防食概論塗装・塗料

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 塗膜の評価(塗膜劣化評価;塗膜割れの等級)

 割れの等級

 JIS K5500「塗料用語」

 割れ(塗膜の)(crack, cracking)
 老化の結果,塗膜に現れる部分的な裂け目。ISOでは,割れの方向性の有無,発生密度,割れの幅と深さによって評価する。また,割れの形態によっても区分する。
 備考:ヘアクラック,わに皮割れ及びからす足状割れは,割れの形状の自明な例。塗膜に現れる部分的な割れの状態によって,次のように分ける。程度の低いもの,浅いものから,ヘアクラック,チェッキング,クレージング,わに皮割れ,深割れ,からす足状割れ。
 
 塗膜割れ事例
 1) 塗替え塗装で,柔軟性の高い塩化ゴム塗膜の上に,柔軟性の低い塗膜となる強溶剤(溶解性の高い溶剤)を含むエポキシ樹脂系塗料を塗り重ねたとき,数カ月から数年経過してから大きな塗膜割れに至ることが経験されている。この場合の割れは,割れ幅は広いが深さは素地にまで達することが少ない。
 2) 50 年以上前に塗装された油性系塗膜の上に複数回塗替え塗装され,過大塗膜厚になった構造物で,初期の塗膜の老化(脆化)と塗替え塗膜の内部応力により,素地に達する深い塗膜割れ(からす足状割れが多い)に至り,そのまま放置すると塗膜はがれに至ることが経験されている。

 JIS K 5600-8-4 1999「塗料一般試験方法−第8部:塗膜劣化の評価−第4節:割れの等級」(Testing methods for paints Part 8 : Evaluation of degradation of paint coatings−Section 4 : Designation of degree of cracking)
 適用範囲
 この規格は,塗膜の割れの程度を表示するための図版による基準について規定する。
 
 等級付け
 等級:割れの量
 JIS K 5600 8-1 「一般的な原則と等級」を基準にし,割れの形式によって,この規格の図の例に従って,割れの量(密度)の等級付けを行う。
 備考:規格中の図 1 は,方向性のない割れ,図 2 は,木材のような異方性の素地に起こる方向性のある割れを示している。これ以外の形式の割れも生じるが,その量の等級付けの基準は同じである。
 等級:割れの大きさ
 次の分類に従って,割れの平均の大きさを表示する。
  0 : 10 倍に拡大しても視感できない。
  1 : 倍に拡大すれは視感できる。
  2 : 正常に補正された視力でやっと認識できる。
  3 : 正常に補正された視力で明らかに認識できる
  4 : 一般的に幅 1mm に達する大きな割れ。
  5 : 一般的に幅 1mm を超える非常に大きな割れ。
 等級:割れの深さ
 できるならば,割れが貫通している塗装系の平面をレベルとして,深さを示す。
 割れの深さは,次の三つの主要な形式に区別する。
  a) 上塗りを貫通していない表面割れ。
  b) 上塗りは貫通しているが,その下の塗膜は割れなし。
  c) 全塗膜層を貫通している割れ。
 【試験報告(抜粋)】
 割れのの数値等級,割れの大きさの数値等級,割れの深さ( a,b 又は c)
 例えば,
  “割れ 2 ( S3 ) b”
 必要があれば基準表示は,例えば,“線状の割れ”と言葉によって補足してもよい。ただし,そのようなコメントの使用は,できるだけ避けなければならない。
 
 【参考】
 割れの等級(designation of degree of cracking)
 塗膜の割れの程度を,割れの形式(割れの深さ)により,a) 上塗りを貫通していない表面割れ,b) 上塗りは貫通しているが,その下の塗膜は割れなし,c) 全塗膜層を貫通している割れに分類し,それぞれについて図版を参考に,割れの密度の等級付けをすると共に,割れの平均の大きさの等級をつける。【JIS K5600-8-4「割れの等級」】
 老化(塗膜の)(ageing, aging)
 塗膜の性質が経時的に不可逆な変化をする現象。この経時的な変化には,劣化を意味する老化と品質向上を意味する熟成とがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 ヘアクラック(塗膜の)(hair cracking)
 最上層塗膜の表面だけに起こるごく細い割れ。形は不規則で,ところかまわず起こる。【JIS K5500「塗料用語」】
 チェッキング(塗膜の)(checking)
 多少規則的に乾燥膜の表面に分布する微細な割れを特徴とする割れの形態の一つ。割れの深さは,上塗り塗膜の底に達していない。【JIS K5500「塗料用語」】
 クレージング(塗膜の)(crazing)
 チェッキングに似ているが,もっと深く広い割れ。【JIS K5500「塗料用語」】
 わに皮割れ(塗膜の)(alligatoring, crocodiling)
 わに皮のようなパターンの広い割れ。クレージングの激しいもの。【JIS K5500「塗料用語」】
 深割れ(塗膜の)(deep cracks)
 少なくとも1層を貫通している,最終的には塗膜の完全な破壊につながるような割れ。【JIS K5500「塗料用語」】
 カラス足状割れ(塗膜の)(crow's foot cracking)
 カラスの足跡のようなパターンの割れ。【JIS K5500「塗料用語」】
 マドクラック,泥状割れ(塗膜の)(mud cracking)
 乾燥中に生じる深い割れ。主に顔料成分の非常に多い塗料を多孔質の素地に厚く塗装したときに起こる。【JIS K5500「塗料用語」】
 低温割れ(塗膜の)(cold cracking)
 低温に曝された塗膜に起こる割れ。【JIS K5500「塗料用語」】

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