腐食概論腐食の基礎

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 ここでは,イオン化し易さの尺度に関連し, 【酸化還元電位】, 【主な用語】 を紹介する。

 腐食の開始と継続

 酸化還元電位(イオン化し易さの尺度)

 酸化還元電位(oxidation-reduction potential)とは,酸化還元反応(oxidation-reduction reaction)が起きる場(反応系)での電子授受で発生する電極電位(electrode potential)をいう。
 酸化還元電位は,規定する条件下において,反応にあずかる物質の電子の放出しやすさ,又は受け取りやすさを定量的に評価する尺度となる。
 
 計測によって電極電位の絶対値を求めることは原理的に不可能である。このため,基準となる電極(基準電極,参照電極,照合電極などともいう)を定めて,これとの比較で,任意の酸化還元反応の電極電位を相対的に求める方法がとられる。
 
 基準電極について
 水素ガス分圧 1気圧,水素イオンの活量 1のときの電極電位を 0 V と定義する。ここで用いる電極を標準水素電極:SHE(standard hydrogen electrode)という。
 水素電極は取り扱い上の制約が多いので,一般的には,取り扱いが容易で電位の安定している銀-塩化銀電極(0.119V Vs SHE),飽和カロメロ電極(0.244V Vs SHE)などが用いられる。
 基準電極をアノード反応,求めたい酸化還元反応をカソード反応に使った電池を組み立てたときの電池の起電力が求める電極電位となる。
 
 標準酸化還元電位(standard redox potential)
 反応に関与する全ての化学種の活量が 1で,平衡状態にある時の電極電位(理論値)が標準酸化還元電位である。一般的には,標準電極電位(standard electrode potential),標準電位(standard potential),標準還元電位(standard reduction potential)とも呼ばれ,ギブズエネルギー変化⊿rG0 に対応する電位 E0 と定義される。
      rG0 = - zFE0
  ここで,z :酸化還元反応で授受される電子数,F :ファラデー定数( 96,485 C mol-1
 
 電気化学では,標準水素電極の反応を酸化反応(アノード反応)として表記するよう定められている。従って,測定対象とする電極反応は全て還元反応(カソード反応)として表示される。
 酸化還元電位の比較で,電位の負の値が大きいほど電解質中で酸化されやすいこと,すなわち電子を放出して陽イオンになり易い(イオン化傾向が大きいという)金属であることを示す。
 金属の標準酸化還元電位を,その大きさの順位並べた列を標準電位列(electromotive force series)や電気化学列(electrochemical series)という。

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 主な用語の概説

 電気化学列(electrochemical series)
 標準電位列(electromotive force series)ともいい,金属の標準酸化還元電位を,その大きさの順位並べ,金属のイオン化傾向及び一部の非金属元素の電気化学的酸化反応傾向の大きさの順を示した列である。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 イオン化傾向やイオン化列といわれることもあるが,これらと概ねの比例関係はあるが,厳密には意味合いが異なる。
 イオン化傾向(ionization tendency)
 水溶液中でイオン化し易さの相対尺度として用いられる。日本の高等学校でも,(Li, K, Ca, Na) > Mg > (Al, Zn, Fe) > (Ni, Sn, Pb) > (H2, Cu) > (Hg, Ag) > (Pt, Au)などとイオン化傾向の教育を実施している。
 イオン化傾向は,水溶液中での原子から水和イオンへの変化,すなわち原子化→イオン化→イオンの水和の過程を考慮したもので,標準酸化還元電位とは概ねで比例関係がある。
 イオン化傾向は,理想溶液状態,すなわちイオン間の相互作用の考慮する必要がない無限希釈を前提としているため,実用の濃度では必ずしもこの順序が保持されるとは限らない。
 起電力(electromotive force)
 電池の外部回路に流れる電流を減少させて,ゼロになるときの電池の電位差の極限値。
 ただし,電池の電位差は,いわゆる電池図の右側の電極に取り付けた金属端子の内部電位から左側の電極に取り付けた同種の金属端子の内部電位を差し引いたものである。
 電極電位(electrode potential)
 JIS K 0213 「分析化学用語(電気化学部門)」では次のように定義される。
 a ) 電極が溶液相などのイオン伝導体相と接しているとき,後者の内部電位に対する前者の内部電位。注記:この値を直接実測することは不可能である。
 b ) 注目している電極系を,ある参照電極と組み合わせてガルバニ電池を構成させたとき,注目する電極に取り付けた金属端子の内部電位から,参照電極に取り付けた同種の金属端子の内部電位を差し引いた値。
 すなわち,電極電位の絶対値を測定することは不可能で,知ることができるのは,基準とした電極との電位差である。
 基準電極(reference electrode)
 電極電位の測定において基準となる電位を与える電極で, 日本語では参照電極(reference electrode),照合電極(reference electrode)ともいわれる。代表的な基準電極には,水素電極( Pt /H2 /HCl ),飽和カロメル電極( Hg /Hg2Cl2 /飽和KCl ),銀・塩化銀電極( Ag /AgCl /飽和KCl )などがある。
 作用電極(working electrode)
 指示電極ともいい,電極反応を行わせるための,少なくとも 2 本の電極のうち注目している反応が進行する電極。【 JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」】

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