JIS Z 2371  塩水噴霧試験方法

 JIS Z2371  2000年版,2015年版  塩水噴霧試験方法 ( Methods of salt spray testing )を  【序文・目次・適用範囲・用語】,   【試験用の塩溶液】,   【装置】,   【装置の再現性検証】,   【試験片・配置】,   【試験条件・試験時間】,   【試験中の注意事項,試験後の処理・結果】,  
 【附属書:装置の一例】,   【附属書:装置の再現性の検証方法】,   【附属書:有機被膜をもつ試験片の作製】,   【附属書:レイティングナンバ法】,   【附属書:腐食生成物の除去方法】 に分けて紹介する。

 序文・目次・適用範囲・用語

 2012 年に改訂された ISO 9227との整合を図るため,これまで紹介していた 2000年版の JIS 規格が 2015年に改定された。構成と表現が大幅に変更されたので,2015年版を中心に紹介し,該当する項目の 2000年版を併記した。
 
 序文
  2015年版
 この規格は,2012年に第 3版として発行された ISO 9227(Corrosion tests in artificial atmospheres−Salt spray tests)を基とし,技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
  2000年版
 この規格は,1990年に第 1版として発行された ISO 9227を元に,作成した日本工業規格であるが,対応国際規格に対して,規定項目,規定内容を追加し,また,規定する照合試験片の実験結果が規定値を満足しないことから,その一部を不採用にした。
 
 JIS規格の目次(ここでは青字の項目を説明)
  2015年版
 序文,1 適用範囲,2 引用規格, 3 用語及び定義4 試験用の塩溶液(4,1 試験用の塩溶液の調整,4.2 試験用の塩溶液の pH 調整,4.3 懸濁物のろ過), 5 装置(5.1 一般,5.2 構成部品の保護,5.3 噴霧室,5.4 温度制御,5.5 噴霧装置,5.6 噴霧液採取容器,5.6 装置の再使用), 6 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法(6.1 一般,6.2 中性塩水噴霧試験,6.3 酢酸塩水噴霧試験,6.4 キャス試験), 7 試験片(7.1 試験片の取り扱い,7.2 試験片の大きさ,7.3 試験片の調整), 8 試験片の配置9 試験条件10 試験時間11 試験中の注意事項12 試験後の試験片の処理13 試験結果の表し方, 14 試験報告書
  附属書 A(参考)噴霧液の排出及び排水の処理装置をもった装置の一例 附属書 B(参考)腐食性に関わる装置の再現性の検証方法(亜鉛の照合試験片)附属書 C(規定)塗膜などの有機被膜をもつ試験片の作製, 附属書 JA(参考)試験片の置き方及び位置, 附属書 JB(参考)腐食生成物の除去方法附属書 JC(規定)レイティングナンバ法
  2000年版
 序文,1 適用範囲,2 引用規格, 3 装置4 試験片5 試験片の調整6 試験中の試験片の角度及び位置7 試験用塩溶液(7,1 試験用塩溶液の調整方法,7.2 pH調整), 8 供給空気9 噴霧室の条件10 装置の再使用11 試験装置の再現性の試験方法(11.1 中性塩水噴霧試験,11.2 酢酸塩水噴霧試験,11.3 キャス試験), 12 試験の開始13 試験の継続14 試験時間15 試験後の試験片の取り扱い16 判定方法, 17 記録
 参考表1 化学的腐食生成物除去方法参考表2 電解による腐食生成物除去方法附属書1(規定)レイティングナンバ法附属書 2(参考)装置の構造, 附属書 3(参考)試験片の置き方及び位置
 
 1 適用範囲
  2015年版
 この規格は,金属材料,及びめっきなどの無機皮膜又は塗膜などの有機被膜を施した金属材料の耐食性試験として,中性塩水噴霧試験酢酸酸性塩水噴霧試験及びキャス試験を行う場合,必要となる塩溶液,試験装置及び手法(腐食性に関わる装置の再現性の検証方法,試験片,試験条件,試験結果の表し方など)について規定する。
 警告 この規格に基づいて試験を行う者は,通常の試験室での作業に精通していることを前提とする。この規格は,その使用に関して起こる全ての安全上の問題を取り扱おうとするものではない。この規格の利用者は,各自の責任において,安全及び健康に対する適切な措置をとらなければならない。
  2000年版
 この規格は,金属材料,又はめっき,無機皮膜若しくは有機皮膜を施した金属材料の耐食性試験を中性塩水噴霧試験(NSS),酢酸塩水噴霧試験(AASS)又はキャス試験(CASS)方法によって行う場合,必要となる装置,試薬,手法及び判定方法について規定する。
 
 3 用語及び定義 2015年版
 この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
 中性塩水噴霧試験,NSS(neutral salt spray test)
 塩水噴霧試験装置などを使用して,中性の塩化ナトリウム溶液を噴霧した雰囲気において,耐食性を調べる試験。
 酢酸酸性塩水噴霧試験,AASS(acetic acid salt spray test)
 塩水噴霧試験装置などを使用して,酢酸を添加した酸性の塩化ナトリウム溶液を噴霧した雰囲気において,耐食性を調べる試験。
 キャス試験,CASS(copper-accelerated acetic acid salt spray test)
 塩水噴霧試験装置などを使用して,酢酸を添加した酸性の塩化ナトリウム溶液に,さらに,塩化銅(II)二水和物を加えた溶液を噴霧した雰囲気において,耐食性を調べる試験。

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 試験用塩溶液

  2015年版
 4 試験用塩溶液
 4.1 試験用の塩溶液の調製
 試験用の塩溶液の調製は,次による。
  a)  試験用の塩溶液の塩は,JIS K 8150「塩化ナトリウム(試薬)」に規定する特級の塩化ナトリウム又はこれと同等以上の塩化ナトリウムを用いる。
 なお,同等以上の塩化ナトリウムとは,原子吸光分析法又はこれと同じ精度のその他の分析方法で測定した場合,銅含有量が質量分率 0.001%未満,及びニッケル含有量が質量分率 0.001%未満とする。さらに,よう化ナトリウムが質量分率 0.1%を超えないか又は乾燥塩換算で不純物総量が質量分率 0.5%を超えてはならない。固結防止剤は,腐食の促進又は抑制として働く懸念があるため含有してはならない。
  b)  水は,25℃±2℃で電気伝導率 20μS/cm以下の脱イオン水又は蒸留水を用いる。なお,電気伝導率を 1μS/cm以下にすることが望ましい。
  c)  樹脂などの不活性な材料の容器に a)の塩及び b)の水を入れ,濃度が 50g/L±5g/Lになるように溶解して,塩溶液とする。十分にかくはん(撹拌)し,25℃±2℃にした後,比重計で測定し,比重を 1.029~1.036にする。塩溶液の濃度の測定は,塩濃度計などの他の電気的測定器を用いて確認してもよい。なお,この範囲を外れたときには,再度調製する。
 注記 1  調製した塩溶液の pH が,25℃±2℃で pH 5.0~8.0でない場合は,塩溶液を再度調製する。
 注記 2  水中のシリカ成分が高い場合,試験結果に影響を与える可能性がある。
 4.2 試験用の塩溶液の pH調整
 4.2.1 中性塩水噴霧試験
 中性塩水噴霧試験用の塩溶液は,4.1 で調製した塩溶液を用いる。塩溶液の pH は,噴霧室内で噴霧して採取した塩溶液(以下,噴霧液という。)が 25℃±2℃で pH 6.5~7.2の範囲に調整しなければならない。pHは,JIS K 8576「水酸化ナトリウム(試薬)」に規定する特級の水酸化ナトリウムの溶液又は JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する特級の塩酸を添加し,よくかくはんしてから pHを測定し調整する。
 pH の測定は,25℃±2℃で JIS Z 8802「pH測定方法」によって行う。なお,日常の確認では,0.2目盛間隔で読み取りが可能な pH 試験紙を用いて,pH の値を調べてもよい。
 注記  水酸化ナトリウムの溶液及び塩酸の濃度は,0.1 mol/L を用いることが望ましい。
 4.2.2 酢酸塩水噴霧試験
 酢酸酸性塩水噴霧試験用の塩溶液の pHの調整は,次の手順による。
  a)  JIS K 8355「酢酸(試薬)」に規定する特級の酢酸を,4.1で調製した塩溶液 1L当たり 1mL添加し,よくかくはんしてから pHを測定する。
  b)  試験用の塩溶液の pHが 25℃±2℃で 3.0~3.1でない場合は,JIS K 8355 に規定する特級の酢酸又はJIS K 8576「水酸化ナトリウム(試薬)」に規定する特級の水酸化ナトリウムの溶液を更に追加して,よくかくはんしてから pHを再度測定する。
  c)  これを繰り返して,25℃±2℃で pHを 3.0~3.1に調整する。
  d)  噴霧室内で噴霧して採取した噴霧液の pHが,25℃±2℃で,3.1~3.3の範囲にあることを確認する。pHの測定は,25℃±2℃で JIS Z 8802「pH測定方法」によって行う。
 注記  水酸化ナトリウムの溶液の濃度は,0.1mol/Lを用いることが望ましい。
 4.2.3 キャス試験
 キャス試験用の塩溶液の pHの調整は,次の手順による。
  a)  JIS K 8145「塩化銅 (II) 二水和物(試薬)」に規定する特級の塩化銅(II)二水和物を,4.1で調製した塩溶液 1L当たり 0.26g±0.02g溶解させる。この溶液は,塩化第二銅 0.205g/L±0.015g/Lに相当する。
  b)   JIS K 8355「酢酸(試薬)」に規定する特級の酢酸を,塩溶液 1L当たり 1mL添加し,よくかくはんしてから pHを測定する。試験用の塩溶液の pHが 25℃±2℃で 3.0~3.1でない場合は,さらに,JIS K 8355 に規定する特級の酢酸又は JIS K 8576「水酸化ナトリウム(試薬)」に規定する特級の水酸化ナトリウムの溶液を追加して,よくかくはんしてから pHを再度測定する。
  c)  これを繰り返して,25℃±2℃で pHを 3.0~3.1に調整する。
  d)  噴霧室内で噴霧して採取した噴霧液の pHが,25℃±2℃で,3.1~3.3の範囲にあることを確認する。pHの測定は,25℃±2℃で JIS Z 8802「pH測定方法」によって行う。
 注記  水酸化ナトリウムの溶液の濃度は,0.1mol/Lを用いることが望ましい。
 4.3 懸濁物のろ過
 試験用の塩溶液は,噴霧前に懸濁物があってはならない。よくかくはんしても懸濁物が消失しない場合には,ろ紙などを用いてろ過したものを用いる。噴霧塔又は噴霧ノズルの開口部を詰まらせる懸念がある場合は,装置の塩溶液補給タンク内に入れる前に塩溶液をろ過して固形物を取り除く。
 
  2000年版
 7 試験用塩溶液
 7.1 試験用塩溶液の調製方法
 塩溶液の調製方法は,次による。
 a) 塩
 JIS K 8150「塩化ナトリウム(試薬)」に規定する特級の塩化ナトリウム,又は同等以上とする(注)。
 :同等以上とは,塩化ナトリウムを原子吸光分析法,又は同じ精度のその他の分析方法で測定した場合,銅含有量 0.01g/kg未満,ニッケル含有量 0.01g/kg未満とする。さらに,よう化ナトリウムが 1.0g/kgを超えないか又は乾燥塩換算で不純物総量が 5.0g/kgを超えてはならない。
 b) 水
 25±2℃で電導率 20μS/cm以下の脱イオン水,又は蒸留水とする。なお,電導率を 1μS/cm以下にすることが望ましい。
 c) 調製方法
 a)の塩をb)の水に溶かして,塩濃度 50±5g/lに調製する。調製結果は,比重計を用いて密度を測定し,25℃で 1.029~1.036の範囲にあることを確認する。なお,この範囲を外れたときには再調製する。
 7.2 pH調節
 7.2.1 中性塩水噴霧試験
 試験用塩溶液は,噴霧前に懸濁物がなく(注1),噴霧したときに採取した噴霧液が pH 6.5~7.2の範囲にあるようにしなければならない(注2)。
 pHの調節に際しては,必要によってJIS K 8576「水酸化ナトリウム(試薬)」に規定する水酸化ナトリウム又は JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する塩酸のそれぞれ 0.1mol/l水溶液を用いる。
 pHの測定は,25±2℃で JIS Z 8802「pH測定方法」によって行う。なお,日常の確認では,0.3の位まで読み取りが可能なpH試験紙を用いて pHを調べてもよい。
 注 1: よくかき混ぜても懸濁物が消失しないときには,ろ紙などを用いて,ろ過したものを用いる。
 注 2: 試験用塩溶液を 35℃で噴霧したときに採取した噴霧液の pHが 6.5~7.2の範囲に入るようにするには,次の方法がある。
  a)  塩溶液のpHを室温で調節し,35℃で噴霧する場合,その採取液の pHは,溶液中の溶存二酸化炭素の揮散によって,元の溶液の pHより一般に高くなる。したがって,塩溶液の pHを 25±2℃で調節する場合には,pHを約 6.5に保つ。
  b)  塩溶液を約 30秒間静かに煮沸した後,25℃に冷却するか,又は 35℃で 48時間維持した後,pHを調節する。
  c)  35℃以上に加熱して二酸化炭素を含まない水( JIS K 0557「用水・排水の試験に用いる水」の 4.の備考4.)を用いて塩溶液を調製し,pHを調節する。
 7.2.2 酢酸塩水噴霧試験
 試験用塩溶液は,噴霧前に懸濁物がなく,噴霧したときに採取した噴霧液が pH 3.1~3.3になるように,JIS K 8355「酢酸(試薬)」に規定する酢酸を十分に加える。採取液の pHを規定の範囲に入れるようにするためには,塩溶液の pHを当初 3.0~3.1に調節すればよい。
 pHの測定は,25±2℃で JIS Z 8802「pH測定方法」によって行い,必要に応じて JIS K 8355「酢酸(試薬)」に規定する酢酸又は JIS K 8576「水酸化ナトリウム(試薬)」に規定する水酸化ナトリウムを適宜追加して補正をする。
 なお,日常の確認では 0.1の位まで読み取り可能な pH試験紙を用いて pHを調べてもよい。
 備考:酢酸及び水酸化ナトリウムは,0.1mol/l水溶液を用いることが望ましい。
 7.2.3 キャス試験
 試験用塩溶液1リットルにつき,塩化銅(II) 0.205+0.015g(JIS K 8145「塩化銅 (II) 二水和物(試薬)」 に規定する塩化銅(II)二水和物 0.26±0.02g)を加える。次に酢酸塩水噴霧試験に規定する方法によってpHを調節する。

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 装置

  2015年版
 5 装置
 5.1 一般
 この試験に必要な装置は,噴霧塔又は噴霧ノズル,塩溶液貯槽,試験片保持器,噴霧液採取容器などを備えた噴霧室,塩溶液補給タンク,圧縮空気供給器,空気飽和器,温度調節装置,排気ダクトなどで構成し,次による。
  a)  装置は,試験が正常に行えるように維持・管理しなければならない。
  b)  排気ダクトは,外気の風圧の影響を受けないようにしなければならない。
  c)  装置は,試験後の噴霧液を大気に放出する前に,環境保全のため適切に処理できるとともに,噴霧液を処理した水を排水設備に排水する前に適切に処理できる設備をもっていることが望ましい(附属書 A 参照)。
 5.2 構成部品の保護
 塩溶液及び噴霧液と接触する全ての構成部品(噴霧室,試験片保持器など)は,塩溶液及び噴霧液の腐食性に影響を与えたり,それ自体が腐食するような材料であってはならない。
 5.3 噴霧室
 噴霧室は次による。
  a)  噴霧室は,噴霧室内の噴霧液及び温度の分布が均一に調整できれば,噴霧室の形及び大きさは任意でよい。ただし,噴霧室の容積が 0.4 m3よりも小さい場合は,噴霧及び温度の分布に十分注意する必要がある。
  b)  噴霧塔又は噴霧ノズルは,プラスチックなどの不活性な材料でなければならない。また,噴霧室の上部から噴霧液を試験片に均等に噴霧する性能をもつものとする(附属書 A 参照)。
  c)  噴霧は,噴霧液の自由落下とし,噴霧液が試験片に直接かからない方向に噴霧塔又は噴霧ノズルを調節する。噴霧塔は,この目的に適している。噴霧室の天井にたまった噴霧液の滴が,試験片の上に落ちてはならない。
  d)  噴霧室内の噴霧液及び温度は,外気の影響を受けないものとする。
  e)  試験片保持器は,試験片を規定の角度に保持できるものとする1)
 1)  試験片保持器の材料は,プラスチックなどの不活性な材料又はそれらで被覆された材料とし,試験片の底裏又は側面から保持するのがよい。試験片が規定の位置に保たれるならば,ガラスかぎ又はビニルひもでつるしてもよく,この場合,必要であれば試験片の底を保持する。
 5.4 温度制御
 噴霧室内の試験片保持器付近の温度は,中性塩水噴霧試験及び酢酸酸性塩水噴霧試験の場合は 35℃±2℃,キャス試験の場合は 50℃±2℃に保たなければならない。温度の測定は,壁から少なくとも 100mm以上離した位置とする。
 5.5 噴霧装置
 噴霧装置は次による。
  a)  塩溶液を噴霧するための噴霧塔又は噴霧ノズルへ送る圧縮空気は,油及びほこりが除去されており,圧力が 70 kPa~170kPaの範囲でなければならない。なお,圧力は,98 kPa±10kPaに保つことが望ましい。
  b)  噴霧液からの水の蒸発を防ぐために,噴霧塔又は噴霧ノズルへ送る圧縮空気は,加湿器又は空気飽和器の中を通過させて加湿しなければならない。また,噴霧塔又は噴霧ノズルへ送る圧縮空気は,塩溶液と混合したとき,噴霧室内の温度が著しく乱れないように加熱しなければならない。圧縮空気の加湿及び加熱を制御するために,空気飽和器を用いることが望ましい。表 1(省略)に,空気飽和器における圧縮空気の圧力と空気飽和器内の水の温度との組合せの目安値を示す。
  c)  噴霧塔又は噴霧ノズルへ送る圧縮空気を加湿する加湿器又は空気飽和器に使用する水は,4.1 b)(試験用の塩溶液の調整)による。注記 水中のシリカ成分が高い場合,ヒータ及び水位センサの性能に影響を与える可能性があるので注意する。
  d)  噴霧塔又は噴霧ノズルに供給する塩溶液は,連続的,かつ,均一な噴霧となるように保持しなければならない。噴霧を安定させるためには,塩溶液貯槽内の塩溶液の液面高さを制御するか,又は噴霧塔若しくは噴霧ノズルに供給する塩溶液の流れを制御する。
 5.6 噴霧液採取容器
 噴霧液採取容器は,次による。
  a)  噴霧液を採取する噴霧液採取容器は,プラスチックなどの不活性な材料でなければならない。
  b)  噴霧液採取容器は,水平採取面の直径約 100mm,面積約 80cm2の清浄な容器とし,噴霧の均一性が確認できるような 2か所以上の位置に置く。例えば,試験片の近くで,一つは噴霧塔又は噴霧ノズルの近くに,他の一つは遠い所に置く。
  c)  噴霧液採取容器は,噴霧室の天井及び試験片にたまった噴霧液の滴の落下ではなく,噴霧塔又は噴霧ノズルからの噴霧液だけを採取できるように配置しなければならない。
 5.7 装置の再使用
 酢酸酸性塩水噴霧試験,キャス試験,又は中性塩水噴霧試験以外の溶液による噴霧試験に用いた装置は,中性塩水噴霧試験に再使用してはならない。
 ただし,やむを得ず再使用する場合は,装置を完全に洗浄した後,箇条 6(腐食性に関わる装置の再現性の検証方法)の規定を満足することを確認しなければならない。
 
  2000年版
 3 装置
 塩水噴霧試験に必要な装置は,噴霧装置,試験用塩溶液貯槽,試験片保持器,噴霧液採取容器,温度調節装置などを備えた噴霧室,塩水補給タンク,圧縮空気の供給器,空気飽和器,排気装置などで構成され,次に示す条件を満たさなければならない。
  a)  噴霧装置は,噴霧液を上部から試験片に均等に噴霧する性能をもつものとする(附属書 2参照)。
  b)  噴霧室の容積は,0.2m3以上でなければならない。ただし,形状及び寸法は任意でよい。
  c)  噴霧室の天井又はカバーは,その内面に付着した溶液の滴が試験片の上に落ちないような形状でなければならない。
  d)  装置の材料は,腐食性の材料を用いてはならない。
  e)  装置の構造は,噴霧室内温度,及び噴霧が外気の影響を受けず,また,試験片から落ちた溶液が再び試験に用いられない構造でなければならない。
  f)  試験片保持器は,試験片を所定の角度に支持できるものとする(注)。
 :試験片の支持物の材料は,ガラス,ゴム,プラスチック又は適切な方法で被覆した木材とし,試験片は底裏又は側面から支持するのがよい。試験片が所定の位置に保たれるならば,ガラスかぎ又はビニルひもでつるしてもよく,この場合,必要であれば試験片の底を支持する。
  g)  噴霧液採取容器は,採取面が直径 100mmで水平採取面積約 80cm2の清浄な容器とし,噴霧の均一性が確認できるように 2か所以上に置く。例えば,試験片の近くで,一つは噴霧装置に近く,一つは遠いところとする。
  h)  排気装置は,外気の風圧の影響を受けないようにしなければならない。
  i)  装置の維持管理は,常に所定の条件が得られるように正しく行わなければならない。
 
 8 供給空気
 塩溶液を噴霧するために噴霧ノズルへ送る圧縮空気は,油及びほこり(挨)を含まず,その圧力は0.07~0.17MPaに保たれなければならない。
 なお,0.098±0.010MPaに保つことが望ましい。
 
 9 噴霧室の条件
 a) 温度
 噴霧室内の試験片保持器付近の温度は,中性及び酢酸塩水噴霧試験では 35±2℃に,キャス試験では50±2℃に保つ。温度の測定位置は,壁から少なくとも100mm以上離した位置とする。
 b) 試験用塩溶液貯槽の温度及び水位
 試験用塩溶液貯槽の温度は,中性及び酢酸塩水噴霧試験では35±2℃に,キャス試験では50±2℃に保つ。また,試験用塩溶液貯槽の水位を一定に保つ。
 c) 噴霧
 噴霧は,自由落下を原則とし,噴霧が直接試験片にかからない方向に噴霧ノズルを向けることによって,噴霧の直射を遮断しなければならない。
 d) 噴霧採取液
 噴霧室内が所定の寸法及び形状の試験片で満たされた状態で24時間の運転をした後,噴霧液の採取量は,水平採取面積各80cm2に対して1時間当たり平均1.5±0.5mlとする。この場合,採取した噴霧液の塩濃度は50±5g/lでなければならない。
 また,そのpHは中性塩水噴霧試験では6.5~7.2で,酢酸塩水噴霧試験,及びキャス試験では,3.1~3.3でなければならない。pH測定は,7.2に規定する方法によって行う。
参考:比重計を用いて測定したとき,中性塩水噴霧試験の場合,密度は25℃で1.029~1.036の範囲であれば,噴霧液の塩濃度は規定に適合している。
 
 10 装置の再使用
 装置が異なる試験用塩溶液を用いた噴霧試験,又は他の目的のために使用された場合には,使用前に装置を清浄にする。
 試験を再開する場合,試験片を槽内に設置する前に最低 24時間装置を稼働し,また,採取溶液の pHが全噴霧期間にわたり所定値内であることを確認しなければならない。

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 装置の再現性検証

  2015年版
 6 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法
 6.1 一般
 試験結果の再現性及び繰返し性を確認するため,6.2~6.4に従って装置を定期的に検証しなければならない。
 注記 適切な検証期間は,連続的な使用状況では,通常 3か月である。この検証には,鋼の照合試験片を使用しなければならない。必要ならば,鋼の照合試験片に加えて,高純度の亜鉛の照合試験片を用いてもよい(附属書 B「腐食性に関わる装置の再現性の検証方法(亜鉛の照合試験片)」参照)。
 6.2 中性塩水噴霧試験
 6.2.1 照合試験片
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片は,次による。
 a)  照合試験片は,JIS G3141「冷間圧延鋼板及び鋼帯」による SPCE の冷間圧延鋼板で,150mm×70mm,厚さ 1mm±0.2mmの,表面にきずがなく,つや消し仕上げ(表面粗さ Ra=0.8μm±0.3μm)のものを 4個,又は噴霧室の大きさなどに応じて 6個用いる。
 b)  照合試験片は,試験結果に影響を与える懸念のある粉じん,油分又はその他の不純物を取り除くため,清浄な柔らかいブラシ又は超音波洗浄装置を使用して,エタノールなどの有機溶剤で十分に洗浄する。洗浄は,エタノールなどの有機溶剤を満たした容器の中に照合試験片を浸せきして行う。洗浄後,新しいエタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定する。
 d)  照合試験片の暴露しない面を,可はく性の被覆材,例えば,粘着テープで保護する。必要ならば,さらに,照合試験片の端面を,粘着テープで保護してもよい。
 6.2.2 照合試験片の配置及び試験
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片の配置及び試験は,次による。
 a)  4個の照合試験片は,噴霧室内の試験片保持器の四隅に 1個ずつ置き( 6個の照合試験片を用いる場合は,四隅を含めた適切な 6 か所の位置に置く。),可はく性の被覆材で保護していない暴露する面を上向きにして,鉛直線に対し 20°±5°の角度に傾けて置く。
 b)  照合試験片の試験片保持器の材料は,プラスチックなどの不活性な材料又はそれらで被覆された材料としなければならない。照合試験片は,その下端が噴霧液採取容器の上端とほぼ同じ位置に置く。
 c)  照合試験片が置かれていない試験片保持器の全ての箇所は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片で満たす。
 d)  受渡当事者間の協定がある場合は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片の代わりに,試験片を噴霧室内の試験片保持器に配置して,照合試験片と同時に試験を行ってもよい。この場合には,その旨を試験報告書に記載する。
 注記 照合試験片と試験片とが互いの試験結果に影響を及ぼさないように注意する。
 e)  表 2に示す試験条件によって,試験を 48時間行う。
 6.2.3 腐食減量の測定
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法における腐食減量の測定は,次による。
 a)  試験の終了後,直ちに照合試験片を噴霧室から取り出し,可はく性の被覆材を取り除く。その後,40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけるなどの機械的及び化学的洗浄によって腐食生成物を取り除く 。 化学的洗浄では,照合試験片を JIS K 8284「くえん酸水素二アンモニウム(試薬)」に規定するくえん酸水素二アンモニウム[(NH4)2HC6H5O7] 200mg に蒸留水を加え 1Lにした溶液に,23℃±2℃で 10分間浸せきする。なお,化学的洗浄に使用する溶液は,JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する塩酸 500mLに 4.1 b) の水 500mLを加えて調製した溶液 1Lにつき,腐食抑制剤として JIS K 8847「ヘキサメチレンテトラミン(試薬)」に規定するヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4)3.5g を加えた溶液を用いてもよい。
 b)  腐食生成物を除去した後,照合試験片を 40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけ,次に,エタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定し,質量減をグラム毎平方メートル(g/m2)の単位で表示する。さらに,減量の変化がほとんどなくなるまで数回腐食生成物を除去し,腐食減量を決定する。
 注記 腐食生成物除去用の溶液は,新しく作ったものを使用することが望ましい。
 6.2.4 装置の検証
 各照合試験片の腐食減量が 48時間運転で 70g/m2±20g/m2であれば,装置は正常であるものとみなす。
 6.3 酢酸塩水噴霧試験
 6.3.1 照合試験片
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片は,次による。
 a)  照合試験片は,JIS G 3141 による SPCEの冷間圧延鋼板で,150mm×70mm,厚さ 1mm±0.2mmの,表面にきずがなく,つや消し仕上げ(表面粗さ Ra=0.8μm±0.3μm)のものを 4個,又は噴霧室の大きさなどに応じて 6個用いる。
 b)  照合試験片は,試験結果に影響を与える懸念のある粉じん,油分又はその他の不純物を取り除くため,清浄な柔らかいブラシ又は超音波洗浄装置を使用して,エタノールなどの有機溶剤で十分に洗浄する。洗浄は,エタノールなどの有機溶剤を満たした容器の中に照合試験片を浸せきして行う。洗浄後,新しいエタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定する。
 d)  照合試験片の暴露しない面を,可はく性の被覆材,例えば,粘着テープで保護する。必要ならば,さらに,照合試験片の端面を,粘着テープで保護してもよい。
 6.3.2 照合試験片の配置及び試験
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片の配置及び試験は,次による。
 a)  4個の照合試験片は,噴霧室内の試験片保持器の四隅に 1個ずつ置き( 6個の照合試験片を用いる場合は,四隅を含めた適切な 6 か所の位置に置く。),可はく性の被覆材で保護していない暴露する面を上向きにして,鉛直線に対し 20°±5°の角度に傾けて置く。
 b)  照合試験片の試験片保持器の材料は,プラスチックなどの不活性な材料又はそれらで被覆された材料としなければならない。照合試験片は,その下端が噴霧液採取容器の上端とほぼ同じ位置に置く。
 c)  照合試験片が置かれていない試験片保持器の全ての箇所は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片で満たす。
 d)  受渡当事者間の協定がある場合は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片の代わりに,試験片を噴霧室内の試験片保持器に配置して,照合試験片と同時に試験を行ってもよい。この場合には,その旨を試験報告書に記載する。
 注記 照合試験片と試験片とが互いの試験結果に影響を及ぼさないように注意する。
 e)  表 2に示す試験条件によって,試験を 24時間行う。
 6.3.3 腐食減量の測定
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法における腐食減量の測定は,次による。
 a)  試験の終了後,直ちに照合試験片を噴霧室から取り出し,可はく性の被覆材を取り除く。その後,40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけるなどの機械的及び化学的洗浄によって腐食生成物を取り除く 。 化学的洗浄では,照合試験片を JIS K 8284「くえん酸水素二アンモニウム(試薬)」に規定するくえん酸水素二アンモニウム[(NH4)2HC6H5O7] 200mgに蒸留水を加え 1Lにした溶液に,23℃±2℃で 10分間浸せきする。なお,化学的洗浄に使用する溶液は,JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する塩酸 500mLに 4.1 b) の水 500mLを加えて調製した溶液 1Lにつき,腐食抑制剤として JIS K 8847「ヘキサメチレンテトラミン(試薬)」に規定するヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4) 3.5g を加えた溶液を用いてもよい。
 b)  腐食生成物を除去した後,照合試験片を 40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけ,次に,エタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定し,質量減をグラム毎平方メートル(g/m2)の単位で表示する。さらに,減量の変化がほとんどなくなるまで数回腐食生成物を除去し,腐食減量を決定する。
 注記 腐食生成物除去用の溶液は,新しく作ったものを使用することが望ましい。
 6.3.4 装置の検証
 各照合試験片の腐食減量が 24時間運転で 40g/m2±10g/m2であれば,装置は正常であるものとみなす。
 6.4 キャス試験
 6.4.1 照合試験片
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片は,次による。
 a)  照合試験片は,JIS G 3141による SPCEの冷間圧延鋼板で,150mm×70mm,厚さ 1mm±0.2mmの,表面にきずがなく,つや消し仕上げ(表面粗さ Ra=0.8μm±0.3μm)のものを 4個,又は噴霧室の大きさなどに応じて 6個用いる。
 b)  照合試験片は,試験結果に影響を与える懸念のある粉じん,油分又はその他の不純物を取り除くため,清浄な柔らかいブラシ又は超音波洗浄装置を使用して,エタノールなどの有機溶剤で十分に洗浄する。洗浄は,エタノールなどの有機溶剤を満たした容器の中に照合試験片を浸せきして行う。洗浄後,新しいエタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定する。
 d)  照合試験片の暴露しない面を,可はく性の被覆材,例えば,粘着テープで保護する。必要ならば,さらに,照合試験片の端面を,粘着テープで保護してもよい。
 6.4.2 照合試験片の配置及び試験
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法に用いる照合試験片の配置及び試験は,次による。
 a)  4個の照合試験片は,噴霧室内の試験片保持器の四隅に 1個ずつ置き( 6個の照合試験片を用いる場合は,四隅を含めた適切な 6 か所の位置に置く。),可はく性の被覆材で保護していない暴露する面を上向きにして,鉛直線に対し 20°±5°の角度に傾けて置く。
 b)  照合試験片の試験片保持器の材料は,プラスチックなどの不活性な材料又はそれらで被覆された材料としなければならない。照合試験片は,その下端が噴霧液採取容器の上端とほぼ同じ位置に置く。
 c)  照合試験片が置かれていない試験片保持器の全ての箇所は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片で満たす。
 d)  受渡当事者間の協定がある場合は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片の代わりに,試験片を噴霧室内の試験片保持器に配置して,照合試験片と同時に試験を行ってもよい。この場合には,その旨を試験報告書に記載する。
 注記 照合試験片と試験片とが互いの試験結果に影響を及ぼさないように注意する。
 e)  表 2に示す試験条件によって,試験を 24時間行う。
 6.4.3 腐食減量の測定
 腐食性に関わる装置の再現性の検証方法における腐食減量の測定は,次による。
 a)  試験の終了後,直ちに照合試験片を噴霧室から取り出し,可はく性の被覆材を取り除く。その後,40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけるなどの機械的及び化学的洗浄によって腐食生成物を取り除く 。 化学的洗浄では,照合試験片を JIS K 8284「くえん酸水素二アンモニウム(試薬)」に規定するくえん酸水素二アンモニウム[(NH4)2HC6H5O7] 200mg に蒸留水を加え 1Lにした溶液に,23℃±2℃で 10分間浸せきする。なお,化学的洗浄に使用する溶液は,JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する塩酸 500mLに 4.1 b) の水 500mLを加えて調製した溶液 1Lにつき,腐食抑制剤として JIS K 8847「ヘキサメチレンテトラミン(試薬)」に規定するヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4) 3.5g を加えた溶液を用いてもよい。
 b)  腐食生成物を除去した後,照合試験片を 40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけ,次に,エタノールなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 c)  照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定し,質量減をグラム毎平方メートル(g/m2)の単位で表示する。さらに,減量の変化がほとんどなくなるまで数回腐食生成物を除去し,腐食減量を決定する。
 注記 腐食生成物除去用の溶液は,新しく作ったものを使用することが望ましい。
 6.4.4 装置の検証
 各照合試験片の腐食減量が 24時間運転で 55g/m2±15g/m2であれば,装置は正常であるものとみなす。
 
  2000年版
 11 試験装置の再現性の評価方法
 1台の試験装置での試験結果の再現性,又は異なった試験所での同種の装置での試験結果の再現性を確認するため,装置を次に従って定期的に動作確認することが必要である。
 11.1 中性塩水噴霧試験
 11.1.1 照合試験片
 装置の動作確認をするために,70×150mm,厚さ1±0.2mmの欠陥のない表面をもった,JIS G 3141「冷間圧延鋼板及び鋼帯」による SPCE級の鋼板の照合試験片4個を用いる[粗さ(算術平均)Ra=0.8±0.3μmの偏差,ただし,圧延方向に沿った方向の値]。これらの照合試験片は冷間圧延鋼板から切り出す。
 照合試験片を試験直前に注意深く洗浄する。洗浄は試験結果に影響するおそれのある汚れ,油分及びその他の不純物を除去しなければならない。その場合,次のいずれかの方法を用いる。
 a)  清潔な柔らかいブラシ,又は超音波洗浄機を用い,適切な有機溶剤(炭化水素の沸点範囲,60~120℃)で照合試験片を十分に洗浄する。洗浄は,室温で溶剤を満たした容器中で行う。洗浄後,照合試験片を新しい溶剤ですすぎ,乾燥する。
 b)  同様な結果が得られるならば,受渡当事者間の協定によって,他の方法でもよい。
 照合試験片を 1mgのけたまでひょう量する。照合試験片の片面を可はく性の被覆材,例えば,接着テープで保護する。
 11.1.2 照合試験片の配置
 4個の照合試験片を試験槽内の4隅に,被覆材を施さない面を上向きにして,角度 20±5°で置く。照合試験片の保持器は,プラスチックなどの不活性材料で作るか又は被覆する。
 通常の平板状試験片と同じように暴露されるように照合試験片の下端は,噴霧採取器の上端とほぼ同じ位置にする。試験時間は 96時間とする。
 11.1.3 減量測定
 試験終了時,被覆材を取り除き,照合試験片を冷水ですすぎ,塩の付着物を除く。JIS K 8180「塩酸(試薬)」に規定する塩酸1容に水1容を加えて調製した溶液[50% (v/v)]1リットルにつき,腐食抑制剤としてJIS K 8847「ヘキサメチレンテトラミン(試薬)」に規定するヘキサメチレンテトラミン3.5gを加えた洗浄液に照合試験片を浸して,減量の変化がほとんどなくなるまで洗浄を繰り返して十分に腐食生成物を除去する。
 洗浄液の温度は,25±2℃が望ましい。除去後,照合試験片を常温の水で十分に洗い,最後に乾燥する。
備考:水で十分洗うには,水道水で表面の浮遊物を洗い流すようにするのがよい。
 照合試験片を 1mgのけたまでひょう量し,質量の減量を g/m2単位で計算する。
 11.1.4 装置運転状況の検査
 4か所の照合試験片の質量減がいずれも 140±30g/m2ならば,装置は満足に運転されているものとする。
 備考:鋼板の代わりに亜鉛板を用いてもよい。この場合,試験片の寸法,洗浄方法及び減量測定の方法は,酢酸塩水噴霧試験に準じて行い,質量の減量が 50±15g/m2ならば,装置は満足に運転されているものとみなす。
 11.2 酢酸塩水噴霧試験
 11.2.1 照合試験片
 装置の動作確認をするために,70×150mm,厚さ 1±0.2mmの欠陥のない表面をもった,表 1(ここでは省略する)の化学成分を満足する亜鉛板の照合試験片 4個を用いる[表面粗さ(算術平均) Ra=0.05±0.02μmの偏差,ただし,圧延方向に沿った方向の値]。これらの照合試験片は板材から切り出す。切り出す方法は,板材から圧延方向に沿って4個切り出す。
 照合試験片を試験直前に注意深く洗浄する。洗浄は試験結果に影響するおそれのある汚れ,油分及びその他の不純物を除去しなければならない。その場合,次のいずれかの方法を用いる。
 a)  清潔な柔らかいブラシ又は超音波洗浄機を用い,適切な有機溶剤(炭化水素の沸点範囲,60~120℃)で照合試験片を十分に洗浄する。洗浄は,室温で溶剤を満たした容器中で行う。洗浄後,照合試験片を新しい溶剤ですすぎ,乾燥する。
 b)  同様な結果が得られるなら,受渡当事者間の協定によって,他の方法でもよい。
 照合試験片の質量を 1mgのけたまでひょう量する。照合試験片の片面を可はく性の被覆材,例えば,接着テープで保護する。
 11.2.2 照合試験片の配置
 4個の照合試験片を試験槽内の4隅に,被覆材を施さない面を上向きにして,角度 20±5°で置く。照合試験片の保持器は,プラスチックなどの不活性材料で作るか又は被覆する。通常の平板状試験片と同じように暴露されるように照合試験片の下端は,噴霧採取器の上端とほぼ同じ位置にする。試験時間は 24時間とする。
 11.2.3 減量測定
 試験終了時,被覆材を取り除き,照合試験片を冷水ですすぎ,塩の付着物を除く。表2(ここでは省略する)の化学成分を満足するクロム酸水溶液 (注)を,水で希釈したクロム酸水溶液( 300g/l)中に 25±2℃で3分間浸すか,又はクロム酸水溶液( 200g/l) 中に 80℃で 1分間浸して減量の変化がほとんどなくなるまで洗浄を繰り返して十分に腐食生成物を取り除く。
 照合試験片を温水(40±5℃)ですすぎ,次いで,105℃の乾燥機で乾燥し,更に,室温で放冷する。
 照合試験片の質量を 1mgのけたまでひょう量し,質量の減量を g/m2単位で計算する。
 :酸化クロム及びクロム酸水溶液は毒性があるので,その取扱いは皮膚及び粘膜に触れないように十分に注意する。
 11.2.4 装置運転状況の検査
 4か所の照合試験片の質量の減量が,いずれも 40±12g/m2ならば,装置は満足に運転されているものとする。
 11.3 キャス試験
 11.3.1 照合試験片,11.3.2 照合試験片の配置,11.3.3 減量測定は,11.2 酢酸塩水噴霧試験による。
 11.3.4 装置運転状況の検査
 4か所の照合試験片の質量減がいずれも 95±25g/m2ならば装置は満足に運転されているものとする。

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 試験片・試験片の調整

  2015年版
 7 試験片
 7.1 試験片の取り扱い
 試験片の取扱いは,素手で行わず,手袋を用いる。
 7.2 試験片の大きさ
 試験片の寸法及び形状は,150mm×70mm×1mmの平板が望ましい。ただし,受渡当事者間の協定によって,他の寸法若しくは製品,又は製品などから切り出した部材でもよい。
 注記  腐食に影響を及ぼす懸念のある異種金属の試験片は,同時に試験しないことが望ましい。
 7.3 試験片の調製
 試験片は,汚れ,きずなどがあってはならない。試験片の調製は,次による。
 a)  無機皮膜又は有機被膜で被覆した製品から試験片を切り出す場合には,皮膜又は被膜が試験片の端面周辺で破損しないように切り出さなければならない。受渡当事者間の協定がない限り,試験片の端面は,試験の条件下で安定な塗料,ワックス,粘着テープなどの被覆材で,適切に保護する。
 b)  試験片は,あらかじめ表面の状態及び汚れに応じた適切な方法で清浄にしておかなければならない。
 試験片の表面を損なうような研磨剤又は溶剤を用いてはならない。ただし,金属及び金属皮膜の試験片は,ペースト状の沈降性炭酸カルシウム,酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムからなる研磨剤を用いてもよい。また,試験片を処理した後,再び汚さないようにしなければならない。
 c)  無機皮膜又は有機被膜で被覆した試験片は,試験前に洗浄又は他の処理をしてはならない。ただし,試験に影響を及ぼさないように,指紋,油などの付着物は除去してよい。
 d)  損傷部からの腐食の進行を測定することが必要な場合には,試験前に素地金属が露出するように,皮膜又は被膜に切り込みきずのような人工きずを作る。この場合,切り込みきずの作り方は,受渡当事者間の協定による。
 e)  塗膜などの有機被膜をもつ試験片を用いる場合において,受渡当事者間の協定がないときは,附属書 C(塗膜などの有機被膜をもつ試験片の作製)によって試験片を作製する。
 
 8 試験片の配置
 試験中,噴霧室内での試験片の角度及び位置は,次の条件に適合しなければならない。ただし,製品などから切り出した部材の場合には,受渡当事者間の協定による。
 a)  試験片の角度は,鉛直線に対してできる限り 20°に保持するようにし,その限度は 15°~25°の範囲とする。ただし,製品などから切り出した部材の場合には,暴露する面ができる限り同じ範囲の角度になるように置く。
 なお,受渡当事者間の協定によって他の角度を用いてもよい。
 b)  試験片の表面は,噴霧液の自由落下にさらされるようにし,噴霧塔又は噴霧ノズルからの噴霧の流れ方向に直行しないように噴霧室内に置く。
 c)  試験片は,試験片保持器以外のものに触れてはならない。
 d)  試験片の位置及び試験片同士の間隔は,他の試験片に対する噴霧液の自由落下を妨げないようにしなければならない。
 e)  試験片からの噴霧液の滴は,他の試験片に落ちないようにしなければならない。
 f)  試験が 96時間を超える場合は,試験片の位置の入れ換えをしてもよい。この場合,試験報告書に記載する。なお,受渡当事者間の協定によっては,試験片の位置の入れ換えに代えて,噴霧塔の周りを試験片が回転する装置を用いてもよい。
 注記  試験片の置き方及び位置については,附属書 JA(試験片の置き方及び位置)を参照する。
 
  2000年版
 4 試験片
 試験片の寸法及び形状は,70×150×1.0mm又は 60×80×1.0mmの平板とするのがよい。ただし,受渡当事者間の協定によって,他の寸法又は部材を用いてもよい。
 参考:互いに影響を及ぼすおそれのある異種金属の試験片は,同時に試験しないことが望ましい。
 
 5 試験片の調製
 試験片は,汚れ,きずなどがあってはならない。試験片の調製は,次による。
 a)  試験片の切り口は,必要に応じて,試験の条件下で安定な被覆材で保護しなければならない(注)。
 :被覆材としては,テープ,塗料,パラフィンなどがある。
 b)  金属及び金属皮膜の試験片は,あらかじめ適切な方法で清浄にしておかなければならない。試験片を清浄にするには,表面の性質及び汚れに応じた適切な方法で行う。
 ペースト状の沈降性炭酸カルシウム,酸化アルミニウム及び酸化マグネシウム以外の研磨剤,腐食性の又は保護皮膜を生じる洗浄剤を用いてはならない。
 また,試験片を処理した後,再び汚さないようにしなければならない。
 c)  ペイント,及び非金属皮膜で被覆した試験片は,試験前に洗浄又は他の処理をしてはならない。ただし,試験に不都合な付着物は除去してよい。
 また,損傷部からの腐食の進行を測定することが必要なときには,試験前の素地金属を露出させるように,皮膜に引っかききずを作る。この場合,引っかききずの作り方は,受渡当事者間の協定による。
 なお,一例として,次の方法がある。
 :試験片の周辺 5mm程度を被覆材で保護した後,試験片の長いほうの下 1/2~1/3 に × のようにきずを付ける。きずは,素地金属面に達する深さで,切り口の寸法は常に一定とすることが望ましい。きずを付ける器具としては,カッタナイフ,かみそり刃などがよい。
 
 6 試験中の試験片の角度及び位置
 試験中,噴霧室内の試験片の角度及び位置は,次の条件に適合しなければならない(附属書 3参照)。
 a) 試験片の角度は,鉛直線に対し20±5°とする。ただし,部材の場合には,その有効面が鉛直線に対して20±5°になるように置く。
 なお,受渡当事者間の協定によって他の角度を用いてもよい。試験片の表面は,自由な噴霧の動きにさらされるようにし,噴霧ノズルからの噴霧の流れ方向に直交しないように噴霧室内に置く。
 b)  試験片は,支持物以外のものに触れてはならない。
 c)  試験片の位置及び間隔は,噴霧の自由落下を妨げないようにしなければならない。
 d)  試験片からの塩溶液の滴が,他の試験片に滴らないようにしなければならない。

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 試験条件・試験時間

  2015年版
 9 試験条件
 試験条件は,次による。
 a)  試験に先だって,まず噴霧室内の試験片保持器をプラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片で満たし,表 2に示す試験条件を確認する。
 b)  試験条件が規定の範囲内であることを確認した後に,塩溶液の噴霧を止め,試験片保持器に取り付けた不活性な擬似試験片を取り外した後,試験片を試験片保持器に取り付け,試験を開始する。
 c)  噴霧液採取容器(5.6)で採取した噴霧液は,表 2に示す塩濃度及び pHでなければならない。
 注記 中性塩水噴霧試験の場合,比重計を用いて測定したときの比重が,25℃±2℃で 1.029~1.036の範囲であれば,噴霧液の塩濃度は規定に適合しているとみなす。
 d)  噴霧液は,少なくとも 24時間の連続噴霧の間,噴霧液採取容器内に採取しなければならない。
 e)  噴霧に使用した塩溶液は,再使用してはならない。
 f)  試験中,塩濃度及び pHの変動を防ぐため,塩溶液には,周囲の空気及び不純物を混入させてはならない。

表 2 試験条件
  項目   中性塩水噴霧   酢酸酸性塩水噴霧   キャス
  噴霧室温度   35℃±2℃   35℃±2℃   50℃±2℃
  空気飽和器内の水の温度   47℃±2℃   47℃±2℃   63℃±2℃
  圧縮空気の圧力   70kPa~170kPa   70kPa~170kPa   70kPa~170kPa
  約80cm2の水平採取面積における噴霧液の平均採取量   1.5mL/h±0.5mL/h   1.5mL/h±0.5mL/h   1.5mL/h±0.5mL/h
  塩濃度(採取した噴霧液)   50g/L±5g/L   50g/L±5g/L   50g/L±5g/L
  pH(採取した噴霧液)   6.5~7.2   3.1~3.3   3.1~3.3
 空気飽和器内の水の温度は,圧縮空気の圧力が 98kPa±10kPa の場合を示す。なお,圧縮空気の圧力は,98kPa±10kPa に保つことが望ましい。
 
 10 試験時間
 試験時間は,試験する材料,製品規格などで規定したものとする。規定がない場合は,受渡当事者間の協定による。
 なお,推奨する試験時間は,2 時間,6 時間,24 時間,48 時間,96 時間,168 時間,240 時間,480 時間,720 時間及び 1 000 時間とする。
 
  2000年版
 12 試験の開始
 噴霧室の条件を確認した後,一時的に噴霧を止めて,試験片を噴霧室に置き,試験を開始する。
 
 13 試験の継続
 試験は,試験期間中連続して行わなければならない。ただし,受渡当事者間の協定によって,断続的に行ってもよい。
 試験片の検査・出し入れなどのために試験を中断する場合には,噴霧だけを止めて行い,その中断の時間は最小になるように努めなければならない。
 
 14 試験時間
 試験時間は,試験する材料,製品規格などで規定されたものとする。規定がない場合は,受渡当事者間での協定による。
 なお,推奨する暴露時間は,2h,6h,24h,48h,96h,168h,240h,480h,720h及び 1000hである。
 参考:腐食の発現を見る場合には,腐食が発現するまで試験を行ってもよい。

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 試験中の注意事項・試験後の処理・結果

 2015年版
 11 試験中の注意事項
 試験中の注意事項は,次による。
 a)  規定の試験時間中に,試験片の短時間の目視観察及び試験片の位置の入れ換えなどのために試験を中断する場合は,試験片が中断による影響を受けないように噴霧だけを止めて行い,その中断の時間は最短にしなければならない。
 b)  試験片に腐食が発生した時点で終了する試験を行う場合は,試験中に試験片を,適宜,目視観察しなければならない。その際は,規定の試験時間の試験が必要な試験片と一緒に試験しないことが望ましい。
 
 12 試験後の試験片の処理
 試験の終了後,噴霧液の滴が試験片に落ちないようにして,噴霧室の蓋を開ける。試験片の処理は,次による。
 a)  試験片を,噴霧室内の試験片保持器から取り外し,腐食生成物が取り除かれる懸念を減らすために,洗い流す前に試験片を約 1時間静置する。
 b)  試験片の表面に付着した塩化ナトリウムを除くために,試験片を 40℃以下の流水で洗い流し,はけ,スポンジなどを用いて洗浄し,直ちに乾燥する。
 注記  200kPaを超えない圧力の空気で,約 300mm離れた位置から空気を当てて,試験片を乾燥させてもよい。
 c)  腐食生成物の除去は,ブラシ掛け,超音波照射,細粒噴射,水噴射などの機械的方法,化学的方法若しくは電解による方法(附属書 JB 参照)又はこれらを組み合わせた方法によって行う。
 d)  a)~c) 以外の処理方法は,あらかじめ受渡当事者間で定めておく。
 
 13 試験結果の表し方
 試験結果の表し方は,次の事項から選択する。なお,試験する材料,製品又は部材によって,受渡当事者間で適切な試験結果の表し方を設定してもよい。
 a) 腐食面積 附属書 JC に規定するレイティングナンバ法によって判定する2)
 2) 腐食面積によって腐食結果を判定する場合は,150mm×70mm×1mmの平板を用いることが望ましい。
 b) 腐食減量 試験前の試験片の質量と試験後の腐食生成物を取り除いた試験片との質量を比較して判定する。
 c)  試験後の試験片表面の腐食生成物を取り除く前の外観
 d)  試験後の試験片表面の腐食生成物を取り除いた後の外観
 e)  腐食欠陥の数及び分布(塗膜などの有機被膜の場合は,切り込みきずからのピット,ひび割れ,膨れ,さび,クリープなど)
 なお,塗膜などの有機被膜については,JIS K 5600-8-1「塗膜劣化の評価(一般的な原則と等級)」,JIS K 5600-8-2「膨れの等級」 及び JIS K 5600-8-3「さびの等級」 に規定されている方法で評価してもよい。
 f)  腐食の発生までの時間
 g)  顕微鏡観察によって明らかになった変質
 h)  引張り強度などの機械的特性の変化
 
  2000年版
 15 試験後の試験片の取扱い
 試験片は,試験後,次のように取り扱わなければならない。
 a)  試験片は,試験槽から注意深く取り出し,直ちに試験片を 0.5~1.0時間乾燥する。
 b)  試験片の表面に付着した塩化ナトリウムを除くために試験片を常温 15~40℃の水で洗浄し,直ちに乾燥する。
 参考:乾燥は 200kPaを超えない圧力の空気で,約 300mm離れた位置から空気を当てて乾燥してもよい。
 c)  腐食生成物を除く場合,その除去は,ブラシ掛け,超音波照射,細粒噴射,水噴射などの機械的方法,化学的方法若しくは電解による方法(参考表 1「化学的腐食生成物除去方法」又は参考表 2「電解による腐食生成物除去方法」参照)又はこれらを組み合わせた方法による。
 
 16 判定方法
 試験結果の判定方法は,次のいずれかによる。ただし,受渡当事者間の協定によって,他の方法(注 1)で行ってもよい。
 a) 面積法
 附属書 1に規定するレイティングナンバ法によって判定する(注 2)。
 b) 質量法
 試験前と試験後の腐食生成物を取り除いた後,試験片の質量変化を調べて判定する。
 注 1:他の方法には,外観,顕微鏡写真による変化の記録,最初の腐食の兆候が出現するまでの経過時間による方法などがある。
 注 2:面積法によって腐食結果を判定する場合は,70×150×1mmの平板を用いる。

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 装置の一例

 附属書 A(参考) 噴霧液の排出及び排水の処理装置をもった装置の一例 2015年版
 この附属書は,2000年版の附属書 2(参考) 装置の構造と同様の内容である。
 A.1 一般
 本体の要求している条件に合う装置の基本的な構造及びレイアウトの一例を,図 A.1(省略)に示す
 A.2 噴霧室内の調整
 塩水噴霧の塩濃度の変動をなくすため,供給空気の相対湿度は,95%~98%でなければならない。このためには,中性塩水噴霧試験で供給空気の圧力が 98kPa±10kPaの場合,空気飽和器の温度を 47℃±2℃に保持する。また,空気飽和器の水は,空気中の不純物の除去ができるように,一定期間ごとに取り替えなければならない。
 噴霧室は,外気温の変動に影響されないようにするため,保温を考慮した構造でなければならない。温度調節及び温度・湿度表示のためのセンサは,噴霧室内の壁から少なくとも 100mm以上離したところに置き,温度及び湿度が外部から読み取ることができなければならない。
 A.3 排気
 排気は,強制排気とせず,また,外気の風圧がかからないようにしなければならない。噴霧液を大気に放出する前に,環境保全のため排気処理装置を使用して噴霧液を適切に処理するとともに,噴霧液を処理した水を排水する前に,排水処理装置を使用して適切に処理することが望ましい。
 A.4 長時間運転
 長時間の運転をする場合,塩溶液補給タンクには,自動塩溶液補給装置を設けることが望ましい。塩溶液補給タンク及び自動塩溶液補給装置中の塩溶液には,塩濃度及び pHの変動を防ぐために,周囲の空気及び不純物を混入させてはならない。

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 装置の再現性の検証方法

 附属書 B(参考)腐食性に関わる装置の再現性の検証方法(亜鉛の照合試験片) 2015年版
 B.1 一般
 装置の中性塩水噴霧試験,酢酸酸性塩水噴霧試験及びキャス試験の再現性及び繰返し性を検証するために,鋼の照合試験片に加えて,亜鉛の照合試験片を用いて行う方法について記載する。
 B.2 照合試験片
 不純物が質量分率 0.1%未満の 100mm×50mm×約 1mmの亜鉛板を 4個,又は噴霧室の大きさなどに応じて 6個用いる。
 照合試験片は,試験結果に影響を与える懸念のある粉じん,油分又はその他の不純物を取り除き,照合試験片をエタノールなどの有機溶剤で注意深く洗浄する。
 乾燥後,照合試験片の質量を 1mgの桁まで測定する。
 照合試験片の暴露しない面を,可はく性の被覆材,例えば,粘着テープで保護する。必要ならば,さらに,照合試験片の端面を,粘着テープで保護してもよい。
 B.3 照合試験片の配置及び試験
 4個の照合試験片は,噴霧室内の試験片保持器の四隅に 1 個ずつ置き( 6個の照合試験片を用いる場合は,四隅を含めた適切な 6か所の位置に置く。),可はく性の被覆材で保護していない暴露する面を上向きにして,鉛直線に対し 20°±5°の角度に傾けて置く。
 照合試験片の試験片保持器の材料は,プラスチックなどの不活性な材料又はそれらで被覆された材料としなければならない。照合試験片は,その下端が噴霧液採取容器の上端とほぼ同じ位置に置く。
 照合試験片が置かれていない試験片保持器の全ての箇所は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片で満たす。
 受渡当事者間の協定がある場合は,プラスチック又はガラスのような不活性な擬似試験片の代わりに,試験片を噴霧室内の試験片保持器に配置して,照合試験片と同時に試験を行ってもよい。この場合には,その旨を試験報告書に記載する。
 注記 照合試験片と試験片とが互いの試験結果に影響を及ぼさないように注意する。
 表 2 に示す試験条件によって,試験を表 B.1 に従って試験する。
 B.4 腐食減量の測定
 試験の終了後,直ちに照合試験片を噴霧室から取り出し,可はく性の被覆材を取り除く。その後,40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけるなどの機械的及び化学的洗浄によって腐食生成物を取り除く。
 化学的洗浄では,照合試験片を脱イオン水又は蒸留水 1L当たり 250g±5gのグリシン(C2H5NO2)の溶液を用い,5分間の浸せきを繰り返すことが望ましい。
 腐食生成物を除去した後,照合試験片を 40℃以下の流水で洗浄し,軽くブラシをかけ,次に,エタノール又はアセトンなどの有機溶剤ですすぎ,その後乾燥する。
 照合試験片の質量を,1mgの桁まで測定し,質量減をグラム毎平方メートル(g/m2)の単位で表示する。
 さらに,質量の変化がほとんどなくなるまで数回腐食生成物を除去し,腐食生成物の除去回数と質量とのグラフを作成する。
 腐食生成物の除去回数と質量とのグラフから,腐食生成物除去後の試験片の質量を測定する。この試験前の照合試験片の初期質量から腐食生成物除去後の質量を減じ,得た値を照合試験片の暴露した面積で除して,照合試験片の質量減をグラム毎平方メートル(g/m2)で表示する。
 注記 1 腐食生成物除去用の溶液は,新しく作ったものを使用することが望ましい。
 注記 2 腐食生成物の効率的な溶解については,腐食生成物除去用の溶液をかくはんし続けることが重要である。腐食生成物の溶解を増大させるために,超音波洗浄装置の使用が望ましい。
 B.5 装置の検証
 各照合試験片の腐食減量が,表 B.1に示す各試験方法の試験時間に対応する値に入っていれば,装置は正常であるものとする。

表 B.1−亜鉛照合試験片の試験時間及び腐食減量
  試験方法   試験時間
( h )
  亜鉛照合試験片の
腐食減量(g/m2)
  (参考)鋼板照合試験片の
腐食減量(g/m2)
  中性塩水噴霧試験   48   50±25   70±20
  酢酸酸性塩水噴霧試験   24   30±15   40±10
  キャス試験   24   50±20   55±15

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 有機被膜をもつ試験片の作製

 附属書 C(規定)塗膜などの有機被膜をもつ試験片の作製 2015年版
 C.1 一般
 この附属書は,塗膜などの有機被膜をもつ試験片を用いる場合における,試験片の作製方法について規定する。
 C.2 試験片の作製及び塗膜
 塗膜などの有機被膜をもつ各試験片は,他に規定又は受渡当事者間の協定がない場合には,JIS K 5600-1-4「塗料一般試験方法−第1部:通則−第4節:試験用標準試験板」に従って調製し,その後,試験をする製品又は塗装系で規定する方法によって塗装する。
 試験片の裏面及び端面は,製品で使用した同じ塗料で塗装する。製品と異なるもので塗装する場合は,製品で使用した塗料よりも腐食耐久性のよいものでなければならない。
 C.3 乾燥及び状態調節
 製品に規定された条件下で規定時間,各試験片の乾燥(又は加熱乾燥),養生などを行う。その後,他に規定がない場合には,23℃±2℃の温度及び 50%±5%の相対湿度で,空気が自由に循環し,かつ,直接の光を避ける環境で,少なくとも 16時間試験片を養生する。その後,試験操作は,できるだけ早く実施しなければならない。
 C.4 膜厚の測定
 有機被膜の乾燥膜厚は,JIS K 5600-1-7「塗料一般試験方法−第1部:通則−第7節:膜厚」に規定する非破壊的試験方法の一つによって,マイクロメートル(μm)の単位まで測定する。
 C.5 切り込みきずの作製
 切り込みきずを付ける場合は,次による。
 注記 切り込みきずを付ける場合は,試験結果の再現性を確保するために,刃先の角度及び素地に押し付ける力を一定にするなどの注意が必要である。
 a)  有機被膜を貫いて素地に達する真っすぐな切り込みきずを付ける。
 b)  切り込みきずを付けるときは,硬い先端をもった切り込み具を使用する。切り込み具は,均一の形状の切り込みきずを生むことが望ましい。
 c)  切り込みきずは,素地上で 0.2mm~1.0mm幅をもち,側面が平行か又は有機被膜表面に向かって扇形に広がった断面をしたものでなければならない。
 d)  切り込みきずの周辺に生じる破片は,取り除く。
 e)  切り込みきずの付け方は,次のような方法(図 C.1 省略)とするが,受渡当事者間の協定によってこれ以外の方法でもよい。
   1)  試験片の全面又は試験片の長い方の下 1/2~1/3に,試験片の端面から少なくとも 20mm内側に対角状に交差する切り込みきずを付ける。
   2)  一つ又は二つの平行な切り込みきずを試験片の長辺に沿って付ける。

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 レイティングナンバ法

 附属書 JC(規定)レイティングナンバ法 2015年版
 この附属書は,2000年版の附属書 1(規定) レイティングナンバ法と同様の内容である。
 JC.1 一般
 この附属書は,塩水噴霧試験方法における試験結果の判定に用いるレイティングナンバ法について規定する。
 
 JC.2 結果の比較方法
 試験片の有効面で,少なくとも 5000mm2 の面積を選ぶ。評価する面を決めるために,100×50mmの窓をもったマスクを用いてもよい。
 調査対象面の腐食欠陥の寸法及び数を図 JC.2~JC.13の標準図(ここでは省略)と比較し,試験片に最も近い標準図のナンバ,例えば,9.8-2,9.5-5 などのように判定する。ただし,端面から生じた腐食欠陥は評価から除く。
:レイティングナンバ標準図は,個々のレイティングナンバの最大腐食面積率で表したもの。
 なお,レイティングナンバ 10は,肉眼で識別できない腐食を示し,レイティングナンバ 0は,腐食欠陥の最大値を示す。
 試験結果の表示は,判定したレイティングナンバによって行う。また,レイティングナンバ腐食面積率との関係を,表 JC1 に示す。


表 JC1 レイティングナンバと腐食面積率との関係
  レイティングナンバ (RN)   腐食面積率,A (%)
  10    
  9.8   0.00を超え0.02以下
  9.5   0.02を超え0.05以下
  9.3   0.05を超え0.07以下
  9   0.07を超え0.10以下
  8   0.10を超え0.25以下
  7   0.25を超え0.50以下
  6   0.50を超え1.00以下
  5   1.00を超え2.50以下
  4   2.50を超え5.00以下
  3   5.00を超え10.00以下
  2   10.00を超え25.00以下
  1   25.00を超え50.00以下
  0   50.00を超える
また,レイティングナンバ(RN)と腐食面積率(A)との関係は,次の式のとおりである。
    RN=3(2−log10A)
 ただし,レイティングナンバ(RN)が 9.3~9.8の間は,次の式となる。
    RN=10−A/0.1

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 腐食生成物除去方法

 附属書 JB(参考)腐食生成物の除去方法 2015年版
 この附属書は,2000年版の>参考表 1 化学的腐食生成物除去方法,>参考表 2 電解による腐食生成物除去方法と同様の内容である。
 なお,ここには,JIS規格の表を参考に,金属種別に整理しなおしたものを示す。
備考:薬品の括弧内の JIS 番号は,日本工業規格で規定されている試薬。
 
 JB.1 腐食生成物の除去方法


アルミニウム及びアルミニウム合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  りん酸(JIS K 9005)50ml,酸化クロム(VI)(CrO3)20g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5~10分間   90℃煮沸   腐食生成物の膜が残っているときは,次の硝酸による方法を続けて行う。
  硝酸(JIS K 8541)   1~5分間   20~25℃   素地金属の過剰な除去を誘引する反応を防ぐため,外周の付着物及びかさのある腐食生成物を取り除く。


アルミニウム陽極酸化皮膜
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  塩酸(JIS K 8180)10ml,蒸留水を加えて110mlにする。   1~5分間   20~25℃   溶液を浸したナイロブラシなどを用いて洗浄し,水洗後,通風乾燥する。腐食生成物が残っているときは,この操作を繰り返す。


銅及び銅合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  塩酸(JIS K 8180)500ml,蒸留水を加えて1000ml にする。   1~3分間   20~25℃   純度の高い窒素による溶液の空気除去は,素地金属の除去を抑制する。
  シアン化ナトリウム(JIS K 8447)4.9g,蒸留水を加えて1000ml にする。   1~3分間   20~25℃   上記の塩酸による方法で除去されないような腐食生成物を除去する。例えば,硫化銅。
  硫酸(JIS K 8951)100mlを蒸留水に加えて1000mlにする。   1~3分間   20~25℃   試験片表面上に銅の再付着するのを抑えるために,処理前にかさのある腐食生成物を取り除く。
  硫酸(JIS K 8951)120ml,二クロム酸ナトリウム二水和物(JIS K 8518)30g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5~10秒間   20~25℃   上記の硫酸による方法によって生じる銅の再付着を除く。
  硫酸(JIS K 8951)54mlを蒸留水に加えて1000mlにする。   30~60秒間   40~50℃   窒素で酸素を液から分離する。腐食生成物を取り除くため,試験片のブラシ掛けを行った後,3~4秒間再び浸すことが望ましい。


鉄及び鋼
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  塩酸(JIS K 8180)1000ml,酸化アンチモン(III)(JIS K 8407)20g,塩化すず(II)二水和物(JIS K 8136)60g   1~25分間   20~25℃   溶液はよくかぎ混ぜるか,試験片をブラシ掛けする。場合によっては,より長時間行ってもよい。
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)50g,粒状亜鉛(JIS K 8012)の細片200 g,蒸留水を加えて1000mlにする。   30~40分間   80~90℃   空気に触れると自然発火することがあるので,亜鉛粉末の使用に際しては注意が必要。
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)50g,粒状亜鉛(JIS K 8012)のチップ20g,蒸留水を加えて1000mlにする。   30~40分間   80~90℃   空気に触れると自然発火することがあるので,亜鉛粉末の使用に際しては注意が必要。
  くえん酸水素二アンモニウム(JIS K 8284)200g,蒸留水を加えて1000mlにする。   20分間   75~90℃   ―
  塩酸(JIS K 8180)500ml,ヘキサメチレンテトラミン(JIS K 8847)3.5g,蒸留水を加えて1000mlにする。   10分間   20~25℃   場合によってはより長時間行ってもよい。


鉛及び鉛合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  酢酸(JIS K 8355)10ml,蒸留水を加えて1000mlにする。   5分間   煮沸   ―
  酢酸アンモニウム(JIS K 8359)50g,蒸留水を加えて1000mlにする。   10分間   60~70℃   ―
  酢酸アンモニウム(JIS K 8359)250g,蒸留水を加えて1000mlにする。   10分間   60~70℃   ―


マグネシウム及びマグネシウム合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  酸化クロム(VI)(CrO3)100g,クロム酸銀(Ag2CrO4)10g,蒸留水を加えて1000mlにする。   1分間   煮沸   クロム酸銀は,塩化物を沈殿させるためのもの。
  酸化クロム(VI)(CrO3)200g,硝酸銀(JIS K 8550)10g,硝酸バリウム(JIS K 8565)20g,蒸留水を加えて1000mlにする。   1分間   20~25℃   硝酸バリウムは,硫化物を沈殿させるためのもの。


ニッケル及びニッケル合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  塩酸(JIS K 8180)150ml,蒸留水を加えて1000ml にする。   1~3分間   20~25℃   ―
  硫酸(JIS K 8951)100ml を蒸留水に加えて水で1000mlにする。   1~3分間   20~25℃   ―


ステンレス鋼
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  硝酸(JIS K 8541)100ml,蒸留水を加えて1000mlにする。   20分間   60℃   ―
  くえん酸二水素アンモニウム(JIS K 8284)150g,蒸留水を加えて1000mlにする。   10~60分間   70℃   ―
  くえん酸一水和物(JIS K 8283)110g,硫酸(JIS K 8951)50ml,抑制剤(ジオルソトリールチオユリア,キノリンエチダイド又はβ-ナフトールキノリン)2g,蒸留水に加えて水で1000mlにする。   5分間   60℃   ―
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)200g,過マンガン酸カリウム(JIS K 8247)30g,くえん酸水素二アンモニウム(JIS K 8284)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5分間   沸騰   ―
  硝酸(JIS K 8541)100ml,ふつ化水素酸(JIS K 8819)20ml,蒸留水を加えて1000mlにする。   5~20分間   20~25℃   ―
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)200g,亜鉛粉末(JIS K 8013)50g,蒸留水を加えて1000mlにする。   20分間   沸騰   空気に触れると自然発火するので注意する。


すず及びすず合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  りん酸三ナトリウム・12水(JIS K 9012)150g,蒸留水を加えて1000mlにする。   10分間   沸騰   ―
  塩酸(JIS K 8180)50ml,蒸留水を加えて1000mlにする。   10分間   20℃   ―


亜鉛及び亜鉛合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  アンモニア水(JIS K 8085)150ml,蒸留水を加えて1000ml にする。
 次いで,酸化クロム(VI)(CrO3)50g,硝酸銀(JIS K 8550)10g,蒸留水を加えて1000mlにする。
  5分間
 15~20秒間
  20~25℃
 沸騰
  硝酸銀は水に溶かし,沸騰した酸化クロム水溶液を加えて過剰なクロム酸銀の結晶化を防ぐ。
 亜鉛の素地金属のアタックを避けるため,酸化クロムには硫酸塩が混じっていてはならない。
  塩化アンモニウム(JIS K 8116)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   2~5分間   70℃   ―
  酸化クロム(VI)(CrO3)200g,蒸留水を加えて1000mlにする。   1分間   80℃   塩雰囲気中に形成されている腐食生成物からの酸化クロム溶液の汚染は亜鉛の素地金属のアタックを防ぐために取り除く。
  よう化水素酸(JIS K 8917)85ml,蒸留水を加えて1000mlにする。   15秒間   20~25℃   亜鉛の素地金属は取り除いてもよい。コントロール試験片を使用する。
  ペルオキソ二硫酸アンモニウム(JIS K 8252)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5分間   20~25℃   電気めっきした試験片に特によい。
  酢酸アンモニウム(JIS K 8359)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   2~5分間   70℃   ―

 
 JB.2−腐食生成物の電解による除去方法

鉄,鋳鉄,鋼
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)75g,硫酸ナトリウム(JIS K 8987)25g,炭酸ナトリウム(JIS K 8625)75g,蒸留水を加えて1000mlにする。   20~30分間   20~25℃   電流密度100~200A/m2で陰極処理をする。陽極には,炭素,白金又はステンレス鋼を用いる。
  硫酸(JIS K 8951)28ml,抑制剤(ジオルソトリールチオユリア,キノリンエチダイド,又はβ-ナフトールキノリン)0.5g,蒸留水に加えて水で1000mlにする。   3分間   75℃   電流密度2000A/m2で陰極処理をする。陽極には,炭素又は白金を用いる。
  くえん酸水素二アンモニウム(JIS K 8284)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5分間   20~25℃   電流密度100A/m2で陰極処理をする。陽極には,炭素,白金又はステンレス鋼を用いる。


鉛及び鉛合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  硫酸(JIS K 8951)28ml,抑制剤(ジオルソトリールチオユリア,キノリンエチダイド又はβ-ナフトールキノリン)0.5g,蒸留水に加えて水で1000mlにする。   3分間   75℃   電流密度2000A/m2で陰極処理をする。陽極には,炭素又は白金を用いる。


銅及び銅合金
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  塩化カリウム(JIS K 8121)75g,蒸留水を加えて1000mlにする。   1~3分間   20~25℃   電流密度100A/m2で陰極処理をする。陽極には,炭素又は白金を用いる。


亜鉛及びカドミウム
  薬品及び作製方法   時間   温度   注記
  りん酸水素二ナトリウム(JIS K 9020)50g,蒸留水を加えて1000mlにする。   5分間   70℃   電流密度110A/m2で陰極処理をする試験片は浸せきするに先立ち,活性化する。陽極には,炭素,白金又はステンレス鋼を用いる。
  水酸化ナトリウム(JIS K 8576)100g,蒸留水を加えて1000mlにする。   1~2分間   20~25℃   電流密度110A/m2で陰極処理をする試験片は浸せきするに先立ち,活性化する。陽極には,炭素,白金又はステンレス鋼を用いる。

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