JIS K 5601_1_2 塗料成分試験方法−第1部−第2節:加熱残分
JIS K 5601-1-2 2008年版 塗料成分試験方法−第1部:通則−第2節:加熱残分 ( Testing methods for paint components-Part 1: General rule-Section 2: Determination of non-volatile matter content )について 【序文・目次・適用範囲】, 【用語・装置・サンプリング】, 【測定の手順】, 【試験条件】, 【結果の表し方・精度】 に分けて紹介する。
序文・目次・1. 適用範囲
序文
この規格は,2003年に第 3版として発行されたISO 3251 Paints, Vanishes and Plastics - Determination of non - volatile - mater contentを基に,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
JIS規格の目次(ここでは赤字の項目を説明)
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 用語及び定義,4 装置及び器具(4.1 塗料,ワニス,バインダ及びポリマーディスパージョン用平底皿,4.2 液状架橋形樹脂(フェノール樹脂)用平底皿,4.3 乾燥器,4.4 化学はかり,4.5 デシケータ),5 サンプリング,6 測定の手順,7 試験条件,8 結果の表わし方,9 精度(9.1 繰返し精度(r),9.2 再現精度(R)),10 試験報告書
1. 適用範囲(抜粋)
この規格は,塗料,ワニス,塗料用バインダ(以下,バインダという。),ポリマーディスパージョン及び液状フェノール樹脂の加熱残分を,質量の変化から求める方法について規定されている。
この方法は,フィラー,顔料及び添加剤(増粘剤,増膜剤など)を含むディスパージョンにも適用できる。非可塑性ポリマーディスパージョン及びゴムラテックスにもこの方法が適用できるが,不揮発残さ(渣)が,試験条件下で化学的に不安定なものは適用できない。
注記 1
加熱残分は,絶対的な値ではなく,試験温度及び加熱時間によって決まる。また,この方法を適用する場合の加熱残分は,溶剤の残留,熱分解及び低分子量成分の蒸発のために,真の値でなく単に相対的なものとして得られる。従って,この方法は,同一タイプの製品の,異なったバッチの試験を意図したものである。
注記 3
実験室では,赤外線又は電磁波による乾燥によって加熱残分を測定することがあるが一般的ではない。ポリマー成分によっては,このような乾燥方法では分解する傾向にあり,不正確な結果を与えるからである。
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3. 用語・4. 装置・5. サンプリング
3. 用語及び定義
加熱残分 (non-volatile matter content)
規定条件下で,蒸発によって得られる残さ(渣)の質量分率。
不揮発残さ(渣) (non-volatile residue)
蒸発によって得られる残さ(渣)
4. 装置
4.3 乾燥器
安全に試験することができ(例えば,防爆形スイッチを用いる。),規定又は協定による温度(箇条 7「試験条件」参照)を保つ能力のある(150℃未満のときは±2℃以内であり,150℃以上 200℃未満のときは,±3.5℃以内に維持することができる。),乾燥器。
乾燥器は,強制排気装置を備えていなければならない。ただし,フェノール樹脂の場合は,乾燥器の 1/3の高さに,孔の開いた棚(例えば,パンチメタル)が付いた自然対流式の乾燥器を使ってもよい。
警告 爆発又は火災防止のために,可燃性揮発物質を含む製品は注意して取り扱わなければならない。 国の規則に従う。特に別の規定がある場合には,真空乾燥器も適用できる。この場合,条件は受渡当事者間の協定によるか,又は JIS K 6387-2「ゴムラテックス−第 2部:全固形分の求め方」に規定する方法による。
判定試験(referee tests) の場合,全当事者は同等の構造の乾燥器を用いなければならない。
5. サンプリング
塗料,ワニス及びバインダの試料は,JIS K 5600-1-2「塗料一般試験方法−第1部:通則−第2節:サンプリング」に従い,
ポリマーラテックス及びゴムラテックスの場合は,JIS K 6387-1「ゴムラテックス−第1部:サンプリング」によって試料を採取する。
その後,JIS K 5600-1-3「塗料一般試験方法−第1部:通則−第3節:試験用試料の検分及び調整」に規定する試験方法によって,塗料及びワニスを検分し,調整する
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6. 測定の手順
測定は,2回繰り返して行う。測定の手順は,次による。
a) 皿の調整及びひょう量
規定する形状・寸法の皿を脱脂,清浄にし,乾燥後,使用直前までデシケータ中に保管する。
清浄な乾燥した皿(m0)を 1mgのけたまではかる。
b) 試料のひょう量
試料を加えた皿(m1)を 1mgのけたまではかりとり,均一に広げる。揮発性の高い製品の場合には,完全に混合した試料を,栓付き瓶,ひょう量ピペット又は 10ml針なしシリンジの中にとる。
ここから試料 1±0.1gとなるように皿に加え,1mgのけたまではかりとり,皿の底に均一に広げる。
容易に広がらない高粘度の試料* などは,試料の材料に応じた適切な溶剤を 2ml加え,針金を使って均一に広げる。
なお,皿のひょう量を行うときに,針金を入れてはかる。溶剤を加えた場合,試料を入れた皿は 10分~15分間室温で静置する。
比較テストの場合,皿の試料層の厚さは一定でなければならない。このため,規定した皿(直径 75±5mm,縁の高さ 5mm以上)を用いる。
*:高粘度の試料とは,100s−1 のせん断速度で 500mPa・s以上の粘度,又はJIS K 5600-2-2「塗料一般試験方法−第2部:塗料の性状・安定性−第 2節:粘度」に合致する 6mmフローカップでフロー時間が74s以上のものをいう。
注記:加熱残分の測定では,皿に試料が短時間で均一に広げられるかどうかで,大きく影響を受ける。高粘度の場合などに,広げ方が悪いと見かけの加熱残分は高くなる。測定精度を上げるために,塗料,ワニス及びバインダを試験するときに,適切な高揮発性溶剤 2mlを加えることを推奨する。
c) 乾燥
質量を測定して,溶剤を加えた後,次に示す試験条件で示す規定の温度(又は受渡当事者間で協定した温度)に保持した乾燥器へ入れ,規定の時間(加熱時間)静置する。
d) 乾燥後のひょう量
規定の加熱時間終了後に皿をデシケータに移し,室温まで冷却する。又は,ほこりのない雰囲気の場所に置き冷却する。
皿及び残さ(渣)(m2) を 1mgのけたまではかる。
注記:デシケータを使わない場合,測定精度はデシケータを使わないことによって影響を受ける可能性がある。
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7. 試験条件
製品種別により,下表に示す試験温度,加熱時間,及び試料量の条件を満たすのが望ましい。
表は標準となる条件で,製品の特性により,受渡当事者間の合意で条件の変更ができる。
加熱時間(分) | 温度(℃) | 試料量(g) | 製品種類の例 |
---|---|---|---|
20 | 200 | 1±0.1a) | 粉末樹脂 |
60 | 80 | 1±0.1a) | ニトロセルロース,ニトロセルロースラッカー,ポリイソシアネート樹脂b) |
60 | 105 | 1±0.1a) | セルロース誘導体,セルロースペイント及びラッカー,自然乾燥塗料,ポリイソシアネート樹脂b) |
60 | 125 | 1±0.1a) | 合成樹脂(ポリイソシアネート樹脂b)を含む)焼付塗料,アクリル樹脂 |
60 | 150 | 1±0.1a) | 焼付けプライマー,アクリル樹脂 |
30 | 180 | 1±0.1a) | 電着塗料 |
60 | 135c) | 3±0.5 | 液状フェノール樹脂 |
注 b) 試験条件は,試験するポリイソシアネート樹脂のタイプによる。
注 c) 別の温度を用いてもよい。推奨する温度は,120℃又は 150℃。
加熱時間(分) | 温度(℃) | 試料量(g) | 方法a) |
---|---|---|---|
120 | 80 | 1±0.2b) | A |
60 | 105 | 1±0.2b) | B |
60 | 125 | 1±0.2b) | C |
30 | 140 | 1±0.2b) | D |
注 b) 受渡当事者間の合意によって,試料量は 1g以上にすることができる。ただし,2.5gを超えてはならない。
試料量 0.2g~0.4gで(0.1mgのけたまで)測定することもある。この場合,この表に掲げた条件下で同じ結果を得ることが確立されているならば,加熱時間は規定より縮めることができる(試験するディスパージョンのタイプによる。)。
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結果の表し方・精度
8. 結果の表し方
加熱残分 NV(質量分率)は,次の式によって算出する。
NV={(m2-m0)/(m1-m0)}×100%
ここに,NV:加熱残分 (%)
m0:空の皿の質量(g)
m1:試料及び皿の質量(g)
m2:残さ(渣)及び皿の質量(g)
二つの結果(繰返し測定)の平均値を計算し,質量分率 0.1%のけたまで報告する。
塗料,ワニス及びバインダの場合,二つの結果(繰返し測定)の差が,質量分率 2%より大きいときは,測定手順を繰り返す。ポリマーディスパージョンの場合,二つの結果(繰返し測定)の差が質量分率 0.5%以上のときは,測定手順を繰り返す。
9. 精度
9.1 繰返し精度(r)
標準化した試験方法を用いて,同一試験室の同一試験者によって,短時間の間隔で,同一試料について,別々に得られた二つの試験結果の差は,95%の確率で,塗料,ワニス及びバインダの場合,繰返し精度(r)は質量分率 2%(二つの試験結果の平均に対する比率)以内,ポリマーディスパージョンの場合,質量分率 0.6%(二つの試験結果の平均に対する比率)以内である。
9.2 再現精度(R)
標準化した試験方法を用いて,異なった試験室の異なった試験者によって,同一試料について,別々に得られた二つの試験結果の平均値間の差の絶対値は,95%の確率で,塗料,ワニス及びバインダでは質量分率 4%(二つの試験結果の平均に対する比率)以内,ポリマーディスパージョンは質量分率 1%(二つ の試験結果の平均に対する比率)以内である。
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