防食概論:防食の基礎

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          【防食法の概要】

 前項で説明した次の 4分類についてその概要を紹介する。
 【適正材料の選定】鋼表面での腐食反応が異なる鋼種への変更,すなわち適用個所の環境因子に適した耐食性の高い鋼種へ変更する方法
 環境制御【電気化学的】鋼表面の電気化学的な環境を制御する方法
 環境遮断鋼の腐食反応の継続に必要な環境成分を物理的に遮断する方法
 環境制御【構造対策】環境遮断法に近いが,鋼の腐食反応に必要な環境成分を積極的に除去するなどで鋼を取り巻く環境を制御する方法

 

 【適正材料の選定】

 構造用炭素鋼(SS材やSM材)に汎用の防食対策を適用したのでは,十分な効果を期待できない場合,及び/又は維持管理に要する経費低減,すなわちライフサイクルコスト低減を期待する場合には,構造用炭素鋼より耐食性の高い耐食材料に変更することである。
 鋼材の変更は,構造物の機械的強度に影響するので,慎重な検討が必要であること,耐食材料の歴史が浅いことなどから,鋼構造物での実用例は,耐候性鋼,高ニッケル耐候性鋼,耐海水鋼などに限られている。過去には,ステンレス鋼の適用も検討されたが,溶接性など検討すべき技術課題が多く,未だに大型構造物への実用に至っていない。
 

 【環境制御・電気化学的】

 金属の腐食現象は,【腐食と電気化学】で解説したように,電子の授受反応である。この電気化学反応は,外部から電流を与えることで制御が可能となる。
 腐食反応の電流と逆向きの電流を与えて腐食を抑止する方法を電気防食,又はカソード防食という。対象金属よりも腐食電位(自然電極電位)が卑な金属を取り付け,対象金属をアノードとして防食する方法を流電陽極防食(犠牲陽極作用)という。

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 【環境遮断】

 環境遮断による防食は,金属表面と環境とを物理的に遮断する方法である。この方法は,用いる材料により有機被覆,無機被覆,及び金属被覆に分類される。これらの材料を鋼表面に被覆することで,腐食反応の開始や継続に関わる環境因子(水,酸素や陰イオンなど)と鋼との接触を遮断し腐食を抑制する。
 有機被覆には,塗料による塗装,有機高分子材料によるライニングがある。この方法は,数多くの実績やデータがあり,信頼性の高い方法の一つである。
 しかし,有機高分子材料は,水蒸気や酸素などの環境因子に対し,完全な遮断は期待できない。さらに,金属被覆や無機被覆と異なり,紫外線やオゾンによる材質劣化を受け易い。
 金属被覆として,耐食性に優れる貴金属や耐食性の高いクロム,ニッケルなどをめっきする方法が古くから用いられていた。
 これらの耐食性に優れる金属は,自然電位が貴な材料である。このため,鋼素地との密着性低下ではがれたり,素地に達する傷などの欠陥部があると,異種金属接触により鋼が選択的に腐食する欠点がある。
 この欠点を補うために,鋼より自然電位が卑な亜鉛,アルミニウム,又はこれらの合金をめっきし,欠陥部での犠牲的陽極作用(電気防食法の一つの流電陽極方式と同じ原理)を期待する手法がある。この場合は,めっき用材料の腐食性が被覆の耐久性を決定することになる。
 無機被覆としては,古くからガラス被覆のホーローが用いられてきた。他に,モルタル被覆,セラミック被覆などがある。
 ガラス被覆は,緻密で環境因子の遮断性能に優れるが,脆性が高く,可とう性に劣るため外力で容易に割れや,はがれが生じやすいなどの欠点もある。 セラミック被覆は,防食性能より耐熱性や耐摩耗性を期待して採用されることが多い。
 モルタル被覆は,環境遮断を目的とした被覆ではなく,鋼表面を塩基性環境に変え不動態化する環境制御型の防食技術である。鉄筋コンクリートの鉄筋は,コンクリートで被覆されることで防食されている無機被覆の一種とも考えることができる。

 

 【環境制御・構造対策】

 構造対策とは,構造物や建造物の構造要因を生かして,環境因子の除去,ガス置換などの腐食環境の制御を行う方法である。
 密閉空間,又は半密閉空間を構成できる箱型構造では,環境因子の水,酸素を除湿装置,除湿剤や脱酸素剤を用いて除去する方法で,実橋での採用実績がある。
 他に,乾燥空気,脱水処理した不活性ガス(窒素ガスなど)を外気圧より高い圧力で送り込み,大気の侵入を防止することで防食する方法もある。この方法の実用例として,吊り橋の主ケーブル内部の防食などがある。
 更に,積極的に環境制御する例として,水中環境での腐食抑制剤(インヒビター)の使用や,塩基性雰囲気に変え鋼表面を不動態化する方法なども環境制御型の手法である。

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