防食概論塗装・塗料

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 ここでは,鋼構造物耐候性塗料中塗り塗料の品質規格及び評価方法について, 【鋼構造物耐候性塗料中塗り用の品質】, 【中塗り塗料の品質試験概要】に項目を分けて紹介する。

 塗料の評価(鋼構造物耐候性塗料 中塗り用)

 鋼構造物用耐候性塗料・中塗り用の品質

  JIS K 56592018鋼構造物用耐候性塗料

 序文
 この規格は,1992年に制定され,その後 2002年及び 2008年の改正を経て今日に至っている。今回,新たに水性塗料に対応するために改正した。
 具体的には,2008年に,それまでの製品規格であった JIS K 5657 「鋼構造物用ポリウレタン樹脂塗料」JIS K 5659 「鋼構造物用ふっ素樹脂塗料」を統合し,鋼構造物の上塗り塗料の性能規格化を図り,名称を含めて鋼構造物用耐候性塗料に改正された。
 適用範囲
 この規格は,主に鋼構造物の美装仕上げ塗りに用い,長期の耐候性をもつ塗料について規定する。
 なお,2008年以前の旧規格に含まれた“長期の防食”の文言が削除された。理由として,上塗り塗膜の防食への寄与が小さいことを踏まえ,誤解を招く表現を適正な表現に変えたと推察される。
 種類
 2008年版の溶剤形塗料(solvent-based paint)は A種に,新たに加わった水性塗料(water-based paint)を B種に分け,それぞれを上塗り塗料,及び中塗り塗料に区分し,上塗り塗料は,更に等級分けしている。
   A種a)上塗り塗料c): 1級,2級,3級e)
   A種中塗り塗料d): 等級なし
   B種b)上塗り塗料: 1級,2級,3級
   B種中塗り塗料: 等級なし
 
 a) 溶剤形塗料で,有機溶剤を主要な揮発成分とし,主剤,硬化剤などを混合し反応硬化させて用いる(多液形)塗料。
 b) 水性塗料で,水を主要な揮発成分とし,主剤,硬化剤などを混合し反応硬化させて用いる(多液形)塗料と,1液で反応硬化させて用いる(1液形)塗料とがある。
 c) 上塗り塗料の原料は,ふっ素系樹脂,シリコン系樹脂又はポリウレタン系樹脂とする。
 d) 中塗り塗料は,表 4(塗り重ね塗料の組合せ)の組合せで用いる。
 e) 等級については,促進耐候性及び屋外暴露耐候性の品質によって等級分けし,表 2(品質)による。
 
 JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」の中塗り塗料には,上塗り塗料と異なり,機能を限定するための塗料原料に関する指定はないが,A種,B種とも品質規定にポットライフが規定されていることから,主剤と硬化剤とが別々に供給され,使用直前に混合硬化させる多液形塗料を意味する。これに適合する一般的な中塗り用の塗料として,常温硬化形エポキシ樹脂塗料が挙げられる。
 
 【品質項目の概要】
 塗料の成分 : 品質項目にはないが,ポットライフが規定されていることから多液混合形塗料が用いられる。
 塗料の性状 : A,B種とも容器の中での状態,加熱残分が規定され,加えて水を溶媒とする B種では低温安定性が規定されている。
 塗装作業 : 塗装作業性,乾燥時間(表面乾燥性),ポットライフが規定されている。
 塗膜形成機能 : 塗膜の外観,隠ぺい率,上塗り適合性,耐衝撃性,耐屈曲性,層間付着性が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性 : 耐アルカリ性,耐酸性,耐湿潤冷熱繰返し性が規定されている。

JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」中塗り塗料
太字;塗料の品質,青太字:塗膜の品質
  項  目    中塗り 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5℃)    変質しない。( B種のみ) 
  表面乾燥性    表面乾燥する。(常温8時間後,低温5℃16時間後) 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    規定時間(5時間)後,使用できる。 
  隠ぺい率    白・淡彩は90以上,鮮明な赤及び黄は50以上,その他の色は80以上 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐屈曲性    折曲げに耐える。(10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ及びはがれが生じない。(デュポン式300g,500mm) 
  層間付着性 Ⅰ    異常がない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性    異常がない。(水酸化カルシウム水) 
  耐酸性    異常がない。(硫酸水) 
  耐湿潤冷熱繰返し性    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  混合塗料中の加熱残分 %    白・淡彩は60以上,その他の色は50以上 

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 中塗り塗料の品質試験概要

   ここでは,鋼構造物用耐候性塗料・中塗り塗料品質の試験法を紹介する。塗膜品質の試験法については,【塗膜の評価】・「中塗り塗料で紹介する。
 7. 試験方法
 7.1  サンプリングは,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」による。
 7.2 試験用試料の検分及び調整は,JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」による。
 
 7.3 試験の一般条件は,次による。
 試験の一般条件は,JIS K 5600-1-1 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」 ,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」及び JIS K 5601-1-1 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」によるほか,次による。
 a) 試験の場所
 1) 養生及び試験を行う場所は,他に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の4.1(標準条件)に規定する条件[温度 23±2℃,相対湿度(50±5)%]
 2) 目視観察のときの光源(拡散昼光,色観察ブース)
 b) 試験板の作製
 1) 試験板: 研磨によって調整した SPCC-SB の鋼板とする。
 2) 試料の調整: 1液形の場合は,かくはん(攪拌)し,均一の液体とする。多液形の場合は,均一にした主剤,硬化剤などを,その製品の製造業者が指定する混合比率で混合し,更にかくはん(攪拌)によって均一にする。多液形塗料は,混合したときから A種は 5時間を過ぎたもの,B種は 3時間を過ぎたものは,試験に用いてはならない。
 3) 試料の塗り方: 2)で調製した試料を使用直前によくかくはん(攪拌)し,直ちに試験板の片面にエアスプレー塗りで 1回塗る。塗付け量は,7日間乾燥後の乾燥膜厚を測定し,中塗りのときは 25μm~35μm,上塗りのときは 20μm~30μm になるようにする。
 4) 乾燥方法: 自然乾燥による。試験までの乾燥時間は,7日間とする。
 
 7.4 容器の中での状態の試験は, JIS K 5600-1-1 の 4.1.2 a)(液状塗料の場合)による。ただし,多液形の場合は,容器別にそれぞれについて試験を行う。
 
 7.5 低温安定性の試験は,次による。
 a) 試験板 溶剤洗浄によって調整した,大きさ 200mm×100mm×2mm のガラス板とする。
 b) 試験方法 JIS K 5600-2-7「塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第7節:貯蔵安定性」の4.(低温安定性)による。次に,エアスプレー塗りによって,乾燥膜厚が中塗りのときは 25μm~35μm,上塗りのときは 20μm~30μm になるように塗り付ける。
 c) 評価及び判定 b)の試験によって,試料をかくはん(攪拌)したとき一様になり,塗装作業を行ったとき,塗装作業性に支障がなく,塗装後,目視によって流れが認められず,更に乾燥した塗膜の外観が正常であるとき,“変質しない”とする。
 
 7.6 表面乾燥性の試験は,次による。
 a) 試験板: 溶剤洗浄によって調整した,大きさ 200mm×100mm×2mm のガラス板とする。
 b) 試験片の作製: 隙間 150μmのフィルムアプリケータを用いて,うすめ液を加えない上塗り塗料及び中塗り塗料をそれぞれ塗ったものを試験片とする。
 c) 試験方法JIS K 5600-3-2「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第2節:表面乾燥性(バロチニ法)」による。ただし,乾燥方法は,次のいずれかによる。
 1) 常温乾燥 試験片の塗面を上向きで水平にし,標準状態で 8時間乾燥する。
 2) 低温乾燥 試験片の塗面を上向きで水平にし,5±1℃で 16時間乾燥後に取り出して標準状態で 20分間放置する。
 d) 評価及び判定: それぞれの試験片の表面乾燥状態を観察によって評価し,塗膜が表面乾燥しているとき,それぞれ“表面乾燥する”とする。
 
 7.8 ポットライフの試験は, JIS K 5600-2-6 「塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第6節:ポットライフ」による。
 c) 試験板: A種に用いる試験板は,7.3 b) 1)による。大きさは 150mm×70mm×0.8mmの鋼板とする。B種に用いる試験板は,溶剤洗浄によって調整した,大きさ 200mm×100mm×2mm のガラス板とする。
 d) 試験方法: 試験方法は,次による。
 2) 標準状態で,A種は 5時間,B種は 3時間養生してから取り出して試料とする。
 d) 評価及び判定: 次の全ての状態にあるとき,ポットライフは A種では“ 5時間”,B種では“ 3時間”とする。
 試料をよくかくはん(攪拌)したとき,容易に一様に分散し,混合直後に比べて著しい粘度の上昇及びゲル化がない。 塗膜の外観を観察したとき,見本品と比較して,塗膜の外観に流れ,穴及びしわの程度が大きくなく,割れ及び剝がれがない。
 
 7.19 加熱残分の試験は, JIS K 5601-1-2 「塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分」による。ただし,多液形の場合は,混合塗料中の加熱残分とし,試験条件は,加熱温度 105±2℃で 3時間とする。

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