JIS K 5600_4_1 塗料一般試験方法‐第4部‐第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)
JIS K 5600-4-1 1999年版 塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用) (Testing methods for paints−Part 4 : Visual claracteristics of film−Section 1 : Hiding power (for light-coloured paints))について 【序文・目次・適用範囲】, 【原理・装置・試料】, 【手順】 に分けて紹介する。
序文・目次・適用範囲
序文
この規格,1998年に発行されたISO/FDIS 6504-3 Paints and Varnishes−Determination of hiding power −Part 3 : Determination of contrast ratio (opacity) of light-coloured paints at a fixed spreading rateを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
塗料の隠ぺい率を測定するためには,試験塗膜の調整,及び測定に関する次に規定する二つの方法から一つを選択する。
a) 無色透明のポリエステルフィルムへ塗装する方法,その塗装したフィルムは黒と白のガラス板上に順次固定する。
b) 黒と白の試験紙,例えば隠ぺい率試験紙,又はモレストチャート(Morest charts)へ直接塗装する方法。
同じフィルムアプリケータを用いても,操作者が異なる場合は,著しく異なった膜厚の塗膜が得られるので,隠ぺい力の測定は,絶対的な方法が要求される。
幾つかの国の専門家グループ間の共同研究の結果,2個,又は 2個以上の膜厚測定率の内挿によって精密に一定した補完によって正確な塗り面積に対応した隠ぺい率の測定によって,再現性のある結果が得られることが判った。
この規格で選ばれた塗り面積とは 20m2/リットル(ぬれ膜厚 50μm)であり,平滑な非多孔質面上に,流れのない塗料をはけ塗りした場合の平均的な値である。
しかし,他の膜厚範囲で通常に用いられる特殊の塗料,例えば工業用塗料及び印刷インキについては,受渡当事者間でその他の塗り面積を協議して定めてもよい。
さらに,行われた共同研究の結果,ポリエステルフィルム上に塗布した塗膜は,隠ぺい率試験紙上に塗布した塗膜よりも高い再現精度が得られることが判明した。しかし,隠ぺい率試験紙上に塗布する方法の方が操作は簡単であった。この規格は,これらの二つの方法のいずれにも対応できる。
JIS規格の目次(ここでは赤字の項目を説明)
序文,1 適用範囲,2 引用規格,3 原理,4 装置(4.1 素地,4.2 フィルムアプリケータ(複数),4.3 反射率系又は分光光度計,4.4 試験板),5 試料,6 手順(6.1 素地の調整,6.2塗装するポリエステルフィルム又は隠ぺい率試験紙の調整,6.3 養生,6.4 三刺激値Yの測定,6.5 乾燥塗膜の面密度の測定,6.6 ぬれ膜厚及び塗り面積の計算,6.7 塗り面積 20m2/λの隠ぺい率の測定),7. 精度,8. 試験報告
1 適用範囲
この規格は,白又は三刺激値 Yが 25を超える淡彩色塗料を,規定の隠ぺい率試験紙又は無色透明のポリエステルフィルムに,塗り面積 20m2/リットルで塗布し,次いで,ポリエステルフィルムの場合は規定の白黒ガラス板上で,その塗膜の三刺激値 Yを測定する塗膜の隠ぺい力(隠ぺい率測定による)測定方法について規定する。
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原理・装置・試料
3 原理
この方法は,白又は淡彩色塗料が正常な方法で塗装される場合,ある限定した膜厚の範囲において,隠ぺい率は塗り面積の逆数に対する近似的な一次関数であるという研究に基づいている。
したがって,異なった膜厚で得た結果からもグラフ,又は計算によって,十分に正確な内挿が可能である。
ぬれ膜厚は,十分に正確な測定をすることが,通常はできないので,この方法は,単位面積当たりの乾燥塗膜質量を測定し,その測定値に対応するぬれ膜厚を計算で求めている。
このぬれ膜厚の計算には,生塗料(wet paint)の密度及び加熱残分の質量百分率の値が必要である。これらの値の測定は,関連した規格の方法に基づかなければならない。しかしながら,JIS K 5601-1-2「塗料成分試験方法‐第1部:通則‐第2節:加熱残分」による加熱残分の測定は,ある種類の塗料に関して,現行試験方法の条件下では,その乾燥過程の塗膜の質量変化に正確に対応をしていないということが認められている。
この差異によって導入されるすべての誤差は,すべての試験室に対して共通であり,同種類の塗料の比較に影響を及ぼさない。
4 装置
4.1 素地
4.1.1 方法 A(ポリエステルフィルム)
大きさが 100mm×150mm以上,厚さが 30μm~50μmの無処理,無色透明のポリエステルフィルム。これより厚いフィルムは,受渡当事者間の合意によって使用してもよい。
4.1.2 方法 B(隠ぺい率試験紙)
隠ぺい率試験紙は,すべて,100mm×200mm以上の同じ大きさで,隣接して白部と黒部が印刷され,かつワニスが塗布されていて,溶剤又は水で希釈された塗料で容易にぬれるが浸透されないもの。
白部と黒部は,それぞれ 80mm×80mm以上の大きさでなければならない。別に協定がないならば,隠ぺい率試験紙の黒部の三刺激値Yは,後に規定する反射率計,又は分光光度計を用いて,試験紙の白部を測定したとき 80±2,黒部の三刺激値 Yは 5以下でなければならない。
隠ぺい率試験紙のロット間の誤差を除くために,試験に用いられる隠ぺい率試験紙は同一のロットを使用しなければならない。
4.2 フィルムアプリケータ(複数)
通常,約 50μm~100μmの範囲の厚さで,均一なぬれ膜を作る一連のフィルムアプリケータを使用する。
使用する素地にかかわらず,塗布した膜は,少なくとも 70mmの幅がなければならないし,各面積が 60mm×60mm以上の部分については,均一な厚さとする。
自動アプリケータの使用で,均一な膜が容易に塗布されるので,自動アプリケータを使用することが推奨される。
4.3 反射率計又は分光光度計
三刺激値Yを 0.3%以内の正確さで測定する反射率計,又は分光光度計を使用する。標準光源は D65を使用することが望ましい。
入射光束と受光器間の相対的な幾何学的配置が Yの測定に影響するということは認められている。
測定結果に疑義が生じた場合は,拡散/8°における表面反射を含む幾何学的条件を使用しなければならない。
表面反射を考慮して測定した三刺激値 Yから数理的に 4を減じなければならない(JIS K 5600-4-5「塗料一般試験方法‐第4部:塗膜の視覚特性‐第5節:測色(測定)」参照)。
4.4 試験板
白と黒のガラス板,それぞれのガラス板は平らで磨いた面をもち,その大きさは少なくとも 80mm×80mmとする。
規定する反射率計,又は分光光度計で測定する場合の白板の三刺激値 Yは 80±2,黒板の三刺激値 Yは 5以下としなければならない。
白と黒のガラス板は,その背面からの反射光を除くために,2枚ともにその背面及び端部を黒色塗料,又は粘着テープで被覆する。
5 試料
JIS K 5600-1-2 「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第2節:サンプリング」に規定するとおり,試験される製品の代表試料を採取する。
誘料は JIS K 5600-1-3「塗料一般試験方法‐第1部:通則‐第3節:試験用試料の検分及び調整」に規定するとおり,試験用試料を検分し,調整する。
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6 手順
6.1 素地の調整
6.1.1 方法 A(ポリエステルフィルム)
未塗装のポリエステルフィルムについて,その塗装する面の近接部分を保持し,次の操作から一つを選んで,ポリエステルフィルムを塗装のために調整する。
a) 厚さ 6mm以上の平らなガラス板上にフィルムを平らに置く。この場合,ガラス板は,表面張力でこのフィルムを保持するのに丁度足りる程度の 2~3滴のホワイトスピリット(生成ペトロール,ホワイトガソリン)で,最初に湿らしておく。
この液体が,フィルムの表面の表側をぬらさないように注意し,また空気の泡がフィルムの下に閉じこめられないように注意しなければならない。
b) フィルムの一端を固定して,平らなゴム台上に置く[この場合,バーコータ(spiral applicator)を使用する]。
6.1.2 方法 B(隠ぺい率試験紙)
隠ぺい率試験紙は,塗装前に少なくとも 24時間,積み重ねせずに 1枚ずつ,試験条件[温度 23±2℃,相対湿度 50±5%]下で保管し,塗装する部分に指紋が付着するのを避けるために,常に端部をもって取り扱わなければならない。
隠ぺい率試験紙は 1mgのけたまで質量をはかる。6枚の隠ぺい率試験紙は,塗布用とし,2枚の隠ぺい率試験紙は,空試験用として保管する。
この 6枚の隠ぺい率試験紙は,次の三つの方法から一つを選んで,塗装用に調整する。
a) 留め具又は粘着テープで,一端を少なくとも厚さ 6mmの平らなガラス板に固定する方法。
b) 平らな(±2μm以内)真空吸引盤を用いる方法。
c) 一端を固定して,平らなゴム台上に置く(この場合,バーコータを使用する。)。
6.2 塗装するポリエステルフィルム又は隠ぺい率試験紙の調整
塗装直前に,チキソトロピー構造を完全に破壊するために,強くかくはんして,空気の泡が混入しないように注意して,塗料を十分に混合する。
フィルム又は隠ぺい率試験紙の一端に,必要とする膜厚に応じて2mlから4mlの塗料を線状に置き,均一膜が得られるように一様な速度で適切なアプリケータを引き下ろして,直ちに塗り広げる。
通常約50μm~約100μmの範囲のぬれ膜厚を作る3個の異なったアプリケータを選び,その3個のアプリケータを用いて各一対の膜(合計6個)を調整する。
乾燥するまでは,塗装したフィルム,又は隠ぺい率試験紙を,例えば平らな面に,その端部をテープで固定して置くなどして,水平に保持する。
乾燥時間(及び焼付け条件)は,試験する塗料の種類によって異なる。この乾燥時間(又は焼付け条件)は受渡当事者間で協定しなければならない。
6.3 養生
別に協定がない場合,三刺激値 Yを測定する前に,乾燥した塗布済みフィルム又は隠ぺい率試験紙,及び空試験用フィルム又は隠ぺい率試験紙を少なくとも 24時間,23±2℃,相対湿度 50±5%に保つ。
6.4 三刺激値 Y の測定
6.4.1 方法 A(ポリエステルフィルム)
各塗装したフィルムは一対の白と黒のガラス板上に固定するが,このフィルムの下側とガラス板の間に 2,3滴のホワイトスピリットを入れて空気膜を除き,光学的な接触を確実にする。
白(YW)と黒(YB)のガラス板上の 4か所以上で,各塗装済みのフィルムの三刺激値 Yを測定し,平均の三刺激値 YW及び YBをそれぞれ計算する。それから,各塗布済みフィルムの隠ぺい率 YB/YWを百分率で計算する。
6.4.2 方法 B(隠ぺい率試験紙)
各隠ぺい率試験紙の白及び黒部上の 4か所以上で,各塗布済み隠ぺい率試験紙の三刺激値を測定し,平均の三刺激値YWとYBを計算する。それから,各塗布済み隠ぺい率試験紙の隠ぺい率YB/YWを百分率で計算する。
6.5 乾燥塗膜の面密度の測定
6.5.1 方法 A(ポリエステルフィルム)
ガラス板から塗布済みフィルムをはがし,このフィルムを拭ってホワイトスピリットを少しのこん(痕)跡も残らないように除き,そのまま放置して乾燥させる。
例えば,精度のよい打型によって,各塗装済みポリエステルフィルムの中央から少なくとも 60mm×60mm以上の大きさの等しい部分を切り取る。同様に,未塗装の空試験用ポリエステルフィルムからは 2個の試料を少なくとも 60mm×60mm以上の大きさの等しい部分を切り取る。
その切り離した部分は 1mgのけたまで質量をはかる。
塗装済みポリエステルフィルムの平均質量及び未塗装ポリエステルフィルムの 2個の試料の平均質量を計算する。
乾燥塗膜面密度ρA(g/mm2)は,次の式によって算出する。
ρA=(m2‐m1)/A
ここに,m1:未塗装ポリエステルフィルムの 2個の試料の平均質量(g)
m2:塗布済みのポリエステルフィルムの平均質量(g)
A:各ポリエステルフィルムの切り離した部分の面積(mm2)
6.5.2 方法 B(隠ぺい率試験紙)
例えば精度のよい打型によって,空試験用及び塗布済み隠ぺい率試験紙の各中央から 60mm×60mm以上の大きさの等しい部分を切り取る。その切り離した各部分を 1mgのけたまで質量をはかる。
乾燥塗膜面密度ρA(g/mm2)は,次の式によって算出する。
ρA={m4‐(m3×m2/m1)}/A
ここに,m1:空試験用隠ぺい率試験紙(2枚)の平均質量(g)
m2:塗布前の隠ぺい率試験紙の最初の平均質量(g)
m3:空試験用隠ぺい率試験紙の切り離した部分の平均質量(g)
m4:塗布済み隠ぺい率試験紙の切り離した部分の平均質量(g)
A:各隠ぺい率試験紙の切り離された部分の面積(mm2)
備考:空試験用及び塗布済み隠ぺい率試験紙が同等に変化すると仮定するならば,この操作は水分の変動に基づく隠ぺい率試験紙の質量変化の影響を取り除いている。
6.6 ぬれ膜厚及び塗り面積の計算
乾燥塗膜の面密度からぬれ膜厚を計算するためには,JIS K 5600-2-4「塗料一般試験方法‐第2部:塗料の性状・安定性‐第4節:密度」に規定する方法によって得られる生塗料の密度,及び JIS K 5601-1-2「加熱残分」に規定する方法を用いて加熱残分(質量)が必要である。
6.6.1 ぬれ膜厚
ぬれ膜厚(mm) tは,次の式によって算出する。
t=105×ρA/(ρ×NV)
ここに,ρ:塗料の密度(g/ml)
NV:加熱残分(質量%)
6.6.2 塗り面積
6.6.2.1方法 A(ポリエステルフィルム)
塗り面積 SR(m2/リットル)は,ぬれ膜厚(mm)の逆数であり,次の式によって示される。
SR=1/t=10-5×(ρ×NV)/ρA
前記の面密度の式を用いることによって,
SR=10-5×(A×ρ×NV)/(m2‐m1)
6.6.2.2 方法 B(隠ぺい率試験紙)
塗り面積 SR(m2/リットル) はぬれ膜厚(mm)の逆数であり,次の式によって示される。
SR=1/t=10-5×(ρ×NV)/ρA
面密度の式を用いることによって,
SR=10-5×(A×ρ×NV)/ {m4‐(m3×m2/m1)}
6.7 塗り面積 20m2/リットルの隠ぺい率の測定
膜厚の限定された範囲では,隠ぺい率は塗り面積の一次関数であるとみなされる。したがって,6個の塗膜の 3組から得られた隠ぺい率かそれに対応する塗り面積の数値は,グラフに描くことができる。
塗り面積 20m2/リットルの隠ぺい率は,線形内挿によって測定する。グラフを描くためには,少なくとも 3種類の膜厚が必要である。一次関数の関係が成立する範囲では,この計算は,実験データから塗り面積に関する隠ぺい率の回帰関係を計算することによって,比較的容易に算出される。
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