化 学 (無機化学)

  ☆ “ホーム” ⇒ “生活の中の科学“ ⇒
 
 ここでは,非金属元素(水素化物)の化学的性質に関連し,【共有結合型水素化物】【ベリリウムの水素化物】【ホウ素の水素化物】【第14族元素の水素化物】【第15族元素の水素化物】【第16族元素の水素化物】【第17族元素の水素化物】に項目を分けて紹介する。

 【共有結合型水素化物】

 水素化物の定義及びイオン結合型水素化物,侵入型固溶体については,【水素及び水素化物】で紹介した。ここでは,共有結合型水素化物を紹介する。
 共有結合性の高い水素化物で,2 族のベリリウム( Be ),13 族のホウ素( B ),14 族,15 族,16 族,及び17 族の元素との水素化物が共有結合型水素化物として分類される。共有結合型水素化物は,無色で揮発性の高い分子が多い。

 

 【2 族ベリリウムの水素化物】

 水素化ベリリウム( BeH2 : beryllium hydride )は,250 ℃以上で分解する白色の固体(非晶質)である。水素化ベリリウムは,1951 年に,ジメチルベリリウムに水素化アルミニウムリチウムを反応させて合成された。金属ベリリウムと水素から得る方法はいまだに見出されていない。
 ベリリウム以外の 2 族元素の水素化物はイオン結合性であるのに対し,ベリリウムは原子半径が小さく原子核の正電荷が電子を強く引き付け放出しにくいので,結合は共有結合性である。
 そのため,水素化ベリリウムは他のイオン結合性水素化物とは異なった性質を示す。

  ページの先頭へ

 【13 族ホウ素の水素化物】

 13 族のホウ素以外は侵入型固溶体を形成する。
 ホウ素の水素化物は,総称してボラン類と呼ばれる。モノボラン( BH3 )は非常に不安定なためジボラン( B2H6 )として存在する。
 構造の明らかなホウ素化水素は,ジボランなど BnHn+4ニドボラン類( nidoboranes ),テトラボラン( B4H10 )など BnHn+6アラクノボラン類( arachnoboranes )の 2 つの系統に分けられる。一般に,ニドボラン類はアラクノボラン類より安定である。
 ボラン類は,酸素と化合し易く,大きな燃焼熱を与えるため,過去に火薬やロケット燃料として用いられることもあった。用途として,重合触媒,還元剤や半導体材料の原料として利用されている。

 

 【14族元素の水素化物】

 14 族元素( 炭素,ケイ素,ゲルマニウム,スズ,鉛)の水素化物は,一般式で H4X を形成するが,他に鎖状,環状の同族体を多数作る。炭素の水素化物にはメタン( CH4 )の他に多数の同族体(炭化水素)がある。
 ケイ素の水素化物はシラン( SiH4 )の他に鎖状の同族体がある。ゲルマニウムの水素化物はゲルマン( GeH4 )の他に鎖状の同族体がある。スズの水素化物は水素化スズ(スタンナン: SnH4 )である。
 これらは,沸点が低く常温・常圧では無色の気体として存在する。
 なお,鉛の水素化物の水素化鉛(プルンバン)は熱的に不安定な無色の気体で,特徴の理解までに至っていない。

  ページの先頭へ

 【15族元素の水素化物】

 15 族元素( 窒素,リン,ヒ素,アンチモンなど)の水素化物は,一般式で H3X を形成する。窒素の水素化物をアンモニア( NH3 ),リンの水素化物をホスフィン( PH3 ),ヒ素の水素化物をアルシン( AsH3 ),アンチモンの水素化物をスチビン( SbH3 )という。
 いずれも,沸点が低く常温・常圧では無色の気体として存在する。
 アンモニアとホスフィンは水に溶解し,塩基性を示す。
     アンモニア : NH3 + H2O ⇆ NH4+ + OH-   pKb = 4.75
     ホスフィン : PH3 + H2O ⇆ PH4+ + OH-   pKb = 26

 

 【16 族元素の水素化物】

 16 族元素( 酸素,硫黄,セレン,テルルなど)の水素化物は,一般式で H2X を形成する。水( H2O ),硫化水素( H2S ),セレン化水素( H2Se ),テルル化水素( H2Te )が 14 族の水素化物の主な例である。
 この中で,水は,分子間の強い水素結合のため特異な性質を示す。水以外は,沸点が低く常温・常圧では無色の気体で存在する。
 水素化物の pKa 値が小さく,水溶液中で硫化水素( pKa = 6.89 )は
     H2S + H2O ⇆ H3O+ + HS-
の平衡となり弱い酸性を示す。セレン化水素( pKa = 3.89 ),テルル化水素( pKa = 2.64 )も同様に水溶液は酸性を示す。
 水を除き,強い還元剤として作用し,容易に硫化物,セレン化物,テルル化物を形成する。

  ページの先頭へ

 【17族元素の水素化物】

 17 族元素,いわゆるハロゲン族( ふっ素,塩素,臭素,よう素,アスタチン)の水素化物は,一般式で HXを形成する。これらは,総称してハロゲン化水素と呼ばれる。ハロゲン化水素は,常温常圧では無色の気体で存在する。
 
 ふっ化水素( HF )の酸解離定数が pKa = 3.17 と希薄水溶液においては弱酸として振舞う。一方で,塩化水素( HCl )の pKa ≒ -4 , 臭化水素( HBr )の pKa ≒ -9 ,よう化水素( HI )の pKa ≒ -10 ,アスタチン化水素( HAs )の pKa -10 未満とこれらの化合物は,水溶液中でほぼ完全にイオン電離し,強酸として振る舞う。
 ハロゲン化水素の中で,アスタチン化水素は最も強い酸であるが,アスタチンの同位体はすべて放射性同位体で,しかも半減期(半減期 8.3 時間以下)が短いため,容易に分解する。
 このため,ハロゲン化水素と称する場合は,一般的にはアスタチン化水素を除いた扱いが多い。
 
 【電気陰性度とは】で紹介したイオン結合性の評価では,ふっ化水素のふっ素と水素の電気陰性度の差は 1.9 と大きく,イオン結合性約 60 %と評価されが,他の塩化水素,臭化水素,よう化水素,アスタチン化水素は,水素との電気陰性度の差が 0.9 以下,すなわちイオン結合性 20 %以下と評価され,共有結合性が強いことが分かる。
 このように,ふっ化水素とその他のハロゲン化水素とでは水素との結合状態が大きく異なり,特性の違いも大きい。
 
 ふっ化水素は,分子間の強い水素結合のため沸点が 19.5 ℃と塩化水素の – 85 ℃,臭化水素の – 66.38 ℃,よう化水素の -35.36 ℃に比較し著しく高い。
 ふっ化物イオンは,ガラス等に含まれるケイ酸 SiO2 と反応し,ヘキサフルオロケイ酸( H2SiF6·nH2O )を生じ,ガラスを腐食させる。
      SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O
 そこで,保存容器にはポリエチレンやテフロンが使用される。なお,ふっ化物イオンは,多くの無機酸化物と反応するので,取扱いには注意が必要である。

  ページの先頭へ