腐食概論:腐食の基礎

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  【金属表面の特徴】

 金属腐食の開始と継続に影響する金属表面の特徴について,空気で飽和した中性の電解質(electrolyte)を含む水溶液中にを浸漬した場合の鋼表面の状態変化を例に紹介する。
 
 水浸漬直前の表面状態
 水と接触直後の鋼表面は,接触前の乾いた大気中で生成した数分子層の酸化物皮膜で覆われた上に,大気成分(酸素,窒素,水蒸気,その他成分)が数分子層の厚みで全面に吸着(adsorption)していると考えられる。
 これらが,場合によっては障壁として作用し,水に浸漬した後,腐食開始までの間に表面の障壁を破壊する複雑な過程を経る。
 

金属表面の局部電池

金属表面の局部電池(模式図)

 水浸漬直後の表面状態
 結晶の構造欠陥(structural defect)などの鋼表面の不均一さを原因として,右図のように,表面エネルギーの異なる微細な領域が表面の至るところに形成される。
 このように表面エネルギーが異なる領域が電解質溶液(electrolyte solution)で覆われると,あたかも電池(cell)のような作用を示す。
 従って,電解質溶液で覆われた鋼表面は,小さな電池が並んだような構造と考えられる。この中で,表面エネルギーが異なる一対の領域は,局部電池(local cell)といわれる。局部電池により,鋼表面は複数の鉄の酸化反応する場所(アノード)と酸素の還元反応の場所(カソード)とに分かれる。
 電解質水溶液との接触(電池回路の形成)により,浸漬直前に形成されていた障壁の破壊,それに続く格子欠陥(lattice defect)などを起点とし,下式の酸化還元反応(oxidation-reduction reaction)が生じ,腐食の開始となる。ただし,実際の腐食反応の開始過程は,十分に解明されていない上に,大変複雑な過程を経ていると考えられる。
  アノード:  2Fe → 2Fe2++4e-
  カソード:  4e-O2+2H2O → 4OH-

 水浸漬中の表面状態
 鋼表面には,酸化反応に必要な鉄は十分な量存在するが,還元反応に必要な酸素は消費され,鋼表面の酸素濃度が低下する。従って,腐食反応が継続するためには,還元反応に必要な酸素が金属表面に継続的に供給されなければならない。
 さらに,還元反応で生成した水酸化物イオン( OH- )及び酸化反応の生成物( Fe2+ )がその場から離れ,反応物(酸素と水)と連続的・継続的に入れ替わることが必要となる。

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  【主な用語の概説】

 吸着(adsorption)
 気相/液相,液相/液相,気相/固相,液相/固相などの 2相の界面で,物質の濃度が周囲よりも増加する現象をいう。吸着していた物質が界面から離れることを脱着または脱離(desorption)と呼ぶ。
 界面の原子は,物質内部とは異なり,周囲との相互作用に関わる原子が少なく,自由エネルギーが大きくなる(界面自由エネルギー)。このため,界面の原子は,界面自由エネルギーを小さくするため,近接した分子などの化学種と結合する。この現象を吸着といい,結合様式により,ファンデルワールス力による物理吸着,共有結合やイオン結合による化学吸着に分けられる。
 局部電池(local cell)
 金属側又は環境側の不均一性が原因となって,金属表面に局部的に形成された腐食電池。【JIS Z0103「防せい防食用語」】
 一つの金属体表面で局部的に構成される短絡電池。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 電極(electrode)
 電気化学では,広義には金属などの電子伝導体の相と電解質溶液などのイオン伝導体の相とを含む少なくとも二つの相が直列に接触している系(電極系ともいう)。狭義にはイオン伝導体に接触している電子伝導体の相。【JIS K 0213「分析化学用語(電気化学部門)」】
 電極を示す名称には,カソード・アノード,正極(+極)・負極(-極),陰極・陽極などの名称が使われている。特に,陰極・陽極の用語は,技術分野で示す意味が異なり,混乱した使用例が見られるので,注意が必要である。
 なお,カソード(cathode)は還元反応を生じる電極,アノード(anode)は酸化反応を生じる電極をいう。
 電解質溶液(electrolyte solution)
 水などの溶媒に溶けてイオン化し,その溶液が電気伝導性をもち,電流を通すと電気分解現象を起こすイオン性物質(電解質,いわゆる塩)の溶解で生じた正と負のイオン間に強い静電相互作用が働き,独特の挙動を示す溶液をいう。
 極性溶媒は,イオンの周りを溶媒分子で取り囲み,イオンの電荷を遮蔽する。これにより,正・負イオン間の静電相互作用の力を相対的に弱めることができ,イオン性物質を陽イオン,陰イオンに安定的に解離して溶解(電離)することができる。
 酸化還元(oxidation-reduction)
 酸化(oxidation)とは,原子が電子を失うことであり,単体のときより電子密度が低くなった状態である。失った電子の数を正 ( + ) の酸化数とする。
 還元(reduction)とは,逆に電子を受け取ることで電子密度が高くなった状態である。受け取った電子の数を負 ( - ) の酸化数とする。
 酸化還元反応(oxidation-reduction reaction)
 反応物から生成物が生じる化学反応において,物質間で電子の授受のある反応である。酸化還元反応では,ある物質の酸化過程と他の物質の還元過程が並行して進行する。すなわち,一般にいうところの「酸化反応」と「還元反応」は,対象物質を見る立場で,現象の説明を容易にするために用いる便宜的な用語であり,それらを別個に扱うことはできない。

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