防食概論:防食の基礎
☆ “ホーム” ⇒ “腐食・防食とは“ ⇒ “防食概論(防食の基礎)” ⇒
環境遮断(金属被覆)
金属被覆:一般分類
鋼などの金属表面に,他の金属を被覆したものは,古くから身の回りに多くある。金属被覆の目的は,母材となる金属に不足する機能・特性の向上を目的とする。
具体的には,防せい・防食性の向上,装飾性の向上,硬さ(耐傷つき)の向上,耐摩耗性の向上,電気特性の改善,はんだ等との付着性改善などである。
金属被覆の一般的分類
金属被覆の分類は,通常は下図に示すように処理方法で分類されている。鋼橋などの鋼構造物の防食(corrosion prevention, corrosion protection)を主目的として実施されたものには,めっき法の中の溶融めっき(hot dipping , hot dip metal coating)が多く実例は少ないが,金属溶射(metal spraying)やクラッド(cladding)も用いられる。
電気めっき,溶融めっき,及び金属溶射については,その技術的背景を含めて,別の項で多少詳しく解説する。
化学めっき(chemical plating , electroless plating)
めっき法の中で,化学めっきは,装飾目的やプラスチックなどの非導電性材料へのめっき法として活用されている。化学めっきは,次のように定義されている。金属塩水溶液にめっきしようとするものを浸して,外部電源を用いずに還元剤の作用によってめっきする表面処理方法。無電解めっきともいう。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
金属又は非金属表面に金属を化学的に還元析出させる方法。 参考:置換法,化学還元法,熱分解法とがあり,置換法は浸せきめっきと接触めっきとに,また化学還元法は自己触媒めっきと非触媒めっきとに分けられる。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
化学めっきの原理は,外部から電流を流すことなく,溶液中の化学反応(酸化・還元反応:oxidation-reduction reaction)を用いて,基材表面に還元物質(金属)を析出させる方法でる。
蒸着(vapor deposition)
蒸着法は,気化,イオン化した物質を基材表面に,薄く付着させる方法である。蒸着法は,原理の違いにより物理蒸着(PVD)と化学蒸着(CVD)に分けられる。蒸着膜は,何れも非常に薄く(nmオーダー),機械的強度を期待できないため損傷を受け易いが,表面特性の改質,特殊機能の付与などに有効である。物理蒸着(physical vapor deposition)
高温加熱,スパッタリングなどの物理的方法で物質を蒸発し,基板に凝縮させ,薄膜を形成する方法で,真空蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法などの総称である。
真空蒸着(vacuum evaporation)とは,真空中で物質を加熱蒸発し,基板上に薄膜を形成する成膜法。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
スパッタリング(sputtering)とは,加速された粒子が固体表面に衝突したとき,運動量の交換によって固体を構成する原子が空間へ放出される現象,及びこの現象を用いた成膜法。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
イオンプレーティング(ion plating)とは,電界を印加して発生したプラズマを利用し,蒸発原子をイオン化又は励起させ,基板上に薄膜を形成する成膜法。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
化学蒸着(chemical vapor deposition)
気相化学反応によって,基板上に膜を形成させる方法。【JIS H0400「電気めっき及び関連処理用語」】
クラッド(cladding)
クラッドは,二種類以上の金属をはり合わせること(JIS Z0103「防せい防食用語」)で,単独の金属では満たせない特性,経済性などを実現する方法である。クラッドには,金属の接合・接着方法の違いから,液相クラッド法,熱間クラッド法,冷間クラッド法,爆発圧着法,シーム溶接法,硬ろうクラッド法に分けられる。
鋼構造物での実用例として,鉄鋼材料の表面に薄いステンレス鋼板(羽田空港の鋼管杭)やチタン板(東京湾アクアライン海洋橋脚)を溶接で接合被覆したものが知られている。
クラッド鋼板(clad steel plates sheets)
主に耐摩耗性又は耐化学腐食性のある鋼又は合金を,低炭素鋼,低合金鋼などの母材と張り合わせた鋼板及び鋼帯。通常は圧延又は爆着で製造する。ときには,溶接プロセスなどその他の方法を用いる場合がある。
なお,母材の片面に合わせ材を張り合わせたものを片面クラッド鋼,両面に合わせ材を張り合わせたものを両面クラッド鋼という。【JIS G 0203「鉄鋼用語(製品及び品質)」】
クラッド鋼の JIS 品質規格には,JIS G 3601「ステンレスクラッド鋼:Stainless-clad steels」,JIS G 3602「ニッケル及びニッケル合金クラッド鋼:Nickel and nickel alloy clad steels」,JIS G 3603「チタンクラッド鋼:Titanium clad steels」,JIS G 3604「銅及び銅合金クラッド鋼:Copper and copper alloy clad steels」がある。
ページのトップへ