腐食概論:金属概論
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ここでは, 【アルミニウム合金とは】, 【アルミニウム合金の表記について】, 【主な用語】 に項目を分けて紹介する。
アルミニウム合金
アルミニウム合金とは
アルミニウム(aluminium)は,周期表第13族,原子番号13の元素で,原子量 26.98g・mol-1である。アルミニウム単体は,面心立方格子の金属で,その物性は密度 2.70Mg・m-3,融点 660.32℃,25℃でのモル熱容量 24.20J・mol-1・K-1,電気抵抗率 20℃で 28.2nΩ・m,熱伝導率 27℃で 237W・m-1・K-1,熱膨張率 25℃で 23.1μm・m-1・K-1である。
ちなみに,鉄(原子量 55.845g・mol-1)の物性は,密度 7.874Mg・m-3,融点 1538℃,25℃でのモル熱容量 25.10J・mol-1・K-1,電気抵抗率 20℃で 96.1nΩ・m,熱伝導率 27℃で 80.4W・m-1・K-1,熱膨張率 25℃で 11.8μm・m-1・K-1である。
すなわち,アルミニウムは,鉄より非常に軽く,低い温度で溶け,電気と熱を良く通し,熱変形しやすい材料であることが分かる。
アルミニウム合金には,数多くの種類があり,製造方法,熱処理方法及び合金成分で次のように分類される。
製造方法 | 熱処理方法 | 合金成分による分類 |
---|---|---|
展伸材 | 非熱処理型合金 | 1000系(純アルミニウム),3000系(Al-Mn系合金),4000系(Al-Si系合金),5000系(Al-Mg系合金) |
熱処理型合金 | 2000系(Al-Cu-Mg系合金),6000系(Al-Mg-Si系合金),7000系(Al-Zn-Mg系合金) | |
鋳造材 | 非熱処理型合金 | Al-Si系合金,Al-Mg系合金 |
熱処理型合金 | Al-Cu-Si系合金,Al-Cu-Mg-Si系合金,Al-Mg-Si系合金 |
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アルミニウム合金の表記について
アルミニウム合金(aluminum alloy)は,多種多様のため,例えば A5052P-H34 などと国際的に定められた方法で表記される。
最初の記号 A はアルミニウム合金であることを意味する。
続く 4桁の数値は合金分類(国際登録アルミニウム合金名)を示す。数値の 1桁目は合金系を,2桁目の 0 は基本合金を,0 以外の数値は基本合金の改良型や派生型を意味する。なお,国際アルミニウム合金に相当しない日本独自の材料には N と記す。
3,4桁目の 52 は合金の識別を示す。
4桁の数値に続く記号は,形状,製造条件や寸法許容を示す等級記号である。例えば板状の場合に P ,箔は H と記される。
ハイフォンの後の記号は加工・熱処理状態などの調質を示す。調質を表す記号は,JIS H 0001 「アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金-質別記号:Aluminium, magnesium and their alloys − Temper designation」に従い,5種の基本分類とそれぞれに付けられる細分類 3文字で与えられる。基本分類の記号と意味は,F(製造のままのもの),O(焼きなまししたもの),H (加工硬化したもの),W(溶体化処理したもの),T(熱処理によって F , O , H 以外の安定な質別にしたもの)と規定されている。
溶体化処理(solution treatment)とは,合金元素を固溶(原子の状態で分散)するための熱処理をいう。例えば,常温のアルミニウムに固溶できる元素は小さいが,温度を上げることで固溶できる元素の量が増える。そこで,多くの合金元素を含む合金を高温に保つことで,全ての合金元素を固溶できる。この固溶体を得るための処理を溶体化処理という。
鋳物については,JIS H 5202「アルミニウム合金鋳物:Aluminium Alloy castings」及び JIS H 5302「アルミニウム合金ダイカスト:Aluminium alloy die castings」に従う。例えば AC4C と記した場合は,最初の記号Aはアルミニウム合金であることを,続く記号はC(Casting),DC(Die Casting)を,続く数値は添加元素による種別を示す。
ダイカスト(die chasting)とは,ダイキャストともい,金属製の精密な鋳型(ダイス)の中に溶かした合金を圧力をかけて流し込み鋳造する精密鋳造法である。普通鋳物より寸法精度が高く,同一規格の製品の多量生産が可能である。適した金属には亜鉛,アルミニウム,スズ,銅などの合金がある。
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主な基本用語
- 面心立方格子(face-centered cubic)
結晶構造の一種で,「金属の基礎:金属の結晶構造」に示すように,立方体の8個の頂点と側面の中心とを格子点とする立方体を単位格子とする空間格子。 - 密度(density)
物質の単位体積の質量を意味する。単位はMg・m-3またはg・cm-3である。
水の密度との比を意味する比重と似た数値のため混同されがちであるが,比重には単位がなく,密度とは異なるので注意が必要である。 - 熱容量(heat capacity)
一定圧力下で,ある物体の温度を1度上げるのに要する熱量で,単位はJ・K(ジュール毎ケルビン)である。
1モルの物質の熱容量については,モル熱容量(molar heat capacity)といい,単位はJ・mol-1・K-1である。
単位質量の物質を単位温度上げるのに必要な熱量は,比熱容量(specific heat capacity)といい,単位はJ・g-1・K-1で表わされる。 - 電気抵抗率(electrical resistivity)
物質の電気の通しにくさを表ために用いられる物性値で,単位はΩ・m(オームメートル)である。
絶縁性の高い樹脂などでは,表面を流れる電流の寄与を考慮した表面抵抗率(シート抵抗;sheet resistance)と内部を流れる電流に対する体積抵抗率(volume resistivity)とを区別して扱われる。 - 熱膨張率(coefficient of thermal expansion)
温度の上昇による長さや体積の膨張する割合を1K(ケルビン)当たりで示したもの。単位はK-1である。熱膨張係数ともいう。
長さの変化割合を線膨張率,体積の変化割合を体積膨張率ということもある。 - 熱処理(heat treatment)
金属,主に合金を加熱・冷却して,その性質を変えることをいう。熱処理には,焼入れ・焼鈍(やきなま)し・焼戻しなどがある。 - 展伸材(wrought material)
圧延,押出し,引抜き,鍛造などの熱間又は冷間の塑性加工によって造られた板,条,管,棒,線などの製品の総称。 - 鋳造材(casting)
金属を溶かし,鋳型に流し込んで,所要の形に造られた製品。
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