防食概論塗装・塗料

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 ここでは,鉄道の既設の鋼橋に適用される塗替え塗装の中で,水系塗料を用い,環境負荷低減,健康影響の低減を目的とする長期耐久型の塗替え塗装系である 【一般外面・塗装系 ECO 】, 【塗装仕様】, 【厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントの品質】, 【厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料の品質】, 【水系エポキシ樹脂塗料の品質】, 【水系ポリウレタン樹脂塗料上塗の品質】 を紹介する。

 鉄道橋の防食塗装(塗替え塗装)

 一般外面・塗装系 ECO

 「塗装指針」 2013;第Ⅲ編 既設構造物 第 A2章 塗装系選択, 一般外面の塗装系

 塗替え塗装は,旧塗膜を完全除去する塗膜更新と,防食性能が健全な旧塗膜を活用するための活膜を残す塗替え塗装に分けられる。
 ここでは,一般的に実施されている活膜を残した塗替え塗装を中心に紹介する。
 塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅱ~Ⅳと判定された場合,すなわち素地調整(替ケレン 2,3,4 )で旧塗膜(活膜が残存する場合,及び塗膜劣化度 Q-Ⅰ~Ⅲと判定され部分ケレンで旧塗膜(活膜が残存する場合の塗替え塗装である。
 この場合には,適用する塗替え塗装系と旧塗膜との付着性(新・旧塗膜間の層間付着性)などの相性を確認した上で塗装系を選定する。
 なお,施工計画に際して,個々のケースでの相性確認は必要であるが,通常は,施工現場及び施工時の気象条件を検討し,水系塗料の採用が可能か否かで,塗替え塗装系が採用できる旧塗膜が分けられる。

 水系塗料を施工できる場合塗替え塗装系 ECO

 塗装系 ECO には,一般環境での長期耐久が期待できる塗装系 ECO 1 腐食性環境を含めて長期耐久の期待できるジンクリッチ系塗料を下塗りに用いた塗装系 ECO 2 の 2 種類ある。

 塗替え塗装系 ECO1

 旧塗膜:塗装系 ECO1,塗装系 G,塗装系 T,(塗装系 B,塗装系 D,塗装系 BMU1 )
 塗装系の特徴一般環境長期の防せいを期待する場合,カッコ内の中期耐久型塗装系から長期耐久型に変更する場合に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。

 塗替え塗装系 ECO2

 旧塗膜:塗装系 ECO2,塗装系 J,塗装系 JECO,塗装系 L,(塗装系 H )
 塗装系の特徴腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。

 「塗装指針」 2013;第Ⅰ編 塗装一般 第 D章 解説(塗装系の特徴), 塗装系 ECO

 塗装系 ECO は,塗替え時の環境負荷低減,及び作業者への健康影響の低減を目的に 1996年から検討し,2005年に実用化した鉄桁等鋼構造物用の長期耐久型塗装系である。
 この塗装系の中塗り,上塗りには,水系塗料を採用している。下塗りには,従来からの防食塗料として実績のある溶剤型の塗料を鋼素地の露出した部分の補修塗装に採用し,中塗りに水系エポキシ樹脂塗料を,上塗りに水系ポリウレタン樹脂塗料上塗を採用した溶剤型下塗り塗料と水系塗料を組み合わせた塗装系である。

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 塗装仕様

 【塗装系 ECO 1 】

 塗装系 ECO 1 は,これまでの塗装系 G (塗装系 T )に匹敵する防食性が期待でき,環境負荷の低減,ライフサイクルコスト低減,及び景観性向上を達成できる塗装系である。
 一般環境での長期耐久を期待できるが,塗装系 ECO 2 に比較して腐食性環境での耐久性が劣るので,塗替え時にブラストやブラストに匹敵する素地調整が可能な場合には,塗装系 ECO 1 塗装系 ECO 2 に変えて良い。
 素地調整
 替ケレン-1,2,3 (一般環境: 動力・手工具で除錆度-3 以上,腐食性環境: 腐食部の部分ブラストを推奨)
 替ケレン-4 (研磨紙等での面粗し)
 下塗り塗装
  素地調整後その日のうち(鋼露出部のみの補修塗装)
 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料: 使用量 200g/m2(刷毛・ローラ塗り)
  ①塗装後 1日以上,7日以内(鋼露出部のみの補修塗装)
 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料: 使用量 200g/m2(刷毛・ローラ塗り)
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1日以上,7日以内(全面塗装)
 水系エポキシ樹脂塗料: 使用量 220g/m2(刷毛・ローラ塗り)
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上,7日以内(全面塗装)
 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗: 使用量 120g/m2(刷毛・ローラ塗り)

 【塗装系 ECO 2 】

 塗装系 ECO 2 は,塗装系 Lや J に匹敵する防食性を得るため,第 1 層目に厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントを用いた塗装系である。
 素地調整
 替ケレン-1,2,3 (一般環境: 動力・手工具で除錆度-3 以上,腐食性環境: 腐食部の部分ブラストを推奨)
 替ケレン-4 (研磨紙等での面粗し)
 下塗り塗装
  素地調整後その日のうち(鋼露出部のみの補修塗装)
 厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント: 使用量 500g/m2(刷毛・ローラ塗り)
  ①塗装後 2日以上,1カ月以内(鋼露出部のみの補修塗装)
 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料: 使用量 200g/m2(刷毛・ローラ塗り)
 中塗り塗装
 下塗り塗装後 1日以上,7日以内(全面塗装)
 水系エポキシ樹脂塗料: 使用量 220g/m2(刷毛・ローラ塗り)
 上塗り塗装
 中塗り塗装後 1日以上,7日以内(全面塗装)
 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗: 使用量 120g/m2(刷毛・ローラ塗り)
 
 【備考】
 第 1層(厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント)の標準使用量 500g/m2 は,はけ・ローラ塗りでの限界塗付け量に近い。
 特に,替ケレン-2 や-1 のように,補修塗装対象面積が 50%やそれ以上の場合には,はけ・ローラ塗りで規定量を塗付けるためには,限界に近いので,丁寧な塗付け作業が必要になる。この場合は,作業効率が高く,容易に厚塗りが可能なエアレススプレー塗りを行なうのが良い。吹付け塗りでは塗料ロス分が異なるので,標準使用量を 700g/m2 に変更する。

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 厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイントの品質

 「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
 SPS 66053-11 厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント

 品質
 下表には,厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント塗料品質,比較のため JIS K5553 2010 「厚膜型ジンクリッチペイント」 2種(厚膜型有機)の品質を紹介する。
 JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。
厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント
  項  目    SPS 66053-11(有機)    JIS K5553( 2種有機) 
  亜鉛末(質量分率 %)    53以上    ― 
  エポキシ樹脂(質量分率 %)    3以上    ― 
  硬化剤(質量分率 %)    1以上    ― 
  溶剤(質量分率 %)    25以下    ― 
  混合塗料中の加熱残分(%)    75以上 
  加熱残分中の金属亜鉛(%)    70以上 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    0.06以下(* 1 )    ― 
  塗膜中のクロム(質量分率 %)    0.03以下    ― 
  エポキシ樹脂の定性    エポキシ樹脂を含むこと。      ― 
  容器の中での状態    粉は微小で一様な粉末であるものとする。液はかき混ぜたとき堅い塊がなくて一様になるものとする。 
  乾燥時間   6以下 
  塗膜の外観    ―    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    5時間で使用できるものとする。 
  耐衝撃性(デュポン式)    ―    衝撃によって割れ及びはがれが生じてはならない。(500g,500mm) 
  厚塗り性    厚塗りに支障があってはならない。 
  耐水性    水に浸したとき,異常がないものとする。 
  耐塩水噴霧性    塩水噴霧に耐えるものとする。 
  屋外暴露耐候性    ―    2年間の試験でさび,割れ,はがれ及び膨れがあってはならない。 
*1 塗膜中の鉛:金属亜鉛には,天然鉱物の状態で不純物として鉛が含まれていることから,金属亜鉛に含まれている鉛分は差し引いた後の値。なお,今後,金属亜鉛中の鉛分の規制が実施された場合は,その規制に従う。

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 厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料の品質

 「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
 SPS 66099-12 (1)厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料

 品質
 下表には,厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料塗料品質,比較のため JIS K 5551 2018「構造物用さび止めペイント」C種(反応硬化形変性エポキシ樹脂系塗料)の品質を紹介する。なお,C種には,常温で用いる 1号と低温で用いる 2号がある。
 JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。

厚膜型変性エポキシ樹脂系塗料
  項  目    SPS 66099-12(1)(常温用)    JIS C種 1号(常温)    SPS 66099-12(1)(低温用)    JIS C種 2号(低温) 
  顔料(質量分率 %)    20以上    ―    20以上    ― 
  変性エポキシ樹脂または 
  変性ポリオール
(質量分率 %) 
  15以上    ―    15以上    ― 
  硬化剤(質量分率 %)    3以上    ―    3以上    ― 
  溶剤(質量分率 %)    40以下    ―    40以下    ― 
  加熱残分 %    60以上    ―    60以上    ― 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    0.06以下 
  塗膜中のクロムの定量
  (質量分率%) 
  0.03以下 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  半硬化乾燥性    常温 16時間    低温 24時間 
  塗装作業性    ―    支障がない。    ―    支障がない。 
  塗膜の外観    ―    正常である。    ―    正常である。 
  ポットライフ    23℃ 5時間    5℃ 5時間 
  たるみ性    ―    たるみがない。
  (すき間200μmで流れがない) 
  ―    たるみがない。
  (すき間200μmで流れがない) 
  上塗り適合性    支障がない。 
  耐衝撃性    割れ及びはがれがない。 
  耐屈曲性    直径10mmの折り曲げに
  耐えるものとする。 
  ―    直径10mmの折り曲げに
  耐えるものとする。 
  ― 
  付着性    分類 1以下    分類 1又は分類 0 
  耐熱性    ―    160℃で 30分加熱しても,
  塗膜に異常がなく,付着性が
  分類 2以上であること。 
  ―    外観が正常である。
  試験後の付着性試験で
  分類 2,分類 1,又は分類 0 
  冷熱繰返し試験    冷熱繰返しに耐えるものとする。    ―    冷熱繰返しに耐えるものとする。    ― 
  サイクル腐食性    さび,膨れ,割れ及びはがれがない。(120サイクル) 
  屋外暴露耐候性    ―    さび,膨れ,割れ 及び
  はがれがない。(24か月
  ―    さび,膨れ,割れ及び
  はがれがない。(24か月

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 水系エポキシ樹脂塗料の品質

 水系エポキシ樹脂塗料とは,を主要な揮発成分とする乾燥膜厚 60μm が得られる厚膜型のSPS 66099-30 水系エポキシ樹脂塗料を指す。この塗料と同じ目的で用いられる JIS 塗料規格には,JIS K5551 2018 「構造物用さび止めペイント」 E種(厚膜形)がある。
 同様に,を主要な揮発成分とするエポキシ樹脂を用いた塗料には,標準形の乾燥膜厚 約 30μm が得られるSPS 66099-32 水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗,JIS 塗料規格のJIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」 B種中塗がある。

 「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
 SPS 66099-30 水系エポキシ樹脂塗料(水系厚膜型)

 下表に塗料品質を示す。なお,比較のため JIS K5551 2018 「構造物用さび止めペイント」E種(水系厚膜形)SPS 66099-32 水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」B種中塗(水系)の品質も紹介する。
 JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。

水系エポキシ樹脂塗料
青太字は,SPS 66099-30,SPS 66099-32 の品質項目
  項  目    SPS 66099-30(水系厚膜型)    JIS K 5551 E種(水系厚膜形)    SPS 66099-32(水系)    JIS K 5659 B種中塗(水系) 
  顔料(質量分率 %)    20以上    ―    20以上    ― 
  エポキシ樹脂(質量分率 %)    10以上    ―    10以上    ― 
  アミン樹脂(質量分率 %)    3以上    ―    3以上    ― 
  溶剤(質量分率 %)    水 50以下,他 10以下    ―    水 50以下,他 10以下    ― 
  混合塗料中の加熱残分 %    50以上    ―    白・淡彩は 60以上,その他の色は 50以上 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    0.06以下    - 
  塗膜中のクロム(質量分率 %)    0.03以下    - 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5±2℃)    -    変質しない。    -    変質しない。 
  表面乾燥性    常温 8 時間後,
  低温 5 ℃ 16 時間後 
  -    常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後 
  半硬化乾燥性    -    常温 16 時間後    - 
  塗装作業性    -    支障がない。    - 
  塗膜の外観    -    塗膜の外観が
  正常であるものとする。 
  -    塗膜の外観が
  正常であるものとする。 
  ポットライフ    3時間    5時間    3時間    5時間 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,
  鮮明な赤,及び黄は 50以上,
  その他の色は 80以上 
  -    白・淡彩は 90以上,
  鮮明な赤,及び黄は 50以上,
  その他の色は 80以上 
  たるみ性    -    たるみがない。    - 
  鏡面光沢度(60度)    -    70 以上 
  上塗り適合性    -    上塗りに
  支障があってはならない。 
  - 
  耐屈曲性    折曲げに耐える。    -    折曲げに耐える。 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 
  層間付着性 Ⅰ    異常がない。    -    異常がない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。    -    異常がない。 
  耐アルカリ性,耐酸性    -    異常がない。
  (水酸化カルシウム水,硫酸水) 
  初期耐水性    8時間以内(23℃)    -    8時間以内(23℃)    - 
  耐熱性    -    外観が正常である。
  試験後の付着性試験で
  分類2,分類1又は分類0 
  - 
  耐湿潤冷熱繰返し性    -    湿潤冷熱繰返しに耐える。    -    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  サイクル腐食性    -    120サイクル    - 
  屋外暴露耐候性    -    24か月    - 
 *:初期耐水性とは,塗装後23℃の室内 8時間放置した後,試験片を水と 24時間接触後に外観を観察し,変状が認められたい性質。
 上表に示すように,SPS 66099-30 と SPS 66099-32 の品質項目は同一であるが,SPS 66099-30 は,乾燥塗膜厚み 60μm が得られる添加剤,顔料を用いた塗料で,乾燥塗膜厚み 30 μm 目標の SPS 66099-32 とは異なる塗料であることを示すため,同じエポキシ樹脂を用いた水系塗料であるが,それぞれの塗料記号と塗料名称を変えている。

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 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗の品質

 水系ポリウレタン樹脂塗料には,を主要な揮発成分とするSPS 66099-31 水系ポリウレタン樹脂塗料上塗,この塗料を適用するためのSPS 66099-32 水系ポリウレタン樹脂塗料用中塗がある。この塗料と同じ目的で用いられる JIS 塗料規格には,JIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」 B種上塗 2級, B種中塗がある。

 「塗装指針」 2013;附属書 A 塗料規格及び試験方法
 SPS 66099-31水系ポリウレタン樹脂塗料上塗

 下表に塗料品質を示す。なお,比較のためJIS K5659 2018 「鋼構造物用耐候性塗料」B種上塗 2級(水系)の品質も紹介する。
 JIS 等で規定される品質の「塗装作業性」,「塗膜の外観」については,これらの品質に適合しない塗料の販売が考え難いこと,また,他の品質を検査する際にこの品質は容易に把握できることから,鉄道では,全ての塗料規格でこれらの品質を規定していない。また,実環境で 2年程度の「耐候性」(屋外暴露耐候性)を規定していない。これは,塗料成分の規定により,塗膜の機械的,化学的,及び耐久性の室内試験を行うことで,耐候性が確保できると考えているためである。

ポリウレタン樹脂塗料上塗
青太字は,SPS 66099-31 の品質項目
  項  目    SPS 66099-31(水系)    JIS K 5659 B種上塗(2級) 
  顔料(質量分率 %)    10以上    ― 
  ポリオール樹脂(質量分率 %)    15以上    ― 
  硬化剤(質量分率 %)    3以上    ― 
  溶剤(質量分率 %)    水 60以下,他 10以下     ― 
  混合塗料中の加熱残分 %    40以上    白・淡彩は 50以上,その他の色は 40以上 
  塗膜中の鉛(質量分率 %)    0.06以下    - 
  塗膜中のクロム(質量分率 %)    0.03以下    - 
  容器の中での状態    かき混ぜたとき,堅い塊がなくて一様になる。 
  低温安定性(-5±2℃)    -    変質しない。 
  表面乾燥性    常温 8 時間後,低温 5 ℃ 16 時間後 
  塗膜の外観    -    塗膜の外観が正常であるものとする。 
  ポットライフ    3時間以上    5時間以上 
  隠ぺい率    白・淡彩は 90以上,鮮明な赤,及び黄は 50以上,その他の色は 80以上 
  鏡面光沢度(60度)    70 以上 
  耐屈曲性    折曲げに耐える。( 10mmマンドレル) 
  耐おもり落下性(デュポン式)    塗膜に割れ,及びはがれが生じない。 
  層間付着性 Ⅱ    異常がない。 
  耐アルカリ性,耐酸性    -    異常がない。(水酸化カルシウム水,硫酸水) 
  初期耐水性    8時間以内(23℃)    - 
  耐湿潤冷熱繰返し性    -    湿潤冷熱繰返しに耐える。 
  促進耐候性    促進耐候①    促進耐候② 
  屋外暴露耐候性(24か月)    -    屋外暴露耐候 
 *:初期耐水性とは,塗装後23℃の室内 8時間放置した後,試験片を水と 24時間接触後に外観を観察し,変状が認められたい性質。
 促進耐候①:照射時間 500時間で塗膜に,膨れ・はがれ・割れがなく,光沢保持率は,70%以上で,色の変化の程度が見本品に比べて大きくなく,白亜化等級が 1以下とする。
 促進耐候②:照射時間 1000 時間で塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 1 又は 0,光沢保持率 80%以上。
 屋外暴露耐候:塗膜に割れ・はがれ・膨れが無く,色の変化が大きくなく,白亜化の等級が 2,1 又は 0 ,光沢保持率 40%以上。

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