防食概論:塗装・塗料
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ここでは,構造物用さび止めペイントの品質規格及び評価方法について, 【 JIS 品質規格】, 【塗料の品質試験】 に項目を分けて紹介する。
塗料の評価(さび止めペイント)
構造物用さび止めペイント
JIS K 55512018 「構造物用さび止めペイント」
序文この規格は,1991年に制定され,その後 2002年及び 2008年の改正を経て今日に至っている。今回,あらたに水性さび止めペイントに対応するために改正した。なお,1991年には「エポキシ樹脂塗料」として制定され,2008年に現行の名称「構造物用さび止めペイント」に変更された。
適用範囲
この規格は,橋りょう(梁),タンク,プラントなどの鉄鋼構造物,及び鉄,鋼,ステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金の建築などの金属部分の塗装に用いる構造物用さび止めペイント(塗料)について規定する。
ただし,この規格の塗料には,発がん性のおそれのあるタール成分を含まないものとする。
種類
荷姿には,「 1液形,又は多液形a) 」がある。
A 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μmの標準形塗料。主に鋼構造物及び建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
B 種:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μmの厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
C 種:
1 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,常温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
2 号:有機溶剤を揮発成分とする反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料のうち,低温環境下で施工する,主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
D種:水を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μm の標準形塗料。主に建築金属部の防せい(錆)に用いるもの。
E種:水を主要な揮発成分とする反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μm の厚膜形塗料。主に鋼構造物の長期防せい(錆)に用いるもの。
【品質項目の概要】
塗料の成分 : 鉛化合物及びクロム化合物を含まないことが規定されている。
塗料の性状 : 全種で容器の中での状態が,溶媒に水を用いる D,E種では,加えて低温安定性が規定されている。
塗装作業 : 全種で塗装作業性,乾燥時間(半硬化乾燥性),ポットライフが,厚膜形の B,C,E種では加えてたるみ性が規定されている。
塗膜形成機能 : 全種で塗膜の外観,上塗り適合性,付着性,耐衝撃性(耐おもり落下性)が規定されている。
塗膜の性能や耐久性 : 全種でサイクル腐食性,屋外暴露耐候性が規定され,加えて,溶剤形の反応硬化形エポキシ樹脂系塗料の A,B種では耐アルカリ性,耐揮発油性が,反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料の C種,及び厚膜形の溶媒に水を用いる E種では耐熱性が規定されている。
項 目 | A 種 | B 種 | C 種 1号 | C 種 2号 | D 種 | E 種 |
---|---|---|---|---|---|---|
容器の中での状態 | かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 | |||||
低温安定性(−5±2℃) | ― | 変質しない | ||||
半硬化乾燥性 | 半硬化乾燥している。 常温 16時間 |
低温 24時間 | 常温 16時間 | |||
塗装作業性 | 支障がない。 | |||||
塗膜の外観 | 正常である。 | |||||
ポットライフ | 23℃ 5時間 | 5℃ 5時間 | 23℃ 3時間 | |||
たるみ性 | ― | たるみがない。 すき間200μmで流れがない |
― | たるみがない。 | ||
上塗り適合性 | 支障がない。(中塗り塗料を塗り付けて,作業性,外観などを評価) | |||||
耐衝撃性 | 割れ及びはがれがない。(デュポン式300g,500mm) | |||||
付着性 | 分類 0 | 分類 1又は分類 0 | 分類 0 | 分類1又は分類0 | ||
耐アルカリ性 | 異常がない。 | ― | ||||
耐揮発油 | 異常がない。 | ― | ||||
耐熱性 | ― | 外観が正常である。 試験後の付着性試験で 分類 2,分類 1,又は分類 0 |
― | 外観が正常である。 試験後の付着性試験で 分類2,分類1又は分類0 |
||
サイクル腐食性 | さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(120サイクル) | |||||
塗膜中の鉛の定量 (質量分率%) |
0.06以下 | |||||
塗膜中のクロムの定量 (質量分率%) |
0.03以下 | |||||
屋外暴露耐候性 | さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(24か月) |
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塗料の品質試験
ここでは,構造物用さび止めペイントの塗料品質の試験法を紹介する。塗膜品質の試験法については,【塗膜の評価】・「下塗り塗料」で紹介する。
7. 試験方法
7.1 サンプリングは,JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」による。
7.2 試験用試料の検分及び調整は,JIS K 5600-1-3 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」による。
7.3 試験の一般条件は,次による。
a) 試験の場所
1) 養生及び試験を行う場所は,他に規定がない場合は,JIS K 5600-1-6 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第6節:養生並びに試験の温度及び湿度」の4.1(標準条件)に規定する条件[温度 23±2℃,相対湿度(50±5)%]
2) 目視観察のときの光源(拡散昼光,色観察ブース)
b) 試験片の作製
1) 試験板: 研磨によって調整した SPCC-SB の鋼板とする。
2) 試料の調製: かくはん(攪拌),混合し均一にする。なお,多液形塗料は,混合したときから A種,B種及び C種は 5時間,D種及び E種は 3時間を過ぎたものは, 試験に供してはならない。
3) 試料の塗り方: 2)で調製した試料を使用直前によくかくはん(攪拌)し,直ちに試験板の片面にエアスプレー塗り 1回とする。乾燥膜厚は 7時間乾燥後に測定し,A種及び D種で 25μm~35μm,B種,C種及び E 種で 55μm~65μmになるようにする。
4) 乾燥方法: 自然乾燥による。試験までの乾燥時間は,他に規定がない場合は,7時間とする。
7.4 容器の中での状態の試験は, JIS K 5600-1-1 の 4.1.2 a)(液状塗料の場合)による。多液形の場合は容器別にそれぞれについて試験を行う。
7.5 低温安定性の試験は,次による。
a) 試験板: 7.3 b) 1)による。ただし,大きさは 200mm×100mm×0.8mm とする。
b) 試験方法: JIS K 5600-2-7「塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第7節:貯蔵安定性」の 4.(低温安定性)による。次に,a)の試験板を用い,7.7の b)及び c)によ って塗装作業を行う。
c) 評価及び判定: b) の試験によって,試料をかくはん(攪拌)したとき一様になり,塗装作業性に支障がなく,更に乾燥した塗膜の外観が正常であるとき,“変質しない”とする。
7.6 半硬化乾燥性の試験は,次による。
a) 試験板:JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法−第1部:通則−第4節:試験用標準試験板」の 5.5.2(溶剤洗浄による 調整)によって調整した,大きさ 200mm×100mm×2mm のガラス板とする。
b) 試験片の作製: 試験板への試料の塗布は,附属書 Cに規定する隙間 100μmのフィルムアプリケータ塗りとする。
c) 試験方法: A種,B種,C種 1号,D種及び E種の場合は,常温乾燥 16時間とする。C種 2号の場合は,低温乾燥 24時間とする。
d) 評価及び判定: 規定時間乾燥をした後,JIS K 5600-1-1 「塗料一般試験方法−第1部:通則−第1節:試験一般(条件及び方法)」の 4.3.5 b)(半硬化乾燥)によって評価する。
7.7 塗装作業性の試験は,次による。
a) 試験板: 7.3 b) 1)による。ただし,大きさは 200mm×100mm×0.8mm とする。
b) 試験片の作製: 試験板に,試料を 7.3 b) 3)によって 1回塗りしたものを試験片とする。
c) 養生: 試験片を塗装後 10分間立て掛けて保持する。
d) 評価及び判定: 試験片を目視によって流れが認められないときは“支障がない”とする。
7.9 ポットライフの試験は, JIS K 5600-2-6 「塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第6節:ポットライフ」による。ただし,標準条件のときポットライフは 5時間とする。容器は密閉できる金属製を用い,試験板は鋼板とし,塗装はエアスプレー塗りで乾燥は自然乾燥とする。試験板は,研磨によって調整した SPCC-SB の鋼板とする。ただし,大きさは150 mm×70 mm×0.8 mmとする。
7.10 たるみ性の試験は,次による。
試験板: 溶剤洗浄よって調整した,大きさ 200mm×150mm×2mm のガラス板とする。
試料の調製: 調製後直ちに,ストーマー粘度計を用いていて粘度( KU 値)を測定し,B種及び C種の場合は,83±3 (23±1 ℃)に,E種の場合は,90±3(23±1 ℃)になるように,製造業者の指定するうすめ液を適量加えて調製する。ただし,B種及び C種の場合は,塗料原液の粘度( KU 値)が 80(23±1 ℃)未満,E種の場合は,87(23±1 ℃)未満のときはうすめ液を加えないで試験に用いる。
試験方法: 試験板の先方の短辺付近の位置に,短辺に平衡にサグテスタを置き,粘度を調製した試料を溝の部分に広げるように入れる。次いで,サグテスタの両端を軽く下に押し付けながら,手前に均等な速さで一気に引く。塗り終わった後,サグテスタの軌跡線が水平になるように試験片を垂直にして 8時間保持し,塗料の流れ(たるみ)の状態を調べる。
評価及び判定: 試験片の塗料の流れの状態を,目視によって観察し,サグテスタの隙間 200μmと隙間 250μmとの間の無塗装部に流れが認められないときは,“たるみがない”とする。
7.18 塗膜中の鉛の定量は,附属書Aによる。
7.19 塗膜中のクロムの定量は,附属書Bによる。
附属書 A(規定)塗膜中の鉛の定量
A.1 概要 塗料の揮発成分を除いた後,475℃~500℃で有機物を灰化し,塩酸に溶解抽出後,アセチレン・空気フレーム中に噴霧し,鉛による原子吸光を波長 283.3nmで測定し,分解液中の鉛を定量し,塗膜中の鉛分に換算する。
附属書 B(規定)塗膜中のクロムの定量
B.1 概要 塗料の揮発成分を除いた後,475℃~500℃で有機物を灰化し,過マンガン酸カリウムと硫酸溶液とから成る酸化用溶液で分解溶解後希釈して,アセチレン・空気フレーム中に噴霧し,クロムによる原子吸光を波長 357.9nmで測定し,分解液中のクロムを定量し,塗膜中のクロム分に換算する。
附属書 C(規定)フィルムアプリケータ塗装
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