腐食概論:鋼の腐食
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大気腐食(実環境因子の影響)
飛来塩分について
飛来塩分(flying salinity)
用語の定義があいまいで,研究者によっては,ニュアンスの異なる意味で使用されているのが現状である。多くの場合は,植物,構造物や電気設備などの塩害(salt damage , salt injury)の原因物質である飛来海塩粒子(airborne sea salt particles)を含む外来(飛来)の塩分を指す用語として用いられる。
なお,「塩害」とは,一般的に“多量の塩分によって農作物その他の植物や電気設備,鋼,コンクリート構造の施設などが害を受けること”と理解されている。
陸上鋼構造物の塩害では,塩化物イオンの影響を受け,鋼腐食の促進,防食対策として施した金属めっき被膜などの早期劣化が問題となる。
塩化物イオンの影響で腐食促進する場合には,天然の塩化物粒子や塩水溶液が飛来し腐食する場合の他に,凍結防止剤(antifreezing agent)などの塩化物イオンを含んだ薬剤の不適切な使用・取り扱いで腐食する場合,薬剤の化学反応で塩素ガス,塩酸ガスが発生し腐食する場合などが考えられる。
鋼構造物の腐食に影響する主な飛来塩分には,塩化物イオンを多く含む「海塩粒子」,海岸の「海水飛沫(しぶき)」などの天然由来の塩分の他に,車の走行で飛散した「凍結防止剤」などの人為的な塩分などが対象となる。
具体的には,海洋構造物や海岸近くの構造物では,海水飛沫の影響を強く受ける。海を起源とする海塩粒子の飛翔範囲が広いので,多くの陸上構造物の腐食に影響する。
次いで,道路構造物,及び道路周辺構造物の腐食には,道路で冬季に散布される凍結防止剤(融雪剤)を含む水溶液の漏水,飛散・付着による影響を受ける。
海塩粒子(sea salt particles)
海塩粒子は,海岸の波打ち際及び/又は海上で波頭が砕けたときに発生する海水ミストが,風で運ばれて飛来した粒子。海塩粒子の大きさは,約 0.01μm~20μm である。【JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」】腐食の激しいことで知られる海岸地帯で計測される“飛来塩分量”の値には,厳密な意味での飛来海塩粒子量の他に,海岸で岩礁やブロックへの衝突や波頭が崩れて生成した海水飛沫(海水滴)が強風で運ばれたいわゆる“しぶき”(splash)の影響が加わる。
凍結防止剤(antifreezing agent)
自動車のスパイクタイヤ使用禁止により,道路の冬季の安全確保を目的に,凍結防止や融雪を目的に散布される薬剤を凍結防止剤という。種々ある薬剤の中で,入手が容易で,安価な塩化ナトリウム系(NaCl),塩化カルシウム系(CaCl2)の使用量が多い。凍結防止剤の使用は,凍結の恐れのある路面を対象とするため,高速道路ではほぼ全国の路面に散布されている。一般道においても,河川橋,跨道橋,跨線橋,勾配のきつい坂道などでの散布が比較的広い地域で行われている。
散布は,路面状況によるが,1m2当たり 20~40g 程度使用されている。
【参考】
飛来海塩粒子(airborne sea salt particles)
大気中に含まれるエアロゾル粒子の中の海塩粒子を指す。
しぶき(splash , spray)
飛沫ともいい,水などが細かく飛び散ること。または,その水滴をいう。
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