腐食概論:鋼の腐食

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         【腐食疲労】

 金属材料の引張強さ以下の応力(stress)であっても,繰り返し加えられると,金属に微細な割れが多数生じ,ついには材料が破断する。この現象を金属疲労(metal fatigue)という。
  金属材料に加える繰り返し加えられる最大応力と破断に至る繰り返し数の関係を求める試験方法を疲労試験(fatigue test)といい,最大応力を変えて求めたを示図を S-N 曲線(S-N curve)という。なお,破断に至る繰り返し数は,疲労寿命(fatigue life)や破断繰り返し数(number of cycles tofailure)と呼ばれる。
 いくら繰り返しても割れの発生しない最大応力の存在が知られている。これを疲労限度(fatigue limit),又は耐久限という。(なお,アルミニウムは,鋼と異なり,明確な疲労限度を示さない)
 金属材料の疲労試験を腐食環境中で実施すると,模式図に示すように,同じ応力でも腐食しない大気中などの結果と異なり,より少ない繰り返し数で割れが生じるとともに,疲労限度が認められない結果を示す。これが繰り返しの応力と腐食の相乗作用によって起きる腐食疲労(corrosion fatigue)である。

鋼のSN曲線(模式図)

鋼のSN曲線(模式図)

 腐食疲労は,前出の応力腐食割れとは異なる現象である。用語が似ているため混同され易いので注意が必要である。おおざっぱにいうと,応力腐食割れは特定の環境で発生する特異な現象であるが,腐食疲労は腐食環境中において,繰り返しの応力を受ける金属の寿命(疲労寿命(fatigue life)が短くなる現象である。
 
 鋼で構成される海洋構造物では,海水の腐食作用と波浪などの繰返し応力により,腐食疲労に対する対策が求められるほど顕著な影響を受けている。
 鋼の腐食疲労による割れは,金属疲労による割れと同様に粒内割れ(transcrystalline crack)である。金属疲労による割れは,原則として1本の割れであるが,腐食疲労による割れは,破壊に至った割れの近傍にいくつかの割れが生成することが多い。
 腐食疲労の発生機構を明確に示せるほど研究は進んでいない。この中で,次のものが発生機構として考えられている。
 ● 疲労により生じたミクロ亀裂部の腐食が孔食状に発達し,この個所の応力集中で亀裂が進む。
 ● 通常の金属疲労では,亀裂進展の過程でミクロ亀裂の再接着が起きている。腐食環境中では,ミクロ亀裂表面に腐食生成物が吸着し,再接着を抑止するため亀裂進展が促進される。
 
 【参考】
 腐食疲労(corrosion fatigue)
 腐食と繰り返し応力との相乗作用によって,金属材料に生じる強度低下。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 繰り返しの応力単独の場合より金属疲労が促進され,応力から計算される疲労寿命より著しく短命になり,損傷・事故の原因になり易い。
 疲労試験(fatigue test)
 試験片に繰返し応力又は変動応力を加えて,疲労寿命,疲労限度などを求める試験。応力の種類に応じて,ねじり疲労試験,軸荷重疲労試験,回転曲げ疲労試験,平面曲げ疲労試験などに分類される。【JIS G0202「鉄鋼用語(試験)」】
 S-N 曲線(S-N curve)
 振幅一定で繰り返し負荷される応力(stress , S),材料が破断するまでの繰り返し数(疲労寿命,破断繰り返し数,fatigue life , number of cycles tofailure , N )の関係を示した曲線を SN曲線,SN 線図,ヴェーラー曲線という。
 応力レベルを同じとしたときの破断繰り返し数のばらつき(分布)を疲労寿命分布(fatigue life distribution),破断繰り返し数を同じとしたときの応力レベルの分布を疲労強度分布(fatigue strength distribution)という。
 SN曲線は,疲労試験などの結果から得られる。金属材料の疲労試験については,JIS Z2273「金属材料の疲れ試験方法通則General Rules for Fatigue Testing of Metals」などに準じて行われる。
 疲労寿命(fatigue life, numbere of cycles to failure)
 疲れ寿命ともいわれ,疲れ破壊を生じるまでの応力の繰り返しの回数。Nの記号を用いる。【JIS G0202「鉄鋼用語(試験)」】
 疲労限度(fatigue limit , endurance limit)
 材料工学において,物体が振幅一定の繰返し応力を受けても疲労破壊に至らないと見なされる応力値を疲労限度,疲労限,疲れ限度,耐久限度,耐久限などという。
 無限回数の繰返しに耐える応力の上限値。通常,応力振幅で表す(応力振幅の代わりに,応力範囲又は最大応力で表してもよい。)。ΣW 又は τW の記号を用いる。【JIS G0202「鉄鋼用語(試験)」】
 粒内割れ(transcrystalline crack , transgranular cracking)
 多結晶体とも呼ばれる微小な結晶の集合した実用金属材料の割れの形態は,結晶粒界に沿って進行する粒界割れ,結晶粒の内部に進行する貫粒割れ(粒内割れ)に分けられる。

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