防食概論防食の基礎

  ☆ “ホーム” ⇒ “腐食・防食とは“ ⇒ “防食概論(防食の基礎)” ⇒

 環境遮断(金属被覆)

 電気めっきの分類

 電気めっき(electroplating , electroplated coating)には,数多くの種類があり,それぞれの目的に応じた素地調整(surface preparation),下地処理(substrate treatment),めっき浴(plating bath)組成,電解(electrolysis)条件,めっき後の後処理(post treatment)がある。それらについては,めっき処理業者のノウハウが多く含まれる経験工学の世界になる。
 しかしながら,めっき製品の品質,試験法,検査についての規格化が求められ,次に示す日本工業規格が定められている。

    防食(corrosion prevention, corrosion protection)を主目的とした電気めっき規格
  • JIS H 8610「電気亜鉛めっき」
     鉄及び鋼素地上に,防食目的で行う電気亜鉛めっきの品質,素地調整,検査,試験について規定している。防食の目的でクロメート皮膜を施す場合は,JIS H 8625 が適用される。
  • JIS H 8611「電気カドミウムめっき」
     鉄及び鋼素地上に,防食目的で行う電気カドミウムめっきの品質,素地調整,検査,試験について規定している。防食の目的でクロメート皮膜を施す場合は,JIS H 8625 が適用される。
  • JIS H 8625「電気亜鉛めっき及び電気カドミウムめっき上のクロメート皮膜」
     電気亜鉛めっき (JIS H 8610) 及び電気カドミウムめっき (JIS H 8611) に防食目的で施したクロメート皮膜の種類,品質,素地調整,検査,試験について規定している。
  • JIS H 8617「ニッケルめっき及びニッケル-クロムめっき」
     鉄及び鋼,銅及び銅合金,亜鉛合金,アルミニウム及びアルミニウム合金素地上に防食並びに装飾目的で行ったニッケルめっき,銅-ニッケルめっき,ニッケル-クロムめっき及び銅-ニッケル-クロムめっきの品質,素地調整,検査,試験について規定している。
  • JIS H 8626「工業用電気ニッケルめっき及び電鋳ニッケル」
     鉄鋼及び非鉄金属素地上に工業用の目的(耐食性,耐磨耗性,肉盛りなどに用いることを目的)で行ったニッケルめっき及び電鋳ニッケルについて,品質,下地処理,試験,検査について規定している。電鋳とは,電気めっき法による金属製品の製造・補修又は複成法をいう。
     耐食性を目的としためっきにおいて,めっき最小厚さがJIS H 8617に規定する値の範囲内である場合には,その規格による。
  •  クロメート処理(chromating , chromate treatment , chromate filming)とは
     クロム酸又は二クロム酸塩を主成分とする溶液で金属を処理して防せい皮膜を作る表面処理方法。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
    亜鉛めっきで一般的に用いられるクロメート処理では,クロム酸(H2Na2CrO4),硫酸(H2SO4),硝酸(HNO3),リン酸(H3PO4)などを含む溶液に浸漬し,6価クロムから3価クロムへの還元反応と,亜鉛の酸化反応で生成した水酸化クロム(Cr(OH)3)とクロム酸から生成する網目構造を持ち亜鉛イオンを含んだゲル状の皮膜(クロメート処理皮膜)を形成する処理である。
    表面特性を主目的とした電気めっき規格
  • JIS H 8615「工業用クロムめっき」
     鉄,鋼及び非鉄金属素地上に耐磨耗性(abrasion resistance, wear resistance)などの工業用目的で行った電気クロムめっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
  • JIS H 8619「電気すずめっき」
     電気部品などのはんだぬれ性,防食性などの性質向上の目的で金属素地上に行った電気すずめっき(光沢又は無光沢若しくは電気めっき後に溶融処理によって溶融光沢化されためっきを含む)の品質,下地処理,試験,検査について規定している。
  • JIS H 8620「工業用金及び金合金めっき」
     金属及び非金属素地上に工業用目的(電気,電子,機械,その他の機能的部品などに用いることを目的とした特殊な性能)で行った,有効面の厚さ 0.2μm以上の金及び金合金電気めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
     金めっきとは,金含有率 99.9%以上の電気めっきを,金合金めっきとは,金含有率 58.5%以上,99.9%未満の電気めっきをいう。
  • JIS H 8621「工業用銀めっき」
     金属及び非金属素地上に工業用目的(電気,電子,機械,その他の機能的部品などに用いることを目的とした特殊な性能)で行った,有効面の厚さ 0.5μm以上の銀電気めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
  • JIS H 8624「電気すず-鉛合金めっき」
     鉄,銅及びそれらの合金素地上に電気・電子部品のはんだぬれ性,電気的特性,防食性などの向上目的で施したすず−鉛合金(すずを主として,鉛は5∼50%)めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
    装飾目的の電気めっき規格
  • JIS H 8622「装飾用金及び金合金めっき」
     金属及び非金属素地上の装飾めっき(decorative plating)(主に時計,装身具,身辺雑貨などに用いることを目的としたもので,外観,耐磨耗性などが重要視される)に関し,有効面の厚さ 0.3μm以上の金及び金合金電気めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
  • JIS H 8623「装飾用銀めっき」
     金属及び非金属素地上に装飾用目的(主に食器類,装身具,身辺雑貨などに用いることを目的としたもので,外観,耐食性及び耐磨耗性などが重要視される)で行った,有効面の厚さ 0.5μm以上の銀電気めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
  • JIS H 8626「プラスチック上への装飾用電気めっき」
     プラスチック上に装飾用目的(主として自動車,家電,日用雑貨などに用いることを目的としたもので,外観,耐食性などが重要視される)で行った電気めっきの品質,下地処理,試験,検査について規定している。
     プラスチック上の電気めっきには,ニッケルめっき(プラスチックとニッケルめっきとの密着性を改善するため,銅又は柔軟性ニッケルの下地めっきを施しためっきを含む。)及びその上のクロム,金及び金合金,銀及び銀合金,すず‐コバルト合金,すず‐ニッケル合金,すず‐銅-亜鉛合金,すず‐ニッケル‐銅合金のめっきがある。

 【電気めっき関連のJIS規格】
   JIS H 0400「電気めっき及び関連処理用語」
   JIS H 0404「電気めっきの記号による表示方法」
   JIS H 8501「めっきの厚さ試験方法」
   JIS H 8502「めっきの耐食性試験方法」
   JIS H 8503「めっきの耐摩耗性試験方法」
   JIS H 8504「めっきの密着性試験方法」

  ページのトップへ