第二部:物質の状態と変化 コロイド溶液

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  ここでは,水を媒質とする会合コロイドになる界面活性剤について,【分散質による分類】, 【エマルション】, 【乳化・可溶化】  に項目を分けて紹介する。

  分散質による分類

 分散媒に液体を用いる場合
 分散質が気体(気/液コロイド)
 ( foam )と称し,この状態にすることを起泡( foaming )という。

 分散質が液体(液/液コロイド)
 エマルション( emulsion )と称し,エマルションにすることを乳化( emulsify )と称する。

 分散質が固体(固/液コロイド)
 サスペンション( suspension )と称し,これを得ることを分散( dispersion )という。

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  エマルション

 濁点のあるエマルジョンという表記も多くあるが,JIS (日本工業規格)ではエマルションと表記しているため,産業関係では濁点のないエマルションの表記が定着している。
 エマルションとは,分散質・分散媒が共に液体である液/液コロージョンをいい。エマルションにすることを乳化,この作用を持つ物質(界面活性剤)を乳化剤( emulsifier )という。
 水-油系エマルションについて
 水-油系エマルションは,油滴が水に分散する水中油滴O/W 型)エマルションと水滴が油に分散する油中水滴W/O 型)エマルションの 2 種の形態に分けられる。
 いずれの形態をとるかは,乳化剤の特性(親水性と親油性の強度),温度の影響を受ける。温度変化で O/W 型と W/O 型とで転換が起きる。この転換現象を転相と呼び,その温度を転相温度( HLB 温度)という。

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  乳化・可溶化

 エマルションは熱力学的に不安定な系のため,その状態を長時間維持するのが困難である。そのため,様々の分散方法が検討されている。
 この中で,液/液コロイドの乳化では,乳化剤(界面活性剤)を用いることが一般的である。
 なお,液/液コロイドにおいて分散質が少量のとき,ミセルの大きさが極めて小さく,外見上は透明な液体となる場合が多い。これを可溶化( solubilization )という。

 乳化剤
 乳化剤は、安定なエマルションを形成するために添加される物質で,界面活性剤などの両親媒性物質が用いられる。乳化剤には,分野ごとの要求性能に応じた食品用,化粧品用,工業用といった様々のものが存在する。

HLB 値別の主な用途

HLB 値別の主な用途

 乳化剤選択の指標:HLB 値
 HLB 値(親水親油バランス)とは,乳化剤(界面活性剤)の親水性と親油性の相対的強度の指標として用いられる。概して,HLB 値が大きいほど親水性の強度が強く,O/W 型エマルションを形成しやすく,小さいと W/O 型エマルションを形成しやすい。
 HLB 値は,ウィリアム・グリフィンが 1949 年に提唱したもので,親水基を持たない物質を HLB = 0 とし,疎水基を持たず親水基のみの物質を HLB = 20 として等分したもので,界面活性剤(乳化剤)は,その間の値が与えられる。
 HLB 値を実験で求めるのは煩雑で実用性に欠けるため,一般的には,次に示すような算定法を用いて評価している。
 アトラス法: HLB 値 = 20 ( 1 – S / A )
 エステル系の界面活性剤の鹸化価(けんか価)を S ,構成する脂肪酸の酸価を A 。
 グリフィン法: HLB 値 = 20 ×親水部の式量の総和/分子量
 デイビス法: HLB 値 = 7 +親水基の基数の総和-親油基の基数の総和。
 基数とは,官能基に応じて定めた値。
 川上法: HLB 値 = 7 + 11.7 log ( 親水部の式量の総和/親油部の式量の総和 )

HLB 値の範囲と主な用途例(太陽化学(株)等,食品用添加剤メーカーのHPより)
  HLB 値    用途    概要 
  1~3    消泡剤   低HLBの乳化剤は水に溶けにくく液面に集中しやすいため,製造ラインで発生する泡(効率低下), 製品の品質低下に影響する泡の 
除去を目的に用いられる。 
  3~6    W/O 乳化剤    マーガリン,バターなど水溶液滴を油脂等の油中に分散することを目的に用いる。 
  固/液コロイドの例には,固体のカカオ粒子やピーナッツ粒子を油脂に分散したチョコレートやピーナッツバターがある。 
  7~9    潤滑剤    表面エネルギーが小さく濡れ難い固体表面を水に濡れや易くする目的で用いる。 
  例えば,チューインガムに用いた場合,ガム表面に水膜を形成し,歯に付着するのを抑制できる。 
  8~18    O/W 乳化剤    乳飲料,アイスクリームやクリーム類など油脂を水中に分散することを目的に用いる。 
  固/液コロイドの例には,カカオ粒子を水中に分散したココアがある。 
  13~15    洗浄剤    石鹸,衣料用洗剤などに代表される身近な界面活性剤である。  
  食品工業に使用される洗浄剤は,洗浄性能より安全性が優先される。 
  15~18    可溶化剤    分散するコロイド粒子を極端に小さくし, 水に溶けない物質を溶けたかのような透明な状態を作り出すことを目的に使用する。  
  例えば,油性の香料を透明な飲料に加えるために用いる。 

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