腐食概論:腐食の基礎
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ここでは,腐食の開始に関連し, 【原子のイオン化】, 【主な用語】 を紹介する。
腐食の開始と継続
原子のイオン化
【腐食は化学反応】・「酸化還元反応」(oxidation-reduction reaction)で紹介したように,アノード(anode)部で金属原子が電子を放出し陽イオンとなる酸化反応(oxidation reaction),カソード(cathode)部では金属原子の酸化で放出された電子を消費する還元反応(reduction reaction)が起きる。
さらに,腐食開始時に金属表面の不均一さに起因して別々の場所にアノード部とカソード部が生じ,両者間に電池(cell)が形成されることも示した。
カソード部の条件が同様の場合は,アノード部の金属原子から電子を引き出し易い金属ほど“腐食し易い”と考えられる。
すなわち,腐食し易さは,原子から電子を引き出すときのエネルギーを比較することで評価できる。
原子から電子を引きはがすのに必要なエネルギーについては,定義の異なる次のものがある。
① 電子の結合エネルギーに関連するイオン化エネルギー(ionization energy)
② 物体表面の電子を無限遠まで取り出すための仕事量である仕事関数(work function)
③ 水溶液などの溶媒中での標準酸化還元電位(standard oxidation-reduction potential)
このシリーズでは,これらの中から”腐食し易さ”の指標となるエネルギーについて,順次考察する。
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主な用語の概説
イオン化エネルギー(ionization energy)
気体状態の原子やイオンなどから電子を取り去るのに要するエネルギー,すなわち,取りだされた電子の結びつきの強さの目安で,エネルギーが小さいほど陽イオンになり易く,陽性が強いという。
仕事関数(work function)
物質表面から 1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーを仕事関数という。
軌道電子は,熱,光の吸収,原子やイオンなどの衝突で励起され,電子軌道から飛び出る。この電子を励起電子という。
仕事関数は,φや W で表記されるが,日本ではφの表記が多い。
酸化還元反応(oxidation-reduction reaction)
反応物から生成物が生じる化学反応において,物質間で電子の授受のある反応である。酸化還元反応では,ある物質の酸化過程と他の物質の還元過程が同時に進行する。すなわち,一般にいうところの「酸化反応」と「還元反応」は,対象物質を見る立場で,現象の説明を容易にするために用いる便宜的な用語であり,それらを別個に扱うことはできない。
標準酸化還元電位(standard oxidation-reduction potential)
金属の標準電極電位を,その大きさの順位並べ,金属のイオン化傾向及び一部の非金属元素の電気化学的酸化反応傾向の大きさの順を示した列。電気化学列ともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
反応に関与する全ての化学種の活量が 1で,平衡状態にある時の熱力学的に求まる理論値である。
ギブズエネルギー変化⊿rG0 に対応する電位 E0 と定義される。
⊿rG0 = - zFE0
ここで,z :酸化還元反応で授受される電子数,F :ファラデー定数( 96,485 C mol-1 )
一般的には,標準電極電位(standard electrode potential),標準電位(standard potential),標準還元電位(standard reduction potential)とも呼ばれる。
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