防食概論:塗料・塗装

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         下塗り塗料

 下塗り塗料(undercoat,priming coat)とは,“塗料を塗り重ねて塗装仕上げをするときの下塗りに用いる塗料。”と定義される。
 一般的には,塗装系に対する素地の影響を防止し,付着性を増加させるために用いられる。さらに,防食塗装では,防せい顔料などを用いて,防食機能を強化した塗料が用いられる。
 ここでは,「塗料の評価・下塗り塗料に紹介するJIS K 5674「鉛・クロムフリーさび止めペイント」,JIS K 5553「厚膜形ジンクリッチペイント」, JIS K 5551「構造物用さび止めペイント」の品質規格の概要,及び適用される試験規格を紹介する。

【鉛・クロムフリーさび止めペイント】

 JIS K 5674「鉛・クロムフリーさび止めペイント」は,一般的な環境下での鉄鋼製品,鋼構造物などのさび止めに用いる塗料で,鉛化合物,及びクロム化合物を含まないさび止め顔料で構成されたさび止めペイントについて規定されている。
 規格には,有機溶剤を揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料(1種)と水を主要な揮発成分とする液状・自然乾燥形のさび止め塗料(2種)がある。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として,容器の中での状態,加熱残分に加えて,水を溶媒とする2種には低温安定性が規定されている。塗装作業に関連する規定には塗装作業性,乾燥時間(表面乾燥性)が,塗膜形成機能として,塗膜の外観,上塗り適合性,付着安定性が規定されている。
 【塗膜の品質】
 塗膜形成機能として,耐屈曲性が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性については,サイクル防食性,防せい性が規定されている。なお,従前の品質項目“防せい性”は,最近の規格で“屋外暴露耐候性”と表記されている。


品質(JIS K 5674鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント)
  項  目   1  種  2  種
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなく一様になる。 
  低温安定性(-5℃)    ―    変質しない。 
  塗装作業性    支障がない。 
  表面乾燥性    表面乾燥する。(8時間) 
  塗膜の外観    正常である。 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐屈曲性    折り曲げに耐える。(6mm) 
  付着安定性    はがれを認めない。 
  サイクル防食性    膨れ,さび及びはがれがない。(36サイクル) 
  加熱残分(質量分率 %)    75以上    50以上 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    0.06以下 
  塗膜中のクロム(質量分率 %)   0.03以下 
  防せい(錆)性    防錆性を持つ。(24 か月) 

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【厚膜形ジンクリッチペイント】

 JIS K 5553 「厚膜形ジンクリッチペイント」は,亜鉛末,及びアルキルシリケート,又はエポキシ樹脂(主剤,硬化剤),顔料,及び溶剤を主な原料としたものである。
 塗料種別としては,アルキルシリケートをビヒクルとした 1 液 1 粉末(亜鉛末)形の厚膜形無機ジンクリッチペイント1 種),及びエポキシ樹脂をビヒクルとした 2 液(主剤,硬化剤) 1 粉末(亜鉛末)形,又は 2 液形(亜鉛末を含む主剤と硬化剤)の厚膜形有機ジンクリッチペイント 2 種)がある。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として,容器の中での状態,加熱残分を,塗装作業に関連する規定は乾燥時間,ポットライフ,厚塗り性が,塗膜形成機能として,塗膜の外観が規定されている。
 【塗膜の品質】
 塗膜形成機能として,耐衝撃性が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性については,耐塩水噴霧性,耐水性,屋外暴露耐候性が規定されている。


品質(JIS K 5553 厚膜形ジンクリッチペイント)
  項  目   1  種(無機)  2  種(有機)
  容器の中での状態    粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  乾燥時間 h     5以下    6以下 
  塗膜の外観    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    5時間で使用できるものとする。 
  耐衝撃性(デュポン式)    衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) 
  厚塗り性    厚塗りに支障があってはならない。 
  耐塩水噴霧性    塩水噴霧に耐えるものとする。 
  耐水性    ―    水に浸したとき異常がないものとする。 
  混合塗料中の加熱残分(%)    70以上    75以上 
  加熱残分中の金属亜鉛(%)    75以上    70以上 
  屋外暴露耐候性    2年間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 

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【構造物用さび止めペイント】

 JIS K 5551 「構造物用さび止めペイント」は,橋りょう(梁),タンク,プラントなどの鋼構造物,及び鉄,鋼,ステンレス鋼,アルミニウム,アルミニウム合金の建築などの金属部分の塗装に用いる構造物用さび止めペイントについて規定されている。
 品質は,塗膜厚みと材料種の異なる A 種,B 種,及び C 種に分けられる。
 A 種は,反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 30μmの標準形塗料である。主に鋼構造物,及び建築金属部の防せいに用いられる。
 B 種は,反応硬化形エポキシ樹脂系塗料で,膜厚が約 60μmの厚膜形塗料である。これは,主に鋼構造物の長期防せい(新設時の一般外面用が多い)に用いられる。
 C 種は,反応硬化形変性エポキシ樹脂系,又は反応硬化形変性ウレタン樹脂系塗料で,標準の膜厚が約 60μmの厚膜形塗料である。主に鋼構造物の長期防せい(箱型構造の内面,塗り替え時の一般外面用が多い)に用いられる。
 なお,C 種には,常温環境下の施工で適用する C 種 1 号,及び低温環境下の施工で適用する C 種 2 号に分けられる。
 塗料の品質
 塗料性状の規定として,容器の中での状態を,塗装作業に関連する規定は塗装作業性,半硬化乾燥性(乾燥時間),ポットライフ,たるみ性が,塗膜形成機能として,塗膜の外観,上塗り適合性が規定されている。
 【塗膜の品質】
 塗膜形成機能として,耐衝撃性が規定されている。
 塗膜の性能や耐久性については,付着性,耐アルカリ性,耐揮発油性耐熱性サイクル付着性,屋外暴露耐候性が規定されている。
 なお,C種の“耐熱性”は,鋼床版下面などの用途を想定し,アスファルト敷設時の熱影響に対する抵抗性評価を目的とした特殊な試験項目である。


品質(JIS K 5551構造物用さび止めペイント)
  項  目   A 種  B 種  C1 種  C2 種
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  半硬化乾燥性    半硬化乾燥している。(常温乾燥 16時間)    低温乾燥 24時間 
  塗装作業性    支障がない。 
  塗膜の外観    正常である。 
  ポットライフ    23℃ 5時間    5℃ 5時間 
  たるみ性    ―    たるみがない。(すき間200μmで流れがない) 
  上塗り適合性    支障がない。(中塗り塗料を塗り付けて,作業性,外観などを評価) 
  耐衝撃性    割れ及びはがれがない。(デュポン式300g,500mm) 
  付着性    分類0    分類1 又は分類0(JIS K 5600-5-6) 
  耐アルカリ性    異常がない。    ― 
  耐揮発油    異常がない。    ― 
  耐熱性    ―    外観が正常である。試験後の付着性試験で分類2,分類1 又は分類0 
  サイクル腐食性    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(120サイクル) 
  塗膜中の鉛の定量
 (質量分率%) 
  0.06以下 
  塗膜中のクロムの定量
 (質量分率%) 
  0.03以下 
  屋外暴露耐候性    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(24か月) 

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【下塗り塗料のJIS品質項目】

 防食塗装用の代表的下塗り塗料として,JIS K 5674 「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」,JIS K 5553 「厚膜形ジンクリッチペイント」,及びJIS K 5551 「構造物用さび止めペイント」に採用される品質項目と試験方法をまとめて次に示す。
 塗膜の品質として,塗装後の物理的外力に対する抵抗性を評価する“耐屈曲性”,“耐衝撃性”が規定されている。厚い鋼板での用途では耐衝撃性が,薄い金属板での用途では耐屈曲性が求められる。
 水や海水・塩水などの化学的外力に対する抵抗性を評価する“耐塩水噴霧性”,“耐水性”,“耐海水性”が規定されている。
 長期間の防せい性評価のための“サイクル防食性”,大気環境における総合的な因子に対する抵抗性評価のための“屋外暴露耐候性(防せい性)”も規定されている。


下塗り塗料の品質項目と試験法
  種  別   項  目  試験方法
  成分規定
 JIS K 5674,JIS K 5551 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    JIS K 5674 の 附属書A  
  塗膜中のクロム(質量分率 %)    JIS K 5674 の 附属書B  
  成分規定
 JIS K 5553 
  加熱残分中の金属亜鉛(%)    塗料規格に定める方法 
  塗料の性状    容器の中での状態    JIS K 5600-1-1の4.1(容器の中の状態) 
  低温安定性(-5℃)   JIS K 5601-2-7の4.(低温安定性) 
  混合塗料中の加熱残分(%)    JIS K 5601-1-2 
  塗装作業性    塗装作業性    JIS K 5600-1-1の4.2(塗装作業性) 
  乾燥時間,表面乾燥性    JIS K 5600-3-2JIS K 5600-3-3 
  半硬化乾燥性    JIS K 5600-1-1の4.3.5 b)(半硬化乾燥) 
  ポットライフ    JIS K 5600-2-6 
  たるみ性    塗料規格に定める方法 
  厚塗り性    塗料規格に定める方法 
  塗膜形成機能    塗膜の外観    JIS K 5600-1-1の4.4(塗膜の外観) 
  上塗り適合性    塗料規格に定める方法 
  付着安定性    塗料規格に定める方法 
  付着性    JIS K 5600-5-6 
  耐屈曲性(円筒形マンドレル法)    JIS K 5600-5-1 
  耐衝撃性,耐おもり落下性(デュポン式)    JIS K 5600-5-3 
  塗膜の性能・耐久性    耐塩水噴霧性    JIS K 5600-7-1 
  耐水,耐海水,耐アルカリ,耐揮発油性    JIS K 5600-6-1の7.(浸漬法) 
  耐熱性    塗料規格に定める方法 
  サイクル防食性    JIS K 5600-7-9 
  屋外暴露耐候性    JIS K 5600-7-6 

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