社会資本・腐食防食関連の技術用語 (索引)
“社会資本“,及び“腐食防食“に関連する記事を理解するうえで必要となる基礎用語,法則類,定義などについて,その概要を紹介するとともに,関連するページとのリンクを構成する。
ここでは,タ行 “て”の用語を てあ~てわ, てんあ~てんく, てんけ~てんん に分けて紹介する。
用語一覧 てん~てんく
【 転位 】 ,
【 電位-pH 図 】 ,
【 展延性 】 ,
【 電解 】 ,
【 電解質 】 ,
【 電解質溶液 】 ,
【 電荷移動 】 ,
【 電解腐食 】 ,
【 電解めっき 】 ,
【 添加剤 】 ,
【 電荷保存則 】 ,
【 電気亜鉛めっき鋼 】 ,
【 電気化学 】 ,
【 電気化学的腐食試験 】 ,
【 電気化学列 】 ,
【 電気活性物質 】 ,
【 電気機関車 】 ,
【 電気事業 】 ,
【 電気事業法 】 ,
【 電気絶縁塗料 】 ,
【 電気抵抗式膜厚計 】 ,
【 電気抵抗率 】 ,
【 電気鉄道 】 ,
【 電気伝導 】 ,
【 電気伝導率 】 ,
【 電気分解 】 ,
【 電気閉回路 】 ,
【 電気防食 】 ,
【 電気めっき 】 ,
【 電極 】 ,
【 電極電位 】 ,
【 電極反応 】 ,
【 電気炉鋼 】
用語の概要と関連ページ
【転位】( dislocation )
転移(てんい)は,格子欠陥の一種の線欠陥(line defect)である。結晶面がすべる途中で一列の原子面が刃状に入り込んでいくのを刃状転位といい,最も簡単な形の転位である。他にらせん転位も知られている。
転位は,金属の機械的性質をきめる重要な構造的要素である。しかし,一方では転位部分の活性が高く,腐食の起点となることが知られている。
関連ページ : 腐食基礎:金属構造欠陥 , 腐食基礎:腐食の開始について ,
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【電位-pH 図】( EH - pH diagram )
1938年にマルセル・プールベが発表したもので,水中における化学種(特に金属)の存在領域を横軸にpH,縦軸に酸化還元電位をとって,2次元座標上に図示したもの。プルーベダイアグラム,プールベ図,E-pH図とも呼ばれる。⇒ プルーベダイアグラム
関連ページ : 防食基礎:電気防食 ,
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【展延性】( ductility )
固体物質の塑性(plasticity;そせい)の一種で,延性 (ductility) と展性 (malleability) に分けられ,変形する限界を意味する。金属加工(鍛造や圧延など)の塑性加工で重要な性質である
関連ページ : 金属概論:金属とは , 金属概論:金属の結晶構造 ,
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【電解】( electrolysis )
電解液中に浸漬した電極に電流を流し,電極で起こさせる電気化学反応。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
関連ページ : 防食基礎:電気めっきの分類 ,
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【電解質】( electrolyte )
水などの溶媒に溶けてイオン化し,その溶液が電気伝導性をもち,電流を通すと電気分解現象を起こす物質。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
一般にいうところの,溶媒中に溶解し,陽イオンと陰イオンに電離する塩を指す。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 , 腐食基礎:電荷保存則と腐食 , 腐食基礎:腐食の継続について , 鋼の腐食:淡水中の金属腐食 , 鋼の腐食:大気腐食の分類 , 鋼の腐食:海塩粒子の影響 ,
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【電解質溶液】( electrolyte solution )
水などの溶媒に溶けてイオン化し,その溶液が電気伝導性をもち,電流を通すと電気分解現象を起こすイオン性物質(電解質,いわゆる塩)の溶解で生じた正と負のイオン間に強い静電相互作用が働き,独特の挙動を示す溶液をいう。
極性溶媒は,イオンの周りを溶媒分子で取り囲み,イオンの電荷を遮蔽する。これにより,正・負イオン間の静電相互作用の力を相対的に弱めることができ,イオン性物質を陽イオン,陰イオンに安定的に解離して溶解(電離)することができる。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 , 鋼の腐食:淡水中の金属腐食 , 鋼の腐食:海塩粒子の影響 ,
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【電荷移動】( charge transfer )
原子,分子,イオンの衝突で,電子が一方から他方に移動する現象。電子捕獲,電荷移行,電荷交換衝突などともいう。
関連ページ : 鋼の腐食:湿食 ,
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【電解腐食】( electrolytic corrosion )
読み「でんかいふしょく」 ⇒ 電食,迷走電流腐食
関連ページ : 鋼の腐食:迷走電流腐食 ,
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【電解めっき】( electroplating )
電気めっきともいい,陰極(カソード)に導電性のある対象物(商品)を取り付け,陽極(アノード)には,めっきの種類により反応に直接関与する場合は活性電極を,そうでない場合は不活性電極を用いて,めっき浴中のめっきしたい物質(異種金属イオンなど)の還元反応により陰極に取り付けた対象物表面に被膜(異種金属膜)を形成する方法である。
関連ページ : 金属概論:亜鉛めっき鋼の種類 , 金属概論:電気亜鉛めっき ,
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【添加剤】( additive )
塗料に少量添加して,その性質の一つ若しくはそれ以上を改善又は変性する物質。
参考追記:可塑剤,沈殿防止剤,その他改質剤などがある。【JIS K5500「塗料用語」】
実用される材料には,アルキルアミン,ジブチルフタレート,ステアリン酸アルミニウム,ベントナイト,メチルセルロース,シリコーン,界面活性剤,ナフテン酸金属石鹸などがある。
関連ページ : 防食基礎:塗料の構成 , 塗料概論:塗料の分類(材料) , 塗料概論:塗料構成材料 , 塗料概論:塗料副要素(添加剤) , 防食塗装系:鋼橋の防食設計 ,
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【電荷保存則】( law of conservation of charge )
電荷保存則,電気量保存の法則,電気中性条件ともいい,確認できる全ての反応(化学反応,原子核反応,粒子の崩壊・対生成・対消滅など)で電荷が保存されない事例が発見されていないという経験的事実から導き出された“電荷の総量は永遠に変わらない → 閉じた系の正・負の電荷の代数和は常に一定”という法則である。
関連ページ : 腐食基礎:化学反応式とは , 腐食基礎:電荷保存則と腐食 , 腐食基礎:酸素濃淡電池 , 腐食基礎:腐食は化学 ,
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【電気亜鉛めっき鋼】( electrolytic zinc-coated steel, electro galvanized steel )
めっき液に鋼を浸漬し,電気を介して亜鉛をめっきする処理法(電解めっき)で得た鋼。工業的に用いられるめっき液には,青化浴,酸性浴,ジンケート浴などがある。
関連ページ : 金属概論:亜鉛めっき鋼の種類 , 金属概論:電気亜鉛めっき , 金属概論:電気/溶融亜鉛めっき比較 ,
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【電気化学】( electrochemistry )
化学変化に伴う電気的現象,又は電気の関与する化学変化について研究する化学の一部門。電池・電極反応・電離などの理論および応用を研究。
関連ページ : 腐食基礎:腐食とは , 腐食基礎:腐食と電気化学 , 腐食基礎:酸化還元反応とは , 腐食基礎:腐食は化学 , 腐食基礎:腐食開始と継続 , 防食設計:防食法の分類 , 防食設計:防食法の概要 , 防食基礎:電気防食 , 防食基礎:人工環境腐食試験 ,
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【電気化学的腐食試験】( electrochemicalcorrosion test )
電気化学的手法を用いて材料の腐食反応速度,腐食の可能性などを調べる試験。【JIS G 0202「鉄鋼用語(試験)」】
関連ページ : 防食基礎:人工環境腐食試験 ,
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【電気化学列】( electrochemical series )
水溶液中でイオン化し易さの相対尺度として用いられる。イオン化傾向列,イオン化列,電極電位列とも呼ばれる。⇒ イオン化傾向列
関連ページ : 腐食基礎:腐食とは , 腐食基礎:酸化還元電位 , 腐食基礎:腐食は化学 ,
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【電気活性物質】( electrochemical active substance )
電気化学的活性物質ともいい,電極において直接電荷を授受し得る物質を示す。
関連ページ : 腐食基礎:腐食開始と継続 ,
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【電気機関車】( electric locomotive )
ヴェルナー・フォン・ジーメンスがベルリンで1879年に実用化した。電源の種類で直流電気機関車,交流電気機関車,交流直流両用電気機関車に分類される。
関連ページ : 社会資本:鉄道の変遷 ,
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【電気事業】( electricity business )
電気事業法では,発電事業,送電事業および消費者に電力を供給する配電事業に分けられる。
日本では概ね1社独占の状態である。欧州各国では,発電と送電が分離されている。特に,英国では,発電・送電・配電が完全に分離されている。米国では,公営電力会社でも,事業形態がまちまちである。
関連ページ : 社会資本:電力 , 社会資本:電気事業 ,
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【電気事業法】( Electricity Business Act )
第一条(目的) この法律は,電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによつて,電気の使用者の利益を保護し,及び電気事業の健全な発達を図るとともに,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによつて,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ることを目的とする。
関連ページ : 社会資本:電力 ,
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【電気絶縁塗料】( electrical insulating varnish, insulating varnish, insulating coating, electrical insulating coating )
電気絶縁性の大きい塗膜を作る塗料。コイルワニス,コア-ワニス,エナメル銅線用ワニス,接着用ワニス,絶縁布用ワニスなどがある。【JIS K5500「塗料用語」】
JIS C 2351「エナメル線用ワニス 」参照。
関連ページ : 塗料各論:塗料分類(機能別分類) ,
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【電気抵抗式膜厚計】( electrical resistance thickness meter )
導電性の被膜(電気回路などの金属皮膜)の 2点間の電気抵抗を求めて厚みを測定する。
関連ページ : 防食基礎:腐食試験・厚み測定 ,
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【電気抵抗率】( electrical resistivity )
物質の電気の通しにくさを表ために用いられる物性値で,単位はΩ・m(オームメートル)である。
絶縁性の高い樹脂などでは,表面を流れる電流の寄与を考慮した表面抵抗率(シート抵抗;sheet resistance)と内部を流れる電流に対する体積抵抗率(volume resistivity)とを区別して扱われる。
関連ページ : 金属概論:アルミニウム合金とは , 金属概論:亜鉛について , 腐食基礎:腐食の継続について , 腐食基礎:局部腐食とは , 鋼の腐食:淡水中の局部腐食 , 鋼の腐食:腐食度比較(海洋環境) , 鋼の腐食:海洋腐食の影響要因 , 鋼の腐食:大気汚染の影響 , 鋼の腐食:迷走電流腐食 ,
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【電気鉄道】( electric railroad ,electric railway )
電気を動力として用いる鉄道で,鉄道の電化方式は,電源に直流を用いた直流電化と交流を用いる交流電化に分けられる。
関連ページ : 鋼の腐食:迷走電流腐食 ,
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【電気伝導】( electrical conduction )
⇒ 導体
関連ページ : 金属概論:金属とは ,
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【電気伝導率】( electric conductivity )
溶液がもつ電気抵抗率(Ω・m)の逆数。単位は S/m溶液がもつ抵抗率の逆数で,電極間距離を電極表面積と電気抵抗との積で除した値。SI 単位は S/m(ジーメンス/メートル)。【JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」】
注記 電気伝導率,電気伝導度及び測定セルのセル定数は,次の式で示す関係にある。
L=J×LX
ここに,L:測定試料の電気伝導率(S/m),J:セル定数( m-1 ),LX:測定した電気伝導度(S)
関連ページ : 腐食基礎:腐食の継続について , 腐食基礎:局部腐食とは , 鋼の腐食:淡水中の局部腐食 , 鋼の腐食:海洋環境(環境区分) , 鋼の腐食:腐食度比較(海洋環境) , 鋼の腐食:海洋腐食の影響要因 , 鋼の腐食:大気汚染の影響 , 防食基礎:腐食試験・化学分析 , 塗料各論:不動態化,還元系防せい顔料 ,
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【電気分解】( electrolysis )
略して電解ともいわれ,二次電池(蓄電池)の充電操作で代表されるように,自然に放置したのでは進まない酸化還元反応を外部からエネルギー(電圧)を与えることで強制的に酸化還元反応を進めて,化合物を分解する方法である。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 , 防食基礎:電気めっきの表記 ,
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【電気閉回路】( electrical circuit )
一般的には,単に電気回路(electrical circuit)を,抵抗器,インダクタ(コイル),コンデンサなどの素子(電気部品)を,所期の機能が発現するように,導体でつないだ電流のループをいうが,電気化学では,特に電流が流れる経路が確立されている閉じた回路を電気閉回路いう。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 ,
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【電気防食】( electrolytic protection )
電流の作用を用いて人為的に金属の電位を制御し,腐食を制御する方法。
水溶液環境に接している金属の電極電位を操作する方法により,電極電位を基準値(防食電位)以下に下げるカソード防食法(cathodic protection ,陰極防食ともいう),電極電位を上げて不働態領域に保つアノード防食法(anodic protection ,陽極防食ともいう)の二種に大別される。
関連ページ : 鋼の腐食:海洋環境(環境別腐食) , 鋼の腐食:海洋腐食の影響要因 , 防食設計:期待耐久性 , 防食基礎:電気防食 , 防食基礎:電気防食(陰極防食) , 防食基礎:陽極防食(排流法) , 塗料各論:ジンクリッチ系塗料 ,
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【電気めっき】( electroplated coating, electroplating )
めっき浴中で電気分解によって,表面に金属を析出させる表面処理方法。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
金属又は非金属表面に金属を電気化学的に析出させた皮膜。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
金属又は非金属表面に金属を電気化学的に析出させる方法。【JIS H0201「アルミニウム表面処理用語」】
関連ページ : 防食基礎:金属被覆(分類) , 防食基礎:電気めっき , 防食基礎:電気めっきの分類 ,
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【電極】( electrode )
電気化学では,広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。【JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」】
電極を示す名称には,カソード・アノード,正極(+極)・負極(-極),陰極・陽極などの名称が使われている。特に,陰極・陽極の用語は,技術分野で示す意味が異なり,混乱した使用例が見られるので,注意が必要である。
なお,カソード(cathode)は還元反応を生じる電極,アノード(anode)は酸化反応を生じる電極をいう。
関連ページ : 腐食基礎:酸化還元反応とは , 腐食基礎:金属表面の特徴 , 腐食基礎:腐食の開始について , 腐食基礎:腐食反応 , 腐食基礎:腐食開始と継続 , 鋼の腐食:異種金属接触腐食 , 鋼の腐食:孔食 , 鋼の腐食:粒界腐食 , 鋼の腐食:水質の影響 , 鋼の腐食:土壌腐食(マクロ腐食) , 防食基礎:電気めっき , 防食基礎:電気防食(陰極防食) , 防食基礎:陽極防食(排流法) ,
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【電極電位】( electrode potential )
JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」では
a ) 電極が溶液相などのイオン伝導体相と接しているとき,後者の内部電位に対する前者の内部電位。注記:この値を直接実測することは不可能である。
b ) 注目している電極系を,ある参照電極と組み合わせてガルバニ電池を構成させたとき,注目する電極に取り付けた金属端子の内部電位から,参照電極に取り付けた同種の金属端子の内部電位を差し引いた値。
すなわち,電極電位の絶対値を測定することは不可能で,知ることができるのは,基準とした電極との電位差である。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 , 鋼の腐食:異種金属接触腐食 , 鋼の腐食:腐食度比較(海洋環境) , 腐食基礎:酸化還元電位 , 腐食基礎:腐食し易さとは , 腐食基礎:異種金属接触腐食 , 腐食基礎:腐食は化学 , 鋼の腐食:粒界腐食 , 防食基礎:電気防食 ,
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【電極反応】( electrode reaction )
電極と電解質溶液,溶融塩などのイオン伝導体との間で起こる少なくとも一つの電荷移動過程,及びそれに伴って電極近傍で起こる物質移動,化学反応などの全ての過程。狭義には,電荷移動過程だけをいう。【JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」】
電極反応には,電極と電解質で構成される系,電極と電解質溶液で構成される 2 つの系があり。問題(研究対象)とするのは,電解質,又は電解質溶液全体で均一に進む現象ではなく,電極との界面で生じる酸化還元反応,すなわち不均一系の反応である。
関連ページ : 腐食基礎:腐食と電気化学 , 腐食基礎:酸化還元反応とは , 腐食基礎:原子のイオン化 , 腐食基礎:酸素拡散律速とは , 鋼の腐食:淡水中の金属腐食 , 鋼の腐食:淡水腐食(溶存酸素濃度の影響) , 鋼の腐食:溶存酸素の拡散 , 防食基礎:電気防食(陰極防食) , 金属概論:鉄鋼(分類) ,
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【電気炉鋼】( electric steel )
電気炉で精錬された鋼で,転炉鋼よりコスト高になるが良質な鋼が得られる。電気炉鋼は各種ステンレス鋼,耐熱鋼,構造用合金鋼,工具鋼,特殊合金鋼などに使用されている。
関連ページ : 金属概論:鉄鋼(分類)