腐食概論:腐食の基礎
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ここでは,金属表面に現われる構造欠陥に関し, 【金属結晶の構造欠陥】, 【格子欠陥とは】, 【金属表面に現われる欠陥】 を紹介する。
金属表面の特徴
金属結晶の構造欠陥
工業的に製造された金属は,その表面に腐食の起点となる数多くの格子欠陥(lattice defect)や構造欠陥(structural defect)を有する。
格子欠陥とは,金属原子の配列が理想状態の単位結晶の配列と異なり,構造的に不完全さを持っていることをいう。格子欠陥は,その形態から点欠陥,線欠陥及び面欠陥に分けられる。
広義では格子欠陥も構造欠陥の一つであるが,ここでは,構造欠陥を金属表面の機械的加工で生じた表面の結晶の乱れを示す用語として用いる。
結晶金属に見られる主な格子欠陥,構造欠陥を含む金属表面の欠陥について,次に解説する。
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格子欠陥とは
格子欠陥の形態による分類で知られる点欠陥,線欠陥及び面欠陥の概要を紹介する。
点欠陥(point defect)
結晶格子中に点状に存在している欠陥で,形態として原子空孔,格子間原子,異種原子がある。
原子空孔(atomic vacancy)は,結晶の格子点にあるべき原子が欠けているところをいう。
格子間原子(interstitial atom)とは,格子点にある原子と原子の間に入り込んだ原子をいい,空孔から飛び出した原子が格子間にとどまっているなど,原子空孔と格子間原子とが一対でできていることがある。この一対の欠陥は,フレンケル欠陥(Frenkel defect)という。
異種原子(foreign atom)は,格子を構成している原子と異なる元素の原子が格子点の原子と置き換わっている場合や,格子間に入り込んでいる場合で,不純物原子(impurity atom)ともいう。一般に元素が異なると,原子の大きさが異なるので,異種原子の場合には,格子にひずみが生じる。
線欠陥(line defect)
ある長さを持つ格子欠陥で,転位(dislocation)とも呼ばれる。金属が変形するとき,加えられた応力によって,金属原子が移動する。この移動は,結晶面間のすべりによってもたらされると考えられている。
結晶面がすべる途中で一列の原子面が刃状に入り込んでいくのを刃状転位(edge dislocation)といい,最も簡単な形の転位である。他にらせん転位(screw dislocation)も知られている。
転位は,金属の機械的性質をきめる重要な構造的要素である。しかし,一方では転位部分の活性が高く,腐食の起点となることが知られている。
面欠陥(surface defect)
面状の欠陥として,格子面の重なり方の不整による積層欠陥(stacking fault)がある。なお,広義では,結晶粒界(grain boundary)や金属表面も面欠陥として分類される。
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金属表面に現れる欠陥
金属表面に現れた欠陥は,表面の不均一さを増長するとともに,腐食の起点と考えられている。
金属表面には,既に解説した格子欠陥(転位,空孔など)が顔を出す。また,欠陥の消滅場所にもなっている。表面では,結晶格子が切れ,階段状のステップ,ステップの曲がり部のキンクと呼ばれる格子欠陥が生じる。また,表面に出た転位,結晶粒界(grain boundary),合金の金属組織が 2相以上ある場合の異相の露出が見られる。
金属を削って出した表面は,化学的に活性(mechano-chemical activity)の状態にある。このため,常温でも熱電子(exothermic electron)を放出するなど特異な性質を示す。
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