腐食概論:鋼の腐食
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鋼腐食の基礎
全面腐食と局部腐食
全面腐食(uniform corrosion)
金属表面で均一に腐食する形態の通称で,一般的には均一腐食(uniform corrosion)という。均一腐食は,鋼表面の表面状態,化学組成などわずかな違いが原因で,微視的なアノードとカソードの組合せ,すなわちミクロ腐食電池(micro-galvanic cell corrosion)が多数形成される。
ミクロ腐食電池のアノードとカソードは,時間と共に,その位置を移動しながら腐食が進む。このため,金属全面が比較的均一に腐食する。
局部腐食(localized corrosion)
金属表面の局部に集中して起きる腐食である。この腐食は,特定の条件が整ったときに,金属表面に巨視的なアノードとカソードの組合せ,すなわちマクロ腐食電池(macro-galvanic cell corrosion)が形成される。
マクロ腐食電池のアノードとカソードは,時間をおいても移動せず,明確に分離され,位置が固定される。このため,固定されたアノードのみが局部的に著しく腐食する。不動態化する金属で発生するとすき間腐食(crevice corrosion)や孔食(pitting corrosion)になる。
局部腐食の代表的なものには,通気差電池腐食(differential aeration corrosion)ともいわれる濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)や異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)などがある。
【参考】
電極(electrode)
電気化学では,広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。【JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」】
電極を示す名称には,カソード・アノード,正極(+極)・負極(-極),陰極・陽極などの名称が使われている。特に,陰極・陽極の用語は,技術分野で示す意味が異なり,混乱した使用例が見られるので,注意が必要である。
なお,カソード(cathode)は還元反応を生じる電極,アノード(anode)は酸化反応を生じる電極をいう。
均一腐食(uniform corrosion)
読み「きんいつふしょく」,金属表面にほぼ均一に生じる腐食。全面腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
局部腐食(local corrosion)
読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
すき間腐食(crevice corrosion)
濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)の一種で,金属又は金属と他の材料との間にすき間が存在する場合,すき間の内外においてイオン,酸素などの濃淡電池が構成されて生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
酸素の濃淡のみで生じる濃淡電池は通気差電池(differential aeration cell)といわれ,これによる腐食を通気差腐食(differential aeration corrosion)という。
孔食(pitting corrosion)
読み「こうしょく」,金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)
読み「のうたんでんちふしょく」,金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
濃淡を原因とする電位差で生じた電池(マクロ腐食電池)による腐食で,広義の電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種である。なお,酸素の濃淡電池形成の場合を通気差腐食(differential aeration corrosion)などともいう。
マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)はマクロセルともいわれ,アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)
異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による腐食一種であるが,ガルバニック腐食(galvanic corrosion)という場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが一般的である。なお,電解質を介して電気回路が形成し腐食する場合を接触腐食ともいわれる。
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