化 学 (無機化学)

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 ここでは,石油製品に関連し,【石油の精製工程】【石油ガス】【ナフサとガソリン】【ケロシン(ジェット燃料油,灯油)】【軽油】【重油】に項目を分けて紹介する。

 【石油の精製工程】

 日本の石油利用は,熱源として約 40 %動力源として約 40 %,合成樹脂や合成ゴムなどの製品として約 20 %である。
 石油の精製とは,原油から目的に適した成分や特性を有する石油(石油製品)を得るための最初の工程である。
 石油の精製は,原油を 350 ℃以上に加熱し,下図に示すように,蒸留塔を用い,構成する成分の沸点の範囲に分け(分留て得られる。
 
 沸点 35 ℃以下の常温で液化しない物質(分子量の小さいプロパン,ブタンなど)は蒸留塔の最上部から石油ガスとして得られる。高圧下で液化し,輸送し易くした製品を液化石油ガス LPGという。
 蒸留塔では,沸点の範囲で分留され,沸点範囲 35 ~ 180 ℃程度の留分ナフサ,ガソリン)沸点範囲 170 ~ 250 ℃程度のケロシンジェット燃料油や灯油沸点範囲 240 ~ 350 ℃程度の軽油沸点が 350 ℃以上の蒸留塔に残った残油に分けられる。

石油の精製

石油の精製
出典:(一財)日本エネルギー経済研究所石油情報センターWhat’s 石油

 

 【石油ガス】

 常圧蒸留装置で得られる沸点範囲 35 ℃以下のもを石油ガス( petroleum gases )という。石油ガスは, 炭素数 4 以下の炭化水素で構成され,プロパン,プロピレン,ブタン及びブテン(ブチレン)を主成分とする。製品として出荷する場合は,石油ガスを高圧下で液化した液化石油ガス(LPG :liquefied petroleum gas )として扱われ,燃料ガス及び工業用原料ガスとして用いられる。
 
 JIS K 2240 「液化石油ガス(LP ガス): Liquefied petroleum gases 」の品質規定では,用途によって 1 種(家庭用燃料,業務用燃料)2 種(自動車用燃料,工業用燃料,工業用原料)の 2 種類に分けられる。
 さらに,組成の違い,すなわち(プロパン+プロビレン)と(ブタン+ブテン)の比率の違いにより,1 種は 1 号から 3 号に,2 種は 1 号から 4 号に細分されている。
 
 全ての品種において,硫黄分 0.0050 質量%以下,銅板腐食試験( 40 ℃,1 時間)で銅板の変色度を評価し,判定 1 以下(わずかに変色)と規定されている。
 すなわち, 燃焼において,水,炭素酸化物以外に硫酸などの腐食性成分の発生はほとんどない品質である。

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 【ナフサとガソリン】

 常圧蒸留装置で得られる沸点範囲 35 ~ 180 ℃程度のもをナフサ( naphtha )という。ナフサは,炭素数 5 ~ 10 の化合物で構成され,粗製ガソリンや直留ガソリンなどとも呼ばれる。
 
 ナフサのうち沸点範囲 35 ~ 80 ℃程度のものを軽質ナフサといい,石油化学製品生産の原料供給元のエチレンプラントの原料として使用される。
 沸点範囲 80 ~ 180 ℃程度のものを重質ナフサといい,ガソリンや芳香族炭化水素製造の原料として使用される。
 
 通常ガソリン( gasoline )という場合は,ガソリンエンジン用にナフサを改質・異性化などの化学的処理をしたもので,自動車ガソリン( JIS K 2202 ),航空ガソリン( JIS K 2206 ),工業ガソリン( JIS K 2201 )がある。
 
 自動車ガソリンは,自動車や類似の内燃機関に使用される燃料で,JIS K 2202 「自動車ガソリン」には,オクタン価(リサーチ法)の違う 1 号と 2 号,それぞれに酸素分をエタノール添加などで増加させた 1 号(E)と 2 号(E)の計 4 種類が規定されている。
 全ての品種において,硫黄分 0.0010 質量%以下,銅板腐食試験( 50 ℃,3 時間)で銅板の変色度を評価し,判定 1 以下(わずかに変色)が規定されている。
 
 航空ガソリンは,航空ピストン発動機用ガソリンで,JIS K 2206 「航空ガソリン」でオクタン価によって,1 号(80/87 航空ガソリン),3 号(100/130 航空ガソリン),4 号(115/145 航空ガソリン)の 3 種類に分類されている。
 全ての品種において,硫黄分 0.05 質量%以下,銅板腐食試験( 100 ℃,2 時間)で銅板の変色度を評価し,判定 2 以下(中程度に変色)が規定されている。
 
 工業ガソリンは,洗浄,溶解,希釈,抽出などの用途に用いられるガソリンで,JIS K 2201 「工業ガソリン」では,沸点範囲の低い方から,1 号(ベンジン:洗浄用),2 号(ゴム揮発油:ゴム用溶剤,塗料用),3 号(大豆揮発油:抽出用),4 号(ミネラルスピリット:塗料用),5 号(クリーニングソルベント:ドライクリーニング用,塗料用)に分類されている。なお,カッコ内は,(通称:主な用途)を意味する。

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 【ケロシン(ジェット燃料油,灯油)】

 沸点範囲 170 ~ 250 ℃程度のもをケロシン( kerosene )といい,炭素数 10 ~ 14 程度の化合物が主成分である。
 ケロシンは,灯油,ジェット燃料,ケロシン系ロケット燃料などの石油製品の原料として用いられる。
 
 IS K 2203 「灯油:Kerosine 」には,主として灯火用,暖房用,ちゅう(厨)房用,石油発動機用の灯油,溶剤用及び洗浄に用いる灯油の 2 種類の灯油が規定されている。
 1 号灯油は,灯火用,暖房用及びちゅう(厨)房用燃料,燃料電池用で,硫黄分 0.0080 質量%以下(燃料電池用は 0.0010 質量%以下),銅板腐食試験( 50 ℃,3 時間)で銅板の変色度を評価し,判定 1 以下(わずかに変色)が規定されている。
 2 号灯油は,石油発動機用燃料,溶剤及び洗浄用で,硫黄分 0.5 質量%以下の規定はあるが,銅板腐食試験の規定はない。
 
 一般にジェット燃料といわれるケロシン は,JIS K 2209 「航空タービン燃料油:Aviation turbine fuels 」に相当する。ジェット燃料には,ほぼケロシンからなる灯油形(ケロシン系)と,ナフサを混ぜる広範囲沸点形(ワイドカット系)に分けられる。
 JIS 規格では,灯油形の 2号 Jet A ,灯油形で低析出点の 1 号 Jet A-1 ,広範囲沸点形の 3 号 Jet B の3種類が規定されている。
 全ての品種において,硫黄分 0.3 質量%以下,銅板腐食試験( 100 ℃,2 時間)で銅板の変色度を評価し,判定 1 以下(わずかに変色)が規定されている。

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 【軽油】

 軽油(diesel fuel )は,沸点範囲が 240 ~ 350 ℃ 程度で,炭素数14 ~ 18程度の化合物を主成分とする石油製品である。
 ディーゼルエンジンの燃料用途のものをディーゼル燃料ともいい,自動車(特に大型車)・鉄道車両・船舶用のディーゼル燃料が日本の軽油消費の 95 %を占める。
 JIS K 2204 「軽油:Diesel Fuel 」の品質規定では,流動点によって,夏季用の特 1 号,1 号,冬季用の 2 号,寒冷地用の 3 号,特 3 号の 5 種類に分類している。
 全ての品種において,硫黄分 0.0010 質量%以下と規定されている。

 

 【重油】

 石油の 350 ℃程度の蒸留で,揮発成分(石油ガスから軽油)を取り除いた後に残った油を残油という。
 残油は,分子量の大きい炭化水素を多く含み粘度が高い。また,石油中の硫黄分(大部分が有機硫黄分)が残留している。従って,残差油の多い重油ほど粘度が高く,硫黄分が多くなる。
 重油は,残油と軽油を混合した石油製品をいう。一般的には,混合割合が,残油 1 :軽油 9 のものを A 重油,残油 5 :軽油 5 のものを B 重油,残油9 :軽油 1 のものを C 重油に区分される。
 JIS K 2205 「重油:Fuel oil 」の2006 年改訂の品質規定では,動粘度により区分され,1 種( A 重油),2 種( B 重油)及び 3 種( C 重油)の3種類に分類している。
 さらに,1 種は硫黄分により 1 号及び 2 号に細分され,3 種は動粘度により 1 号,2 号及び 3 号に細分されている。
 硫黄分の規定は,1 種 1 号で 0.5 質量%以下,1 種 2 号で 2.0 質量%以下,2 種で 3.0 質量%以下,3 種 1 号で 3.5 質量%以下,3 種 2 号と 3 号には硫黄分の表示義務は規定されるが,含有量の上限値の規定はない。
 
 重油の用途
 現在実用される重油は,1 種( A 重油)と3 種( C 重油が中心で,2 種( B 重油)の実用が殆ど無くなっているので生産量も非常に小さい。
 低硫黄の A 重油 ( 1 種 1 号 ) は,農耕機,漁業用の中小型船舶の燃料として,暖房,給湯,加熱を目的としたビル,病院,学校,食品工場などで,環境配慮型のボイラに用いられる。
 硫黄分を多少含む A 重油 ( 1 種 2 号 ) は,非自動車用ディーゼルエンジン,暖房,給湯,加熱を目的とした小・中規模ボイラに用いられる。
 硫黄分の多い C 重油 ( 3 種 ) は,要求粘度に応じた品質の物が,船舶用の大型ディーゼルエンジン,発電所,工場,地域冷暖房などの大規模ボイラに用いられる。残油に含まれる不純物や硫黄分が多いので,これらの影響(硫酸による腐食など)を考慮した対策が施されている。

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