防食概論:塗装・塗料
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ここでは,鉄道の既設の鋼橋に適用される塗替え塗装の基本として, 【塗替え塗装の判定】, 【塗替え塗装系の選択】, 【素地調整(替ケレン種)】, 【塗膜厚みの管理】 を紹介する。
鉄道橋の防食塗装(塗替え塗装)
塗替え塗装の判定
塗膜更新の場合は,旧塗膜を全て除去する塗替え塗装のため,旧塗膜の種別を考慮する必要は少ない。しかし,一般的には,腐食面積や塗膜変状面積が小さく健全な旧塗膜が大多数を占める状況で塗替え塗装する場合は,防食機能が健全な旧塗膜(活膜)を残して素地調整し,塗装する方法が採用されている。
活膜の面積が大きい場合には,活膜に塗り重ねた部位の塗膜耐久性が向上するため,塗膜更新より塗替え塗装周期の延伸が期待でき,経費的に有利であると考えられている。
このため,塗替え適正と評価された段階(塗膜劣化度 P-Ⅲ: さび面積 0.4%程度,旧塗膜除去面積 25%未満)では,活膜を残して塗替え塗装されるので,塗替え塗装系の選定では,旧塗膜(活膜)の種別を考慮しなければならない。
特に,旧塗膜と塗り重ねる塗料の組合せが悪いと,塗膜層間の付着性低下やリフティング(旧塗膜が塗り付けた塗料の溶剤で膨潤する現象)などの不具合に至る可能性がある。
「塗装指針」 2013;第Ⅲ編 既設構造物 第 A1章 塗替え塗装の判定
塗膜調査では,各部材・部位ごとの塗膜劣化状態を見本写真と対照しつつ評価し,それぞれに評点を付ける。それぞれの評点から構造物全体としての塗膜劣化状態を評価し,塗替え塗装の要否を判定する。判定方法には,構造物全体を対象とする全面塗替え塗装要否を判定する判定法 P ,局部劣化(腐食)箇所の補修を対象とする部分塗替え塗装要否を判定する判定法 Q が用いられる。判定法 P
塗膜劣化により鋼腐食が開始しても,腐食速度が遅く,塗膜劣化が全体に広がるまで放置しても,はなはだしい局部腐食に至らず,鋼の有効断面積減少による鋼構造物の耐荷力低下に至らない架設環境(一般環境)の構造物などには判定法 P が用いられる。
判定法 P では,次に示すように,塗膜劣化度に応じて,塗替え塗装の緊急性,素地調整方法や塗装方法を 4種に分類している。
劣化度 P-Ⅳ
構造物の塗膜劣化評点 16点未満,見本写真のさび面積率 0.04%以下(JIS K 5600-8-3 さびの等級 Ri 1 相当)で,塗膜変状の多くが変色,白亜化などの美観上の劣化である。塗替え塗装は,防食性能回復より美観の回復が求められる場合に実施される。
劣化度 P-Ⅲ
構造物の塗膜劣化評点 16~24点,見本写真のさび面積率 0.4%程度(JIS K 5600-8-3 さびの等級 Ri 2 相当)で,塗膜はがれ,塗膜割れなど活膜と評価できず除去が必要な塗膜の面積率 15~25%。この時期に塗替え塗装することで,鋼板の腐食による影響を最小限に抑制でき,塗装指針で塗替え塗装の適正時期とされている。
劣化度 P-Ⅱ
構造物の塗膜劣化評点 24~32点,見本写真のさび面積率 1%程度(JIS K 5600-8-3 さびの等級 Ri 3 相当)で,塗膜はがれ,塗膜割れなど活膜と評価できず除去が必要な塗膜の面積率 30~50%。この時期まで放置することで,鋼板の腐食による影響が顕在化し構造物の寿命への影響が懸念される。塗装指針では,塗替え塗装の適正時期を経過し早急な塗替えが必要とされている。
劣化度 P-Ⅰ
構造物の塗膜劣化評点 32点以上,見本写真のさび面積率 11%程度(JIS K 5600-8-3 さびの等級 Ri 4.5 相当)で,塗膜劣化が進み,活膜として残せる旧塗膜が殆ど無く,除去される塗膜の面積率 70%以上。この時期まで放置することで,構造物の寿命に影響する腐食が懸念される。塗装指針では,手工具,動力工具,ブラスト処理を併用した塗膜更新が適切とされている。
判定法 Q
腐食性の高い環境では,塗膜の初期欠陥部等の周辺塗膜より性能の劣る局所的な塗膜変状が原因で,局所的で鋼材内部に向かう腐食進行により,孔食や鋼板厚み減少が想定される。この状況に至る塗膜劣化度の判定は,上述の判定法 P では困難である。そこで,腐食性の高い環境で長期耐久型塗装系を用いた構造物では,局所的な塗膜変状の発生程度で評価する判定法 Q が用いられる。
なお,判定法 Q は,鉄けた等鋼構造物に生じる腐食拡大や板厚方向への腐食進行に対して,部分的に塗り替える場合に用いられる。
劣化度 Q-Ⅲ
部分的にさび及び膨れ(さび膨れ)が少し発生している状態で,塗装指針で塗替え塗装の適正時期とされている。
劣化度 Q-Ⅱ
部分的にさび及び膨れ(さび膨れ)がある程度発生している,又は進行しつつある状態で,塗装指針では塗替え塗装の適正時期を経過し早急な塗替えが必要とされている。
劣化度 Q-Ⅰ
部分的にさび及び膨れ(さび膨れ)がかなり発生している,又は進行している状態で,塗装指針では塗替え塗装の適正時期を経過し直ちに塗替えが必要とされている。
【参考】
JIS K 5600-8-3「さびの等級」
1) さびの量(密度)による等級 等級:さびの面積(%)
Ri 0: 0% ,Ri 1: 0.05% , Ri 2: 0.5% , Ri 3: 1% , Ri 4: 8% , Ri 5: 40~50%
JIS K 5600-8-5「はがれの等級」
1) はがれの量(密度)の等級 等級:面積(%)
0: 0% , 1: 0.1% , 2: 0.3% , 3: 1% , 4: 3% , 5: 15%
鋼道路橋の塗替え判定
鋼道路橋の塗替え塗装判定基準とは著しく異なるので注意が必要である。
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塗替え塗装系の選択
「塗装指針」 2013;第Ⅲ編 既設構造物 第 A2章 塗装系選択 一般外面の塗装系
塗替え塗装は,旧塗膜を完全除去する塗膜更新と,防食性能が健全な旧塗膜を活用するための活膜を残す塗替え塗装に分けられる。塗膜更新(旧塗膜の全面除去)
次の 2つの場合が考えられる。一つは,塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅰと判定された場合,すなわち活膜として残せる旧塗膜がほとんどなく,素地調整種別として替ケレン‐1 を適用する場合である。この場合には,旧塗膜が残存していないので,第 1層目からの全面塗装となるので,それまでの塗装仕様を踏襲することも他の塗装系に変えることも可能である。二つ目は,これまでに適用してきた塗装系とは異なる塗装系に変更する場合である。この場合には,塗り替える塗装系に求められる素地調整方法を用いて,活膜を含めて旧塗膜を全面除去することが基本となる。
活膜を残して塗替え(旧塗膜の一部除去)
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅱ~Ⅳと判定された場合,すなわち素地調整(替ケレン 2,3,4 )で旧塗膜(活膜)が残存する場合,及び塗膜劣化度 Q-Ⅰ~Ⅲと判定され部分ケレンで旧塗膜(活膜)が残存する場合の塗替え塗装である。この場合には,適用する塗替え塗装系と旧塗膜との付着性(新・旧塗膜間の層間付着性)などの相性を確認した上で塗装系を選定する。
なお,施工計画に際して,個々のケースでの相性確認は必要であるが,通常は,施工現場及び施工時の気象条件を検討し,水系塗料の採用が可能か否かで,次に示すように,塗替え塗装系が採用できる旧塗膜が分けられる。
水系塗料を施工できる場合
塗替え塗装系 ECO1旧塗膜:塗装系 ECO1,塗装系 G,塗装系 T,(塗装系 B,塗装系 D,塗装系 BMU1 )
塗装系の特徴:一般環境で長期の防せいを期待する場合,カッコ内の中期耐久型塗装系から長期耐久型に変更する場合に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。
塗替え塗装系 ECO2
旧塗膜:塗装系 ECO2,塗装系 J,塗装系 JECO,塗装系 L,(塗装系 H )
塗装系の特徴:腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適し,水系塗料を用いた環境負荷低減型塗装系である。
水系塗料を施工できない場合
塗替え塗装系 BMU旧塗膜:塗装系 BMU,(塗装系 B,塗装系 D )
塗装系の特徴:一般環境で 10~15年程度の定期的塗り替え塗装に向く中期耐久型の塗装系である。
塗替え塗装系 G,T
旧塗膜:塗装系 G,塗装系 T,(塗装系 B,塗装系 D,塗装系 E )
塗装系の特徴:一般環境で長期の防せいを期待する用途に適した塗り替え塗装仕様である。
塗替え塗装系 L
旧塗膜:塗装系 L,(塗装系 M ,塗装系 G,T の部分塗装)
塗装系の特徴:腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適した塗装系である。腐食性の高い環境での素地調整は,さび除去が不完全な動力工具では早期のさび発生に至るので,部分ブラストの採用が望ましい。
塗替え塗装系 J
旧塗膜:塗装系 J,塗装系 JECO,(塗装系 H,塗装系 K ,塗装系 G,T の部分塗装)
塗装系の特徴:腐食性の高い環境,又は/及び長期の防せいを期待する用途に適した景観性の高い塗装系である。腐食性の高い環境での素地調整は,さび除去が不完全な動力工具では早期のさび発生に至るので,部分ブラストの採用が望ましい。
旧塗膜が 1993年以前の塗装系 K(塩化ゴム系)の場合は,塩化ゴム塗膜にエポキシ樹脂塗料を塗り重ねると塗膜割れを発生するので,替ケレン-1 を適用し,旧塗膜の全面除去が必要になる。
なお,塗装系 K は,1993年の「塗装指針」改訂で,上塗り塗料が塩化ゴム塗料からシリコンアルキド樹脂塗料に変更されている。
【参考】
旧塗装系(2005年以前に廃止された塗装系)
A 塗装系(1985年まで):鉛丹さび止めペイント+長油性フタル酸樹脂塗料
B 塗装系(2005年まで):鉛系さび止めペイント+長油性フタル酸樹脂塗料
C 塗装系(1985年まで):鉛丹さび止めペイント+結露面用塗料
D 塗装系(2005年まで):鉛系さび止めペイント+結露面用塗料
E 塗装系(2005年まで):タールエポキシ樹脂塗料
H 塗装系(2005年まで):厚膜型無機ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂系塗料+ポリウレタン樹脂塗料
K 塗装系(2005年まで):厚膜型無機ジンクリッチペイント+フェノール系 MIO塗料+(1993年以前は塩化ゴム系塗料,1993年以後はシリコンアルキド樹脂塗料)
M 塗装系(2005年まで):無機ジンクリッチプライマー+タールエポキシ樹脂塗料
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素地調整(替ケレン種)
「塗装指針」 2013;第Ⅲ編 既設構造物 第 A4章 塗装施工 1 素地調整( 1.2 素地調整方法)
「鋼構造物塗装設計施工指針」では,塗替え塗装における下塗り塗料の補修塗り(タッチアップ)面積に応じて,次の区分を規定している。タッチアップ面積は,さび箇所の素地調整作業で,健全部の塗膜を含めて除去するので,一般的にさび面積の数十倍にまで広がる。替ケレン- 1
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅰと評価された場合,何らかの要因で塗膜更新が必要になった時に適用される。
手工具,動力工具,又はブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。腐食性の高い環境では,残存さびが無いように入念なさびの除去(例えば,ISO 8501-1のSa 2 以上)が求められる。
替ケレン‐ 2
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅱと評価され,活膜を残して塗替え塗装する場合に適用される。
手工具,動力工具,又は部分ブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。下塗り塗料を用いる補修塗り(タッチアップ)面積の目安 30~ 50%(見本写真のさび面積約 1%),腐食性の高い環境では,残存さびが無いように入念なさびの除去(例えば,ISO 8501-1のSa 2 以上)が求められる。
替ケレン‐ 3
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅲと評価され,活膜を残して塗替え塗装する場合に適用される。
手工具,動力工具,又は部分ブラストを用いて“さび,劣化塗膜”を除去する。下塗り塗料を用いる補修塗り(タッチアップ)面積の目安 15~ 25%(見本写真のさび面積約 0.4%),腐食性の高い環境では,残存さびが無いように入念なさびの除去(例えば,ISO 8501-1のSa 2 以上)が求められる。
替ケレン‐ 4
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 P-Ⅳと評価され,景観性の向上を目的に塗替え塗装する場合に適用される。
ワイヤブラシ,及び研磨紙等を使用し,表面の粉化物や汚れを除去する。必要により手工具,動力工具を用いる。塗料の準備において,下塗り塗料は,表面の清掃作業で素地に達する傷を付ける可能性を含めて点さび(さび面積 0.04%)の除去として最大 5%の補修塗り(タッチアップ)面積を見込むのが良い。)
部分ケレン
塗膜調査の結果で塗膜劣化度 Q-Ⅰ,Ⅱ,Ⅲと評価され,塗膜劣化部のみの部分塗替え塗装する場合に適用される。
部分ブラストの使用を原則とする。ブラストできない場合は,手工具,動力工具を用いることになるが,この場合もブラストと同程度の残存さびが無い除せい度(例えば,ISO 8501-1のSa 2 以上)が得られるように入念なさび除去が求められる。
【参考】
素地調整(surface preparation, cleaning)
塗料の付着性及び防せい効果をよくするために,機械的又は化学的に被塗装物体表面を処理し,塗装に適するような状態にすること。ケレンともいう。【 JIS Z 0103「防せい防食用語」】
ケレン(cleaning, hand cleaning)
素地調整と同義語。【 JIS Z 0103「防せい防食用語」】
cleanの転訛(てんか)した陶工用語,鋼橋塗装,建築塗装等で鉄部のさびた部分をスクレーパ-等で除去すること。【(社)色材協会編「塗料用語辞典」】
塗替え塗装時に行う素地調整作業を替ケレンともいう。
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塗膜厚みの管理
塗替え塗装では,塗装面に腐食による凹凸や活膜が残存するため,塗装面が平滑な新設時塗装で実施したような計測器を用いた乾燥塗膜厚みの計測ができない。そこで,塗料の使用量を管理(空缶管理という)することで,必要とする塗膜厚みが確保できたかを評価している。
この方法では,部位間の塗膜厚みの大きなばらつき,標準使用量以上の塗付けによる塗料不足,又は塗付け量不足による余剰塗料の発生といった事態に至ることが考えられる。
これらを防止するために,塗装作業開始前や作業中の適当な時期に, JIS K 5600‐1‐7「膜厚」方法 No.1(ぬれ膜厚の評価)に規定するウェットフィルム膜厚計を用いて,ぬれ膜厚みを測定することで塗料使用量を確認するのが望ましい。次式から,ぬれ膜厚みから必要量の塗付けができているかを確認できる。
ぬれ膜厚み(Tw:μm),塗料使用量(Vo :g/m2)と塗料の密度(dw:g/ml)の関係は次式の通りである。
Vo = Tw×dw
混合後の塗料密度については,塗料種毎,塗料製造会社毎に異なるので,実施する際には,塗料製造会社に確認する必要がある。
【参考】
乾燥膜厚(塗料)(dry-film thickness)
塗料乾燥後の膜厚。【JIS K5600-1-7「膜厚」】
当該規格には,乾燥膜厚の測定に使用する機械式測定法(mechanical methods),質量法(gravimetric method, difference in mass,),光学的方法(optical methods),磁気法(magnetic methods),放射線法(radiological method)及び音響法(acoustic method)が規定されている。
機械式測定法には,マイクロメータなどを用いた塗膜除去箇所との厚さの違いによる厚さの差法(difference in thickness),塗膜除去箇所の深さ計を用いたデプスゲージ法(depth gauging),表面粗さ計と同様の原理で,塗膜除去箇所の触針走査で求める表面輪郭の走査(surface profile scanning)ある。
重量法には,質量法(difference in mass)があり,光学的方法には,塗膜断面を成形し拡大観察する断面法(cross-sectioning),一定角度で斜めに切削した塗膜の幅を計測して三角関数を用いて深さを求めるくさび形切削法(wedge cut)がある。
磁気法には,永久磁石と強磁性の素地との間の磁気吸引力を測定する磁気プルオフ膜厚計(magnetic pull-off gauge),強磁性の素地に電磁石が接近するときに磁場中で起こる電磁誘導による磁気誘導膜厚計(megnetic-induction gauge),導電性素地中の高周波渦電流によって生じた磁場の変化かラ求める渦電流膜厚計(eddy-current gauge)がある。
放射線法には,素地からの放射線反射を利用するβ線後方散乱法(beta backscatter method)があり,音響法には,音波の伝達時間差を利用する超音波膜厚計(ultrasonic thickness gauge)がある。
ぬれ膜厚(wet-film thickness)
塗装直後の未乾燥状態での膜厚。【JIS K5600-1-7「膜厚」】
当該規格には,ぬれ膜厚を求める方法として,機械式測定法(mechanical methods)と重量法(gravimetric method, difference in mass,)が規定されている。
機械式測定法には,“くし形ゲージ”(comb gauge),“ロータリー形ゲージ”(wheel gauge),がある。
“くし形ゲージ”(comb gauge)では,板の両端の一対の歯の内側に隙間の異なる歯列があり,塗料によってぬれる歯の最も大きいギャップの読みから塗料の厚みを求める。
“ロータリー形ゲージ”(wheel gauge)には,円筒に同じ直径で同軸となる 2つの枠と直径が小さく偏心している枠の 3つの枠があり,外側の枠の一方には,目盛が刻まれており,偏心枠の数値は,同心枠の目盛と対比して読み取ることができる構造を持つ。枠を転がし塗料で濡れている偏心した枠の最も高い目盛の値からぬれ厚みを求める。
重量法によるぬれ膜厚は,揮発性の高い成分の量が少ない液状の塗料に対し,塗料使用量を,塗料の密度及び塗装された面積で除すことで求める。塗料使用量は,被塗物の重量増加量から求められる。
塗付け量(理論塗布量)と標準使用量
塗付け量(application rate)は,理論塗付量ともいい,規定の作業条件で,単位面積に規定の厚さの乾燥塗膜を作るのに必要な塗料の量。一般に,g/m2,ml/m2,試験では,g/100cm2,ml/100cm2 で表す。塗り面積(spreading rate)の項参照。)【JIS K5500「塗料用語」】
なお,塗装仕様における標準使用量は,塗装作業における損失分(はけ塗りで 10%程度)を考慮した量をいう。すなわち,適切な施工で,理論塗布量を確保するために準備すべき塗料の量と考えることができる。
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