防食概論:塗装・塗料
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塗膜の評価(塗膜劣化評価;塗膜表面 白亜化(チョーキング)の等級)
白亜化の等級
JIS K5500「塗料用語」
白亜化(peeling, flaking, scaling)膜の成分の一つ,又はそれ以上が劣化して膜の表面に微粉がゆるく付着したような外観になる現象。
白亜化の程度を調べるには,指先,フェルト,ビロードなどで塗膜の表面を軽くこすって,粉末状のものが塗面から離れて指先などに付着する程度を見るか,湿らせて表面を粘着性にした写真印画紙をいていの荷重で塗面に圧着したときの,塗面から離れて粘着した粉状物質による印画紙の面の汚れの濃さを比較して見る(従来法)か,又は指定の粘着テープを塗面において,指で強くこすり,付着した粉末状物質の量を標準写真と比較して調べる。
白亜化は,上塗り塗膜の外表面を構成する樹脂(有機高分子材料)が,紫外線と水の作用で分解(光反応)し,紫外線では分解されない顔料等が表面に残り,微粉が付着したような外観になる現象である。
白亜化に対する抵抗性は,樹脂の耐光性(耐紫外線性),表面近傍の顔料の光触媒作用の影響を強く受ける。
白亜化の程度を定量的に評価するために,古くは,湿らせて表面を粘着性にした写真印画紙(黒)を一定の荷重で塗面に圧着したときの,塗面から離れて転写された粉状物質による印画紙表面の汚れの濃さを比較する方法(旧 JIS K 5400 )が用いられていた。
現在は,国際規格( ISO )との整合を図るため,指定の粘着テープを用いて転写し,標準写真との比較( JIS K 5600-8-6 )で評価する方法が採用されている。
JIS K 5600-8-6 1999「塗料一般試験方法−第 8部:塗膜劣化の評価−第 6節:白亜化の等級」(Testing methods for paints−Part 8 : Evaluation of degradation of paint coatings−Section 6 : Rating of degree of chalking)
適用範囲
この規格は,塗膜の白亜化の程度の図版による規定を示す。そしてまた,この方法によって白亜化の程度を等級付ける方法を規定したものである。
この方法を用いるとき,特に白亜化の程度がわずかであるときは,真の劣化による生成物か,付着したごみなのかを注意して区別しなければならない。
定義
白亜化 (chalking)
塗膜の表面に,その塗膜の構成成分の一つ,又はそれ以上の崩壊によって生じた微粉がゆるく付着している状態の外観。
原理
粘着テープを用いて試料の表面から白亜化(した微粉)を除去する。テープに付着した白亜化(物)をコントラストのある背景(どちらのコントラストが強いかによって,黒又は白を選ぶ。)の上で見て,等級付けスケールを参照して評価する。
材料
透明粘着テープ
幅 25±10mm の市販のつやなしの透明で,ほとんど無色のものが適切である。テープの種類は,受渡当事者間で合意したものとし,種類は報告書に記載する。
背景面(白亜化した粉の付着状態を調べるためにテープの下に置く。)
黒,又は白,つやけしで,カード,若しくはつぶれない短い毛羽をもつベルベントなどをバックグラウンドとして使用する。
手順
塗膜表面を自然乾燥し,粘着テープを塗膜の上に置き,強く押しつけ,指でこする。
テープをはがし,テープに付着している付着物に対してコントラストが十分大きいような色の背景面の上に置く。直ちに拡散光のもとで,テープに付着した白亜の量を標準画像と比較して,白亜化の程度を評価する。
白亜化の程度は,未使用のテープと白亜の付着したテープの透過性を適切な光電装置を用いて比較することによっても定量的に測定できる。この装置を用いる方法は,テープ表面に白亜化した粉体が均一に付着している場合にだけ使用する。
自然暴露を行った塗料の白亜化の等級付けは,大気から塗膜表面に沈降した汚染物質によって,誤った高い等級付け数値を与えていることがあるから注意する。
試料表面から白亜化した付着物を除去したら,遅滞なく評価する。テープに付着した状態の外観は,時間とともに変化するからである。透過度も同様に変化する。
等級付け
標準画像を参照して,白亜化の程度の等級付けを行う。得られた値は,JIS K 5600-8-1 「一般的な原則と等級」の記載と一致するようにする。
きめが粗い表面の場合には,等級付けは,テープの最も付着物の多い部分の観察による。
【参考】
光反応(photoreaction)
光のエネルギーにより引き起こされるさまざまな化学反応を総称して光反応という。
光化学反応(photochemical reaction, light‐dependent reaction)
一般的には,光により引き起こされるさまざまな化学反応を光反応( photoreaction )というが,大気成分の太陽光による光反応(光化学オキシダント),生化学分野の光合成における光反応(色素分子が光エネルギーを吸収し,物質の酸化還元)などは光化学反応と称する場合が多い。
耐光性(light fastness, fastness to light, light resistance, light stability)
顔料及び塗膜の特性,特に色が光の作用に抵抗して変化しにくい性質。試験規格として,JIS K 5600-7-5「耐光性」がある。【JIS K5500「塗料用語」】
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