腐食概論:腐食の基礎

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  【酸化還元反応】

 JIS Z 0103「防せい防食用語」では,腐食(corrosion)を“金属がそれをとり囲む環境物質によって,化学的又は電気化学的に侵食されるか若しくは材質的に劣化する現象”と定義している。
 “化学的,電気化学的に侵食”とは,金属表面の原子が酸化され金属イオンとなり,金属表面に接触した環境物質が還元されること,すなわち酸化還元反応(oxidation-reduction reaction)で進む金属の侵食である。
 電気化学(electrochemistry)とは,化学変化に伴う電気的現象,又は電気の関与する化学変化(電池・電極反応・電離など)について研究する化学の一部門である。金属の腐食現象では,金属表面を電極とする電極反応と考えられる。
 電極反応(electrode reaction)
 JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」では,“電極と電解質溶液,溶融塩などのイオン伝導体との間で起こる少なくとも一つの電荷移動過程,及びそれに伴って電極近傍で起こる物質移動,化学反応などの全ての過程。狭義には,電荷移動過程だけをいう。”と定義されている。
 金属腐食に関わる電極反応には,電極と電解質で構成される系(高温腐食などの乾食),電極と電解質溶液で構成される系(淡水腐食,海水腐食などの湿食)がある。電極反応は,電解質全体又は電解質溶液全体で均一に進む現象ではなく,電極との界面で生じる酸化還元反応,すなわち不均一系の反応である。
 
 金属の腐食は,学生対象の化学実験などで経験される溶液中の酸化還元反応などの均一系の反応と異なる特徴がある。ここでは,水の関与する腐食すなわち湿食を例に,電極反応で見られる酸化還元反応の基礎を解説する。
 金属の電解溶液中での腐食は,蓄電池における電極反応と同等に考えることができる。この際に,電極(electrode)の呼称は,対象とする現象の捉え方により変わるので注意が必要である。
 電極について
 JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」では,電極を“広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。”と定義している。
 電極を示す名称には,カソード・アノード,正極(+極)・負極(-極),陰極・陽極などの名称が使われている。特に,陰極・陽極の用語は,技術分野で示す意味が異なり,混乱した使用例が見られるので,注意が必要である。
 酸化還元反応を議論する場合は,還元反応を生じる電極としてカソード(cathode)酸化反応を生じる電極としてアノード(anode)を用いる。
 電池の場合は,放電時に外部回路から電子が流れ込む,又は外部回路に向かって正電荷が流れ出す電極として正極( positive electrode , cathode ),放電時に外部回路から正電荷が流れ込む,又は外部回路に向かって電子が流れ出す電極として負極 ( negative electrode , anode )を用いる。

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  【金属腐食における酸化還元反応】

 金属の腐食における酸化反応と還元反応について,半反応を用いて解説する。なお,【電荷保存則と腐食】で紹介したように,酸化反応で生成する電荷と還元反応で消費される電荷が一致するように反応式を整理しなければならない。
 酸化反応
 アノードとなる電極表面では,電極の金属原子(M)が酸化反応により n個の電子(e)を放出し,n価の金属陽イオン(Mn+)となり,接触する水溶液中に移動する。
    M → Mn++ne-
 
 還元反応
 カソードとなる電極表面では,電極に接触する電解質溶液が酸性の場合は,水素イオン(H)の還元反応が起き,水素ガス(H2)を発生する。
 電解質溶液が,中性,又は塩基性(アルカリ性)の場合は,多くの場合は,水溶液に溶解している酸素(O2:溶存酸素という)の還元反応が起き,水酸化物イオン(OH)が生成する。
 溶存酸素以外に還元されやすい物質,又はイオン(仮にRed2+とする)が溶液中や金属表面に存在すると,これの還元反応も起きる。この例に,鋼表面に腐食生成物が付着している場合に,ある種の腐食生成物が還元で鋼腐食が進す例が挙げられる。
 電解質溶液が酸性の場合
    2e-+2H+ → H2
 電解質溶液が中性,又は塩基性の場合
    4e-+O2+2H2O → 4OH-
    2e-+Red2+ → Red
 
 金属の腐食科学では,電極アノードで起きる酸化反応をアノード反応といい,電極カソードで起きる還元反応をカソード反応ともいう。
 

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