防食概論:防食の基礎
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腐食試験と評価法
腐食生成物の評価(化学分析法)
【腐食概論】・【腐食した鋼の腐食】の項で解説したように,鋼の腐食挙動(腐食速度の経年変化)は,鋼表面に付着した腐食生成物(corrosion product)の影響を強く受ける。
腐食生成物の特性(密着性,環境遮断機能など)に寄与する化学的組成(酸化物構造や元素組成)は,暴露環境との相互作用の結果である。これを的確に把握することは,腐食原因の解明のみならず,腐食の将来予測,適切な防食技術の発展に寄与できる。
腐食生成物の評価では,腐食生成物の元素分析(elemental analysis),組成分析(composition analysis)及び腐食生成物の構造解析(structure analysis)が行われる。さらに,腐食生成物の表面や断面の拡大分析も行われる。
分析に用いられる手法には,腐食生成物を採取して行う湿式分析法(wet analysis)や機器分析(instrumental analysis),腐食生成物が付着した状態のその場分析(in‐situ analysis)など,数多くの方法が採用される。
次に,腐食生成物の分析項目を例に,採用できる分析法を紹介する。
試料を採取して行う分析法
腐食環境(corrosive environment)の推定を目的に,腐食生成物に含有される成分の種類と量に関する情報が求められる。
分析すべき因子が明確でない場合は,一般的に,全元素を対象とした定性・半定量分析(概略の含有量把握のための分析)を行い,詳細な分析を行う対象物を選択する。
この場合には,採取試料をそのままの状態で,%オーダーの半定量分析が可能な蛍光X線分析(X-ray fluorescences pectrometry)が簡便である。簡易な元素分析結果から含有物質を推定でき,詳細な分析計画が立てられる。
水可溶性成分は,腐食生成物から適切な方法で抽出し,その水溶液に含まれる成分の分析で明らかにできる。
金属イオンなどの陽イオン(cation, positive ion)には,原子吸光分析(atomic absorption spectrometry)や吸光光度分析(molecular absorption spectrometrry)が活用できる。
陰イオン(anion, negative ion)には,イオンクロマトグラフィー(ion chromatography)や吸光光度分析(molecular absorption spectrometrry)が活用できる。
なお,全電解質量を把握したい場合には,電気伝導率(electric conductivity)の測定が活用できる。
有機化合物(organic compound)については,ガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatograph–mass spectrometer)が活用できる。
水不溶性成分を含めた元素の全量分析には,腐食生成物を適切な方法で全溶解・溶融するなどの前処理を行い,複数元素を同時定量分析できる誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP/AES,ICP/OES)(inductively coupled plasma atomic emission spectrometry, inductively coupled plasma optical emission spectrometry)が活用できる。
腐食生成物の構成化合物を,その形態を含めて分析することもできる。腐食生成物の結晶成分(塩類,酸化鉄,含水水酸化鉄)の構造解析には,X線回折法(X-ray diffraction)が良く用いられる。試料量が少ない場合には電子線回折法(electron diffraction method)を用いることもある。また,X線回折法では分離・解析できない成分の確認には,有機成分の分析に活用される赤外分光分析(infrared spectrometry)やラマン分光法(Raman scattering spectroscopy, Raman spectroscopy)を用いる場合もある。
微小領域やさび層断面のその場分析
この目的には,電子顕微鏡(electron microscope)が良く用いられる。電子顕微鏡では,微小領域の拡大観察の他に,JIS K 0132「走査電子顕微鏡試験方法通則」にあるように,微小領域の元素分布を解析できる電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)(electron probe micro analyzer )が利用できる。
特殊な例として,厚み 1μm未満の表面層のみの元素分析には,X線光電子分光法(エスカ:XPS)(X-ray photoelectron spectroscopy),オージエ電子分光分析(AES)(Auger electron spectroscopy)が利用できる。
また,微小領域の化合物構造解析には,mmオーダーの領域では,顕微X線回折法や顕微赤外分光法(infrared microspectrometry)が,μmオーダーの領域では電子線回折法(electron diffraction method)や分析個所の拡大観察との併用が可能な透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する電子線回折装置が利用できる。
【関連 JIS規格】
JIS K 0115「吸光光度分析通則」,JIS K 0117「赤外分光分析方法通則」,JIS K 0119「蛍光X線分析通則」,JIS K 0121「原子吸光分析通則」,JIS K 0123「ガスクロマトグラフィー質量分析通則」,JIS K 0127「イオンクロマトグラフ分析通則」,JIS K 0130「電気伝導率測定方法通則」,JIS K 0131「X線回折分析通則」,JIS K 0132「走査電子顕微鏡試験方法通則」,JIS K 0137「ラマン分光分析通則」,JIS G 1258-0「鉄及び鋼−ICP 発光分光分析方法−第0部:一般事項」
【腐食概論】・【腐食した鋼の腐食】の項で解説したように,鋼の腐食挙動(腐食速度の経年変化)は,鋼表面に付着した腐食生成物(corrosion product)の影響を強く受ける。
腐食生成物の特性(密着性,環境遮断機能など)に寄与する化学的組成(酸化物構造や元素組成)は,暴露環境との相互作用の結果である。これを的確に把握することは,腐食原因の解明のみならず,腐食の将来予測,適切な防食技術の発展に寄与できる。
腐食生成物の評価では,腐食生成物の元素分析(elemental analysis),組成分析(composition analysis)及び腐食生成物の構造解析(structure analysis)が行われる。さらに,腐食生成物の表面や断面の拡大分析も行われる。
分析に用いられる手法には,腐食生成物を採取して行う湿式分析法(wet analysis)や機器分析(instrumental analysis),腐食生成物が付着した状態のその場分析(in‐situ analysis)など,数多くの方法が採用される。
次に,腐食生成物の分析項目を例に,採用できる分析法を紹介する。
試料を採取して行う分析法
腐食環境(corrosive environment)の推定を目的に,腐食生成物に含有される成分の種類と量に関する情報が求められる。分析すべき因子が明確でない場合は,一般的に,全元素を対象とした定性・半定量分析(概略の含有量把握のための分析)を行い,詳細な分析を行う対象物を選択する。
この場合には,採取試料をそのままの状態で,%オーダーの半定量分析が可能な蛍光X線分析(X-ray fluorescences pectrometry)が簡便である。簡易な元素分析結果から含有物質を推定でき,詳細な分析計画が立てられる。
水可溶性成分は,腐食生成物から適切な方法で抽出し,その水溶液に含まれる成分の分析で明らかにできる。
金属イオンなどの陽イオン(cation, positive ion)には,原子吸光分析(atomic absorption spectrometry)や吸光光度分析(molecular absorption spectrometrry)が活用できる。
陰イオン(anion, negative ion)には,イオンクロマトグラフィー(ion chromatography)や吸光光度分析(molecular absorption spectrometrry)が活用できる。
なお,全電解質量を把握したい場合には,電気伝導率(electric conductivity)の測定が活用できる。
有機化合物(organic compound)については,ガスクロマトグラフィー質量分析(gas chromatograph–mass spectrometer)が活用できる。
水不溶性成分を含めた元素の全量分析には,腐食生成物を適切な方法で全溶解・溶融するなどの前処理を行い,複数元素を同時定量分析できる誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP/AES,ICP/OES)(inductively coupled plasma atomic emission spectrometry, inductively coupled plasma optical emission spectrometry)が活用できる。
腐食生成物の構成化合物を,その形態を含めて分析することもできる。腐食生成物の結晶成分(塩類,酸化鉄,含水水酸化鉄)の構造解析には,X線回折法(X-ray diffraction)が良く用いられる。試料量が少ない場合には電子線回折法(electron diffraction method)を用いることもある。また,X線回折法では分離・解析できない成分の確認には,有機成分の分析に活用される赤外分光分析(infrared spectrometry)やラマン分光法(Raman scattering spectroscopy, Raman spectroscopy)を用いる場合もある。
微小領域やさび層断面のその場分析
この目的には,電子顕微鏡(electron microscope)が良く用いられる。電子顕微鏡では,微小領域の拡大観察の他に,JIS K 0132「走査電子顕微鏡試験方法通則」にあるように,微小領域の元素分布を解析できる電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)(electron probe micro analyzer )が利用できる。特殊な例として,厚み 1μm未満の表面層のみの元素分析には,X線光電子分光法(エスカ:XPS)(X-ray photoelectron spectroscopy),オージエ電子分光分析(AES)(Auger electron spectroscopy)が利用できる。
また,微小領域の化合物構造解析には,mmオーダーの領域では,顕微X線回折法や顕微赤外分光法(infrared microspectrometry)が,μmオーダーの領域では電子線回折法(electron diffraction method)や分析個所の拡大観察との併用が可能な透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する電子線回折装置が利用できる。
【関連 JIS規格】
JIS K 0115「吸光光度分析通則」,JIS K 0117「赤外分光分析方法通則」,JIS K 0119「蛍光X線分析通則」,JIS K 0121「原子吸光分析通則」,JIS K 0123「ガスクロマトグラフィー質量分析通則」,JIS K 0127「イオンクロマトグラフ分析通則」,JIS K 0130「電気伝導率測定方法通則」,JIS K 0131「X線回折分析通則」,JIS K 0132「走査電子顕微鏡試験方法通則」,JIS K 0137「ラマン分光分析通則」,JIS G 1258-0「鉄及び鋼−ICP 発光分光分析方法−第0部:一般事項」
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