防食概論:防食の基礎

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           【 JIS 規格の人工環境試験一覧】

 金属の耐食性評価や防食対策の性能評価を目的に,各種試験が実施されている。この中で最も信頼性の高い方法は,実使用環境での暴露試験(weathering test;実暴試験)である。
 暴露試験は,試験結果が得られるまで長期間(例えば,長期耐久型塗装で20年以上)を要し,材料等の最終確認試験や腐食・劣化機構の研究目的には適するが,時間制約のある材料開発や材料選定のためのスクリーニング(screening)としては不適切である。
 そこで,短期間に材料の耐食性や防食対策の性能を推定するために,特定の環境因子(environmental factor)の強度を高め,促進効果を期待した人工環境試験(artificial environmental testing)で評価されるのが一般的である。

 【人工環境試験】
 試験方法には,材料の曝される環境因子のうち,特定の因子の強度を高めた方法が用いられる。JIS規格にも,環境因子を単独に,又は複合した条件の試験法が規定されている。
 人工環境試験は,腐食試験(corrosion test)促進耐候試験(artificial weathering test, accelerated weathering test)などとも呼ばれ,人工環境条件を連続的に負荷する連続試験複数の人工環境条件を複合した工程の繰り返しで負荷する複合サイクル試験(combined cyclic corrosion test)に分けられる。
 
 【JIS に規格される腐食試験例】
 ここでは,一般的な金属材料,塗装試験片に適用される一般的な腐食試験関連の JIS規格を紹介する。なお,青字の規格番号は連続試験赤字 の規格番号はサイクル試験の規格であることを示す。
 一般試験片
 JIS Z 2371「塩水噴霧試験方法」,金属材料,及びめっきなどの無機皮膜又は塗膜などの有機被膜を施した金属材料の耐食性試験として,中性塩水噴霧試験,酢酸酸性塩水噴霧試験及びキャス試験を行う場合,必要となる塩溶液,試験装置及び手法。
 ステンレス鋼試験片
 JIS G 0572「ステンレス鋼の硫酸・硫酸第二鉄腐食試験方法」,オーステナイト系ステンレス鋼の沸騰硫酸・硫酸第二鉄溶液中の腐食減量を測定して,粒界腐食の程度を試験する方法。
 JIS G 0573「ステンレス鋼の65%硝酸腐食試験方法」,オーステナイト系,フェライト・オーステナイト(2 相)系ステンレス鋼の沸騰 65%硝酸中の腐食減量を測定して,粒界腐食の程度を試験する方法。
 JIS G 0575「ステンレス鋼の硫酸・硫酸銅腐食試験方法」,フェライト系,オーステナイト系及びフェライト・オーステナイト(2 相)系ステンレス鋼を沸騰硫酸・硫酸銅溶液中に入れて試験後,曲げ試験による割れの観察を行って,粒界腐食の程度を試験する方法。
 JIS G 0578「ステンレス鋼の塩化第二鉄腐食試験方法」,ステンレス鋼の 6%塩化第二鉄溶液中の腐食度を測定して,耐孔食性を評価する,塩化第二鉄腐食試験方法及び高耐食ステンレス鋼の 6%塩化第二鉄溶液中における,孔食発生臨界温度を測定して,耐孔食性を評価する,孔食発生臨界温度試験方法。
 JIS G 0591「ステンレス鋼の硫酸腐食試験方法」,ステンレス鋼の沸騰硫酸中の腐食減量を測定して,全面腐食の程度を試験する方法。
 JIS G 0594「無機被覆鋼板のサイクル腐食促進試験方法」,酸性塩水噴霧,乾燥及び湿潤環境におけるサイクル腐食促進試験(B法)及び中性塩水噴霧,乾燥及び湿潤環境におけるサイクル腐食促進試験(C 法)並びに試験装置。
 非鉄試験片
 JIS H 0541「マグネシウム及びマグネシウム合金のアルカリ性塩水腐食試験方法」,マグネシウム及びマグネシウム合金にアルカリ性塩水を浸せき又は塩水噴霧することによって行うアルカリ性塩水腐食試験方法。
 JIS H 8502「めっきの耐食性試験方法」,めっき及びそれを施したものの耐食性試験方法,屋外暴露試験方法(直接暴露試験方法,遮へい暴露試験方法)の他に,連続試験として,連続噴霧試験方法(中性塩水噴霧試験方法,酢酸酸性塩水噴霧試験方法,キャス試験方法),コロードコート試験方法,ガス腐食試験方法(二酸化硫黄ガス試験方法,硫化水素ガス試験方法,塩素ガス試験方法,混合ガス試験方法)。
 JIS H 8502「めっきの耐食性試験方法」,めっき及びそれを施したものの耐食性試験方法として,屋外暴露試験方法(直接暴露試験方法,遮へい暴露試験方法)の他に,複合サイクル試験として,サイクル試験方法(中性塩水噴霧サイクル試験方法,人工酸性雨サイクル試験方法)。
 JIS H 8681-1「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐食性試験方法-第1部:耐アルカリ試験」,アルミニウム及びアルミニウム合金の製品に施した陽極酸化皮膜の耐アルカリ試験(アルカリ滴下試験,起電力式耐アルカリ試験)による耐食性試験方法。
 JIS H 8681-2「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐食性試験方法-第2部:キャス試験」,アルミニウム及びアルミニウム合金の製品に施した陽極酸化皮膜のキャス試験による耐食性試験方法。
 JIS H 8711「アルミニウム合金の応力腐食割れ試験方法」,アルミニウム合金の応力腐食割れ抵抗性の試験方法で,二つの荷重負荷方式を用い,交互浸せき法又は連続浸せき法による。
 塗装試験片
 JIS K 5600-7-1「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第1節:耐中性塩水噴霧性」,塗料又は製品の仕様の要求に従って,塗膜の中性塩水噴霧試験に対する抵抗性を決定する方法。
 JIS K 5600-7-2「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第2節:耐湿性(連続結露法)」,塗膜,塗装系及び類似の製品の,高湿度条件に対する耐久性を測定するための方法。
 JIS K 5600-7-3「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第3節:耐湿性(不連続結露法)」,塗料及び関連製品の単一塗膜又は多層塗膜系の断続的な結露に対する抵抗を,標準状態のもとで測定する試験方法。
 JIS K 5600-7-4「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第4節:耐湿潤冷熱繰返し性」,塗膜が湿潤又は浸せきの状態を経た後,温度変化を受けた場合の塗膜の変化を調べる試験方法。
 JIS K 5600-7-7「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第7節:促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」,光源としてキセノンアークランプを用いた促進試験装置内で,水及び水蒸気の作用を含めて,促進耐候性試験又は促進耐光性試験によって,塗膜を暴露する方法。
 JIS K 5600-7-8「塗料一般試験方法−第7部:塗膜の長期耐久性−第8節:促進耐候性(紫外線蛍光ランプ法)」,蛍光紫外線及び水凝縮又は水噴霧発生装置を用いて,塗膜の促進耐候性を測定するための試験方法。
 JIS K 5600-7-9「塗料一般試験方法−第 7部:塗膜の長期耐久性−第 9節:サイクル腐食試験方法−塩水噴霧/乾燥/湿潤」 ,塩水噴霧・乾燥・湿潤のサイクルに対する塗膜の耐久性を評価する方法。
 高温腐食関連
 JIS Z 2290「金属材料の高温腐食試験方法通則」,金属材料の高温での腐食を定量的に評価するための高温腐食試験方法。
 JIS Z 2291「金属材料の高温ガス腐食試験方法」,高温腐食性ガスによる金属材料の腐食を定量的に評価するための試験方法。
 JIS Z 2292「金属材料の塩塗布高温腐食試験方法」,金属材料表面に塩を塗布した高温腐食環境中での金属材料の腐食を定量的に評価するための試験方法。
 JIS Z 2293「金属材料の塩浸せき及び塩埋没高温腐食試験方法」,高温溶融塩による金属材料の腐食を定量的に評価するための試験方法。
 JIS Z 2294「金属材料の電気化学的高温腐食試験方法」,高温溶融塩による金属材料の腐食をアノード分極曲線の測定及び交流インピーダンス測定によって定量的に評価する試験方法。
 
 JIS C 60068-2-60「環境試験方法-電気・電子-混合ガス流腐食試験」,電気製品の部品,装置及び材料,特に接触部及び接続部を,屋内環境で作動及び保管するときの腐食の影響について,腐食性の混合ガスを用いた 4種の試験方法。
 JIS R 1614「ファインセラミックスの酸及びアルカリ腐食試験方法」,硫酸,水酸化ナトリウムなどの酸及びアルカリ溶液中におけるファインセラミックスの腐食の程度の試験方法。
 JIS T 0305「擬似体液中での異種金属間接触腐食試験方法」,体内環境を模擬した溶液(擬似体液)中での異種金属間の接触腐食を電気化学的に評価する方法について規定する。ただし,この規格は,試験片レベルでの材料選択において必要となる異種金属間の接触腐食試験方法。
 JIS T 6002「歯科用金属材料の腐食試験方法」,歯科で用いる金属材料の腐食試験方法として,静的浸せき試験,電気化学的試験,硫化物による変色試験(反復浸せき),硫化物による変色試験(静的浸せき),定期的な分析を伴う静的浸せき試験。
 
 【連続試験の例】
 ここでは,連続試験の例を紹介し,複合サイクル試験の例については次の節で紹介する。
 JIS Z 2371「塩水噴霧試験方法」は最も広く利用されている腐食試験法の一つである。JIS Z 2371は,1955年(昭和30年)に,米国の ASTM-B117を参考に制定された。当初の規格は,試験液の塩分濃度(5%NaCl中性水溶液),噴霧量,噴霧圧力などは ASTM に準拠した「中性塩水噴霧試験」であった。
 現在のJIS Z 2371(2000) は,国際規格(ISO 9227)との整合化で「中性塩水噴霧試験」,「酢酸酸性塩水噴霧」及び「キャス」の 3種類の塩水噴霧試験方法が規定されている。
 腐食性の激しい環境で用いる材料の腐食試験には,腐食性のガスを用いた試験方法も規定されている。

 JIS Z 2371 規定の【塩水連続噴霧試験】
 中性塩水噴霧試験(neutral salt spray test)
 試験槽内温度:35±2℃
 噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gを入れた水溶液を水酸化ナトリウムと塩酸でpH 6.5~7.2に調整した水溶液
 摘要:めっき,塗装などの表面処理製品をはじめ,一般材料の耐食性試験として各種製品JIS規格での品質規格試験として採用されている。
 酢酸酸性塩水噴霧試験(acetic acid salt spray test, ASS test)
 試験槽内温度:35±2℃
 噴霧溶液組成:水 1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gを入れた水溶液を酢酸でpH 3.0~3.1に調整した水溶液
 摘要:腐食性の強い環境で使用されるめっき品の品質規格試験に適用されている。
 キャス試験(copper accelerated acetic acid salt spray test, CASS test)
 試験槽内温度:50±2℃
 噴霧溶液組成:水1リットルに対し塩化ナトリウム 50±5gを入れた水溶液 1リットルに,塩化銅(Ⅱ)二水和物(CuCl2・2H2O)を 0.26±0.02g加え,酢酸でpH 3.0~3.1に調整した水溶液
 摘要:アルミ成形品,ニッケル-クロム系めっき品などの品質規格試験に適用されている。
 
 JIS H 8502 規定の【ガス腐食試験】
 二酸化硫黄ガス試験
 試験槽内 温度:40±1℃,相対湿度:80±5%
 二酸化硫黄ガス濃度(体積):0.5±0.1ppm,又は 10±2ppm,又は 25±5ppm
 硫化水素ガス試験
 試験槽内 温度:40±1℃,相対湿度:80±5%
 硫化水素ガス濃度(体積):0.1±0.02ppm,又は 3±1ppm,又は 10±2ppm
 塩素ガス試験
 試験槽内 温度:40±1℃,相対湿度:80±5%
 塩素ガス濃度(体積):0.02±0.005ppm,又は 0.1±0.02ppm
 混合ガス試験
 試験槽内 温度:40±1℃,相対湿度:80±5%
 混合ガス濃度(体積)
  条件D1(硫化水素ガス 0.1±0.02ppm,二酸化硫黄ガス 0.5±0.1ppm)
  条件D2(二酸化硫黄ガス 0.2±0.05ppm,二酸化窒素ガス 0.5±0.1ppm)
  条件D3(硫化水素ガス 0.1±0.02ppm,二酸化硫黄ガス 0.5±0.1ppm,塩素ガス 0.02±0.005ppm)

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