防食概論:塗装・塗料
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ここでは,塗料の乾燥性について, 【半硬化乾燥】, 【硬化乾燥】に項目を分けて紹介する。
塗料の評価(乾燥性)
半硬化乾燥
品質項目乾燥時間に半硬化乾燥を規定している塗料には,JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」がある。
JIS K5500「塗料用語」
乾燥(塗料)(drying)塗付した塗料の薄層が,液体から固体に変化する過程の総称。塗料の乾燥機構には,溶剤の揮発,蒸発,塗膜形成要素の酸化,重合,縮合などがあり,乾燥の条件には,自然乾燥,強制乾燥,加熱乾燥などがある。また,乾燥の状態には,指触乾燥,半硬化乾燥,硬化乾燥などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
半硬化乾燥(dry to touch, touch dry)
塗料の乾燥状態の一つ。塗った面の中央を指先でかるくこすってみて塗面にすり跡が付かない状態(dry to touch)になったときをいう。JIS K 5600-1-1「塗料一般試験方法-第1部:通則-第1節:試験一般(条件及び方法)」参照。
備考:BS(British Standard)では,指先で軽く圧力をかけて押えても,指紋の跡が残らず,粘着性を示さない状態(touch dry)をいう。
JIS K 5600-1-1「第1節:試験一般(条件及び方法)」
乾燥条件常温乾燥(自然乾燥);試験片の塗面を上向きに,板を水平に,ほこりが付かないようにして標準状態(温度 23±2℃,相対湿度 50±5%)で規定の時間乾かし,乾燥の程度を調べる。
低温乾燥;試験片の塗面を上向きにして,直ちに温度 5±1℃の低温恒温器に水平に入れて製品規格に規定する時間乾燥し,低温恒温器から取り出して,標準状態に 20分放置してから乾燥の程度を調べる。
加熱乾燥(強制乾燥,加熱乾燥);試験片の塗面を上向きに板を水平に,ほこりが付かないようにして室内に製品規格に規定する時間置き,あらかじめ規定する温度に調節した恒温器の中に,水平に入れて,規定の時間焼き付けし,恒温器から取り出して,室内で 1時間放冷してから乾燥の程度を調べる。
乾燥状態
指触乾燥(set-to-touch, dust-free, dust dry);塗面の中央に指先で軽く触れて,指先が汚れない状態。
半硬化乾燥(dry-to-touch, touch dry);塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態。
硬化乾燥(dry-hard, hard dry, through-dry);塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで,塗面に指紋によるへこみが付かず,塗膜の動きが感じられず,また,塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって,塗面にすり跡が付かない状態。
JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」に規格される“半硬化乾燥性”の試験概要を示す。
試験板
JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法−第1部:通則−第4節:試験用標準試験板」の溶剤洗浄でで調整した,大きさ 200mm×100mm×2mm のガラス板。
試験片の作製
試料の調整は,「試験準備」の(試験片の作製,試料の調整)による。
試験板への試料の塗布は,すき間 100μmのフィルムアプリケータ塗りとする。
試験方法
乾燥は,常温用の塗料の場合,JIS K 5600-1-1の(常温乾燥)によって乾燥を行う。低温用の塗料の場合には,JIS K 5600-1-1の(低温乾燥)によって乾燥を行う。
評価,及び判定
規定時間乾燥をした後, JIS K 5600-1-1の半硬化乾燥(指で軽くこすっても跡がつかない程度)によって評価し,塗面にすり跡がつかないときは“半硬化乾燥している”とする。
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硬化乾燥
品質項目乾燥時間に硬化乾燥を規定している塗料には,JIS K5552「ジンクリッチプライマー」,JIS K5553「厚膜形ジンクリッチペイント」などがある。
これらの塗料規格では,硬化乾燥状態に達しているかどうかの判定にJIS K 5600-3-3「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第3節:硬化乾燥性」が採用されている。
JIS K5500「塗料用語」
硬化乾燥(dry-hard, hard dry, dry-through, dry through, through dry)塗料の乾燥状態の一つ。
a) 試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて,塗面に指紋によるへこみが付かず,塗膜の動きが感じられず,また,塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて,すり跡が付かない状態 (dry-hard) になることをいう( JIS K 5600-1-1 )。
b) 塗膜の表面は乾燥しているが,塗膜の大部分は, まだ軟らかいといった状態ではなく,塗膜の厚さ全体を通じて乾燥している状態 (through dry) をいう。規定の試験機を用いて,水平に置いた塗料又は関連製品の一回塗り又は 多層塗り塗装系の塗面に,規定のガーゼを置き,その上に 規定された荷重を規定時間かけてから,90 度のねじれを与えたとき,塗膜の表面にガーゼの跡が残らず,塗膜に損傷が認められない場合,その乾燥状態を硬化乾燥状態(through dry state)にあるという( JIS K 5600-3-3 )。
備考1. ASTM(American Society for Testing and Materials)では,水平に置いた試験片の塗面に親指を置いて,垂直に伸ばした腕の力を最大にして押し付け,同時に 90度回転させたとき,塗膜にゆるみ,はがれ,しわ,その他のねじれの徴候が認められない乾燥状態を dry-through にあるという。
備考2. このほかに,塗膜を研磨したり (dry-to-sand),上塗りをしても異常が起こらない (dry-to-recoat),塗った物体の塗面に触れて持ち運びや包装ができる状態 (dry-to-handle) などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
JIS K 5600-3-3「第3節:硬化乾燥性」
適用範囲標準状態の下で,塗料又は関連製品の単一塗膜系,又は多層膜系が,規定された乾燥時間経過後に,硬化乾燥状態に達しているかどうかの判定を行う試験方法,すなわち,合否判定試験方法について規定する。また,この試験手順は,その状態に達するまでに要する時間(硬化乾燥時間)の測定にも使用できる。
なお,硬化乾燥時間 (through-dry time)とは,調整された試験板に塗料が塗られてから,規定された試験手順によって,硬化乾燥の状態に達したと判断されるまでの時間をいう。
原理
協定された膜厚で塗料を素地に塗装し,規定の条件の下で静置乾燥する。
表面の規定された部分に,負荷を掛け,負荷を掛けたままで 90度回転させた後,塗膜の表面を観察し,塗膜全体の乾燥の完了を判断する。
試験板・試験片
JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第4節:試験用標準試験板」に規定する試験板の中から 1枚を選ぶ。また,可能であれば,塗装しようとしているものと同等なもの。塗装前の処理は,JIS K 5600-1-4に規定する調整する。
塗装は,塗料規格に規定された方法によって,試験対象の製品又は塗膜系を規定する乾燥膜厚になるように塗装する。
手順
試験片の乾燥
自然乾燥の塗料は,標準状態( 23±2℃,相対湿度 50±5%)の場所で,風,直射日光を避けて,自然な気流中に垂直に立てて行う。焼付け塗料については,規定された条件によって焼付け及びエージングを行う。
硬化乾燥状態の判定
総質量 1500±10g のおもりを,プランジャーヘッド下部のゴム円盤にガーゼを取り付けたプランジャーの上に載せ,静かにプランジャーを下ろし,試験片にガーゼを接触させる。
プランジャーをそのままの位置で 10±1 秒置き,その後プランジャーヘッドを 2±0.5秒かけて 90度回転させる。
直ちにプランジャーを上げ,試験片を取り外し,試験した部分の塗膜を目視観察する。
判定
3枚の試験片の表面いずれにも,きず,又は跡が見られなければ,結果を“硬化乾燥状態に達している”と報告する。
3枚の試験片の表面の中の,1枚かそれ以上の試験片にきず,又は跡が見られたならば,結果を“硬化乾燥状態に達していない”と報告する。
膜厚
塗装された試験片のまだ試験に使われていない部分を使用して,JIS K 5600-1-7「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第7節:膜厚」に規定する手順の中の一つによって,硬化乾燥状態の膜厚をマイクロメートル単位で測定する。
試験報告
素地の材料,素地の調整法,塗装方法,膜厚,乾燥条件,試験結果など
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