防食概論防食の基礎

  ☆ “ホーム” ⇒ “腐食・防食とは“ ⇒ “防食概論(防食の基礎)” ⇒

 防食設計と分類

 環境遮断による防食とは

 環境遮断による防食とは,金属表面を被覆することで,金属と環境とを物理的に遮断する方法である。この方法は,用いる材料により有機被覆,無機被覆,及び金属被覆に分類される。これらの材料を鋼表面に被覆することで,腐食反応の開始や継続に関わる環境因子(水,酸素や陰イオンなど)と鋼との接触を遮断し腐食を抑制する。
 ここでは,鋼を中心とした金属の防食に用いる「塗料による塗装」「有機高分子材料によるライニング」「無機被覆」「金属めっき」「金属溶射」の概要を紹介する。
 なお,鋼橋等の構造物に適用できる塗装技術の詳細は, 【塗料・塗装】で解説し,ここでは塗料と塗装技術の基本情報を紹介する。

【環境遮断の原理】
 水と接触した鋼の表面では,【腐食は化学反応】などで示したように,鋼表面の別々の場所に発生したアノード(anode)とカソード(cathode)で次に示す電極反応(electrode reaction)が起きる。
   アノード反応: Fe → Fe2++2e        (鉄の酸化,イオン化)
   カソード反応: 2H2O+O2+4e → 4OH  (酸素の還元)
 
 アノード部では,鉄イオン( Fe2+)の生成と電子( e)を放出する酸化反応(oxidation reaction)が起きる。
 カソード部では,アノード反応と同時に,酸素( O2)と( H2O)の存在下で,アノード反応で生成した電子の消費により水酸化物イオン( OH)を生成する還元反応(reduction reaction)が起きる。
 模式的には,金属表面のアノード部で生成した電子がアノード部からカソード部に向って金属内部を移動する。これと対を成すように,金属表面に付着した水膜(電解液)中を,電子の移動に見合う電荷(イオン)が移動する。
 これにより,金属内部と接触する水膜とに電気回路が成立し,腐食反応が継続する。

被覆鋼の水中腐食機構(模式図)

被覆鋼の水中腐食機構(模式図)

 ここで説明した腐食機構から分かるように,環境遮断による防食とは,被覆を施し,カソード反応に関わる環境因子の酸素,及び/又は水を遮断することである。さらに,被覆に電気絶縁性の高い材料を用いることで,腐食反応継続に必要な電気回路を遮断できる。
【環境遮断による防食】
 環境遮断による一般的な防食方法には,塗装,有機ライニング,金属被覆,無期被覆などがある。
 塗装や有機ライニングなどの有機被覆は,酸素や水に対し透過性を有するため,鋼腐食に必要な水と酸素を完全に遮断できない。しかし,仮に透過した水と酸素で腐食反応が生じても,皮膜の電気抵抗が著しく高いこと,すなわち皮膜中のイオン移動を抑制できることにより,腐食反応の継続が困難となる。従って,実用上で問題となるほどの腐食進行(電気回路の形成)に至らない。
 金属被覆は,鋼表面への水及び酸素拡散に対し,著しく高い遮断機能を有する。従って,被覆の防せい・防食性能は,被覆の耐久性(腐食性)に依存することになる。鋼より卑な電位を持つ金属(亜鉛やアルミニウムなど)を被覆した場合には,被覆に欠陥が発生しても犠牲陽極(sacrificial anode)として作用する効果も期待して用いられる。
 無機被覆には,後述するが,セラミック系とセメント系に分けられる。セラミック系無機被覆は,金属被覆同様に環境因子の高い遮断機能を期待して用いられる。セメント系無機被覆は,環境遮断性能よりむしろ環境制御による防せい・防食対策と考えられる。すなわち,鋼表面をセメント水和物による高アルカリ性環境(約pH13)に変えることで,鋼表面の不動態化を目的とした被覆である。

  ページトップへ