腐食概論:腐食の基礎
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ここでは,腐食現象に関連し, 【異種金属接触腐食の可能性】, 【主な用語】 を紹介する。
腐食現象の分類
異種金属接触腐食の可能性
【局部腐食】(local corrosion)で紹介した局部電池(local cell)による代表的な腐食である異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)の発生は,電極電位が大きく異なる 2種の金属が接触した場合に生じる可能性が高い。
元素の標準電極電位(標準酸化還元電位)は,熱力学的に求まる理論値である。想定される環境(海水中)で計測された電極電位(electrode potential),すなわち自然電位(natural electric potential , spontaneous potential)との比較例を右図に示す。
このように,電極電位の準位は金属の曝される環境条件で変化することが分かる。すなわち,異種金属を組み合わせた構造を設計する場合には,対象とする環境,又は模擬環境での自然電位の計測など,異種金属接触腐食の可能性に関する適切な評価が必要である。
実用面では,炭素鋼に対しては,銅(場合によってはステンレス鋼も)との接触では炭素鋼の選択的腐食が,炭素鋼と亜鉛やアルミニウムとの接触では,亜鉛やアルミニウムの選択的腐食が問題となる。
なお,船舶で用いる犠牲陽極(アルミニウムブロック),屋外構造物などに用いられる亜鉛めっき鋼,アルミニウムめっき鋼などは,異種金属接触腐食を積極的に利用した鋼の防食方法である。
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主な用語の概説
局部電池(local cell)
ローカルセルともいい,金属側又は環境側の不均一性が原因となって,金属表面に局部的に形成された腐食電池。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
一つの金属体表面で局部的に構成される短絡電池。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
局部腐食(local corrosion)
読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
異種金属接触電池(galvanic cell , bimetallic cell)
局部電池の一種で,異種金属接触で生じるマクロ腐食電池。
異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)
読み「いしゅきんぞくせっしょくふしょく」,異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
電解質を介して電気回路が形成している場合には接触腐食ともいわれる。
マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種ではあるが,一般に,ガルバニック腐食と称した場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが通例となっている。
標準電位列(electromotive force series)
金属の標準電極電位(標準酸化還元電位)を,その大きさの順位並べ,金属のイオン化傾向及び一部の非金属元素の電気化学的酸化反応傾向の大きさの順を示した列。電気化学列ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
自然電位(natural electric potential , spontaneous potential)
実用を想定した環境におい計測された電極電位をいう。例えば,海水環境では,海水を電解質溶液として,参照電極と対象金属との開回路(電流が流れない)状態で計測された電位差(開回路電位)から求められる。
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