防食概論:防食の基礎

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          【有機ライニングとは】

 陸上鋼構造物への適用例は少ないが,土壌環境や海洋環境ではライニング(lining)を施した鋼材の適用事例が多い。
 JIS Z0103「防せい防食用語」では,ライニングを“金属の表面を防食するため,その表面に,他の複合材料を比較的厚く被覆すること。金属・無機物質などを溶射,焼き付け,はり合わせなどで被覆する無機質ライニングと,有機物質を流動浸せき,溶射,塗布,はり合わせなどで被覆する有機質ライニングとがある。”と定義している。
 一般には,物体の表面や内面に,付着できる物質で比較的厚く覆う表面処理法をライニングと称している。用いられる材料には,有機高分子材料(ポリエチレン,塩化ビニル,ふっ素樹脂,天然ゴム,合成ゴムなど),有機複合材料(FRP),耐食金属(鉛,ステンレス鋼,チタンなど),無機質材料(セメント,モルタル,ガラス,セラミック,黒鉛)などがある。
 
 有機ライニングと塗装とを区別する明確な定義はないが,一般的には,被覆膜の厚みで区分する例が多い。多くの技術者は,500μm程度までを塗装,それ以上を有機ライニングと称する例が多い。
 また,材質に関しても,塗装との明確な区分はないが,一般的には,耐薬品性が高く,一度の施工で厚く被覆できる有機高分子材料が用いられている。
 有機ライニングでは,一回で厚く施工するため,一般的な塗装に比較して,特殊な設備を必要とする場合が多く,複雑な形状の構造物に対する適用性に劣る。このため,腐食性の著しく高い環境や点検・補修が困難な環境で用いる単純な形状の部材に用いられる例が多い。例えば,海洋構造物に用いる鋼杭(steel pipe)干満帯から飛沫帯の部分,地中埋設の鋼管(steel tube)や鋼杭などでの実用例がある。
 
 【地中埋設管】
 地中埋設管は,一旦埋設すると,損傷や腐食状況を観察できない容易に補修できないなどの理由から,有機ライニング工法が開発される前から,塗装と布とを組み合わせ,厚く被覆する防食対策が実施されていた。
 現在は,有機高分子材料を厚く被覆するライニング工法が主流となっている。例として次に水道鋼管の被覆に関する規格類を示す。
 なお,JIS は日本工業規格,JWWA は(社)日本水道協会の協会規格,WSP は日本水道鋼管協会の協会規格を意味する。
    JIS G 3452-3 「水輸送用塗覆装鋼管-第3部 外面プラスチック被覆」
    JIS G 3447-4 「水輸送用塗覆装鋼管-第4部 内面エポキシ樹脂塗料」
    JWWA K135 「水道用液状エポキシ樹脂塗料塗装方法」
    JWWA K151 「水道用ポリウレタン被覆方法」
    JWWA K152 「水道用ポリエチレン被覆方法」
    JWWA K153 「水道用ジョイントコート」
    JWWA K157 「水道用無溶剤形エポキシ樹脂塗料塗装方法」
    WSP 047 「水道用プラスチック被覆鋼管」
 
 【海洋構造物】
 港湾・海洋構造物は,【鋼の腐食】・【海洋環境の腐食】で解説したように,海水面との位置関係で腐食特性が著しく異なる。海中部は,電気抵抗の低い海水で常に覆われているので,電気防食(electrolytic protection)が有効に機能する。
 しかし,干満帯(tidal zone)から飛沫帯(splash zone , supralittoral zone)は,濡れと乾燥が繰り返され,電気防食を行っても期待する効果が得られない。そこで,高い遮断機能を期待した被覆による防食対策が広く用いられている。

 港湾・海洋構造物に適用される被覆工法は,塗装,有機ライニング,無機ライニングに分けられる。
 (財)沿岸技術研究センターの監修する「港湾鋼構造物防食・補修マニュアル」(平成9年)によると,部位別,期待耐用年数別の適用について,次の被覆工法や材料が推奨されている。
塗装
 ① 無機ジンクリッチペイント+エポキシ樹脂塗料,② 無機ジンクリッチペイント+タールエポキシ樹脂塗料,③ ガラスフレーク入り塗料
有機ライニング
 ① ポリエチレンライニング,② ウレタンエラストマーライニング,③ 超厚膜形ライニング,④ 水中施工型ライニング(水中施工できる塗料やパテを塗付け,その上に保護カバー),⑤ ペトロラタムライニング(石油系のワックスを含む布を巻き付け,その上に保護カバー)
無機ライニング
 ① モルタルライニング(保護カバー有り),② モルタルライニング(保護カバー無し),③ クラッド鋼(チタン,ステンレス鋼),④ 耐食性金属巻(モネルメタル等)
 
 【参考】
 干満帯(tidal zone)
 読み「かんまんたい」潮間帯(intertidal zone)ともいい,高潮線と低潮線との間をいう。干満帯は,潮汐の変化により,上部から大潮最大満潮線,大潮平均満潮線,小潮平均満潮線,平均潮位,小潮平均干潮線,大潮平均干潮線,大潮最低干潮線にも区別される。
 飛沫帯(splash zone , supralittoral zone)
 読み「ひまつたい」,潮上帯やしぶき帯ともいう。干満帯の高潮線より上の部分で,直接海水に浸されないが波のしぶきを浴びる帯位をいう。
 電気防食(electrolytic protection)
 電流の作用を用いて人為的に金属の電位を制御し,腐食を制御する方法。
 水溶液環境に接している金属の電極電位を操作する方法により,電極電位を基準値(防食電位)以下に下げるカソード防食法(cathodic protection ,陰極防食ともいう),電極電位を上げて不働態領域に保つアノード防食法(anodic protection ,陽極防食ともいう)の二種に大別される。

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