防食概論塗装・塗料

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 塗膜の評価(塗膜劣化評価;膨れの等級)

 膨れの等級

 JIS K5500「塗料用語」
 膨れ(塗膜の)(blister)
 塗膜にが生成する現象。水分・揮発成分・溶剤を含む面に塗料を塗ったとき,又は塗膜形成後に,下層面にガス,蒸気,水分などが発生,侵入したときなどに起こる。発生した膨れは,その大きさと密度を調べる。JIS K 5600-8-2「塗料一般試験方法-第8部:塗膜劣化の評価-第2節:膨れの等級」参照
 
 一般的に観察される塗膜膨れは,水の浸透圧差を原因として,素地/塗膜の界面や塗膜層間の界面に水が浸透することで,塗膜が半球状に盛り上がる現象(俗には水膨れともいう)である。すなわち,高湿度下や水との接触環境で生じる塗膜劣化の一種と考えられる。
 この他に,塗膜膨れに至る塗膜劣化現象には,塗膜下腐食の進行によるさび膨れ,金属露出部の腐食に伴い近傍の塗膜下で生じたカソード反応(高アルカリ化)によるカソード膨れ,塗装前に素地金属に含まれた水素(溶接後の処理不良など)によるガス膨れなどがある。

 JIS K 5600-8-22008「塗料一般試験方法−第 8部:塗膜劣化の評価−第 2節:膨れの等級」(Testing methods for paints-Part 8: Evaluation of degradation of paint coatings-Section 2: Designation of degree of blistering)
 適用範囲
 この規格は,塗膜の膨れの程度を,基準図版による等級見本と比較し,評価して,等級付けをする方法について規定する。
 基準図版では,膨れの大きさを等級 2,3,4 及び 5,並びに膨れの量(密度)を等級 2,3,4 及び 5 と等級付けして,図示している。

 用語,及び定義
 膨れの等級 (degree of blistering)
 塗膜の膨れの量(密度)及び大きさによる等級。
 評価
 図 1~図 4に示した基準図版によって,塗膜の膨れの量(密度)及び大きさを評価する。塗膜に様々な膨れが混在するときは,その塗膜面を代表する膨れの大きさの等級を採用する。評価は明るい照明のもとで行う。
 塗膜をデジタル画像として取り入れて,画像処理システムによる評価をする場合,は附属書 Aの図版を用いてシステムの校正を行う。
 図 1 :膨れの大きさ 2 ,量(密度) 2,3,4,5
 図 2 :膨れの大きさ 3 ,量(密度) 2,3,4,5
 図 3 :膨れの大きさ 4 ,量(密度) 2,3,4,5
 図 4 :膨れの大きさ 5 ,量(密度) 2,3,4,5
 結果の表示
 図 1~図 4 に示す膨れの量(密度)及び大きさの等級を,評価対象の面積,又は全体の面積のうち評価した面積の割合(パーセント)と共に表示する。
 例えば,塗膜の膨れの量(密度)が 3,大きさ(size)が 2,すなわち,図 1に合致する膨れがあると評価したときは,次のように報告する。
  “膨れ:膨れの等級 3 ( S2 )
 
 【参考】
 浸透圧(osmotic pressure)
 溶質の濃度が高い溶液と溶媒(又は濃度が低い溶液)が,半透膜を隔てている場合,溶媒が濃度の高い溶液へと自然に移動し,濃度差を解消(エネルギー差の解消)しようとする。この時に発生する圧力をいう。
 カソード膨れ(cathodic delamination)
 塗装された鋼などの,塗膜欠陥部の腐食に伴い,欠陥部がアノードとなり,欠陥部付近の塗膜下に形成されたカソードの塩基(アルカリ)による付着力低下,浸透圧による水浸透による膨れなど,腐食反応に伴うカソード部の塗膜はがれから膨れる現象をいう。
 アノード(anode)
 電流が電極から電解質に向かって流れ,酸化反応が行われる電極。陽極ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 カソード(cathode)
 電流が電解質から電極に向かって流れ,還元反応が行われる電極。陰極ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】

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