防食概論塗装・塗料

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 ここでは,形成塗膜の変形に耐える性質について, 【耐屈曲性とは】, JIS規格例として【円筒形マンドレル法】に項目を分けて紹介する。

 塗料の評価(耐屈曲性)

 耐屈曲性とは

 JIS K5500「塗料用語」

 耐屈曲性(flexibility, bending resistance, flex resistance)
 塗膜が素地の変形に対し,塗膜の損傷なしで追従する性能。屈曲試験では,薄い試験板に塗装された試験片の塗膜を外にし,試験板の内側に規定される丸棒を当てて180度折り曲げた後,塗膜に表面の割れ等の損傷を調べる。【旧JIS K5500「塗料用語」】
 乾燥塗膜が塗られている素地の変形に損傷を起こさずに順応する能力。屈曲試験では,試験片を,塗膜を外に,素地の板を内側にして丸棒に沿って 180 度折り曲げ,塗膜の割れの有無を調べる。素地の板が厚いほど,丸棒の直径が小さいほど,塗膜に与えられる伸び率と,塗膜に起こる上面から下面にかけての伸び率の不均等性は大きい。塗膜がもろくなくて伸び率が大きいとたわみ性が優れていると判定される。備考 膜のたわみ性を説明するため, “elasticity” という用語を用いることは正しくない。【JIS K55002000「塗料用語」】
 
 屈曲試験は,塗装後の変形に対する追従性(柔軟性・付着性)が要求される塗料はもとより,塗装後の変形がほとんどない用途の防食塗装においても,塗膜の付着性や柔軟性確認を目的に試験されている。
 試験では,薄い試験板に塗装された試験片の塗膜を外にし,試験板の内側に規定される丸棒(マンドレル)を当てて,マンドレルに沿って折り曲げた後,塗膜表面の割れ等の損傷を調べるJIS K 5600-5-1「塗料一般試験方法−第 5 部:塗膜の機械的性質−第 1 節:耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」が採用される。。
 マンドレル(円筒形マンドレル)(cylindrical mandrel)
 マンドレル(mandrel)とは,機械加工するものを支えるための貫通する棒をいい,塗膜の耐屈曲性を評価する曲げ試験では円筒形の物が用いられる。
 
 屈曲試験を規定する JIS製品規格には,JIS K5633「エッチングプライマー」,JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」,JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」がある。

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 円筒形マンドレル法

 JIS K 5600-5-1「耐屈曲性(円筒形マンドレル法)」

 【適用範囲】
 この規格は,標準的な条件下で円筒形マンドレルにより折り曲げられた場合の,塗料,ワニス及びそれらの関連製品の塗膜の 割れ及び/又は金属 基板からのはがれの抵抗性を確認するための経験的な試験手順を記載したものである。
 多層膜系に関しては,それぞれの単独膜に分離して試験するか,多層膜全体で試験してもよい。
 規定した方法は合否試験として,ある特定の試験条件の要求に対応できるかどうかを確認するため,ある特定のサイズのマンドレルで試験を実施するか,塗膜が割れを起こすか,又は素地からはがれを起こしはじめるマンドレルの最小直径を決めるために,より小さい直径のマンドレルを使って試験手順をくりかえすかのいずれかによって実施してもよい。
 
 この規格では,2種のタイプの試験装置が用いられる。
  タイプ 1は試験板の厚さが 0.3mmまでのものに対して妥当なものであり,タイプ 2は試験板の厚さが 1.0mmまでのものに対して妥当な試験装置である。二つの試験装置は同じ塗膜に関しては類似の結果をもたらすことが確かめられているが,通常は,一つの塗料サンプルには,試験装置はどちらか一方のみが用いられる。
 折り曲げ試験装置
 タイプ1の試験装置
 厚さが 0.3mm以下の試験板に用いられる。マンドレルの直径は,2,3,4,5,6,8,10,12,16,20,25,32mm のものがある。
 マンドレルはその軸に沿って自由に回転できる。この試験装置には,試験板が折り曲げられ二つの部分が平行になるように停止板がついている。
 タイプ 2の試験装置
 厚さが 1.0mmまでの試験板に適用される。アルミニウムのような軟質の金属からなるもっと厚い試験板も,マンドレルのひずみがない場合には,この試験装置を適用できる。
 この試験装置は,マンドレルの直径が 6,10,13mmのもののうちの一つと組み合わせて用いられる。

 JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」

 試験板は,大きさ 150mm×50mm×0.3mmの鋼板 2枚とする。片面に試料をはけ塗りで 1回塗って 24時間乾燥後,120±2 ℃に保った恒温器で 1時間加熱し,標準状態で 1時間置いたものを試験片とする。
 試験装置は,タイプ 1を用い,試験片を直径 6mmのマンドレルの周りに沿って折曲げ,塗膜の割れ,及び素地からのはがれを目視によって調べる。
 判定:試験片 2枚について,目視によって評価し,塗膜に割れ・素地からの剝がれを認めないときは,“折曲げに耐える”とする。

 JIS K 5659「鋼構造物用耐候性塗料」

 試験板は,大きさ 150mm×50mm×0.3mmの鋼板 3枚とする。A種上塗り塗料は,スプレー塗りで塗装したものを試験片とする。B種上塗り塗料は,B種中塗り塗料を塗装し,標準状態で 1日放置後,上塗り塗料を塗装したものを試験片とする。
 試験装置は,タイプ 1を用い,試験片を直径 10mmのマンドレルの周りに沿って折曲げ,塗膜の割れ,及び素地からのはがれを目視によって調べる。
 判定:試験片 3枚について,目視によって評価し,塗膜に割れ・はがれを認めないときは,“折曲げに耐える”とする。

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