腐食概論鋼の腐食

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 土壌腐食の基礎(土壌に埋設された金属の腐食)

 マクロ腐食とは(不均一腐食;局部腐食)

 【全面腐食と局部腐食】で紹介したように,相対的に自然電位の貴な部分(カソード)と卑な部分(アノード)が固定化された巨視的なマクロ腐食電池(macro-galvanic cell corrosion)を形成して,固定されたアノードが局部的に腐食する。これをマクロ電池腐食(macro-galvanic cell corrosion)や局部腐食(local corrosion)という。
 マクロ腐食電池では,アノードとカソードは明確に分離され,その位置の移動はないのが特徴となる。このため,実用上で問題となるほどの激しい局部腐食になることが多い。
 マクロ腐食の代表的なものには,異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)通気差電池(differential aeration corrosion)ともいわれる酸素の濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)がある。土壌中は,組成が不均一なため,鋼との接触状態が部位によって異なることが多く,マクロ腐食電池を生じやすい。
 また,アノード部からの電流流出も不均一となりので,電流密度の高い部分での孔食(pitting corrosion)を生じやすい。
 マクロ腐食での腐食量(腐食度)は,【異種金属接触腐食の程度】で例示したように,アノード部とカソード部の面積比に影響される。

 次に,土壌中における主なマクロ腐食電池作用を紹介する.
【濃淡電池作用】
 土壌中の濃淡電池の多くは,土壌の通気性の違いから生じる酸素濃淡電池である。

  • 鋼管や鋼杭などを埋設したとき,異なった土質またがって設置されると,土質が同じでも乾燥状態が異なる場合に濃淡電池を形成しやすいので注意が必要である。
  • 鋼杭など垂直に埋設される場合は,深さ方向で酸素濃度に差が出るので,酸素濃度の低い深い部分に局部腐食が生じることがある。
  • 通気性の良い土壌と通気性の悪い土壌にまたがって設置されると,通気性の悪い土壌に接している鋼表面に腐食が起きることがある。
  • 水平に設置されている鋼管でも,鋼管の上半分の通気性が良く,下半分の通気性が悪い場合には通気性の悪い下半分に腐食が集中することがある。
  • 地中埋設された鋼管のある部分の上部が道路やコンクリート舗装されていると,その部分は空気の供給が遮断され,局部的な腐食が進むこともある。
【異種金属接触】
 土壌中で,鋼より貴な金属が接続されている場合に,局部的に鋼単独の場合より早く腐食が進むことがある。
 貴な金属として,黄銅などのバルブ部品が知られているが,同様な現象は,鋼管表面のミルスケールの不均一,旧管と新管の接続,ねじ切り部,鋼管の工具による傷部などでも生じる。
 この場合は,ミルスケールのはがれた個所,新管の接続箇所付近,ねじ部,工具の傷部など新しい鉄面の出ている個所がアノードとなり,ミルスケール表面,酸化被膜を持つ旧管,ねじ部周辺の鋼管表面,傷の周りがカソードとして作用する。
 アノード部とカソード部の面積比と土壌の抵抗率によっては,局部的に腐食が進行する。

【建築物基礎との接触】
 埋設管が建築物に入るときに,建築物のコンクリート基礎の鉄筋と接触している場合に,基礎に近い土壌中の鋼管がアノード部となり,コンクリート鉄筋がカソード部として作用し,土壌中の鋼管に局部的な腐食が発生する。
 これは,コンクリートのアルカリ性が高いため,鉄筋の電位が鋼管より貴となる上に,鉄筋の表面積が大きいことによる。
 埋設管が塗装などの被覆鋼管である場合に,建築物基礎付近の鋼管に鋼素地の露出する被覆欠陥部があると,カソード面積とアノード面積の比率が非常に大きくなり,激しい局部腐食になるので注意が必要である。
 【参考】
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)
 アノードとカソードがはっきりと区別できる程度の大きさをもち,その位置が固定されている腐食電池をいい,異種金属接触電池,通気差電池などがこれに属する。【JIS Z 0103「防せい防食用語」】
 局部腐食(local corrosion)
 読み「きょくぶふしょく」,金属表面の腐食が均一でなく,局部的に集中して生じる腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部的に集中して起こる腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 金属種や腐食要因の違いで孔食,すき間腐食,異種金属接触腐食など様々ある。
 濃淡電池腐食(concentration cell corrosion)
 読み「のうたんでんちふしょく」,金属表面に接触する水溶液中のイオンや溶存酸素の濃度が局部的に異なるために生じた電池による腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 濃淡を原因とする電位差で生じた電池(マクロ腐食電池)による腐食で,広義の電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種である。なお,酸素の濃淡電池形成の場合を通気差腐食(differential aeration corrosion)などともいう。
 異種金属接触腐食(bimetallic corrosion, galvanic corrosion)
 読み「いしゅきんぞくせっしょくふしょく」,異種金属が直接接続されて,両者間に電池が構成された時に生じる腐食。ガルバニック腐食ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】電解質を介して電気回路が形成している場合には接触腐食ともいわれる。
 マクロ腐食電池(macro-galvanic cell)による電池作用腐食(ガルバニック腐食;galvanic corrosion)の一種ではあるが,一般に,ガルバニック腐食と称した場合には,異種金属接触電池(galvanic cell)による腐食を指すのが通例となっている。
 孔食(pitting corrosion)
 読み「こうしょく」,金属内部に向かって孔状に進行する局部腐食。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 局部腐食が金属内部に向かって孔状に進行する腐食。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】

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