防食概論:塗装・塗料
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塗料の評価(乾燥時間)
乾燥時間とは
JIS K5500「塗料用語」
乾燥時間(drying time)塗料が乾燥するのに必要な時間。
乾燥(塗料)(drying)
塗付した塗料の薄層が,液体から固体に変化する過程の総称。塗料の乾燥機構には,溶剤の揮発,蒸発,塗膜形成要素の酸化,重合,縮合などがあり,乾燥の条件には,自然乾燥,強制乾燥,加熱乾燥などがある。また,乾燥の状態には,指触乾燥,半硬化乾燥,硬化乾燥などがある。
溶剤の揮発,蒸発により塗膜形成要素(film former)の物理的な力で造膜する塗料,塗膜形成要素と大気成分との化学反応で造膜が進む塗料,塗料に含まれる複数成分の酸化,重合,縮合などの硬化反応により造膜する塗料などがある。これらの造膜に至る過程を総称して乾燥と言う。
乾燥性の評価試験では,塗料に規定される乾燥条件で,規定の時間経過した後に,塗膜の乾燥状態を評価することになる。
乾燥条件
常温乾燥(自然乾燥;air drying, air-drying); 試験片の塗面を上向きに,板を水平に,ほこりが付かないようにして標準状態で規定の時間乾かし,乾燥の程度を調べる。
低温乾燥(low temperature drying); 試験片の塗面を上向きにして,直ちに温度 5±1℃の低温恒温器に水平に入れて製品規格に規定する時間乾燥し,低温恒温器から取り出して,標準状態に 20分放置してから乾燥の程度を調べる。
強制乾燥(stoving, baking); 試験片の塗面を上向きに板を水平に,ほこりが付かないようにして室内に製品規格に規定する時間置き,あらかじめ規定する温度に調節した恒温器の中に,水平に入れて,規定の時間焼き付けし,恒温器から取り出して,室内で 1時間放冷してから乾燥の程度を調べる。
ただし,通常の焼付塗料に用いられるより低い温度,通常は,自然乾燥よりも少し高い 66℃までの温度で乾燥する場合を強制乾燥(force drying, forced drying)という。
乾燥状態
指触乾燥(set-to-touch, dust-free, dust dry)
塗料の乾燥状態の一つ。塗った面の中央に触れてみて,試料で指先が汚れない状態(set-to-touch)になったときをいう。JIS K 5600-1-1「塗料一般試験方法-第1部:通則-第1節:試験一般(条件及び方法)」参照。
備考:ASTM(American Society for Testing and Materials),BS(British Standard) では,このほかに,塗面にほこり(綿の繊維や顔料グレードの炭酸カルシウムなど)が付着しなくなった状態を dust-free にあるという。【JIS K5500「塗料用語」】
半硬化乾燥(dry to touch, touch dry)
塗料の乾燥状態の一つ。塗った面の中央を指先でかるくこすってみて塗面にすり跡が付かない状態(dry to touch)になったときをいう。JIS K 5600-1-1参照。
備考:BS(British Standard)では,指先で軽く圧力をかけて押えても,指紋の跡が残らず,粘着性を示さない状態(touch dry)をいう。【JIS K5500「塗料用語」】
硬化乾燥(dry-hard, hard dry, dry-through, dry through, through dry)
塗料の乾燥状態の一つ。
a) 試験片の中央を親指と人指し指とで強く挟んでみて,塗面に指紋によるへこみが付かず,塗膜の動きが感じられず,また,塗面を指先で急速に繰り返してこすってみて,すり跡が付かない状態 (dry-hard) になることをいう( JIS K 5600-1-1 )。
b) JIS では,塗膜の表面は乾燥しているが,塗膜の大部分は, まだ軟らかいといった状態ではなく,塗膜の厚さ全体を通じて乾燥している状態 (through dry) をいう。規定の試験機を用いて,水平に置いた塗料又は関連製品の一回塗り又は 多層塗り塗装系の塗面に,規定のガーゼを置き,その上に 規定された荷重を規定時間かけてから,90 度のねじれを与えたとき,塗膜の表面にガーゼの跡が残らず,塗膜に損傷が認められない場合,その乾燥状態を硬化乾燥状態(through dry state)にあるという( JIS K 5600-3-3 )。
備考1. ASTM(American Society for Testing and Materials)では,水平に置いた試験片の塗面に親指を置いて,垂直に伸ばした腕の力を最大にして押し付け,同時に 90度回転させたとき,塗膜にゆるみ,はがれ,しわ,その他のねじれの徴候が認められない乾燥状態を dry-through にあるという。
備考2. このほかに,塗膜を研磨したり (dry-to-sand),上塗りをしても異常が起こらない (dry-to-recoat),塗った物体の塗面に触れて持ち運びや包装ができる状態 (dry-to-handle) などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
塗料又は関連製品の単一塗膜系,又は多層膜系が,規定された乾燥時間経過後に,硬化乾燥状態に達しているかどうかの判定を行う試験方法は,JIS K 5600-3-3「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第3節:硬化乾燥性」に規定されている。
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表面乾燥とは
品質項目乾燥時間に表面乾燥性を規定している塗料には,JIS K5633「エッチングプライマー」,JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」,JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」,JIS K5516「合成樹脂調合ペイント」,JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」などがある。
JIS K5500「塗料用語」
表面乾燥(上乾き)(surface dry, sand dry)塗料の乾燥状態の一つ。水平に置いた試験片の塗面に,規定量のバロチニを指定の高さから落とし,10秒後に試験片を傾けて,軽くはけではいて塗膜の表面にきずを付けずに,バロチニを除去できる乾燥状態をいう。
備考:上乾きは,塗った塗料の層が,表面だけが乾燥状態になり,下層は軟らかく粘着性があって未乾燥状態にあることをいう。
なお,バロチニ(Ballotini)とは,呼び目開き 125μmのふるいを通過せず,250μmのふるいを全通するように級分けした小さな透明ガラス球である。
JIS K 5600-3-2「塗料一般試験方法-第3部:塗膜の形成機能-第2節:表面乾燥性(バロチニ法)」
用語の定義表面乾燥状態 (surface-drying state)
塗膜の表面状態について述べる一般的用語,すなわち,“表面乾燥”か,又はそうでないかをいう。
表面乾燥 (surface-dry)
バロチニを軽くはけではいて,塗膜の表面にきずを付けずに,バロチニが除去できる塗膜の表面乾燥状態。
表面乾燥時間 (surface-drying time)
調整された試験板に,塗料の塗膜が塗装された時点から,規定されている試験操作によって,塗膜が表面乾燥であると判定されるまでの時間。
適用範囲
この規格は,空気の作用によるか,又はその組成の化学反応によって乾燥する塗料の,塗膜のバロチニ法による表面乾燥性の測定方法について規定する。なお,この方法は,焼付け塗料には適用しない。
記載されている方法は,次のいずれかによって実施できる。
合否判定試験のように,特に決められた要求に合うかどうかを評価するため,規定の時間経過後に表面乾燥状態を調べるか,又は表面乾燥時間に達するまでの間,適切な間隔ごとに表面乾燥状態を調べる方法。
試験板及び塗装
他に規定,又は協定がなければ,試験板はJIS K 5600-1-4 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第4節:試験用標準試験板」の規定に合致したガラス板,磨き鋼板,すずめっき板又はアルミニウム板とし,表面は塗装するために規定どおり調整する。
試験板は,規定された,又は協定された方法で,試験対象製品を塗装する。
試験手順
試験板の乾燥
塗装された試験板は,他に規定がなければ,環境条件温度 23±2℃,相対湿度 50±5%の場所で,気流から遮へいし,直射日光を避けて,自然な気流中に,垂直に立てて乾燥する。
1 規定時間後の表面乾燥状態の評価
規定時間経過後,試験板を水平な位置に置く。試験板の上に約 0.5gのバロチニを 50~150mm の間の高さから注ぎ落とす。
10秒後,試験板を水平に対し 20°の角度で保持し,塗膜を軽くはけではき,塗膜の表面を目視観察する。表面に損傷を与えずに,すべてのバロチニをはけで除去できたら,塗膜は表面乾燥とする。
2 表面乾燥時間の測定
同様に塗装された数枚の試験板を調製し,静置乾燥する。塗膜が“表面乾燥”になると予想される少し前に,試験をスタートし,適切な間隔で異なる試験板を使用し,塗膜が表面乾燥の状態になるまで,表面乾燥状態の評価を行う。塗膜が塗装してから,ちょうど表面乾燥になるまでの所要時間を記録する。
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