防食概論:塗料・塗装

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         新設時塗装

  鋼橋製作時の新設時塗装の概要を紹介する。
 参考:塗装工程の詳細は,【腐食防食とは】の「塗装概論・新設塗装工程

【鋼橋製作・架設時の留意点】

 塗膜品質に影響する制作工程と作業上の留意点は次の通りである。
 鋼材の罫書(けがき)作業
 部材のマーキングに油性ペイントの使用を極力避ける。油性ペイントを使用した場合は,作業後残らないように除去する。
 鋼材の孔あけ作業
 孔あけ後の,孔周辺のカエリやバリをグラインダーで除去する。
 溶断作業
 溶断面は,凹凸が大きくなるので,必要な平滑さまで仕上げる。エッジ部は面取りする。
 溶接作業
 溶接ビード部は,そのまま放置すると,塗装に悪影響を与えやすいので,適切に処理する。
 保管・輸送
 塗装後の吊りあげ時,移動時,保管時に塗膜を傷つけないように,細心の注意を払うとともに,適切な養生を行う。特に,ばん木を用いて仮置きや保管する場合は,ばん木当たり面で長時間の濡れが発生し易いので,雨水が回らないように注意する。
 架設作業
 架設期間が長くなる場合は,架設時の機材等からのさび汁汚れ,油汚れ,コンクリート汚れに注意する。

 

【塗装の種類と管理】

 鋼橋の塗装は,鋼板を切断,溶接し,ブロックとして組み立てた後の最後の工程で実施される。橋梁製作の詳細は,【社会資本とは】の「橋梁の製作」で紹介した。
 一般的な鋼橋塗装は,塗装工程の違いで,全工場塗装と現場塗装の 2 種に分けられる。
 全工場塗装
 橋梁ブロック毎に,下塗り塗料から上塗り塗料までを橋梁製作工場内で塗装し,架設後は現場添接部のみを現地で塗装する方法である。
 全工場塗装のメリットは,塗装環境や塗装姿勢による塗膜品質のばらつきを小さくできることにある。
 ディメリットとしては,橋梁架設までの運搬,保管,及び架設工事で生じた塗膜損傷の影響を強く受けるので,損傷個所の入念な検査と適切な補修塗装が必要になる。
 現場塗装
 一般外面等の塗装を下塗り塗料まで橋梁製作工場で行い,橋梁架設後に現場添接部,及び中・上塗り塗装を行う方法である。
 この塗装方法では,工場塗装のあと橋梁架設までの期間が長くなるため,下塗り塗膜には,数か月以上の塗装間隔となっても中塗り塗膜との付着性が確保できる塗料(一般的には,鉛系さび止めペイントやMIO塗料)が用いられる。
 現場塗装のメリットは,全工場塗装のディメリットである橋梁の運搬,保管,及び架設工事で生じた塗膜損傷の影響を小さくできることにある。
 ディメリットは,中塗り,及び上塗り塗膜の品質が架設環境の影響を受けることにある。例えば,飛来海塩粒子の多い環境では,付着塩の影響で塗膜はがれに至る例もある。
 塗装管理項目
 塗膜品質に対する影響度が大きく,適切で入念な管理が必要な項目を次に示す。
 素地調整状態(除せい度,表面粗さなど),気象因子(気温,湿度など),塗料の状態(品質確認),塗料の調合(配合量,可使時間,粘度,希釈状態など),塗料使用量塗り重ね間隔塗膜厚み環境因子(現場施工での付着塩分量など)

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【全工場塗装の工程】

 全工場塗装の工程を時系列で示すと, 素地調整 ⇒ 下塗り塗装 ⇒ 中塗り塗装 ⇒ 上塗り塗装 ⇒ (現地搬入・保管,架設工事) ⇒ 現場添接部,及び塗膜欠陥部の塗装となる。
 ① 素地調整
 橋梁ブロック製作後,一次防せい(製造工程中の防せい)目的で用いたプライマー,表面の汚れ,さびなどの汚損物除去,塗装に適した表面清浄度(除せい度: ISO 8501-1 の B Sa2 1/2 以上),表面粗さ(10 点平均粗さ 70μmRzJIS 以下)を得ることを目的に実施される。
 一般的には,グリットブラストを用いた処理(二次素地調整,製品ブラストという)を行う。
 ② 下塗り塗装
 下塗り塗料は,塗装系の防食性能を特徴づける塗料である。素地調整後,3~ 4 時間以内に塗装系の第 1 層目である下塗り塗料を塗装する。塗装系によっては複数の下塗り塗料を用いる。
 例えば,道路の C-5 塗装系では無機ジンクリッチペイント 1 層,ミストコート 1 層,エポキシ樹脂塗料下塗 1 層,鉄道の L-2 塗装系では,無機ジンクリッチプライマー 1 層,厚膜形変性エポキシ樹脂塗料 2 層などである。
 下塗り塗装では,塗料の防食性能の一つである環境遮断性を十分に発揮するため,塗膜欠陥が少なく,規定の塗膜厚みを確保できる施工が求められる。
 特に,中・上塗り塗装後には,下塗り塗膜の状態を確認し難いので,適切な施工管理が求められる。
 ③ 中塗り塗装
 下塗り塗料防食性能に特化した塗料で,上塗り塗料景観性能に特化した塗料である。中塗り塗料は,特性の大きく異なる下塗り塗料と上塗り塗料との接着剤としての役割を持つ。
 このため,一般的には,中塗り塗料は上塗り塗料とセットで規定されている。
 ④ 上塗り塗装
 上塗り塗膜は,最外層のため,直接的に日射や大気の影響を受ける。このため,上塗り塗料には,耐紫外線性の高い樹脂が用いられる。
 上塗り塗装は最終塗装工程のため,塗装状態確認に余裕がある。このため,過剰な塗膜管理になりがちである。
 例えば,鋼構造物の塗装では,自動車や家電ほどの景観性能を要求されないにもかかわらず,防食塗装としての性能に影響しない程度の外観(光沢)の変化まで過剰に管理してしまうなどである。
 一般的に,上塗り塗膜の外観特性は,下塗り塗膜や中塗り塗膜の品質(仕上がり)の影響を強く受ける。このため,家電品,建築物,自動車の塗装では,中塗り塗装前や上塗り塗装前に研磨紙による“とぎ”の工程が入る。
 しかし,防食塗装では,そこまでの外観特性を要求していないので,研磨紙による“とぎ”の工程は採用していない。
 防食塗装で厳密な管理が必要な塗装は,下塗り塗装であることを確認し,発注者及び管理者は,上塗り塗装の過剰な管理にならないよう注意が必要である。
 (現地搬入・保管)
 塗装が終了した橋梁ブロックは,塗膜を傷つけないように,適切な方法で養生し,最新の注意を払って輸送しなければならない。
 現地到着後は,架設工事まで保管することになる。移動時のロープかけや保管時のばん木との当たり部などに塗膜損傷が生じないように細心の注意が必要になる。
 特に,保管場所が飛来海塩粒子の影響を受ける場合には,塩の付着を防止する対策が必要になる。
 (架設工事)
 時間制約のある架設工事で,塗膜に傷をつけないことは困難であるが,塗膜損傷を最小限にするよう細心の注意が求められる。
 ⑤ 現場添接部の塗装
 橋梁ブロックを現場で連結しながら橋梁を架設する。このため,連結部(添接部)は現場での塗装となる。
 工場に比較して作業上の制約が多いので,塗装工事では十分な塗膜品質を確保できる管理が必要になる。特に,ブラスト処理による素地調整やスプレー塗装が採用できない場合が多いので,素地調整程度の確認と塗膜厚不足にならないよう注意しなければならない。
 腐食性環境では,十分に注意しても,早期に添接部,高力ボルトの塗膜劣化に至る場合がある。防食設計時にボルトキャップの採用など架設環境に適した防食対策を検討するのが望まし。
 ⑤ 補修塗装
 橋梁ブロックの保管,輸送,及び架設工事で生じた塗膜損傷部を調査し,架設足場を利用して,限られた時間の中で損傷程度に応じた補修塗装を行うことになる。
 例えば塗膜傷が鋼素地に達しているかいないかによって,素地調整程度,塗装回数などが異なる。
 塗膜損傷部の調査は,目視による調査のため,見落とさないように入念な調査を心がける。

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