防食概論塗装・塗料

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 ここでは,塗料を構成する成分について, 【構成材料の分類】, 【塗膜構成要素とは】, 【塗膜形成助要素(溶剤)】  に項目を分けて紹介する。

 塗料概論(塗料構成要素)

 塗料の構成材料とは

 塗料は,要求される性能を発揮するため,複数の材料を混合した状態で使用される。塗料を構成する材料は,下図に示すように,物質の物性,期待する性質の違いで分類されるのが一般的である。
 塗料の構成材料は,塗り付け後の乾燥過程で,被塗面に残存し,塗膜(coat, film, paint film, coating)を形成する塗膜構成要素(coating film constituting material)と,硬化・乾燥中に蒸散し塗膜として残らない塗膜形成助要素(溶剤類)に大別される。

塗料の材料構成

塗料の材料構成

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 塗膜構成要素とは

 塗膜構成要素は,乾燥過程で,被塗面に残存し,塗膜を形成する成分であるが,発揮する機能の違いにより,塗膜形成要素(film forming material)塗膜副要素(添加剤;additive),及び顔料(pigment)に分けられる。
 
 塗膜形成要素(展色材,バインダー,ビヒクル,塗膜主要素,樹脂成分などともいう)
 展色材(vehicle)は,バインダー(binder)ともいい,塗膜の主体となる樹脂を指す。日本語でビヒクル(vehicle, medium)と記した場合は,液相の構成成分として樹脂を指し,粉体塗料などの固相の樹脂には用いない。
 展色材は,その由来により天然油脂,天然樹脂,加工樹脂,合成樹脂,繊維素誘導体,架橋剤・硬化剤などに分類される。
 
 塗膜副要素(添加剤)
 添加剤(additive)とは,塗料に少量添加して,塗料の作業性,乾燥性などや塗膜の機械特性などの一つ若しくはそれ以上を改善又は変性する物質をいう。
 添加剤は,その目的により,可塑剤,消泡剤,レベリング剤,沈殿防止剤(顔料分散剤),皮張り防止剤,酸化防止剤,促進剤,つや消し剤,ドライヤー,流れ止め剤など多種ある。
 
 硬化剤(hardener, curing agent)
 塗料の硬度の増進又は硬化反応を促進若しくは制御するために用いられる橋かけ剤,樹脂,その他の変性剤。
 備考 常温硬化形塗料では,エポキシ樹脂塗料におけるアミンアダクト及びポリアミド樹脂,ポリウレタン樹脂塗料におけるポリイソシアネート類は,架橋反応によって硬化する硬化剤の代表的な例である。
 また,酸硬化形アミノ樹脂塗料における有機酸又は無機酸などの酸触媒,不飽和ポリエステル樹脂塗料の過酸化物(重合開始剤)とナフテン酸コバルト(促進剤)なども硬化剤ということがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 備考で紹介する前者の例は塗料の展色材(架橋剤・硬化剤)として,後者の例は塗料の添加剤(硬化促進剤)として扱われる。
 
 顔料
 一般に水や有機溶剤にほとんど溶けない微粉末状で,着色などの光学的性質,さび止めなどの保護的性質,又は装飾的な性能によって用いられる物質をいう。
 顔料として,着色,補強,増量などの目的で,無彩又は有彩,無機又は有機の数多くの化合物が用いられる。塗料に用いる顔料は,期待する性能で,着色顔料,体質顔料,さび止め顔料,特殊顔料などに分けられる。

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 塗膜形成助要素(溶剤類)

 塗膜形成助要素とは,塗料の硬化・乾燥中に蒸散し,塗膜として残らない要素で,塗料の粘性(viscosity)を調整し取り扱い性,塗装作業性の改善を目的に用いられる溶剤類を指す。

 溶剤(solvent)
 塗膜形成要素を十分に溶解し,所定の乾燥条件で揮散する単一又は混合された液体で,狭義では真溶剤を意味し,広義では他に助溶剤,希釈剤を含める。
 溶剤を分類する場合には,本来は蒸発速度の大小によって区分するが,沸点の高低によって,高沸点溶剤・中沸点溶剤・低沸点溶剤に分けることもある。
 溶剤は,塗膜に残らないので,直接的には塗膜性能に影響を与えないと考えがちであるが,規定量を超えて添加した場合には,塗膜物性に悪影響を与える可能性がある。このため,一般的には,塗料別に希釈上限が定められている。
 
 真溶剤(しんようざい)(true solvent)
 狭義の溶剤で,展色材の溶媒を指し,一般的な溶剤の中で助溶剤,希釈剤に該当するものを除くものを指す。
 
 助溶剤(じょようざい)(co-solvent)
 それ自体は塗膜形成要素を溶解する性質はないが,溶剤(真溶剤)に加えると溶剤単独のときより溶解力が大きくなる性質のある蒸発性の液体。ニトロセルロースラッカーではアルコール類が助溶剤として使われる。【JIS K5500「塗料用語」】
 
 希釈剤(きしゃくざい)(diluent (solvent))
 それ自体溶解力のある溶剤ではないが,溶剤(真溶剤)と併用して悪影響なく使用できる,単一又は混合された揮発性液体。【JIS K5500「塗料用語」】
 ただし,反応性希釈剤(reactive diluent)は,塗料の粘度を下げるなどの希釈剤としての機能を持つが,硬化反応に関与し塗膜に残る要素であり,溶剤類ではなく塗膜形成要素に含まれる。

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