防食概論:塗料・塗装

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         鋼鉄道橋・塗替え塗装の基本

 塗膜更新の場合は,旧塗膜を全て除去する塗替え塗装のため,旧塗膜の種別を考慮する必要は少ない。
 しかし,一般的には,腐食面積や塗膜変状面積が小さく健全な旧塗膜が大多数を占める状況で塗替え塗装する場合は,健全な旧塗膜(活膜)を残して素地調整し,塗装する方法が採用されている。
 活膜の面積が大きい場合には,活膜に塗り重ねた部位の塗膜耐久性が向上するため,完全除去より塗替え塗装周期の延伸が期待でき,経費的に有利であると考えられている。
 このため,塗替え適正と評価された段階(替ケレン-3: さび面積 0.4%程度,旧塗膜除去面積 25%未満)では,活膜を残して塗替え塗装されるので,塗替え塗装系の選定では,旧塗膜(活膜)の種別を考慮しなければならない。
 旧塗膜と塗り重ねる塗料の組合せが悪いと,層間付着性低下リフティング(旧塗膜が塗り付けた塗料の溶剤で膨潤する現象)などの不具合に至る可能性がある。

 

【旧塗膜と塗替え塗装系(鋼構造物塗装設計施工指針)】

 塗替え塗装系の選定では,旧塗膜(活膜)の種別に従い選定することを原則としている。次には,塗替え塗装系に対し,適合する旧塗膜と塗替え塗装の特徴などを紹介する。なお,一覧中の廃止された旧塗装系については別途紹介する。素地調整種別については,「塗替え塗装」で解説する。
 塗替え塗装系 BMU
 旧塗膜:塗装系 B,塗装系 D,塗装系 BMU
 素地調整種別:除錆度-3以上,替ケレン-3(過大膜厚の場合,除錆度-3以上,替ケレン-1)
 塗装系の特徴一般環境で 10~15年程度の定期的塗り替え塗装に向く中期耐久型の塗装系である。
 塗替え塗装系 G,T
 旧塗膜:塗装系 B,塗装系 D,塗装系 G,塗装系 T,塗装系 E
 素地調整種別:除錆度-3以上,替ケレン-3(過大膜厚の場合,除錆度-3以上,替ケレン-1)
 
 塗装系の特徴一般環境で長期の防せいを期待する用途に適した塗り替え塗装仕様である。
 塗替え塗装系 L
 旧塗膜:塗装系 L,塗装系 M
 素地調整種別:部分ブラストによる除錆度-2以上,替ケレン-3が望ましい。
 塗装系の特徴腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適した塗装系である。腐食性の高い環境での素地調整は,さび除去が不完全な動力工具では早期のさび発生に至るので,部分ブラストの採用が望ましい。
 塗替え塗装系 J
 旧塗膜:塗装系 H,塗装系 J,(塗装系 K)
 素地調整種別:旧塗装系 H,Jでは,部分ブラストによる除錆度-2以上,替ケレン-3が望ましい。旧塗装系 Kでは,除錆度-2以上,替ケレン-1の塗膜全面除去が望ましい。
 塗装系の特徴腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適した景観性の高い塗装系である。腐食性の高い環境での素地調整は,さび除去が不完全な動力工具では早期のさび発生に至るので,部分ブラストの採用が望ましい。
 旧塗膜が塗装系 K(塩化ゴム系)の場合は,塩化ゴム塗膜にエポキシ樹脂塗料を塗り重ねると塗膜割れを発生するので,替ケレン-1 を適用し,旧塗膜の全面除去が必要になる。
 塗替え塗装系 ECO1
 旧塗膜:塗装系 ECO1,塗装系 G,塗装系 T,(塗装系 B,塗装系 D,塗装系 BMU1)
 素地調整種別:除錆度-3以上,替ケレン-3
 塗装系の特徴一般環境長期の防せいを期待する場合,カッコ内の中期耐久型塗装系から長期耐久型に変更する場合に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。
 塗替え塗装系 ECO2
 旧塗膜:塗装系 ECO2,塗装系 H,塗装系 J,塗装系 L
 素地調整種別:部分ブラストによる除錆度-2以上,替ケレン-3まででの適用が望ましい。
 塗装系の特徴腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。
 腐食性の高い環境での素地調整は,さび除去が不完全な動力工具では早期のさび発生に至るので,部分ブラストの採用が望ましい。腐食面積が小さい状態(替ケレン-4,替ケレン-3 程度まで)で適用するのが有利である。

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【替ケレン種別と塗替え塗装】

 「鋼構造物塗装設計施工指針」では,鋼鉄道橋の塗り替え塗装時の素地調整種別は,素地調整で露出する素地の面積で区分(替ケレン)している。
 前述の【塗替え塗装】に示したように替ケレン種で塗替え塗装方法が次のように変わる。
 替ケレン‐ 1
 旧塗膜がほとんど残存しないので,第 1 層目からの全面塗りとなる。また,ブラスト等の採用で,高い除錆度(例えば,ISO 8501-1のSa 2 以上)が期待できる場合には,塗装系の選択において,旧塗膜の種別を考慮する必要はない。
 替ケレン‐ 2 及び 3
 塗装系 BMU1,塗装系 BMU2,塗装系 G,塗装系 T,塗装系 ECO1,及び塗装系 ECO2 では,中・上塗り塗料の全面塗りが主になる。しかし,景観性能の回復が不要で,複数回の塗替え塗装が実施され,活膜として残した旧塗膜が充分な防食性能を有する場合には,経費の節減,過大膜厚化の防止を目的に,部分塗替え(補修塗り)としても良い。腐食性の高い環境では,腐食個所の素地調整に部分ブラスト処理を採用することで塗替え塗装周期を延伸できる。
 替ケレン‐ 4
 防食性能低下による塗替え塗装というより,さび発生前に防食性能の回復と補強を目的に実施する定期的塗替え塗装の構造物が対象となり,鋼の露出面積は,塗装工事中に発生した塗膜損傷部など 5%未満に抑えられる。

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【塗膜厚みの管理】

 塗替え塗装では,鋼素地露出個所の凹凸,活膜残存のため,新設時塗装で実施したような計測器を用いた塗膜厚み管理ができない。そこで,塗料の使用量を管理(空缶管理という)することで,必要とする塗膜厚みが確保できたかを評価している。
 この方法では,部位間の塗膜厚みの大きなばらつき,標準使用量以上の塗付けによる塗料不足,又は塗付け量不足による余剰塗料の発生といった事態に至ることが考えられる。
 これらを防止するために,塗装作業開始前や作業中の適当な時期に, JIS K 5600‐1‐7「膜厚」方法 No.1(ぬれ膜厚の評価)に規定するウェットフィルム膜厚計を用いて,ぬれ膜厚みを測定することで塗料使用量を確認するのが望ましい。次式から,ぬれ膜厚みから必要量の塗付けができているかを確認できる。
 
   ぬれ膜厚み(Tw:μm)塗料使用量(Vo :g/m2と塗料の密度(dw:g/ml)の関係は次式の通りである。
   Vo = Tw×dw
 
 混合後の塗料密度については,塗料種毎,塗料製造会社毎に異なるので,実施する際には,塗料製造会社に確認する必要がある。
 なお,塗装仕様における標準使用量は,塗装作業における損失分(はけ塗りで10%程度)を考慮した量となっているので,各塗料に期待する塗膜厚みに対する塗付け量(理論塗付量という)とは異なる。
 従って,上記の式で確認された塗料使用量は,塗装仕様の標準使用量×0.9程度の場合に必要な塗膜厚みを塗りつけられていると考えてよい。

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【旧塗装系(構造物塗装設計施工指針2005年以前)】

 A 塗装系(1985年まで):鉛丹さび止めペイント+長油性フタル酸樹脂塗料
 B 塗装系(2005年まで):鉛系さび止めペイント+長油性フタル酸樹脂塗料
 C 塗装系(1985年まで):鉛丹さび止めペイント+結露面用塗料
 D 塗装系(2005年まで):鉛系さび止めペイント+結露面用塗料
 E 塗装系(2005年まで):タールエポキシ樹脂塗料
 H 塗装系(2005年まで):厚膜型無機ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系塗料+ポリウレタン樹脂塗料
 K 塗装系(2005年まで):厚膜型無機ジンクリッチペイント+フェノール系 MIO塗料+(1993年以前は塩化ゴム系塗料,1993年以後はシリコンアルキド樹脂塗料)
 M 塗装系(2005年まで):無機ジンクリッチプライマー+タールエポキシ樹脂塗料

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