腐食概論:鋼の腐食

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         【大気腐食の分類】

 【腐食の基礎】・【腐食は化学反応】で解説したように,化学反応速度は温度の影響を強く受ける。また,鋼の大気腐食に影響する溶存酸素の水への溶解度や水中での拡散速度「淡水環境の腐食」・【水質の影響(温度)】の項で解説したように,温度の影響を受ける。
 一般的には,他の条件が同一の場合,気温が高いと腐食速度が増加する。
 
 鋼は,空気(乾燥)に接触すると,直ちに酸化され,数時間程度で 1~4nm(ナノメートル) 程度の酸化物被膜で覆われ,それ以上の酸化が進まない。
 大気中の水分がある量を超えると,鋼表面に吸着した水分子による水膜が形成される。鋼表面への吸着水や結露などによる水膜の厚みの違いで,下図に例示するように,腐食速度が大きく変化する

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度
参考:H. Uhlig, D. Triadis, M. Stern, J. Electrochem. Soc., 102, 59(1955)

 一般的には,水膜厚みにより,腐食現象を次のように分類している。
【かわき大気腐食】
 一般的には,大気の相対湿度80%程度までに,湿度に依存する水分子吸着による水膜(厚み10nm 程度まで)で発生する腐食をいう。
 表面の水膜が薄いため,鋼表面への酸素拡散量は多いが,吸着水やイオンの移動が制限されるため,水膜の電気伝導性は著しく低い。このため腐食速度は著しく小さい
 
【しめり大気腐食】
 高い湿度での水吸着,塩類で汚染された鋼表面の潮解・吸湿,気温と鋼表面の温度差に依存する軽微な結露現象などにより生じる比較的厚い水膜( 10nm~1μm程度まで)で発生する腐食をいう。
 水膜厚さの増加に伴い,水分子やイオンが比較的自由に動けるようになり,電解質水溶液として機能(電荷の移動が増える)するため,厚みの増加とともに腐食速度が増加する。
 一方で,水膜厚みの増加で酸素の拡散流束(鋼表面の到達量)は減少する。酸素の拡散流束の減少と電解質としての機能増加のバランスにより水膜厚み 1μm程度腐食速度の極大値に至る。
 
【濡れ大気腐食】
 外気温度と鋼表面温度に大きい温度差が生じると,激しい結露による濡れに至る。この結露や降雨などによる水膜厚みが,1μm 以上で生じる腐食をいう。
 この領域では,水分子やイオンの移動に差がなくなり,腐食速度は,溶存酸素の鋼表面への拡散流束に依存するようになる。
 すなわち,水膜厚みの増加に伴い,酸素の拡散流束が低下し,腐食速度が減少し始める。
 水膜厚みが,酸素拡散層の厚み(静止水で 500μm程度)を超えると,鋼表面に達する酸素の流束はほぼ一定になるため,腐食速度は水膜厚みに依存しなくなる

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