防食概論:防食の基礎

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          【鋼橋塗装の塗料】

 ここでは,鋼橋等の鋼構造物に用いられる塗料の概要を紹介する。鋼橋等で用いる塗料,及び塗装仕様の詳細については,【塗料・塗装】の【防食塗装系】で解説する。
 
【鋼橋等で用いる塗料について】
 塗料の構成で解説したように,塗料は,期待する性能を満足するため,数多くの化学物質で構成されている。このことから分かるように,単一の塗料のみでは,構造物塗装に要求される複数の性能を全て満足するのは困難である。
 塗装系について
 このため,実用塗装では,特性の異なる複数の塗料を組み合わせて用いる。この組み合わせを塗装系という。
 塗装系は,鋼などの下地の保護を目的とした下塗り塗料,下塗り塗料と上塗り塗料との密着性確保を目的とした中塗り塗料,色や光沢など見栄え(景観性能)の付与を目的とした上塗り塗料3層が基本となる。
 工業塗装の例として,先に解説した自動車外板塗装では,下塗り塗料 1層,中塗り塗料 1層であるが,上塗り塗料は景観性重視のため 2層構造になっている。
 鋼構造物では,景観性能より防食性能が重視される。このため,多くの構造物塗装では,下塗り塗料を複数層塗り重ねる例が多い。
 例えば,鋼道路橋の塗装系 C5では,下塗り塗料として無機ジンクリッチペイント 1層(厚み 75μm),ミストコート 1層(封孔処理)厚膜形エポキシ樹脂塗料下塗 1層(厚み 125μm)の計 3層(厚みの合計 200μm)の仕様になっている。
 鋼鉄道橋の塗装系 J2では,下塗り塗料として厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント 1層(厚み 75μm),厚膜型エポキシ樹脂系塗料下塗 2層(厚み 120μm)の計 3層(厚みの合計 195μm)の仕様になっている。
 塗料名称について
 塗料の名称には,エポキシ樹脂塗料やポリウレタン樹脂塗料など塗膜主要素(樹脂)の種別を示す名称を用いる場合,シアナミド鉛さび止め塗料やジンクリッチペイントなど顔料や機能で命名する場合などがある。
 さらに,同一樹脂,同一機能の塗料に対しても,採用する機関により,異なる名称を用いるなど,塗料名称の付け方に統一したルールがないのが現状である。
 例として,下表に材料構成がほぼ同等の塗料について,JIS規格での名称,道路分野での名称,鉄道分野での名称の比較を示す。
 JIS規格の塗料名も,JIS規格化前に実用していた機関での名称と異なる名称を付けたり,関係機関との調整をせずに安易に改名(厚膜形エポキシ樹脂塗料 → 構造物用さび止めペイント B種)するなど,JIS規格の名称ですら統一されていないのが現状である。


塗料名称の比較
道路:鋼道路橋塗装・防食便覧
鉄道:鋼構造物塗装設計施工指針
  JIS規格    道 路    鉄 道 
  厚膜形ジンクリッチペイント 1種    無機ジンクリッチペイント    厚膜型無機ジンクリッチペイント 
  厚膜形ジンクリッチペイント 2種    有機ジンクリッチペイント    厚膜型エポキシ樹脂ジンクリッチペイント 
  構造物用さび止めペイント B種    エポキシ樹脂塗料 下塗    厚膜型エポキシ樹脂系塗料 下塗 
  鋼構造物用耐候性塗料 中塗り    ふっ素樹脂塗料用 中塗    ポリウレタン樹脂塗料用 中塗 
  鋼構造物用耐候性塗料 上塗り    ふっ素樹脂塗料 上塗     ポリウレタン樹脂塗料 上塗 
注:道路,鉄道とも塗装系開発の歴史的背景が違うこと,JIS規格の制定が両機関で実用した後であること,JIS規格も安直に名称変更をしてきた過去があることなど,名称の統一は容易でないと考える。

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