防食概論:防食の基礎

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          【塗料・塗装とは】

【防食塗装の変遷】
 塗料(paint)の歴史は古く,洞窟の壁画など意志の伝達手段として用いられ,その後に絵画(油絵の具)や物体の保護を目的に用いられるようになった。
 明治以前の物体の保護を目的とした塗装は,木材の腐食防止(防腐)と装飾を目的とする仕様が中心であった。
 日本では,古来より(japanese lacquer , lacquer , japan)を樹脂として用い,顔料(pigment)で着色した塗料が用いられてきた。この塗料は,景観性に優れるのみならず,耐久性にも優れ,工芸品や寺社などの木造物の保護と美装に用いられてきた。
 例えば,日光東照宮では,平成の大修理(2007年~2024年)の第1期工事として,漆塗・彩色・錺金具の更新作業が行われている。前回の昭和の大修理(1950年~1986年)から20年以上,50年近くの歳月に耐えてきたことになる。

日光東照宮 平成の大修理

日光東照宮 平成の大修理
出典:日光東照宮HP(http://www.toshogu.jp/)

 鉄や鋼の防食(corrosion prevention, corrosion protection)を目的とした塗料・塗装の本格的な使用は,江戸末期から明治初期に輸入された塗料で,船舶や鉄橋などへ適用された。
 当時の日本には,さび止めペイント(anticorrosive paint, rust inhibiting paint)の製造技術がなく,明治中期までさび止め顔料(rust preventive pigment, rust inhibitive pigment ;防せい顔料ともいう)として鉛丹を用いた天然油脂製の高価なさび止めペイント西洋塗料と称されていた)を輸入して用いていた。
 明治初期に西洋塗料に関する研究が開始され,1881年(明治14年)には初めて国産の鉛丹さび止めペイントが光明社(後の日本ペイント株式会社)から発売された。
 その後,鉄道建設など近代化の推進により,明治末期から大正時代にかけて,多くの塗料会社が誕生したことで国産塗料が主流となった。
 昭和初期には,合成樹脂(synthetic resin)の研究が始まり,フタル酸樹脂を用いた塗料の採用や鉛丹さび止めペイントに代わる鉛系さび止めペイントが開発されている。
 その後は,鉛系さび止めペイントを下塗りとし,長油性フタル酸樹脂塗料を中塗り,上塗りに用いた,いわゆる油性系塗装仕様が,鋼の防食塗装の主役として1990年代まで活用され続けた。
 第二次世界大戦終了(1945年)後には,現在の主流であるエポキシ樹脂やポリウレタン樹脂などの合成樹脂に関する研究が大きく進んだ。これらの合成樹脂を用いた塗料・塗装技術が実用されたのは1970年代になってからである。

【塗料・塗装の得失】
 塗料・塗装は,施工時の制約が少ない,施工費用が比較的少い,色,光沢などの景観性能の自由度が高いなどの理由で,鋼の防食対策として,多くの分野で採用されている。
 しかし,他の防食対策に比較して,耐久性が必ずしも高くないため,数 10年以上の耐用を求められる構造物などでは,複数回の補修(塗替え塗装)が求められる。

 なお,塗料の歴史や各種塗料の詳細については【塗料概論】で,塗装技術の紹介に関しては【塗装概論】で紹介する。

 【参考】
 塗装(coating, application, painting, finishing)
 物体の表面に,塗料を用いて塗膜又は塗膜層を作る作業の総称。
 備考:ISO 用語規格では,塗料は“coating material”,塗膜は“coat”と定義しているが,ここに記載する塗装に対応する用語は規定されていない。また,BS 用語規格では,同様に“coating material”を塗料,“coat”を塗膜とするほか,“coating”を塗装として定義している。
 しかし,ASTM 用語規格では,“coating”は塗料として,また,塗ることは“paint(vb)”として定義されている。そのほか,CED には,塗装の意味の用語として“application”が記載されている。
 ここでは,対応英語は,“coating”,“application”その他を併記している。【JIS K5500「塗料用語」】
 塗料(paint)
 素地に塗装したとき,保護的,修飾的,又は特殊性能をもった膜を形成する液状,ペースト状,又は粉末状の製品。流動状態で物体の表面に広げると薄い膜となり,時間の経過につれてその面に固着したまま固体の膜となり,連続してその面を覆うもの。塗料を用いて,物体の表面に広げる操作を塗るといい。固体の膜ができる過程を乾燥といい。固体の皮膜を塗膜という。流動状態とは,液状,融解状,空気懸濁体などの状態を含むものである。顔料を含む塗料の総称をペイントということがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 古くは漆に始まり,対象物の表面に塗り付け,薄い被膜を作ることで,対象物の保護,美装,機能の付与を目的に用いられる材料をいい,一般にはペンキともいわれる。
 対象物の保護目的の塗料には,金属の防食(ぼうしょく)塗料,木材等の防腐(ぼうふ)塗料,浴室などの防黴(ぼうかび,ぼうばい),木柱などのシロアリ対策に用いる防蟻(ぼうぎ)塗料,船舶底部の生物付着を防ぐ防汚(ぼうお)塗料,屋上やプールなどの漏水対策にもちいる防水(ぼうすい)塗料,化学プラントなどに用いる耐薬品塗料,構造物・建築物の主要構造材の火災からの保護を目的とする耐火塗料などがある。
 美観目的の塗料に期待される特性には,表面の平滑化,光沢の付与,彩色の自由,模様付与など,意匠性や景観創出を目的とするものがある。
 対象物に,遮熱,撥水,蛍光,蓄光,迷彩,有害化学物質吸着などの新たな機能の付与を目的にした塗料もある。
 さび止めペイント(anticorrosive paint, rust inhibiting paint, anti-corosive composition, rust resisting paint, high performance coating)
 鉄鋼のさび止め塗装に用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め効果を現すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 金属素地を腐食から守るために用いる塗料。さび止め顔料と塗膜形成要素との相互作用で,さび止め硬化を表すものと,塗膜形成要素自体のさび止め効果によるものとがある。前者には,用いるさび止め顔料の名称を付けて呼ぶのが通例である。【JIS K5500「塗料用語」】
 顔料(pigment)
 一般に水や有機溶剤に溶けない微粉末状で,光学的,保護的又は装飾的な性能によって用いられる物質。無彩又は有彩の,無機又は有機の化合物で,黄色,補強,増量などの目的で塗料,印刷インキ,プラスチックなどに用いる。屈折率の大きいものは隠ぺい力が大きい。
 備考:特殊な場合には,例えば,防せい顔料では,ある程度の水溶性が必要とされることがある。【JIS K5500「塗料用語」】
 参考追記:塗料に用いる顔料は,期待する性能で,着色顔料,さび止め顔料,体質顔料,特殊機能顔料などに分けられる。
 着色目的で,水や溶剤に溶解する染料とは区別される。
 合成樹脂(synthetic resin)
 それ自身は樹脂の特性を持っていない,反応性分から重合,縮合のような制御された化学反応によって作られた樹脂。【JIS K5500「塗料用語」】
 有機又は無機高分子化合物からなる物質の中で,重合,縮合のような制御された化学反応によって人為的に製造されたものを指す。
 合成樹脂塗料とは,合成樹脂に溶剤または乾性油を加え加熱した塗料で,溶剤を加えない「無溶剤型」,溶剤を加えた「溶剤型」,乳液状の「エマルション型」などがある。
 実用される合成樹脂塗料には,用いる樹脂種により「エポキシ樹脂」,「アルキド樹脂」,「塩化ビニール樹脂」,「アクリル樹脂」,「酢酸ビニール樹脂」,「フェノール樹脂」など様々なものがある。

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