JIS K 5600_2_4 塗料一般試験方法‐第2部‐第4節:密度
JIS K 5600-2-41999年版 2014年版 塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第4節:密度 (Testing methods for paints−Part 2:Characteristics and stability of paints−Section 4:Density)について 【序文・目次・適用範囲・用語】, 【装置】, 【試料採取・試験手順】 に分けて紹介する。
序文・目次・適用範囲・用語
2011 年に改定された ISO 2811-1との整合を図るため,これまで紹介していた 1999年版の JIS規格が 2014年に改定された。表現が変更されているので,変更の大きい部分を中心に 1999年版と併記して紹介する。
序文
1999年版
この規格は,1974年に第1版として発行されたISO 2811, Paints and varnishes−Determination of densityを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
2014年版
この規格は,2011年に第 2版として発行された ISO 2811-1を基とし,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。この規格の附属書 Aは,前版では規格の構成に不可欠のものであったが,今回の改正では附属書 Bとともに,参考となった。
JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
1999年版
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 定義,4 装置,5 試料採取方法,6 試験手順(6.1 比重瓶の校正,6.2 比重瓶の容量の計算,6.3 製品の密度の測定,6.4 密度の計算,6.5 精度),7 試験報告
2014年版
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 用語及び定義,4 原理,5 温度,6 装置,7 サンプリング,8 手順(8.1 一般事項,8.2 測定),9 計算,10 精度,11 試験報告,附属書 A(参考)ピクノメータの補正方法の例,附属書 B(参考)温度変化の影響
1 適用範囲
1999年版
この規格は,比重瓶又は比重カップを用いて液状塗料,及び関連製品の密度を測定する方法について規定する。
2014年版
この規格は,パテ製品のような高粘度の試料を除く,塗料,ワニス及びその関連製品の密度を,ピクノメータを用いて測定する方法について規定する。
注記 1 パテ製品のような高粘度の試料は,ISO 3507(Laboratory glassware − Pyknometers)に規定する,ハーバードピクノメータを用いて測定する。
3 用語及び定義
1999年版
密度
密度とは,質量を体積で割った値をいう。この規格では,密度は規定の温度で測定し,g/mlで表す。
2014年版
密度,ρ(density)
密度とは,物質の質量を容量で除した値をいい,g/cm3で表す。
4 原理(2014年版)
試験する製品をピクノメータに満たす。ピクノメータ中の製品の質量を既知のピクノメータの容量で除した値を計算し,密度とする。
5 温度(2014年版)
密度に対する温度の影響は,その特性上,非常に重要であり,製品のタイプによって異なる。
国際間の整合のために,試験温度を標準化することが不可欠であり,この規格では,23.0±0.5℃に規定する。受渡当事者間で協定した温度,例えば,20.0±0.5℃で密度を測定することもできる。
注記 受渡当事者間で協定した温度で測定する場合,規定標準密度への換算は,B.2 の式(附属書 B(参考)温度変化の影響)によるとよい。試験する試料及びピクノメータを標準温度又は受渡当事者間で協定した温度に保ち,その温度変化が試験中 0.5℃を超えないことを確認することが望ましい。
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装置
1999年版
4 装置
4.1 比重カップ:容量が20~100mlの適切なガラス比重瓶。金属製比重瓶(比重カップ)。
4.2 温度計:目盛りが0.1℃で,精度が0.2℃のもの。
4.3 ウォーターバス又は恒温室:高度な正確さが要求される場合,±0.5℃以内に維持できる能力があるもの。工程管理用では,±2℃以内のもの。
4.4 分析用はかり:最高の正確さが必要なときは,0.2mgのけたまで正確にはかることができるもの。
2014年版
6 装置
通常の試験装置及びガラス器具は,次による。
6.1 ピクノメータ
6.1.1 金属製ピクノメータ 50 cm3又は 100 cm3の容量のもので,断面は丸く,円筒状で表面が滑らかな耐食性金属からなり,中央に小孔のあいた隙間のない蓋をもつもの。蓋の内側は凹型のへこみとなっている(1999年版の比重カップと同等)。
6.1.2 ガラス製ピクノメータ ゲーリュサック形で,10 cm3から 100 cm3の間の容量のもの(1999年版のガラス比重瓶と同等)。
6.2 分析用はかり 1 mg の精度をもつはかりを用いる。
6.3 温度計 温度計は,0.2℃の精度をもち,目盛は 0.2 又はそれ以上の精度のものを用いる。JIS B 7410「石油類試験用ガラス製温度計」(Liquid-in-glass thermometers for testing of petroleum product)の動粘度測定用が望ましい。
6.4 恒温室 はかり,ピクノメータ及び試料を収容可能で,標準温度又は受渡当事者間で協定した温度(箇条 5 参照)に,それらを維持することができる恒温室又は同じ機能をもつウォーターバス。
(サイト管理者の意見)
一般に,ピクノメータ(pyknometer)は,日本語で比重瓶と訳されるが,比重瓶(specific gravity bottle)は,JIS K 0211「分析化学用語(基礎部門)」で“液体の密度を測定するためのガラス器具。”と定義されている。従って,広く用いられているが,金属製比重瓶という表現には違和感がある。
JIS 規格と整合を図る ISO 2811-1 の装置(Apparatus)の規定には,Pycnometer として Metal pycnometer と Glass pycnometer が規定されている。Metal pycnometer の市販品は,weight per gallon cup ,specific gravity cup
といわれ,日本では比重カップとして販売されている。
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試料採取・試験手順
1999年版
5. 試料採取方法
試験する製品の代表試料をJIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」の規定によって採取する。
試料は,JIS K 5600-1-3「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」の規定によって検分し,調整しなければならない。
6. 試験手順
6.1 比重瓶の校正
ガラス比重瓶は,クロム酸溶液,蒸留水及び溶剤を順次使用して,蒸発後残分がないように洗浄し,完全に乾燥する。金属製比重瓶は,溶剤で蒸発後残分がないように洗浄し,乾燥する。
比重瓶を室温にし,質量を求めておく。最大の正確さを得るには,洗浄及び乾燥した後,質量を測定する操作を繰り返し行い,連続して測定した質量の差が 0.5mg以下になるまでこの操作を繰り返す。
試験温度 23±2℃,又はより高度な正確さを必要とするならば 23±0.5℃から 1℃以内の温度で比重瓶を蒸留水で満たす。オーバーフローオリフィスを開けたまま比重瓶に栓,又はふたをする。
比重瓶の中に,絶対に泡ができないように十分注意しなければならない。
比重瓶及び瓶の内容物の温度が一定になるまで定温度のウォーターバス,又は一定温度の部屋におく。オーバーフローしたものを吸収材(備考 1. )でふいて取り除き,比重瓶の外側を吸収材でふいて完全に乾燥させる。
その後いかなるオーバーフローも,取り除いてはならない(備考 2. )。
直ちに液で満たされた装置の質量を,0.001%の単位で求める(備考 3. )。
備考1. この目的には,ティッシュペーパーが推奨される。
備考2. 比重瓶を素手で取り扱うと温度を上昇し,オーバーフローオリフィスから,さらに,オーバーフローを引き起こし,また指紋も残す。
そのため,挟む道具だけを使って取り扱い,清浄な乾いた,吸収性のよい物質で手を覆って取り扱うことを推奨する。
備考3. オリフィスを通して水が蒸発して起こる質量の損失と,ふたをした封入物内にオーバーフローがとどまれないで出てくる温度に達したときの最初のオーバーフロー物をふいた後,さらに,出てくるオーバーフローによる質量の損失とが,最小になるように素早く,液で満たされた比重瓶の質量を迅速にはかることを推奨する。
6.2 比重瓶の容量の計算
比重瓶の容量 V(ml)は,次の式によって算出する。
V=(m1-m0)/ρ
ここに,m0:空の比重瓶の質量(g)
m1:比重瓶と水の質量(g)
ρ:23℃又は協定温度下での水の密度(g/ml),23℃では0.9976g/ml
6.3 製品の密度の測定
蒸留水の代わりに製品を使って 上記手順を繰り返す。
比重瓶の外側を適当な溶剤でぬらした吸収性のよい物質でふいて,塗料のあらゆる残分を取り除いた後,清浄な吸収性のよい物質でふいて完全に乾燥させる。
誤差を最小にするために接合を正しく行う。精度のよい測定には,ガラス比重瓶を推奨する。金属製比重瓶(比重カップ)は通常,工程管理の目的で必要とする密度測定に使用する。
備考:ガラス比重瓶は,顔料を含む製品に用いると,特にすり合わせガラスの表面に残る塗料の顔料を,取り除くことが難しい。このような残分は,水又は溶剤バス内で超音波振動をかけて除去できる。
6.4 密度の計算
その試験温度の密度ρt(g/ml)は,次の式で算出する。
ρt=(m2-m0)/V
ここに,m0:空の比重瓶の質量(g)
m2:比重瓶及び製品の質量(g)
V :比重瓶の校正で測定される比重瓶の体積(ml)
t:試験温度(23℃,又は他の協定温度)
備考:同じ温度で比重瓶を補正し,製品の密度を測定することが重要である。
2014年版
7. サンプリング
試験用製品の代表試料を JIS K 5600-1-2「サンプリング」に従って取り出し,JIS K 5600-1-3「試験用試料の検分及び調整」に従い,試料の検分を行う。
8 手順
8.1 一般事項
新しい試料で 1回の測定を実施する。ピクノメータは,必要に応じて,再補正しなければならない。再補正の手順例を附属書 Aに示す。
8.2 測定
a) 恒温室(6.4 参照)で作業する場合は,ピクノメータ(6.1 参照),試料及びはかり(6.2 参照)を規定温度又は受渡当事者間で協定した温度に保持した恒温室に置く。恒温室ではなくウォーターバス(6.4 参照)中で作業する場合は,ピクノメータと試料とを,規定温度又は受渡当事者間で協定した温度に保持したウォーターバスで温度を定常状態にする。
b) 温度計(6.3 参照)を用いて試料の温度(tT)を測る。測定中を通して恒温室又はウォーターバスの温度が規定の限度内に保たれていることを確認する。
c) ピクノメータの質量(m1)をはかり,50~100cm3の容量のものに対しては 10mgの桁まで,また,50cm3未満の容量のものに対しては 1mgの桁まで記録する。
d) 次に,試料をピクノメータに充塡する。このとき,気泡が入らないように注意する。ピクノメータの蓋又はストッパーをしっかりと閉め,ピクノメータの外にあふ(溢)れた液を溶剤に浸した吸収材で拭き取り,更に綿布で拭き取る。
e) 試料を充塡したピクノメータの質量(m2)を空のピクノメータの質量(m1)と同じ桁まで記録する。
注記 ガラス製ピクノメータの,すり合わせ面に付いた液,又は金属製ピクノメータの,蓋と本体の間の接合部に液が付いている場合は,はかりの読みが高めになる原因となる。また,接合部はしっかりと締め,気泡が入らないようにする。
9 計算
試験温度(tT)における製品の密度(ρ)は,次の式によって計算する。
ρ=(m2-m1)/Vt
ここに,m1:空のピクノメータの質量(g)
m2:温度(tT)における製品を詰めたピクノメータの質量(g)
Vt :附属書 B によって求めた温度(tT)におけるピクノメータの容量(cm3)
注記 1 サンプルの充塡によって押し出される,ピクノメータ内の空気の密度(0.0012 g/cm3)は,この方法の精度に関し無視できる。
注記 2 試験温度が標準温度でない場合,密度は B.2 の式(附属書 B(参考)温度変化の影響)で計算してもよい。
10 精度
10.1 繰返し精度(γ)
同一のオペレータによって,短い時間間隔で,同一試料について,規定の操作条件で同一装置を用いて得た二つの試験結果の絶対誤差は,確率 95%で次のようになる。
溶剤の場合:0.001g/cm3未満
塗料の場合:0.005g/cm3未満
10.2 再現精度(R)
異なる試験機関で,異なるオペレータによって,同一の試料について測定された二つの結果(それぞれ 2回の測定の平均値)間の絶対誤差は,確率 95%で次のようになる。
溶剤の場合:0.002g/cm3未満
塗料の場合:0.007g/cm3未満
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