防食概論:塗装・塗料
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ここでは,上塗り塗膜の品質として重要な色に関する【視覚特性とは】, 【色とは】 に項目を分けて紹介する。
塗膜の評価(視覚特性)
視覚特性とは
視覚特性(塗膜の)(visual characteristics of film)
人の目に入った光が刺激となり生じる感覚(視覚)の中で,数値化できる色情報や明度情報で関連付けられる塗膜の特性。
視覚(vision)
眼に放射が入ることによって生じる外界の明るさ,色,形状,動きなどを認める感覚及び知覚。【 JIS Z8113 「照明用語」】
塗料・塗膜の JIS試験規格には,視覚特性として,下地の色を覆い隠す能力を意味する隠ぺい力の測定,塗膜の色を感覚的に比較する色の目視比較,塗膜の色を定量的に比較するための測色,色差の求め方,表面の平滑性や“つや”の程度などを定量的に比較する鏡面光沢度の求め方が規定されている。
これらの特性は,主に上塗り塗膜の表面色(surface color)に関連する特性を評価するときに必要となる。
また,“色差”や“鏡面光沢度”は,上塗り塗膜の経時的な変化の評価でも用いられる。この場合の鏡面光沢度は,絶対値ではなく,初期値からの変化率(光沢保持率)で評価される。
例えば,“耐アルカリ性”,“耐酸性”を評価するための試験では,試験結果の判定を“色の変化”で行い,“耐湿潤冷熱繰返し性”評価のための試験結果の判定に“光沢保持率”が用いられている。
長期耐久性を評価する品質項目の“促進耐候性”では,“色の変化”,“光沢保持率 “,及び“白亜化の等級”を評価に採用している。
品質項目“屋外暴露耐候性”においても,品質規定条件として,“光沢保持率”と“白亜化の等級”を規定している。
この節では,“隠ぺい力”,“鏡面光沢度”,“色の目視比較”,“測色(色差の計算)”に関するJIS 試験規格を紹介する。
【参考】
表面色(対象物の)(surface color)
表面から拡散的に反射又は放射しているように知覚される色。【JIS Z8105「色に関する用語」】
隠ぺい力(塗膜の)(hiding power)
塗料が素地の色又は色差を覆い隠す能力。黒と白とに塗り分けて作った下地の上に,同じ厚さに塗ったときの塗膜について,色分けが見えにくくなる程度を,見本品の場合と比べて判断する。【JIS K5500「塗料用語」】
測色(colorimetry)
表色系で必要な色表示に用いられる諸量を測定すること。
色差(color difference)
色の知覚的な相違を定量的に表したもの。【JIS K5500「塗料用語」】
二つの色の間に知覚される色の隔たり,又はそれを数量化した値。【JIS Z8105「色に関する用語」】
色の距離ともいわれ,2 つの色の知覚的な相違を定量的に表したもの。一般的には,国際照明委員会 (CIE) の CIE Lab色空間におけるユークリッド距離として計算(CIELAB色差式)される色差が用いられる。
鏡面光沢度(specular gloss, specular reflection, relative-specular glossiness, mirror surface glossiness)
面の入射光に対して,等しい角度での反射光,すなわち鏡面反射光の基準面における同じ条件での反射光に対する百分率。面の光沢の程度を表す。光沢度が比較的大きい塗面では,法線に対して入射角 60度,反射角 60度で測る。これを 60度鏡面光沢度という。鏡面光沢度の基準面として屈折率 1.567 のガラスの平面を用いる。【JIS K5500「塗料用語」】
光沢(gloss, luster)
光の反射(能力)で特徴付けられる表面の(光学的)性質。【JIS K5500「塗料用語」】
表面の方向選択特性のために,諸物体の反射ハイライトが,その表面に写り込んで見えるような見えのモード。【JIS Z8105「色に関する用語」】
光沢度(glossiness)
正反射光の割合や,拡散反射光の方向分布などに注目して,物体表面の光沢の程度を一次元的に表す指標。【JIS Z8105「色に関する用語」】
白亜化(塗膜の)(chalking)
膜の成分の一つ又はそれ以上が劣化して膜の表面に微粉がゆるく付着したような外観になる現象。【JIS K5500「塗料用語」】
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色とは
JIS Z8105「色に関する用語」
色(色彩)(color)a) 知覚色(perceived color); 有彩色成分と無彩色成分との組合せから成る視知覚の属性。
備考 黄,オレンジ,赤,ピンク,緑,青,紫などの有彩色名,若しくは白,灰,黒などの無彩色名を明るい,暗いなどで修飾したもの,又はこれらの色名の組合せによって記述される。
b) 心理物理色(psychophysical colour); 三刺激値のように,算出方法が規定された 3個の数値による色刺激の表示。色刺激値ともいう。
知覚色,心理物理色とも,文脈から意味が明確な場合に限って,用語“色”又は“色彩”だけを用いてよい。
有彩色(chromatic color)
色相をもつ(知覚)色。
備考 日常会話では,多くの場合,色は有彩色を意味する。 着色された (coloured)という場合の色は,通常,有彩色を意味する。
無彩色(achromatic color)
色相をもたない(知覚)色。
例 白,灰,黒;無色(透過物体について)
明度(value, lightness)
同様に照明されている白又は透過率が高い面の明るさと比較して,相対的に判断される対象面の明るさ。
彩度(クロマ)(saturation, chroma)
ある面について,それと同様に照明された,完全な白又は高い透過率に見える面の明るさと比較して表した色み。
備考 与えられた観測条件及び明所視の範囲内の輝度レベルに対して,与えられた色度で,与えられた輝度率の(反射物体の)色刺激は,非常に明るい場合を除いて,あらゆる照度レベルに対してほぼ一定の彩度を示す。同じ環境で,一定の照度レベルでは,(物体の)輝度率を増加すれば,通常,彩度は増加する。
三刺激値(tristimulus values)
与えられた三色表色系において,試料の色刺激と等色にするための 3 個の原刺激の量。
備考 2種類の CIE 表色系では,三刺激値は記号 X,Y,Z 及び X10,Y10,Z10 で表す。
三色表色系(trichromatic system)
適切に選ばれた 3個の原刺激の加法混色による等色に基づいて,色刺激を三刺激値によって記述する体系。
参考 特定の (R), (G), (B) の原刺激を用いた三色表色系を変換して,CIE(国際照明委員会)の XYZ 表色系及び X10,Y10,Z10 表色系が定められている。
XYZ 表色系とは,CIE 1931 (標準)表色系 (CIE 1931 standard colorimetric system (XYZ) )といい,CIE が 1931年に採択した原刺激 [X], [Y], [Z] 及び CIE 等色関数 x (λ) ,y (λ) ,z (λ) を用いて,任意の分光分布の三刺激値を決定する表色の体系。
色刺激(colour stimulus)
色刺激目に入って,有彩又は無彩の色感覚を生じさせる可視放射。
可視放射(可視光)(visible radiation, light)
目に入って,視感覚を起こすことができる放射。光線という概念で用いる場合は可視光線という。一般に可視放射の波長範囲の短波長限界は 360~400nm,長波長限界は 760~830nm にあると考えてよい。【JIS Z 8120「光学用語」】
JIS K5500「塗料用語」
有彩色(chromatic color)赤・黄・青のような,色相をもった色。
無彩色(achromatic color)
白・灰色・黒のような,色相のない色。
明度(value, lightness)
物体表面の反射率が,他に比べて多いか,少ないかを判定する視感覚の属性を尺度としたもの。色の明るさについていう。
彩度(クロマ)(saturation, chroma)
物体表面色の,同じ明るさの無彩色からの隔たりに関する,視知覚の属性を尺度としたもの。色のさえ。色の鮮やかさ。
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