防食概論:防食の基礎

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          【環境遮断とは】

 環境遮断とは,金属材料の表面を周囲の環境因子から物理的,化学的,及び電気的に遮断することである。
 環境遮断による防食には,表面被覆と構造対策がある。構造対策については次章で紹介する。
 表面被覆は,使用する材料により有機被覆,無機被覆,及び金属被覆に分類される。ここでは,鋼を中心とした金属の防食に用いる「塗料による塗装」「有機高分子材料によるライニング」「無機被覆」「金属めっき」「金属溶射」の概要を紹介する。
 なお,鋼橋等の構造物に適用できる塗装技術の詳細は, 【塗料・塗装】で解説し,ここでは塗料と塗装技術の基本情報を紹介する。

【環境遮断の原理】
 水と接触した鋼の表面では,【腐食は化学反応】などで示したように,鋼表面の別々の場所に発生したアノード部カソード部で次の反応が起きる。
   アノード反応:Fe → Fe2++2e        (鉄の酸化,イオン化)
   カソード反応:2H2O+O2+4e → 4OH  (酸素の還元)
 
 アノード部では,鉄イオン( Fe2+)の生成と電子( e)を放出する酸化反応が起きる。
 カソード部では,アノード反応と同時に,酸素( O2)と水( H2O)の存在下で,アノード反応で生成した電子の消費により水酸イオン( OH)を生成する還元反応が起きる。
 これにより,金属内部と接触する水膜とに電気回路が成立し,腐食反応が継続する。

被覆鋼の水中腐食機構(模式図)

被覆鋼の水中腐食機構(模式図)

 ここで説明した腐食機構から分かるように,環境遮断による防食とは,被覆を施し,カソード反応に関わる環境因子の酸素,及び/又は水を遮断することである。さらに,被覆に電気絶縁性の高い材料を用いることで,腐食反応継続に必要な電気回路を遮断できる。
 
【環境遮断による防食】
 環境遮断による一般的な防食方法には,塗装,有機ライニング,金属被覆,無期被覆などがある。
 塗装や有機ライニングなどの有機被覆は,酸素や水に対し透過性を有するため,鋼腐食に必要な水と酸素を完全に遮断できない。しかし,仮に透過した水と酸素で腐食反応が生じても,皮膜の電気抵抗が著しく高いこと,すなわち皮膜中のイオン移動を抑制できることにより,腐食反応の継続が困難となる。従って,実用上で問題となるほどの腐食進行(電気回路の形成)に至らない。
 金属被覆は,鋼表面への水及び酸素拡散に対し,著しく高い遮断機能を有する。従って,被覆の防せい・防食性能は,被覆の耐久性(腐食性)に依存することになる。鋼より卑な電位を持つ金属(亜鉛やアルミニウムなど)を被覆した場合には,被覆に欠陥が発生しても犠牲陽極として作用する効果も期待して用いられる。
 無機被覆には,後述するが,セラミック系とセメント系に分けられる。セラミック系無機被覆は,金属被覆同様に環境因子の高い遮断機能を期待して用いられる。セメント系無機被覆は,環境遮断性能よりむしろ環境制御による防せい・防食対策と考えられる。すなわち,鋼表面をセメント水和物による高アルカリ性環境(約pH13)に変えることで,鋼表面の不動態化を目的とした被覆である。

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