腐食概論:鋼の腐食

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         【大気腐食の分類】

 【腐食の基礎】・腐食は化学反応で解説したように,多量の水に覆われた金属の腐食反応は,金属表面での金属,酸素,水の化学反応ではあるが,腐食の速度を決めるのは,化学反応速度では無く,外界から金属表面へ供給される酸素の量で決まること,すなわち金属の腐食反応は,酸素拡散律速(diffusion-controlled process of oxygen)であることを示した。
 一般的に,化学反応の速度は,温度の上昇で増加するが,腐食反応の場合は,金属を取り巻く環境の酸素の量と拡散の速さで決まるので,温度の上昇に対して単純な関係にはない。すなわち,「淡水環境の腐食」・水質の影響(温度)の項で解説したように,酸素の拡散(diffusion)は温度の上昇と共に拡散の速度は増加するが,酸素の水への溶解度(solubility)は,温度の上昇で減少するので,実際の腐食は両者のバランスにより決まる。
 
 大気腐食において,金属表面への酸素の供給は,金属表面を覆う水の形態により大きく異なる。次に,鋼の場合を例に大気腐食と表面を覆う水の関係を紹介する。
 鋼は,空気(乾燥)に接触すると,水の影響を受けず,直ちに鉄が酸素と反応(酸化し,数時間程度で鋼表面が 1~4nm(ナノメートル) 程度の酸化物被膜で覆われ,酸素拡散の障壁になるため,それ以上の酸化が進まない。
 大気中の水分がある量を超えると,酸化物被膜を有する鋼表面に,水分子の吸着(adsorption)や結露(dew formation)により薄い水膜が形成される。
 鋼表面への吸着水や結露などによる水膜の厚みの違いで,下図に例示するように,腐食速度が大きく変化する

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度

大気中水膜厚みと軟鋼の腐食速度
参考:H. Uhlig, D. Triadis, M. Stern, J. Electrochem. Soc., 102, 59(1955)

 一般的には,大気腐食現象は,鋼表面の水膜の厚みにより,次のように分類されている。
【乾き(かわき)大気腐食】
 一般的には,大気の相対湿度 80%程度までに,湿度に依存する水分子吸着による水膜(厚み10nm 程度まで)で発生する腐食を乾き大気腐食(dry atmospheric corrosion)という。なお,清浄な金属表面では,相対湿度 80%程度までは,分子の移動が可能な液状の水膜にならないと考えられている。
 表面の水膜が薄いため,鋼表面への酸素拡散量は多いが,吸着水やイオンの移動が制限されるため,水膜の電気伝導性は著しく低い。このため腐食速度は著しく小さい
 
【湿り(しめり)大気腐食】
 清浄な鋼表面では,相対湿度 80%以上の高い湿度で,海塩粒子(sea salt particle)などの付着で汚染された鋼表面では,相対湿度 33%以上の比較的低い湿度でも水分子吸着で分子の移動が可能な液状の水膜になる。また,気温と鋼表面の温度差に依存する軽微な結露でも水膜が形成される。
 これらにより形成された比較的厚い水膜( 10nm~1μm程度まで)で発生する腐食を湿り大気腐食(humid atmospheric corrosion)という。
 水膜厚さの増加に伴い,水分子やイオンが比較的自由に動けるようになり,電解質水溶液として機能(電荷の移動が増える)するため,厚みの増加とともに腐食速度が増加する。
 一方で,水膜厚みの増加で酸素の拡散流束(鋼表面の到達量)は減少する。酸素の拡散流束の減少と電解質としての機能増加のバランスにより水膜厚み 1μm程度腐食速度の極大値に至る。
 
【濡れ(ぬれ)大気腐食】
 外気温度と鋼表面温度に大きい温度差が生じると,激しい結露による濡れに至る。この結露や降雨などによる水膜厚みが,1μm 以上で生じる腐食を濡れ大気腐食(wet atmospheric corrosion)という。
 この領域では,水分子やイオンの移動に差がなくなり,腐食速度は,溶存酸素の鋼表面への拡散流束に依存するようになる。
 すなわち,水膜厚みの増加に伴い,酸素の拡散流束が低下し,腐食速度が減少し始める。
 水膜厚みが,酸素拡散層の厚み(静止水で 500μm程度)を超えると,鋼表面に達する酸素の流束はほぼ一定になるため,腐食速度は水膜厚みに依存しなくなり,淡水中や塩水中での腐食などと同様に扱える。

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