腐食概論:腐食の基礎
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ここでは,サイト「腐食は化学反応」の 【サイトの構成】, 【主な用語】 を紹介する。
腐食は化学反応
サイトの構成
【腐食の基礎】の冒頭で述べたように,“腐食(corrosion)”とは,“金属がそれをとり囲む環境物質によって,化学的又は電気化学的に侵食されるか若しくは材質的に劣化する現象。”と定義されている。
金属の腐食現象は,金属と環境成分との化学反応の結果として現れる。
腐食現象の的確な理解に資するため,化学反応の基礎,腐食に関わる反応について,次に示す要領で解説する。
【化学反応式とは】 :腐食現象理解のため,一般的な化学反応式について。
【反速度定数とは】 :活性化エネルギーと反応速度定数の関係について。
【電荷保存則と腐食】 :酸化反応と還元反応が別々の場所で起きる金属腐食反応を考える際の原則について。
【酸素拡散律速とは】 :金属腐食の速さに大きく影響する酸素拡散について。
【酸化還元反応】 :金属表面の酸化反応(アノード反応)と還元反応(カソード反応)について。
【腐食と電気化学】 :腐食反応を電気化学で扱う理由について。
【腐食反応と溶存酸素】 :鉄を水に没した直後からさび発生までの経時変化について。
【参考】 :水溶液中での水素イオンと水酸化物イオンの関係,元素のイオンサイズ,主な水酸化物の溶解性など。
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主な用語の概説
腐食(corrosion)
金属がそれをとり囲む環境物質によって,化学的又は電気化学的に侵食されるか若しくは材質的に劣化する現象。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
環境因子(environmental factor)
一般的には,生物の生存,生活に影響する環境の条件をいう。腐食工学では,鋼などの金属の腐食に影響する環境条件(environmental conditions)をいう。例えば,大気腐食(屋外)では,気温,湿度,降水,海塩粒子,二酸化硫黄などが環境因子として取り上げられる。
JIS Z 2381「大気暴露試験方法通則」では,環境因子を“暴露試験場における気象因子及び大気汚染因子の総称。”と定義している。
化学反応(chemical reaction)
化学変化(chemical change)と同義で,一般的には,原子間の結合の生成,切断によって異なる物質を生成する現象である。
化学反応では,反応する出発物質を反応物( reactant ),基質( substrate ),又は始原系,原料などと呼び,反応で生成ずる物質は生成物( product )と呼ぶ。
活性化エネルギー(activation energy)
反応物のエネルギー状態が基底状態から,遷移状態に励起するのに必要なエネルギーをいう。なお,遷移状態(せんいじょうたい;transition state)とは,化学反応で反応物から生成物に変わる過程で通る最もエネルギーの高い状態をいう。
反応速度式(reaction rate equation)
化学反応において,反応物(又は生成物)の量の時間変化率を表す物理量を反応速度(reaction velocity ,reaction rate)といい,濃度のべき関数として表現したものを反応速度式という。
ν = k [ A ]α [ B ]β [ C ]γ・・・
べき乗係数の総和( n =α+β+γ+・・・)を全反応次数( overall reaction order )といい,係数 k を n 次反応の速度定数(rate constant)と呼ぶ。
電荷保存則(law of conservation of charge)
電荷保存則,電気量保存の法則,電気中性条件ともいい,確認できる全ての反応(化学反応,原子核反応,粒子の崩壊・対生成・対消滅など)で電荷が保存されない事例が発見されていないという経験的事実から導き出された“電荷の総量は永遠に変わらない → 閉じた系の正・負の電荷の代数和は常に一定”という法則である。
酸素拡散律速(diffusion-controlled process of oxygen)
水の関与する金属腐食では,酸化反応が起きる場所と還元反応の場所が異なる。金属の腐食が酸素の還元で進む場合に,酸素の還元反応速度より反応の場(金属表面)への酸素の供給速度が遅い場合には,腐食反応の速度は酸素の拡散速(流束)に依存し,酸化還元反応の速度定数には依存しないことになる。この現象を,一般的には酸素拡散律速の腐食といっている。
電気化学(electrochemistry)
化学変化に伴う電気的現象,又は電気の関与する化学変化について研究する化学の一部門。電池・電極反応・電離などの理論および応用を研究。
溶存酸素(dissolved oxygen)
DOと略称され,水中に溶解している酸素の量を意味し,一般的には水の汚染の程度を示す指標として用いられる。海洋や河川では,4~5mg/L を下回ると水中生物の生命が脅かされるといわれている。
酸素の溶解量は水温,溶解塩類の濃度,気圧などにより影響を受ける。ちなみに,1気圧の蒸留水の飽和溶存酸素は,20℃で 8.84mg/L ,25℃で 811mg/L ,30℃で 7.53mg/L である。
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