防食概論:塗料・塗装

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         【はじめに】

 塗料・塗装は,施工時の制約が少ない施工費用比較的少ない,色,光沢などの景観に関わる選択の自由度が高いなどの理由で,鋼をはじめとして金属防食対策として,多くの分野で広く採用されている。
 最終製品である塗膜の品質は,使用する塗料の特性に依存するが,塗料の特性を十分に発揮するためには,適切な施工技術・管理が不可欠である。

 塗膜耐久性に影響する施工技術には,規定の量を適切に塗付ける塗り付け作業はいうまでもなく,塗膜との密着性,塗膜下腐食及び塗膜欠陥発生に影響する塗装下地の素地調整作業,塗料の保管・管理,塗装作業中および塗膜の硬化が進むまでの間の環境条件(温度,湿度,濡れ,大気汚染物,飛来物など)が影響する。
 ここでは,鋼橋の塗装を例に,塗装技術について紹介する。

 

 【基礎用語】

 塗料・塗装全般に関する基本用語を,JIS K 5500(2000)「塗料用語」,JIS Z 0103(1996)「防せい防食用語」,JIS Z0310(2004)「素地調整用ブラスト処理方法通則」を参考に解説する
 
 塗料(coating material, coating) JIS K5500
 素地に塗装したとき,保護的,修飾的,又は特殊性能をもった膜を形成する液状,ペースト状,又は粉末状の製品。流動状態で物体の表面に広げると薄い膜となり,時間の経過につれてその面に固着したまま固体の膜となり,連続してその面を覆うもの。塗料を用いて,物体の表面に広げる操作を塗るといい。固体の膜ができる過程を乾燥といい。固体の皮膜を塗膜という。流動状態とは,液状,融解状,空気懸濁体などの状態を含むものである。顔料を含む塗料の総称をペイントということがある。
 備考:ISO用語規格では,“coating material”をここに定義される塗料として,また,“coat”を塗膜として定義している。BS用語規格も同様に“coating material”を塗料,“coat”を塗膜とするほか,“coating”を塗装として定義している。
 しかし,ASTMでは,“coating”をここに定義する内容の塗料として定義しており,また,一般には,“coating”を塗料の意味で用いる場合が多いので,対応英語は,“coating material”だけでなく,“coating”を併記した。
 ペイント(paint) JIS K5500
 素地に塗付したとき,保護,装飾又は特殊な性能を持つ不透明膜を形成する,液状,ペースト状又は粉末状の顔料を含む塗料。
 備考:広義では,顔料を含む塗料の総称。狭義では,顔料をボイル油で練り合わせて作った塗料をいう。
 ワニス(vernish) JIS K5500
 樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称。顔料は含まれていない。塗膜は概して透明である。
 備考:1.ISO用語規格では,“ワニスはクリヤー塗料の一種。主に酸化乾燥によって透明塗膜を形成するクリヤー塗料をワニスという。”と定義している。
 2.BS用語規格では,“ワニスは,主に樹脂及び/又は乾性油から作られる透明塗料。”と定義している。
 3.ASTM用語規格では,“ワニスは,薄い層に塗ったとき透明な又は,半透明な個体膜を形成する液状組成物。”をいい,ビチューミナスワニス,油ワニス,スパーワニス,揮発性ワニスなどを含めている。
 クリア塗料(クリヤ-塗料)(clear coating meterial, clear coating) JIS K5500
 素地に塗装したとき,保護的,修飾的,又は特殊性能をもつ個体で,透明な膜を作る塗料。原料を含まない。
 備考:主に酸化によって乾燥するクリヤ塗料は,ワニスという。
 塗膜(coat, film, paint film, coating) JIS K5500
 塗られた塗料が乾燥してできた固体皮膜。
 備考:ISO(国際規格) 用語規格では,単一の(1回の)塗装でできる塗料の連続層を“coat”,素地に 1回又はそれ以上塗装してできる連続層を“film”と定義。
 塗装(coating, application, painting, finishing) JIS K5500
 物体の表面に,塗料を用いて塗膜,又は塗膜層を作る作業の総称。
 備考:ISO 用語規格では,塗装に対応する用語は規定されていない。BS 用語規格では,“coating”を塗装として定義している。ASTM 用語規格では,“coating”は塗料として,また,塗ることは“paint(vb)”として定義されている。そのほか,CED には,塗装の意味の用語として“application”が記載されている。ここでは,対応英語は,“coating”,“application”その他を併記している。
 塗装系(coating system, paint system) JIS K5500
 塗装される,又は既に塗装されている塗料の塗膜層の総称。塗装の目的・効果を満足するように作った,地肌塗りから上塗りまでの塗り重ね塗膜の組合せを総称する用語。
 備考:塗装系は,通常,乾燥又は硬化に必要な適切な間隔をおいて,指定の順番で,別々に塗装された複数の塗膜から構成される。ある種の塗料では,例えば,ウエットオンウエット吹き付け塗りのような多少とも連続する塗装工程によって適切な膜厚と隠ぺい性をもつ塗装系を作ることができる。この場合,塗装系のどの部分も,上記の意味で別々の塗膜とはいえない(CED)。
 塗装工程(painting process, coating process) JIS K5500
 塗装系を作るための工程。塗装の目的,塗ろうとする物体の素地,形状,数,用いる塗料の性質,塗装場所の条件などによって,素地の処理,塗料の塗り方,乾燥の方法,塗膜形成後の処理方法などを選定して,工程を設計する。
 備考:ISO 用語規格では,”coating process”は,浸し塗り(※1),吹付け塗り(※2),ローラーコーティング,はけ塗り(※3)など,塗料を素地に塗装する過程を説明する一般用語としている。
 (※1)浸し塗りとは,塗料を入れた槽の中に被塗物を浸した後引き上げる塗り方。余分の塗料は滴下して除く。
 (※2)吹付け塗りとは,スプレーガンで塗料を微粒化して吹き付けながら塗る方法。
 (※3)はけ塗りとは,はけ(ハケ)で塗料を塗る方法。
 乾燥(drying)JIS K5500
 塗付した塗料の薄層が,液体から固体に変化する過程の総称。塗料の乾燥機構には,溶剤の揮発,蒸発,塗膜形成要素の酸化,重合,縮合などがあり,乾燥の条件には,自然乾燥,強制乾燥,加熱乾燥などがある。また,乾燥の状態には,指触乾燥※1半硬化乾燥※2硬化乾燥※3などがある。
※1 指触乾燥とは,塗った面の中央に指先で軽く触れて,指先が汚れない状態。
※2 半硬化乾燥とは,塗面の中央を指先で静かに軽くこすって塗面にすり跡が付かない状態。
※3 硬化乾燥とは,塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで,塗面に指紋によるへこみが付かず,塗膜の動きが感じられず,また,塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって,塗面にすり跡が付かない状態。
 素地(substrate) JIS K5500
 塗料が塗装される面。備考:素地は,未塗装表面,及び既塗装表面の両者を含む。生地下地も同義で用いられる。
 素地調整(surface preparation)JIS Z0103,JIS K5500
 塗料の付着性,及び防せい効果をよくするために,機械的,又は化学的に被塗装物体表面を処理し,塗装に適するような状態にすること。ケレンともいう。(JIS Z0103)
 塗装に備えて表面を処理するすべての方法。生地こしらえ,下地ごしらえを参照。
 備考:1.木部面では,汚れ,異物の除去,打痕の補修,けば取り,かんな目,逆目の除去,やにの処理,裂け目,虫穴の充填など。金属面では,加工時にできたうねり,ひずみ,溶接跡の処理,付着した油脂類,研削材,金属くず,さびなどの除去。壁塗りでは,付着した塗材の除去,き裂埋め,しみ抜き,割れ目,くぼみ目等の補修,あく止め,吸い込み止めなどがある。
 2.JIS Z 0310「素地調整用ブラスト処理方法通則」では,素地調整は,鋼材の表面に防食を目的とする塗膜が良好に付着するよう,鋼材表面のミルスケール,さびなどの皮膜の付着に支障となる物質を除去し,また,表面に適切な粗さを与える機械的又は化学的処理。また,国内ではこの素地調整のほかにさまざまの用語,例えば,下地処理,前処理,生地ごしらえ,ケレンなどが用いられる。(JIS K5500)
 さび度(rust grade) JIS K5500,JIS Z0310
 清浄作業前の鋼材表面に形成されているさびの程度を説明する分類。さびの程度は,5段階に分けた写真によって評価する(JIS K 5600-8-3,JIS Z 0310参照)。(JIS K5500)
 鋼材表面を処理する前のミルスケールの付着程度,又はさびの発生程度。(JIS Z0310)
 清浄度(preparation grade) JIS K5500,JIS Z 0310
 ある(素地調整)方法によって得られる清浄仕上げの品質水準を説明する分類。(JIS K5500)
 鋼材表面を処理した後の,被覆の付着を阻害するミルスケール,及びさび,塩類,油分などの汚れの除去程度。(JIS Z0310)
 除せい(錆)度(JIS Z0310)
 清浄度の中で,ミルスケール,及びさびの除去程度。(JIS Z0310)
 JIS Z 0313-1998「素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法」では,除せい度とそれに対する鋼材表面の状態を次のように定義している。
 Sa1  拡大鏡なしで,表面には,弱く付着したミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。
 Sa2  拡大鏡なしで,表面には,ほとんどのミルスケール,さび,塗膜,異物及び目に見える油,グリース,泥土がない。残存する汚れのすべては,固着している。
 Sa2 1/2  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは,そのこん跡が斑点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
 Sa3  拡大鏡なしで,表面には,目に見えるミルスケール,さび,塗膜,異物,油,グリース及び泥土がなく,均一な金属色を呈している。ブラストに先立って,厚いさび層,油,グリースや泥土は除去する。
 この規格は,ISO8501-1(Preparation of steel substrates before application of paints and related products -Visual assessment of surface cleanliness - Part 1 ; Rust grades and preparation grades of uncoated steel substrates and of steel substrates after overall removal of previous coatings. )に整合しており,判定はISO規格の写真集と比較して行うことになっている。
 一方,比較的使用例の多い米国の規格,SSPC (Steel Structures Painting Council): 「米国鋼構造物塗装協会で規格するブラスト仕上げ等級」では,除せい度の等級は,次のように規定している。
 White Metal Blast Cleaning(完全ブラスト処理:SP5)  全ての錆・ミルスケール・ 塗料その他異物を除去する。  ISO規格のSa3相当
 Near-White Blast Cleaning(準完全ブラスト処理:SP10)  全ての異物を完全に除去。極めて軽微なくもり・条痕,錆の染み・ミルスケール・酸化物等の軽微な残滓は容認。1平方インチ当たり95%以上は残滓がないこと。ISO規格のSa2 1/2相当
 Commercial Blast Cleaning(経済的ブラスト処理:SP6)  少なくとも1平方インチ当たり2/3は錆・ミルスケールの残滓がないこと。ISO規格のSa2相当
 Brush-off Blast Cleaning(スイープブラスト処理:SP7)  固く付着したミルスケール,錆及び塗膜の残滓を除き全ての異物を除去する。ISO規格のSa1相当。

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