
 試験する製品[多層塗膜系の場合は,各製品(塗料)]の代表的試料を,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」に従って採取する。それぞれの試験試料を,JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」に従って検分し,調製する。

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 6 試験板(試験片)

 1999 年版
 6.1 材料及び寸法
 6.1.1 試験板
 他に規定,又は受渡当事者間の協定がなければ,試験板はJIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に従って,鋼,ぶりき,アルミニウム,又はガラスを用いる。その寸法は約 150mm×100mm×( 0.75~1.25)mmとする。
 6.1.2 棒方法 1だけに用いる)
 個々の棒の一端は,ほぼ棒それ自身の半径まで丸くする。他に規定がなければ,棒は鋼製とする。
 備考:棒の適切な寸法は,長さ 150mm×直径 15mmとする。方法 1で棒を用いる目的は,エッジ効果を除くためである。
 6.2 調整及び塗装
 6.2.1 試験板
 他に規定がなければ,それぞれの試験板はJIS K 5600-1-4 「試験用標準試験板」に従って調整する。次に,試験する製品又は塗膜系の規定に従って塗装する。
 備考:方法 1に関して,通常,試験板の両面,及び端部を塗装するのが望ましい。両面とも試験する製品,又は塗膜系で塗装するか,それとも裏面は適当な保護塗料で塗装するか,あらかじめ決めておく必要がある。
 規定されているならば,試験板の端部は,試験する製品,又は塗膜系で塗装後,適切な方法でシールする。
 6.2.2 棒
 規定に従って各々の棒を調整し,次に試験する製品,又は塗膜系で規定された方法によって塗装する。
 6.3 乾燥
 個々の試験片を規定の時間,乾燥(又は焼付け)及び(適用するならば)養生する。
 他に規定がなければ,温度 23±2℃,相対湿度 50±5%で少なくとも 16時間,試験片を静置し,引き続いて必要な試験手順をできるだけ速やかに行う。
 6.4 塗膜厚
  JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定されている手順の一つによって,乾燥塗膜の厚さをマイクロメートル単位で測定する。
 
 2016年版
 6.1 材料及び寸法
 6.1.1 試験片(板)の材料及び寸法
 ほかに規定又は受渡当事者間の協定がなければ,試験片(板)は,JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法-第1部:通則-第4節:試験用標準試験板」に従って,鋼,ぶりき,アルミニウム,又はガラスを用いる。その寸法は,約 150 mm×100 mm×(0.7~1.0)mm とする。ただし,方法 4(温度勾配加温方法)の場合は,約 560 mm×100 mm×(0.7~1.0)mm とする。
 6.1.2 試験片(棒)の材料及び寸法方法 1だけに用いる)
 個々の試験片(棒)の一端は,ほぼ棒それ自身の半径まで丸くする。ほかに規定がなければ,試験片(棒)は,鋼製とする。
 備考:棒の適切な寸法は,長さ 150mm×直径 15mmとする。方法 1で棒を用いる目的は,エッジ効果を除くためである。
 6.2 調製及び塗装
 6.2.1 試験片(板)の調製及び塗装
 ほかに規定がなければ,試験片(板)を,JIS K 5600-1-4「試験用標準試験板」に従って調製する。次に,試験する製品又は塗膜系の規定に従って試験片(板)を塗装する。
 なお,試験片(板)の両面とも試験する製品若しくは塗膜系で塗装するか,又は表面は試験する製品若しくは塗装系で塗装し,裏面は適切な保護塗料で塗装するかを,あらかじめ決めておく必要がある。規定されている場合は,試験片(板)の端部は,試験する製品又は塗膜系で塗装後,適切な方法でシールをする。
 6.2.2 試験片(棒)の調製及び塗装(方法 1 だけに用いる。)
 規定した各々の試験片(棒)を調製し,次に試験する製品又は塗膜系で規定された方法によって塗装する。
 注記 方法 1 で試験片(棒)を用いる目的は,エッジ効果を除くためである。
 6.3 乾燥
 個々の試験片を規定の時間,乾燥(又は焼付け)及び(適用するならば)養生する。
 ほかに規定がなければ,温度 23±2℃,相対湿度( 50±5)%で少なくとも 16時間,試験片を静置し,引き続いて必要な試験手順をできるだけ速やかに行う。
 6.4 膜厚
  JIS K 5600-1-7 「塗料一般試験方法-第1部:通則-第7節:膜厚」に規定する手順の一つに従って,乾燥塗膜の厚さをマイクロメートル(μm)単位で測定する。

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 7 方法 1(浸せき法)

 1999 年版
 7.1 必要な材料
 7.1.1 試験液
 規定されたもの。
 7.2 試験温度
 他に規定がなければ,温度 23±2℃で試験する。
 7.3 必要な注意
 ● 試験片は,別々に試験液に浸せきするほうがよい。特に電気伝導度の高い溶液を用いる場合,電解質の影響が無視できなくなる。
 一つの槽に数個の試験片を浸せきしたほうが便利である場合には,同じ性質の試験片について,試験液が試験片による影響を受けないことを確認するために,個々に注意が必要である。
 ● 試験片は少なくとも,槽の側面から 30mm,数個の試験片を同一槽に浸せきする場合は,互いに 30mm以上離す。試験片はその支持具から電気的に絶縁する。
 7.4 手順 A(単一の液相を使用)
 ● 他に規定がなければ,試験は 3回繰り返して行う。
 ● 規定によって,試験片(板又は棒)を完全に,又は部分的に浸せきする適切な容器に十分な量の試験液を入れる。試験片を垂直に,必要ならば,適切な支持具を用いて保持する。
 ● 飛まつ,及び蒸発による溶液の減少を少なくするため,試験期間中は容器にふたをする。
 ● 規定があれば,試験液をエアバブリング,かくはん又は循環させる。エアバブリングは,油又はグリースを含まない空気のゆっくりとした流れによって行う。
 ● 初期の容量,又は濃度を維持するため,規定があるならば,試験液又は蒸留水を一定間隔で補充することによって,液の減少を防ぐ。
 ● 規定の浸せき期間の終了時に,水溶液で試験された場合は流水で試験片を十分に洗う。また,非水溶液が使用された場合には,塗膜に影響を与えないことが分かっている溶剤で洗浄する。
 次いで,吸収紙又は布で軽くたたいて,残存している溶液を表面から除去する。次に直ちに,JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第2節:膨れの等級」に従って,試験片の膨れ,又はその他の損傷を観察する。必要ならば,同時に作製した,未使用の試験片と比較する。
 端部の影響による損傷は無視する。規定されていれば,その回復期間の後,観察と比較を繰り返す。
 ● 素地の損傷について検査する必要があるならば,塗膜を規定の方法によってはく離する。
 7.5 手順 B( 2相液を使用)
 ● 他に規定がなければ,試験は3回繰り返して行う。
 ● 塗装した試験片を適当な容器の中へ,ほぼ垂直に適切な支持具に載せて挿人する。板の場合は 100mmの側を水平にして挿入する。
 ● 使用直前に各試験液を容器に満たす。
 ● 比重の高いほうの液を,試験片(板又は棒)が他に規定しない限り,75mmの深さまでひたるように,注意して容器の側面に注ぐ。この位置以上に試験片が汚染することがないよう注意する。
 ● 同様にして第二の試験液を,他に規定しない限り,試験片がさらに 75mmひたるように加える。容器にふたをし,かくはんしないで静置する。
 ● 規定時間の最後に,試験片を試験液から取り出し,適切な吸収紙又は布で軽くたたいて表面から試験液を除去し,直ちに JIS K 5600-8-2「膨れの等級」による膨れの観察,又は各々の試験液相に接した塗膜の損傷の観察を行う。
 必要ならば,同時に作成した未試験の試験片と比較する。端部からの損傷は無視する。規定があれば,規定された回復期間の後,観測と比較とを繰り返す。
 もし,途中の観察が規定されているならば,試験液から試験片を取り出し,表面から試験液を除去し,上記と同様に観察する。次いですべての浸せき手順を繰り返す。
 ● 素地の損傷に対する観察が必要であれば,規定の方法によって塗膜をはく離する。
 
 2016年版
 7.1 材料及び器具
 材料及び器具は,次による。
 7.1.1 試験液
 受渡当事者間の協定に基づいた溶液。試験液の例を附属書 A に示す。
 7.1.2 恒温槽
 受渡当事者間の協定に基づいた温度設定ができるもの。±2℃で保つ能力があるもの。
 7.2 試験温度
 ほかに規定がなければ,温度 23±2℃で試験する。
 7.3 必要な注意
 試験片は,strong>別々に試験液に浸せきするほうがよい。特に電気伝導度の高い溶液を用いる場合,電解質の影響が無視できなくなる。一つの槽に複数の試験片を浸せきした方が利便性がよい場合には,同じ性質の試験片について,試験液が試験片による影響を受けないことを確認する。
 試験片は少なくとも,槽の側面から 30mm,複数の試験片を同一槽に浸せきする場合は,互いに 30mm以上離す。試験片は支持具から電気的に絶縁する。
 7.4 手順 A(単一の液相を使用)
 試験の手順は,次による。ほかに規定がなければ,試験は 2回繰り返して行う。
  a)  試験片を完全に又は部分的に浸せきするために,適切な容器に十分な量の試験液を入れる。試験片を垂直に保持する。必要であれば,適切な支持具を用いる。半分浸せき以外の浸せき深さは,受渡当事者間の協定による。一つの槽に複数の試験片を浸せきする場合又は電気伝導度の高い溶液の場合,30mm離れていることを確認する。
  b)  飛まつ及び蒸発による溶液の減少を少なくするため,試験期間中は容器に蓋をする。
  c)  試験液をエアバブリング又は循環させる。エアバブリングは,油又はグリースを含まない空気のゆっくりとした流れによって行う。初期の容量又は濃度を維持するため,試験液又は蒸留水を一定間隔で補充することによって,溶液の減少を防ぐ。
  d)  規定の浸せき期間の終了時の操作は,次による。
    1)  水溶液で試験された場合は,流水で試験片を十分に洗う。
    2)  非水溶液が使用された場合には,塗膜に影響を与えないことが分かっている溶剤で洗浄する。
    3)  吸収紙又は布で軽くたたいて,残存している溶液を表面から除去する。
    4)  JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」に従って,試験片の膨れ又はその他の損傷を観察する。必要ならば,同時に作成した,未使用の試験片と比較する。端部の影響による損傷は無視する。ほかに規定があれば,その回復期間の後,観察及び比較を繰り返す。なお,ほかに規定がなければ,膨れ又はその他の損傷を検査してから 24時間を回復期間とする。
  e)  素地の損傷について検査が必要であれば,規定の方法によって塗膜を剝離する。
  f)  ほかの規定によって,より高い温度で試験を行う場合は,試験片の浸せき前に,容器及び試験液は,恒温槽で規定された試験温度に温める。試験は規定温度 ±2℃で試験する。試験期間は受渡当事者間で承認することもできる。
  g)  2回測定の評価の結果が著しく違う場合,再び,2回測定を繰り返す。再度行った試験も含めて全ての試験の結果を報告する。
 7.5 手順 B(2 相液を使用)
 試験の手順は,次による。ほかに規定がなければ,試験は 2回繰り返して行う。
  a)  試験片(棒)を適切な容器の中へ,ほぼ垂直に適切な支持具に載せて挿入する。試験片(板)の場合は 100mmの側を水平にして挿入する。
  b)  使用直前に各試験液を容器に満たす。
  c)  ほかに規定のない限り,密度の高い方の液を,試験片が,おおよそ試験片の 40%の深さまで浸るように,注意して容器の側面に注ぐ。この位置以上に試験片が汚染することがないよう注意する。
  d)  ほかに規定のない限り,同様にして第二の試験液を,試験片の 40%以上を覆うまで更に加える。容器に蓋をし,かくはんしないで静置する。
  e)  規定の浸せき期間の終了時の操作は,次による。
    1)  試験片を試験液から取り出し,適切な吸収紙又は布で軽くたたいて表面から試験液を除去する。
    2)  JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第 2節:膨れの等級」による膨れの観察,又は各々の試験液相に接した塗膜の損傷の観察を行う。必要ならば,同時に作成した未試験の試験片と比較する。端部からの損傷は無視する。規定があれば,規定された回復期間の後,観測と比較とを繰り返す。途中の観察が規定されているならば,試験液から試験片を取り出し,表面から試験液を除去し,観察する。次いで全ての浸せき手順を繰り返す[7.5 の a)~d) 参照]。
  f)  素地の損傷について検査が必要であれば,規定の方法によって塗膜を剝離する。
  g)  2回測定の評価の結果が著しく違う場合,再び,2回測定を繰り返す。再度行った試験も含めて全ての試験の結果を報告する。

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 8 方法 2(吸収媒体法)

 1999 年版
 8.1 必要な材料
 8.1.1 吸収材製の円盤
 直径約 25mmで,試験液の作用を受けない円盤。
 備考:大部分の目的に対して,1.25mmの厚さの圧縮した板紙が適切である。
 8.1.2 試験液
 規定された溶液。
 8.1.3 時計皿
 直径約 40mmの湾曲面が円盤に接しないような湾曲をもった時計皿。
 8.2 試験温度
 他に規定がなければ,温度 23±2℃で試験する。
 8.3 手順
 ● 他に規定がなければ,試験は 3回繰り返して行う。
 ● 試験板を水平に置く。吸収円盤を必要な数だけ試験液に浸す。過剰の試験液を洗い流す。
 ● 試験板の上に円盤を等間隔に,端部から 12mm以上離して置く。
 時計皿で別々に円盤を覆う。
 ● 各円盤の位置を適当な方法で記録する。通風のない雰囲気中で,試験後異常のなかった試験板を残す。
 試験期間は 7日を超えてはならない。揮発性の試験液の場合には,より以上に液で飽和させた円盤に変える必要があるかもしれない。このことは試験報告に記録する。
 ● 規定の期間後,円盤を取り除き,水溶液を試験液とした場合は試験板を流水で十分に洗う。また,非水溶液の場合は,塗膜に影響を与えないことが分かっている溶剤で洗う。表面を吸収紙又は布で軽くたたき,残った試験液をすべて表面から除去する。
 その後直ちに,JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」による膨れの観察,その他の塗膜の損傷を観察する。規定されているならば,その回復期間の後,観察と比較を繰り返す。
 ● 素地の損傷に対する観察が必要であれば,規定の方法によって塗膜をはく離する。
 
 2016年版
 8.1 材料及び器具
 材料及び器具は,次による。
 8.1.1 吸収材製の円盤
 直径約 25mmで,試験液の作用を受けない円盤。
 注記 円盤として 1.25mmの厚さの圧縮したろ紙又は脱脂綿を用いてもよい。
 8.1.2 試験液
 受渡当事者間の協定に基づいた溶液。試験液の例を,附属書 A「試験物質の例」に示す。
 8.1.3 時計皿
 直径約 40mmの湾曲面が円盤に接しない直径をもつもの。
 8.1.4 シャーレ
 直径約 60mmで高さが約 20mmのもの。
 8.1.5 恒温槽
 40℃までの温度設定ができるもの。±2℃で保つ能力があるもの。
 8.2 試験温度
 ほかに規定がなければ,温度23±2℃で試験する。
 8.3 手順
 試験の手順は,次による。ほかに規定がなければ,試験は 2回繰り返して行う。
  a)  試験片を水平に置く。吸収材製の円盤を必要な数だけ試験液に浸し,過剰な試験液は垂れ切り,吸収材製の円盤を試験片の上に置く。そのとき,他の吸収材製の円盤に触れないように注意する。端部からは 10mm以上離す。その後,時計皿又はシャーレで吸収材製の円盤を覆う。粘度の高いペースト状の試験液の場合は,試験片に約 0.5mLを滴下し,その上に吸収材製の円盤を置き,時計皿又はシャーレで覆う。試験期間は,規定した期間とする。
  b)  試験期間終了後,吸収材製の円盤を取り除き流水で試験液を垂れ切りする。非水溶液の場合は,塗膜に影響のないことが分かっている溶剤で十分に洗浄する。JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」に従って,直ちに膨れ及び塗膜の損傷を観察する。観察場所は,試験液と直接接触した部位だけを評価する。ほかに規定がなければ,24時間後に再評価をする。
 注記 試験片に付着している試験液を流水にて洗い流し,水のしずくを除く操作を一般的に“垂れ切り”という。
  c)  素地の損傷について検査が必要であれば,規定の方法によって塗膜を剝離する。
  d)  2回測定の評価の結果が著しく違う場合,再び,2回測定を繰り返す。再度行った試験も含めて全ての試験の結果を報告する。

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 9 方法 3(点滴法)

 1999 年版
 9.1 必要な材料
 規定された試験液。
 9.2 試験温度
 他に規定がなければ,温度23±2℃で試験する。
 9.3 手順
 ● 他に規定がなければ,試験は 3回繰り返して行う。
 ● 試験板を水平に置く。試験液の液滴を適切な数だけ塗膜の上に落とす
 液滴は各々,体積で約 0.1mlとする。液滴の中央が互いに 20mm,試験板の端部から 12mm離れていることを確認する。
 ● 空気の出入りを自由にして,規定された期間中,異常のなかった試験板を残す。もし規定されているならば,過度の蒸発を防ぐために試験面を適切な方法で覆う。
 ● 規定期間後に,試験液が水溶液の場合は流水で,非水溶液の場合には塗膜に影響のないことが分かっている溶剤で,十分に洗浄する。その後直ちに,塗膜の損傷の徴候を観察する。
 ● 素地の損傷の徴候を観察する必要があれば,規定された方法で塗膜をはく離する。
 
 2016年版
 9.1 材料及び器具
 材料及び器具は,次による。
 9.1.1 試験液
 受渡当事者間の協定に基づいた溶液。試験液の例を,附属書 A「試験物質の例」に示す。
 9.1.2 ピペット
 試験液を約 0.1mL滴下させるのに適したもの。
 9.1.3 ビュレット
 50mL容量のビュレット
 9.1.4 シャーレ
 直径約 60mmで高さが約 20mmのもの。
 9.2 試験温度
 ほかに規定がなければ,温度 23±2℃で行う。
 9.3 手順 A(水平法)
 試験の手順は,次による。ほかに規定がなければ,試験は 2回繰り返して行う。
  a)  試験片を水平に置く。ピペットを用いて試験片に試験液を滴下する。液滴が,他の試験液と触れないように注意する。端部から 12mm以上離す。その後,シャーレで試験液を覆う。試験期間は規定した期間とする。
  b)  試験期間終了後,流水で試験液を垂れ切りする。非水溶液の場合は,塗膜に影響のないことが分かっている溶剤で十分に洗浄する。JIS K 5600-8-2 「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」に従って,直ちに膨れ及び塗膜の損傷を観察する。観察場所は,試験液と直接接触した部位だけを評価する。ほかに規定がなければ,24時間後に再評価をする。
  c)  素地の損傷について検査が必要であれば,規定の方法によって塗膜を剝離する。
  d)  2回測定の評価の結果が著しく違う場合,再び,2回測定を繰り返す。再度行った試験も含めて全ての試験の結果を報告する。
 9.4 手順 B(傾斜法)
 試験の手順は,次による。ほかに規定がなければ,試験は,2 回繰り返して行う。
  a)  容器の中に 30°の傾斜を付けた状態で,試験片を設置する。ビュレットを用いて,試験片の中心付近に,上部から試験液を 1~2秒間隔で 10分間滴下する。その後,シャーレで試験液を覆う。粘度の高いペースト状の試験液の場合は,試験片に約 0.5mLを滴下し,シャーレで覆う。試験期間は,規定した期間とする。
  b)  試験期間終了後,流水で試験液を垂れ切りする。非水溶液の場合は,塗膜に影響のないことが分かっている溶剤で十分に洗浄する。JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第2節:膨れの等級」に従って,直ちに膨れ及び塗膜の損傷を観察する。観察場所は,試験液と直接接触した部位だけを評価する。ほかに規定がなければ,24時間後に再評価をする。
  c)  素地の損傷について検査が必要であれば,規定の方法によって塗膜を剝離する。
  d)  2回測定の評価の結果が著しく違う場合,再び,2回測定を繰り返す。再度行った試験も含めて全ての試験の結果を報告する。

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 10 方法 4(温度勾配加熱法) 2016年版

 10.1 装置及び器具
 装置及び器具は,次による。
 10.1.1 温度勾配炉
 (図 1 省略)
 10.1.2 計量ピペット
 25~100μL の容量で,試験液を滴下するために適切なもの。
 10.1.3 試験液
 受渡当事者間の協定に基づいた溶液。試験液の例を,附属書 A(試験物質の例)に示す。
 10.2 試験温度
 ほかに規定がない場合又は受渡当事者間の協定がない場合は,温度勾配炉を 35~80℃の温度勾配に設定する。個々の加熱部間の温度差は,1℃とする。
 10.3 手順
 試験の手順は,次による。
  a)  炉は,JIS K 5600-1-6「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」 に規定した標準温度 23±2 ℃の環境に設置する。
  b)  試験片を水平に置く。ほかに協定がない場合は,計量ピペットを用いて,試験液の小滴を温度勾配炉の個々の加熱部間に対応する間隔で配置し,試験片に接触させる。小滴の接触は,温度勾配炉に設置した状態ではなく,実験台上の試験片に室温(18~28℃)で実施する。
  c)  温度勾配炉中に調製した試験片を入れ,押さえジグを用いて加温台に押し付ける。試験片を温度勾配炉内に 30分間保持した後,炉から取り出す。
  d)  試験が終了した後,試験片をなめらかな布で拭く。水溶性試験液の乾燥残留物は流水下で洗浄し,その他の試験液の乾燥残留物は,塗膜に影響を与えない溶剤を用いて取り除く。
 注記   5号工業ガソリンを,樹脂を取り除くために用いてもよい。また,5号工業ガソリンは,評価前の試験片の最終清浄用に用いてもよい。
  e)  試験液と直接接触した部位だけを判定し,直ちに試験片を評価する。
  f)  ほかに協定がない場合,評価に用いる照明は次による。
   1)  水平方向に線の出ないアルミニウムで被覆した反射板を備える。
   2)  光源色が,少なくとも 840lx の照度である。
   3)  試験片上で少なくとも 800lx の照度がある。
  g)  ほかに協定がない場合は,24時間後に試験した部位を再評価する。
  h)  結果は,最初に視認可能な変化を示した温度として報告する。
 
 附属書 A (参考) 試験物質の例(概要)
 試験物質として使用可能な自動車用燃料又は自動車用塗料の試験液,試験用化学品,及び生物学的物質の例を,それぞれ表 A.1,表 A.2,及び表 A.3 に示す。受渡当事者の協定によって,他の試験液も使用できる。 ほかに協定がなければ,表 A.1,表 A.2,及び表 A.3 に示すように試験物質の成分及び組成比を記載することが望ましい。
 次には,表のタイトルのみを紹介する。
 表 A.1 自動車用燃料又は自動車用塗料の試験液の例
 表 A.2 試験用化学品の例
 表 A.3 生物学的物質の例

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