防食概論塗装・塗料

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 ここでは,塗料の品質(塗り重ねの可否)について, 【上塗り適合性とは】, 【下塗り塗料での扱い】, 【中塗り塗料での扱い】に項目を分けて紹介する。

 塗料の評価(上塗り適合性)

 上塗り適合性とは

 

 JIS K5500「塗料用語」

 上塗り適合性(overcoatability)
 ある塗料の塗膜の上に,決められた塗料を塗り重ねたときに,塗装上の支障が起こらず,正常な組合せ塗膜層が得られるための,塗り重ねられる下地塗膜の性状
 
 すなわち,下塗り塗料の規格では,指定する中塗り塗料を塗り重ねたときの下塗り塗料の品質中塗り塗料の規格では,指定する上塗り塗料を塗り重ねたときの中塗り塗料の品質で,評価・判定は,“塗装作業性”と“塗膜の外観”で行われる。
 品質試験方法は,JIS K 5600-3-4 「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第4節:製品と被塗装面との適合性」を基本として,下塗り塗料及び中塗り塗料のそれぞれの製品規格に規定されている。
 なお,紫外線などの自然の影響を受けた下地塗膜との付着性に着目した場合には,別項で紹介する層間付着性という。
 
 防食塗装に用いられる塗料で上塗り適合性が規定されているのは,
 下塗り塗料では,JIS K5674「鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント」,及びJIS K5551「構造物用さび止めペイント」である。
 中塗り塗料では,JIS K5516「合成樹脂調合ペイント」,及び JIS K5659「鋼構造物用耐候性塗料」に規定される中塗りである。

 JIS K 5600-3-4 「第4節:製品と被塗装面との適合性」

 【序文】
 この規格は,1981 年に第 1版として発行された ISO 4627, Paints and varnishes−Evaluation of the compatibility of a product with a surface to be painted −Methods of test を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
 この規格は,製品と被塗装面との適合性の評価の手順について規定するものであり,規定する試験方法は,次の補足情報によって行う。この情報は,試験対象製品に関する規格,若しくはその他の文書から引用するか,又は,それが適切な場合には試験を行う受渡当事者間での取決めを条件にするべきである。
  a) 試験対象の製品又は塗膜系は,実験室若しくは現場の手順のいずれか,又は両方によって試験をしなければならない。
  b) 試験対象の製品又は塗膜系は,未塗装の,特殊な処理をした,塗装された(エージングしていない。)又は塗装された(エージングした。)素地のいずれかに適用する。
 ・・・ 以下 c)~m) 省略 ・・・
 【適用範囲】
 この規格は,素地,及び塗料又は塗膜系の適合性の評価のための手順について規定する。
 試験対象の素地は,実用上の素地,すなわち未塗装のもの,特殊な処理をしたもの,又は塗装後の老化を受けたものなどがある。
 この方法は,実験室又は “現場” 双方の塗装,及び評価についての適切な手順を定義する。
 用語の定義
 適合性(素地と製品) (compatibility)
 素地に塗装される製品の,不具合な結果をもたらさない性能。

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 下塗り塗料での扱い

 JIS K5674 鉛・クロムフリー鉛さび止めペイント

 7.9 上塗り適合性の試験は,次による。
 試験板: 大きさ 200mm×100mm×0.8mmの SPCC-SBの鋼板とする。
 試験片の作製
 片面に試料をはけ塗りで 1回塗り,48時間乾燥後,上塗り塗料を乾燥膜厚で 20μm~30μm になるようにはけで 1回塗り重ねて 48時間乾燥したものを試験片とする。
 上塗り塗料は,1種(溶剤系)の場合は,JIS K5516「合成樹脂調合ペイント」に規定する合成樹脂調合ペイント 1種白を,2種(水系)の場合は,JIS K 5660「つや有合成樹脂エマルションペイント」に規定するつや有合成樹脂エマルションペイント白を用いる。
 原状試験板は,1種の場合,別の試験板に同じ上塗り塗料だけを同じ方法で塗装した後,48時間乾燥したもの,2種の場合,JIS G 3303の電気めっきぶりき板( SPTE5.6/5.6/T-2;寸法 200mm×100mm×0.3mm )に同じ上塗り塗料だけを同じ方法で塗装した後,48時間乾燥したものとする。
 評価
 試験片を拡散昼光の下で目視によって観察する。判定は,塗装作業に支障がなく,試験片の上塗り塗膜に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めず,原状試験片に比べて,つやの差異,粘着及びしわの程度が大きくないとき,更に 2種の場合は,フラッシュさびがないとき,“支障がない”とする。
 なお,塗膜の観察項目は,別項の「塗膜の外観」で紹介した。

 JIS K5551 構造物用さび止めペイント

 7.11 上塗り適合性の試験は,次による。
 a) 試験板: 大きさ 150mm×70mm×0.8mmの SPCC-SBの鋼板 2 枚とする。
 b) 試験片の作製
 試験板 1枚に試料を吹付け塗りで 1回塗装し,48時間置いたものに,溶剤系のA種B種及び C種の場合には JIS K 5659 「鋼構造物用耐候性塗料」に規定する 溶剤系の A種中塗り塗料を,水系のD種及び E種の場合には,JIS K 5659に規定する 水系の B種中塗り塗料を上塗り塗料として,乾燥膜厚 25μm~35μm になるように吹付け塗りする。
 同時に,別の試験板 1 枚に,同じ中塗り塗料を同じ塗装方法で塗装したもの,すなわち鋼板に中塗り塗料のみを塗り付けた試験片を原状試験片とする。
 c) 評価,及び判定
 判定は,次を満足するとき“支障がない”とする。
 1) 中塗り塗料の上塗り作業(「塗装作業性」)に支障がない。
 2) 中塗り塗料を上塗り後 48 時間置いて,塗膜の外観を目視によって観察したとき,上塗りした塗膜(中塗り塗膜)にはじき,割れ,穴,膨れ,及びはがれを認めない。
 3) 中塗り塗料を上塗り後 48 時間置いた試験片と,同時に作製した原状試験片とを比べ,指触によって粘着の程度,及び目視によってしわの程度が大きくない。
 なお,塗膜の観察項目は,別項の「塗膜の外観」で紹介した。

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 中塗り塗料での扱い

 JIS K5516 合成樹脂調合ペイント

 7.12 上塗り適合性の試験は,JIS K 5600-3-4 によるほか,次による。
 a) 試験板: 大きさ 200mm×100mm×0.8mmの SPCC-SBの鋼板とする。
 b) 試験片の作製: 試料をはけ塗りによって 1回塗りした後,水平に置いて標準状態で 24時間乾燥したものを試験片とする。
 c) 試料:上塗りに用いる試料は,2種上塗り用とする。
 d) 試験方法:試験片の塗面に,c) の試料をはけ塗りによって塗り重ねて,水平に置き標準状態で 24時間乾燥した後,上塗り塗膜を観察する。また,別の試験板に 1回塗りし,標準状態で 24時間乾燥させたものを原状試験片とする。
 e) 評価及び判定:試験片の塗り重ね作業に支障がなく,上塗り塗膜に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めず,原状試験片に比べて,つや,粘着及びしわの差異が大きくないとき,“支障がない”とする。
 なお,塗膜の観察項目は,別項の「塗膜の外観」で紹介した。
 

 JIS K5659 鋼構造物用耐候性塗料

 7.11 上塗り適合性の試験は,次による。
 a) 試験板
 A種に用いる試験板は, 大きさ 200mm×100mm×0.8mmの SPCC-SBの鋼板とする。
 B種に用いる試験板は,溶剤洗浄によって調整した,大きさは 200mm×100mm×2mm の板ガラスとする。
 b) 試験片の作製「塗膜の外観」の評価に適合した中塗り塗料の試験片に,上塗り塗料を吹付け塗りによって塗り重ねる。別に,試験板 1枚の片面に同じ上塗り塗料を同じ方法で塗装したものを原状試験片とする。
 c) 試験方法: 試験方法は,上塗り塗料を塗り重ねるときに「塗装作業性」を観察し,塗装後 48時間静置した後,外観を観察する。
 d) 評価及び判定: 上塗り塗装作業に支障がなく,目視による外観の観察によって,上塗り塗膜に,はじき,割れ,穴,膨れ及び剝がれを認めず,原状試験片に比べて,つや,粘着及びしわの程度の差異が大きくないときは,上塗り適合性は,“支障がない”とする。
 なお,塗膜の観察項目は,別項の「塗膜の外観」で紹介した。

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