社会資本・腐食防食関連の技術用語 (索引)

 “社会資本“,及び“腐食防食“に関連する記事を理解するうえで必要となる基礎用語,法則類,定義などについて,その概要を紹介するとともに,関連するページとのリンクを構成する。
 ここでは,タ行 “と”の用語を  とあ~とせ,  とそ~とほ,  とま~とん  に分けて紹介する。

 用語一覧 とま~

塗膜 】  , 【 塗膜形成助要素 】  , 【 塗膜形成要素 】  , 【 塗膜検査(調査) 】  , 【 塗膜構成要素 】  , 【 塗膜下腐食 】  , 【 塗膜の外観 】  , 【 塗膜剥離剤 】  , 【 塗膜副要素 】  ,

変状(塗膜) 】  , 【 塗膜劣化 】  , 【 ドライガーゼ法 】  , 【 ドライヤー 】  , 【 トラス 】  , 【 トラフ桁 】  , 【 トラベラクレーン片持式工法 】  , 【 トリポリリン酸 】  ,

塗料 】  , 【 塗料調色技能士 】  , 【 塗料用シンナー 】  , 【 土類金属 】  , 【 トルエン 】  , 【 トルシア形高力ボルト

 用語の概要と関連ページ


 【塗膜】( coat, film, paint film, coating )
 塗られた塗料が乾燥してできた固体皮膜。備考:ISO(国際規格) 用語規格では,単一の(1回の)塗装でできる塗料の連続層を“coat”,素地に1回又はそれ以上塗装してできる連続層を“film”と定義。【JIS K5500「塗料用語」】
 塗料を素地に 1 回又は複数回塗装することによって形成する連続した塗料層。【JIS K5600-1-7「塗料一般試験方法−第1部:通則−第7節:膜厚」】
 塗布した塗料が乾燥してできた膜。【JIS H 0201「アルミニウム表面処理用語」】
 関連ページ : 塗装概論:新設時塗装管理(膜厚管理) ,  塗料概論:塗料とは ,  塗膜の評価:品質試験 ,  防食塗装系:鋼道路橋の維持管理 ,  防食塗装系:鋼鉄道橋の維持管理 ,  防食塗装系:鋼橋の防食設計 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜形成助要素】( )
 塗料を構成する成分のうち,溶剤などの塗膜に残らない成分をいう。
 関連ページ : 防食基礎:塗料の構成 ,  塗料概論:塗料構成材料 ,  塗料概論:塗料副要素(添加剤) ,  塗料概論:溶剤類 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜形成要素】( film former, film forming material )
 塗膜を形成するための主成分。
 例:油性塗料の乾性油,ニトロセルロース塗料のニトロセルロース,セラニックニスのセラックなど。【JIS K5500「塗料用語」】
 一般的には,展色材を指す。
 関連ページ : 塗料概論:塗料構成材料 ,  塗料概論:塗料形成要素(展色材) ,  塗料概論:塗料副要素(添加剤) ,  塗料概論:防せい:体質顔料 ,  塗料概論:着色顔料 ,  防食塗装系:鋼橋の防食設計 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜検査(調査)】( coating inspection )
 塗膜の状態(変状の種類,程度など)を把握することを目的に実施される調査。調査目的には,適切な施工計画の立案,計画通りに施工されたかの確認などがあり,それぞれに適した調査項目が採用される。
 関連ページ : 塗装概論:塗替え塗装工程 ,  塗装概論:塗装施工管理 ,  塗装概論:塗替え塗装(膜厚調査,調査タイミング) ,  塗装概論:塗替え塗装管理(竣工検査) ,  
 用語一覧へ

 【塗膜構成要素】( coating film constituting material )
 塗料を構成する成分のうち,塗膜形成要素(展色剤),塗膜副要素(添加剤),及び顔料など塗膜に残る成分をいう。
 関連ページ : 防食基礎:塗料の構成 ,  塗料概論:塗料の分類(材料) ,  塗料概論:塗料構成材料 ,  塗料概論:塗料形成要素(展色材) ,  塗料概論:塗料副要素(添加剤) ,  塗料概論:防せい:体質顔料 ,  塗料概論:構成(着色顔料 ,  塗料概論:溶剤類 ,  塗膜の試験規格:膨れの等級 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜下腐食】( corrosion under paint films )
 素地に達する大きな欠陥が無い塗膜の下で進行する素地金属の腐食現象をいう。
 関連ページ : 塗膜の試験規格:膨れの等級 ,  塗膜の試験規格:さびの等級 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜の外観】( appearance of film )
 肉眼で見たときの塗膜の状態。塗料一般試験方法では,塗膜を拡散昼光の下で見本品と比べて,色の差異・色むらの程度・つやの差異・つやむらの程度・厚さのむらの程度・レベリング・はけ目・ゆず肌・しわ・つぶ・くぼみ・穴の程度・流れ・はじき・泡・膨れ・割れ・はがれ・白化の程度を調べる。JIS K 5600-1-1「塗料一般試験方法-第1部:通則-第1節:試験一般(条件及び方法)」参照。【JIS K5500「塗料用語」】
 塗装作業性の試験に合格した試験片と見本品とを比較し,差異の有無を観察する。試験までの時間が製品規格に規定されていないときは,乾燥時間を半硬化乾燥で調べる塗料で48時間,硬化乾燥を調べる塗料で24時間,加熱乾燥の塗料では加熱し終わってから30分間放置する。
 関連ページ : 塗料評価:品質試験の項目と手順 ,  塗料評価:塗膜の外観 ,  塗膜の評価:品質試験 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜剥離剤】( coating film remover, paint remover )
 溶剤等の主成分に蒸発制御剤,増粘剤,界面活性剤などの添加物を加えたもので,塗膜内部への浸透で,塗膜の軟化,膨潤,溶解が起こり,塗膜除去を容易にするための薬剤である。
 塗膜剥離剤には,ジクロロメタン(dichloromethane;CH2Cl2 )を主成分としたものが性能が高く,長らく使われてきた。
 近年になり,環境保全,労働安全衛生の見地から,建築物や構造物などの大面積に使用する剥離剤として,ジクロロメタンの使用が自粛されるようになり,塗膜剥離の性能は劣るが,環境や人体への影響がより小さいアルコール系溶剤を用いたものなどが使用されるようになってきている。
 関連ページ : 塗装概論:素地調整技術 ,  
 用語一覧へ

 【塗膜副要素】( sub elements for film forming, additive agents )
 塗料の物性や塗装作業性などを改善するための添加剤(additive)で,塗料補助剤,塗装補助剤ともいわれる。
 主な物には,界面活性剤(surface active agent, surfactant),可塑剤(plasticizer),皮張り防止剤(anti-skinning agent, antiskinning agent),顔料分散剤(dispersing agent, dispersant),硬化剤(hardener, curing agent),酸化防止剤(antioxidant, oxidation inhibitor),促進剤(accelerator),つや消し剤(flattingagent),ドライヤー(drier, siccative),流れ止め剤(antisagging agent, antisag agent, antirunning agent),目止め剤(wood filler)などがある。
 関連ページ : 塗料概論:塗料構成材料 ,  塗料概論:塗料副要素(添加剤) ,  
 用語一覧へ

 【変状(塗膜)】( harmful alteration, deformation (coating film) )
 一般的には,普通と異なる状態を意味する。
 構造物の維持管理では,あるべき健全な状態から性能が低下している状態。(道路では損傷という)
 塗装・塗膜管理では,塗膜のあるべき健全な状態から性能が低下している状態。
 関連ページ : 塗装概論:新設時塗装管理(塗装作業) ,  塗装概論:塗替え塗装管理(塗装準備) ,  塗装概論:塗替え塗装管理(竣工検査) ,  塗装概論:塗膜変状と措置(塗装作業時) ,  塗装概論:塗膜変状と措置(経年変化) ,  
 用語一覧へ

 【塗膜劣化】( degradation of coatings )
 外的要因(環境,事故等)で初期の塗膜性能が低下すること。防食塗装塗膜では,さび,膨れ,割れ,はがれなどが,景観を重視する塗膜では,変退色,光沢低下,白亜化などが注目される塗膜性能である。
 関連ページ : 塗装概論:塗替え塗装管理(塗膜調査) ,  塗装概論:塗膜劣化の評価 ,  塗装概論:塗膜劣化の等級 ,  塗膜の評価:塗膜品質の分類 ,  塗膜の試験規格:塗膜劣化評価規格 ,  塗膜の試験規格:一般的な原則と等級 ,  防食塗装系:塗替え塗装 ,  
 用語一覧へ

 【ドライガーゼ法】( dry gauze method )
 【JIS Z 2382 「大気環境の腐食性を評価するための環境因子の測定」】(ドライガーゼ法による塩化物の測定 原理): 一定面積をもつ 2 枚重ねのガーゼを,雨を遮断して暴露すると,ガーゼ表面に塩化物が捕集される。この塩化物を化学分析によって定量する。分析結果から,塩化物の付着度を計算し,平方メートル・日当たりのミリグラム [mg/ (m2・d)] で表す。
  ドライガーゼ法では,木製の外枠に,内寸法 100×100mm の木製の内枠をはめ込み,捕集面積を表・裏の両面を合わせて 200cm2とし,暴露直前に調製(洗浄・乾燥)したガーゼを二つ折りにし,しわが生じないように取り付ける。
 直射日光及び雨雪を遮断できる構造で,ドライガーゼプレートの低端が地上から 1〜1.2m の位置に,風通しを妨げないよう暴露する。暴露場所は,試験片を暴露する暴露試験装置の近くで,試験片の向きに合わせることが望ましい。
 暴露期間 1カ月間に,ガーゼの方向に応じて付着した塩分を分析する。
 関連ページ : 鋼の腐食:海塩粒子量測定 ,  塗装概論:塗替え塗装管理(塗装準備) ,  塗膜の試験規格:屋外暴露耐候性 ,  
 用語一覧へ

 【ドライヤー】( drier, siccative )
 塗料の添加剤として用いられるものは,通常,有機金属化合物で有機溶剤及びバインダーに可溶,酸化乾燥する塗料の乾燥過程を促進するために添加する化合物。主成分は鉛,マンガン,コバルトなどの金属石けん。液状ドライヤー,のり状ドライヤーなどがある。備考 水可溶性の乾燥剤も存在する。【JIS K5500「塗料用語」】
 関連ページ : 塗料概論:塗料構成材料 ,  塗料概論:塗料副要素(添加剤) ,  塗料各論:アルキド樹脂塗料 ,  
 用語一覧へ

 【トラス】( truss )
 直線部材を三角形状に,ヒンジ(部材と部材の継ぎ目,回転できる支点,蝶番)で接合して組み合わせた構造をいう。実際のトラス橋の接合部は剛接合であるが,力学計算ではヒンジと考える。
 トラス構造は,原理的に,部材の軸方向の引張力,又は圧縮力しか作用しないため,部材の能力を最大限に活かすことができる構造である。
 関連ページ : 鋼橋構造:トラス橋 ,  防食塗装系:鋼橋の構造例 ,  
 用語一覧へ

 【トラフ桁】( trough girder )
 鉄道橋において,桁の高さが制限される場合に,一本のレールに対して 2本の I 形鋼を用い,その I 形鋼の間でレールを支える構造にした桁である。
 関連ページ : 鋼橋構造 ,  
 用語一覧へ

 【トラベラクレーン片持式工法】( cantilever erection method )
 橋梁工事において,片持ばりの状態に橋桁を張出しながら架設する工法。主に連続トラスの架設に用いられる。 この工法は,河川部,道路,鉄道等など桁下にクレーンが設置できなく,単純トラス桁が数径間あるなどの条件の場合に採用される架設工法である。
 関連ページ : 鋼橋製作:架設工法 ,  
 用語一覧へ

 【トリポリリン酸】( tripolyphosphoric acid )
 ポリリン酸(polyphosphoric acid)の一種で,三リン酸( H5P3O10 )ともいい,食品添加物などに用いられる。なお,ポリリン酸とは,酸素原子を共有して結合した四面体のリン酸( PO4 )を構造単位として持つオキソ酸の総称。
 関連ページ : 塗料各論:不動態化,還元系防せい顔料 ,  
 用語一覧へ

 【塗料】( coating material, coating )
 素地に塗装したとき,保護的,修飾的,又は特殊性能をもった膜を形成する液状,ペースト状,又は粉末状の製品。流動状態で物体の表面に広げると薄い膜となり,時間の経過につれてその面に固着したまま固体の膜となり,連続してその面を覆うもの。塗料を用いて,物体の表面に広げる操作を塗るといい。固体の膜ができる過程を乾燥といい。固体の皮膜を塗膜という。流動状態とは,液状,融解状,空気懸濁体などの状態を含むものである。顔料を含む塗料の総称をペイントということがある。
 備考:ISO用語規格では,“coating material”をここに定義される塗料として,また,“coat”を塗膜として定義している。BS用語規格も同様に“coating material”を塗料,“coat”を塗膜とするほか,“coating”を塗装として定義している。
 しかし,ASTMでは,“coating”をここに定義する内容の塗料として定義しており,また,一般には,“coating”を塗料の意味で用いる場合が多いので,対応英語は,“coating material”だけでなく,“coating”を併記した。【JIS K5500「塗料用語」】
 古くは漆に始まり,対象物の表面に塗り付け,薄い被膜を作ることで,対象物の保護,美装,機能の付与を目的に用いられる材料をいい,一般にはペンキともいわれる。
 対象物の保護目的の塗料には,金属の防食(ぼうしょく)塗料,木材等の防腐(ぼうふ)塗料,浴室などの防黴(ぼうかび,ぼうばい),木柱などのシロアリ対策に用いる防蟻(ぼうぎ)塗料,船舶底部の生物付着を防ぐ防汚(ぼうお)塗料,屋上やプールなどの漏水対策にもちいる防水(ぼうすい)塗料,化学プラントなどに用いる耐薬品塗料,構造物・建築物の主要構造材の火災からの保護を目的とする耐火塗料などがある。
 美観目的の塗料に期待される特性には,表面の平滑化,光沢の付与,彩色の自由,模様付与など,意匠性や景観創出を目的とするものがある。
 対象物に,遮熱,撥水,蛍光,蓄光,迷彩,有害化学物質吸着などの新たな機能の付与を目的にした塗料もある。
 関連ページ : 防食基礎:環境遮断(塗料・塗装) ,  
 用語一覧へ

 【塗料調色技能士】( )
 技能検定制度の一種で,都道府県知事が実施する塗料調色に関する学科及び実技試験に合格した者をいう。この資格は,国家資格である。
 関連ページ : 塗料概論:着色顔料 ,  
 用語一覧へ

 【塗料用シンナー】( paint thinner )
 ミネラルターペン,ミネラルスピリットとも呼ばれる脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする工業ガソリンの一種で,油性系塗料や油変性合成樹脂塗料を希釈するために使用され,トシン,ペイントシンナー,ペイントうすめ液ともいわれる。なお,ラッカー類の希釈に用いられるラッカーシンナーとは成分が異なる。
 関連ページ : 塗料概論:溶剤類 ,  
 用語一覧へ

 【土類金属】( earth metal )
 ホウ素(B)を除く周期表第13族のアルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),タリウム(Tl) 4元素に対する古い総称。岩石などに広く分布するので土類と呼ばれる。アルミニウム族(aluminium group)ともいう。両性金属(酸,アルカリに可溶)で,3価の陽イオンになり易い。なお,タリウム(Tl)については 1価の化合物が多い。
 関連ページ : 金属概論:金属の化学的分類 ,  
 用語一覧へ

 【トルエン】( toluene )
 IUPAC名 トルエン(toluene),ベンゼンの水素原子の 1つをメチル基で置換した構造の芳香族炭化水素で,示性式 C6H5CH3 ,沸点 110.63℃の芳香がある無色の液体。
 関連ページ : 塗料概論:溶剤類 ,  
 用語一覧へ

 【トルシア形高力ボルト】( torque share type high tension bolt )
 頭が丸く先端はピンテールと呼ばれる部分を持つボルト。ピンテールが必要な締め付けトルク(torque)が得られると破断(shear)するため,必要な締付力が得られるとともに,締め付けトルクの測定・確認作業を必要としない。
 関連ページ : 鋼橋製作:ボルト継手