化 学 (無機化学)

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 ここでは,環境省の取り組みを参考に,日本の環境問題に関連して,【生物多様性の保全】【循環型社会の形成】【低炭素社会の構築】【大気・海洋・水・土壌環境の保全】【化学物質の環境リスクの管理】に項目を分けて紹介する。

 【生物多様性の保全】

 平成 7 年( 1995 年)に,地球環境保全に関する関係閣僚会議で,日本の「生物多様性国家戦略」 が決定された。その後,日本の生物多様性政策の基本法として,平成 20 年( 2008 年)に生物多様性基本法が制定され,国による生物多様性国家戦略 策定の義務付け,地方公共団体による生物多様性地域戦略策定の努力義務が規定された。
 生物多様性基本法は,これまでにあった「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」( 1992年),「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」( 2002 年),「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」( 2004 年)などとは異なり,より包括的に野生生物の種や自然環境保全を目的とする法律である。
 
 生物多様性とは,多様な生きものは,一つひとつに個性があり,全てが直接に,間接的に支えあっているとの考えから,生態系の多様性,種の多様性,遺伝子の多様性という3つのレベルでの多様性を含む。

 【循環型社会の形成】

 廃棄物・リサイクルの対策については,1970 年(昭和 45 年)に制定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)によって,個別事案として対処されてきたが,環境保護の観点から対処する必要性が高まってきた。
 すなわち,廃棄物発生量の増大,最終処分場の不足,不法投棄の増大などの問題など,大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会から脱却し,環境への負荷が少ない「循環型社会」を形成する必要性が高まった。このため,2000 年(平成 12 年)に循環型社会形成推進基本法が制定された。
 
 循環型社会形成推進基本法
 廃棄物・リサイクル対策に関する従来からある個別法の上位法としての役割をもつ基本法で,法の第 2 条第 1 項には,循環型社会を「製品等が廃棄物等となることが抑制され,並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され,及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分(廃棄物として処分)が確保され,もって天然資源の消費を抑制し,環境への負荷ができる限り低減される社会」と定義している。
 
 循環資源については,いわゆる 3R といわれる取り組み,すなわち「発生抑制」(リデュース)>,「再使用」(リユース)>,「再生利用」(マテリアルリサイクル)>,「熱回収」(サーマルリサイクル)>,「適正処分」の順に処理の優先順位を定めている。
 法では,原則的にリサイクルより優先順位の高い 2R (リデュース,リユース)の取組がより進む社会経済システムの構築を目指している。

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 【低炭素社会の構築】

 地球温暖化防止
 人間活動の拡大に伴い大気に排出される二酸化炭素,メタン等の温室効果ガスにより地球が温暖化している。
 温室効果ガスとされるものには複数の化学物質が含まれる,日本での調査結果による主要な温室効果ガスの量と種類を下図に示す。

日本の温室効果ガス排出( 2013 年度)

日本の温室効果ガス排出( 2013 年度)
出典:環境省 平成27年度「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」

 1997 年(平成 9 年)に,温室効果ガス排出量削減を約束した京都議定書を受け,日本政府は緊急に推進すべき地球温暖化対策を「地球温暖化対策推進大綱」としてまとめ,1998 年(平成 10 年)には,温暖化対策推進法温対法などとも呼ばれる地球温暖化対策の推進に関する法律が制定された。
 同法の 2013 年(平成 25 年)改正で,対象とする「温室効果ガス」は,二酸化炭素( CO2 ),メタン( CH4 ),一酸化二窒素亜酸化窒素: N2O ),ハイドロフルオロカーボン( HFCs )のうち政令で定めるもの,パーフルオロカーボン( PFCs )のうち政令で定めるもの,六ふっ化硫黄( SF6 ),三ふっ化窒素( NF3 )が指定されている。
 2015 年(平成 27 年)改正の地球温暖化対策の推進に関する法律施行令では,19 種のハイドロフルオロカーボン,9 種のパーフルオロカーボンが温室効果ガスとして定められている。
 
  オゾン層破壊の防止策
 モントリオール議定書の採択を受け,1988 年(昭和 63 年)に特定物質の規制などによるオゾン層の保護に関する法律(オゾン保護法)が制定された。
 1993 年末にハロン,1995 年末にはクロロフルオロカーボン ( CFC ),1,1,1 -トリクロロエタンなどの生産が全廃された。
 なお,モントリオール議定書には,規制対象物質としてフロン 11,フロン 12,フロン 113,フロン 114,およびフロン 115 の 5 種類のフロン特定フロンとよぶ)およびハロン 1211,ハロン 1301,ハロン 2402 の 3 種類のハロン(臭素(Br)の入っているフロン)を示している。
 
 すでに使用されているフロン類に対しては,回収や排気に関し,2001 年(平成 13 年)に制定された特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律で規制されている。この法は,2013年(平成 25 年)に改正され,法律名フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン回収・破壊法)となった。

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 【大気・水・土壌環境の保全】

 自然保護に関しては,明治時代から自然保護のための法律が整備されていた。野生鳥獣保護を目的とする狩猟法は 1895 年(明治 28年)に,森林保護を目的とする森林法が, 1897 年(明治 30 年)に,天然記念物や景勝地の保護を目的に,1919 年(大正 8 年)に史蹟名勝天然記念物保存法,1931 年(昭和 6 年)には国立公園法が整備されている。
 その後,経済の高度成長に伴い国土開発の広域化・大規模化により,これまでの個別の法律での対応が困難になり,1972 年(昭和 47 年)に自然環境保全法が制定された。
 
 また,産業活動により引き起こされた公害問題が顕在化し,日本の四大公害病と呼ばれる水俣病,第二水俣病,四日市ぜんそく,イタイイタイ病の発生を受け,1967 年(昭和 42 年)に公害対策基本法が公布・施行された。
 なお,この法律では,大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭の7つを公害と規定していた。
 四大公害病
 水俣病:熊本県チッソ水俣工場,1956年熊本県水俣湾,有機水銀による水質汚染や底質汚染
 第二水俣病(新潟水俣病):新潟県昭和電工鹿瀬工場,1964年新潟県阿賀野川流域,有機水銀による水質汚染や底質汚染
 四日市ぜんそく:三重県四日市コンビナート,1960年から1972年三重県四日市市,亜硫酸ガスによる大気汚染
 イタイイタイ病:岐阜県三井金属鉱業神岡事業所(神岡鉱山),1910年代から1970年代前半に富山県神通川流域,カドミウムによる水質汚染
 
 公害対策基本法で公害対策を,自然環境保全法で自然環境対策を行っていたが,複雑化・地球規模化する環境問題に対応できず,1993年(平成 5 年)に公害対策基本法を廃止し,環境基本法が制定され,これとの整合性を確保するため,自然環境保全法も改訂された。
 環境基本法は,日本の環境政策の根幹を定める基本法で,具体的施策は規定の趣旨に基づく個別の法制上および財政上の措置により実施される。なお,上述した循環型社会形成推進基本法および生物多様性基本法は,環境基本法の基本理念に基づき制定される下位法として位置付けられる。
 
 現在制定されている環境関連の主な法規制を大気環境,海洋・湖沼・河川などの水環境,土壌環境,その他に分けて紹介する。
 大気環境を規制する法律には,1968 年(昭和 43 年)制定の大気汚染防止法,1992 年(平成 4 年)制定の自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法,1990 年(平成 2 年)制定のスパイクタイヤ粉じん防止法,1971 年(昭和 46 年)制定の悪臭防止法,1968 年(昭和 43 年)制定の騒音規制法,1976 年(昭和 51 年)制定の振動規制法,1999 年(平成 11 年)制定のダイオキシン類対策特別措置法,2001 年(平成 13 年)制定のポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法などがある。
 
 水環境を規制する法律には,1970 年(昭和 45 年)制定の水質汚濁防止法,1970 年(昭和 45 年)制定の海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律,1973 年(昭和 48 年)制定の瀬戸内海環境保全特別措置法,1984 年(昭和 59 年)制定の湖沼水質保全特別措置法などがある。
 
 土壌環境を規制する法律には,2002 年(平成 14 年)制定の土壌汚染対策法,1970 年(昭和 45 年)制定の農用地の土壌の汚染防止等に関する法律,1948 年(昭和 23 年)制定の農薬取締法などがある。

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 【化学物質の環境リスクの管理】

 新たな化学物質が数多く開発され続けている。これらの化学物質が環境に与えるリスクを管理するために,次に示すようなの法規制がある。
 1973 年(昭和 48 年)制定の化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化学物質審査規制法),1999 年(平成 11 年)制定の特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法/PRTR法)などがある。
 
 化学物質審査規制法
 PCBによる環境汚染問題を契機として,1973 年に制定された法律で,新たに製造・輸入される化学物質について事前に人への有害性などについて審査するとともに,環境を経由して人の健康を損なうおそれがある化学物質の製造,輸入及び使用を規制する仕組みである。
 2004 年からは,化学物質の動植物への影響に着目した審査・規制制度,環境中への放出可能性を考慮した措置等を導入している。 2010 年からは,化学物質の包括的な管理の実施で,有害化学物質による人や動植物への悪影響を防止するため,国際的動向を踏まえた規制合理化のための措置等を講じている。.
 規制対象の化学物質
 ① 第一種特定化学物質( PCB 等 28 物質)
 特徴:難分解性,高蓄積性及び人又は高次捕食動物への長期毒性を有する化学物質。
 措置:製造又は輸入の許可,使用の制限,政令指定製品の輸入制限,物質 指定等の際の回収等措置命令等。
 ② 第二種特定化学物質(トリクロロエチレン等 23 物質)
 特徴:人又は生活環境動植物への長期毒性を有する化学物質。
 措置:製造,輸入の予定及び実績数量を把握,製造又は輸入の制限の認定し,製造又は輸入予定数量の変更を命令,当該物質使用製品のとるべき措置について技術上の指針公表・勧告,表示の義務付け等。
 ③ 第一種監視化学物質(酸化水銀(Ⅱ)等 37 物質)
 特徴:難分解性でかつ高蓄積性があると判明した既存化学物質。
 措置:製造・輸入数量の実績等を把握,合計 1 t 以上の物質名,製造・輸入数量の公表,製造・輸入事業者に対し有害性調査指示など。
 ④ 第二種監視化学物質(クロロホルム等 1070 物質)
 特徴:人への長期毒性のおそれがある化学物質。
 措置:製造・輸入数量の実績等を把握,合計 100 t 以上の物質名と製造・輸入数量の公表,製造・輸入事業者に対し有害性調査指示。
 ⑤ 第三種監視化学物質(ノニルフェノール等 277 物質)
 特徴:動植物一般への毒性(生態毒性)のある化学物質。
 措置:製造・輸入数量の実績等を把握,合計 100 t 以上の物質名と製造・輸入数量の公表,製造・輸入事業者に対し有害性調査指示。
 
 化管法/PRTR法
 一般的には,PRTR とは,有害性のある多種多様な化学物質がどのような発生源から,どれくらい環境中に排出されたか,あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し,集計し,公表する仕組みと説明される。
 PRTR 制度の対象となる化学物質は,「第一種指定化学物質」として計 462 物質が指定され,そのうち,発がん性,生殖細胞変異原性及び生殖発生毒性が認められる 15 物質は「特定第一種指定化学物質」として区分されている。
 対象となる化学物質や排出量集計については,算出のためのマニュアルが準備されている。

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