化 学 (無機化学)

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 ここでは,給湯,給熱,発電,動力源に用いられるボイラに関連し,【ボイラとは】【ボイラの種類】【ボイラに用いる水について】【参考(ボイラ 表記)】に項目を分けて紹介する。

 【ボイラとは】

 ボイラ( boiler )とは,火炎,燃焼ガス,その他の高温ガスなどの熱エネルギーを用いて,蒸気又は温水を発生させる装置をいい,工場,建築物等で利用される熱や水蒸気の供給源として,蒸気機関車等の動力源として古くから利用されてきた。また,火力発電所などの発電設備,大型船舶では,蒸気タービンと共に主要な設備になっている。
 燃料には,気体の天然ガスや石油ガス,液体の重油,原油や軽油,固体の石炭や木質材などが用いられる。
 燃焼に伴う排気ガスは,環境汚染の原因となる成分を多く含むため,排煙処理装置(電気集塵器・バグフィルタ,脱硝装置,脱硫装置など)により煤塵,窒素酸化物,硫黄酸化物を除去し,国及び地方自治体の定める環境基準に適合させなければならない。
 近年では,ボイラ運転に伴い発生する重油灰,石炭灰などを回収し,リサイクルされることも多くなっている。

 【ボイラの種類】

 法的な分類
 労働安全衛生法の規定に基づく労働安全衛生法施行令で,取り扱うための資格などの関係で,圧力,伝熱面積,及び胴の内径の大きさにより,ボイラ,小型ボイラ,その他(簡易ボイラ,第一種圧力容器,小型容器,第二種圧力容器,簡易容器)に区分されている。なお,火力発電所の場合は,電気事業法の適用を受ける。
 
 燃料による分類
 石炭,石炭を微粉砕した微粉炭,バガス( Bagasse:サトウキビ搾汁後の残渣)などの固形燃料を使用するボイラを石炭燃焼ボイラ( coal fired boiler )という。
 重油,原油,軽油,アスファルトなどの液体燃料を使用するボイラを重油燃焼ボイラ( oil fired boiler )という。
 天然ガス,石油ガスなどの気体燃料を使用するボイラをガス燃焼ボイラ( gas fired boiler )という。
 
 構造による分類
 ボイラは,その構造により,基本的に水管ボイラと丸ボイラに分類される。
 水管ボイラ( water tube boiler )
 水管ボイラとは,胴内に水を通した多数の管を配置し,管の外から加熱して蒸気を発生させる方式のボイラをいう。
 水管ボイラは,多量の高温・高圧の蒸気を得ることができるので,火力発電などの大型ボイラで用いられる。

水管ボイラの概要図

水管ボイラの概要図
元図出典:仙台市ガス局ガスボイラー

 火力発電では,JIS B 0126 「火力発電用語−ボイラ及び附属装置: Glossary of terms for thermal power plants Boilers and auxiliary equipment 」で水の循環方法により,水管ボイラを強性循環ボイラ,自然循環ボイラ,貫流ボイラに分類している。
 強制循環ボイラ( forced circulation boiler )
 ポンプによって強制的にボイラ水を循環させるボイラ。( JIS B 0126 )
 自然循環ボイラ( natural circulation boiler )
 ボイラ内の気水の密度差によって自然にボイラ水を循環させるボイラ。( JIS B 0126 )
 貫流ボイラ( once-through boiler )
 給水を管の一端からポンプで押し込み,管の他端から蒸気を取り出すボイラ。( JIS B 0126 )
 水管の配列には、単管状のものと多管状のものがあり,水と蒸気の比重の差がない超臨界ボイラや,急速起動が必要な小型ボイラに用いられる。
 貫流ボイラは,効率が良く, 起動時間が早い,コンパクトで省スペースを実現できるなどのメリットはあるが,純度の高い給水を必要とする。
 
 火力発電用としては分類されていないが,他の分類として次の構造分類の水管ボイラもある。
 特殊循環ボイラ
 主として管によって構成され,一端から水を送り込み,他端から汽水混合物を取り出し,汽水分離器で分離後,加熱管へ戻る熱水の量が汽水混合物の 50 %以下となる水管ボイラ。貫流ボイラに分類されることもある。( JIS B 8223 )
 排熱回収ボイラ
 ガスタービンの廃棄熱を回収して蒸気を発生させるボイラ。( JIS B 8223 )
 
 丸ボイラ( cylindrical boiler )
 本体が直径の大きい円筒形の胴体からできていて,内部に組込まれた煙管,炉筒,火室などにより構成されるボイラである。
 保有水量が比較的多く,負荷の変動に強い特徴はあるが,立ち上がりが遅く,爆発事故の被害は甚大となる。
 構造上,中小規模のものが多く,ボイラ内の保守が容易なため,給水の水質に対し,水管ボイラ程の純度を求められない。

丸ボイラの概要図

丸ボイラの概要図
元図出典:仙台市ガス局ガスボイラー

 丸ボイラは,加熱方式により分類される。
 炉筒ボイラ( flue boiler )
 水缶内に炉筒(円筒形の燃焼室)を設けたもの。炉筒が一本の物をコルニッシュボイラといい,二本の物をランカシャーボイラという。構造が簡単で掃除し易いが,効率が悪い。
 煙管ボイラ( smoke tube boiler )
 蒸気機関車のボイラに代表される。水缶に多数配置した煙管に燃焼室の燃焼ガスを通すことにより水を加熱し蒸気を得るもの。構造が複雑で保守し難いが,効率が比較的よく,炉の形状を自由にできる。
 
 炉筒煙管ボイラ( flue and smoke tube boiler )
 炉筒と煙管とを組み合わせた構造で,丸ボイラとしては最も効率がよい。保有水質量が多く,負荷変動時でも安定した運転が可能で,水質管理が比較的容易なため,ビルなどの中小規模で利用されるボイラである。
 
 構造材料による分類
 構造材料としては,鋼と鋳鉄に大別される。それぞれについては,JIS B 8201 「陸用鋼製ボイラ・構造: Stationary steel boilers-Construction 」JIS B 8203 「鋳鉄ボイラ・構造: Cast iron boilers – Construction 」に規定されている。
 なお,JIS に規定される鋳鉄製ボイラは,蒸気ボイラと温水ボイラに圧力及び温度の制限がある。
 1) 蒸気ボイラで,最高使用圧力 0.1 MPa 以下。
 2) 温水ボイラで,最高使用圧力 0.5 MPa 以下,温水の温度が 120 ℃以下。
 3) 温水ボイラで破壊試験を実施し,適合する場合には,最高使用圧力が 1 MPa 以下。

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 【ボイラに用いる水について】

 給水に含まれる成分の中で,「溶解度」で紹介した蒸気圧の低い溶解物質(特にカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分)は,水蒸気の発生と共にの濃度が上昇し,ついには飽和溶解度に達し析出する。たとえ飽和溶解度に達していなくとも,溶液の冷却でも飽和溶解度に達し析出する。

 水質調整
 スケールの発生・成長の抑制のため,給水及び内部の水(ボイラ水)の水質が管理される。スケールの発生,管の腐食抑制を目的に給水に添加する薬剤を“清缶剤( Boiler compound )”という。
 清缶剤には,硬度成分の結晶分散目的の天然高分子電解質,水質の軟化目的の復水処理剤(炭酸ナトリウムなど),配管の腐食要因の溶存酸素除去目的の脱酸素剤(亜硫酸ナトリウムやヒドラジンなど),スケール付着防止と鉄の腐食防止目的の複合清缶剤(リン酸三ナトリウム,アミン類など)が用いられる。
 
 水質規定について
 JIS B 8223 「ボイラの給水及びボイラ水の水質: Water conditioning for boiler feed water and boiler water 」には,陸用蒸気ボイラと舶用蒸気ボイラの給水,及びボイラ水の水質について規定されている。
 当該 JIS には,ボイラの形式別の丸ボイラ,水管ボイラ(循環ボイラ,排熱回収ボイラ,特殊循環ボイラ,貫流ボイラ)及び水処理種別のアルカリ処理,リン酸塩処理,揮発性物質処理,酸素処理について,規定されている。その項目を次に紹介する。
 
 給水の水質項目
 丸ボイラ: pH ,硬度,油脂類,溶存酸素
 水管ボイラ(循環ボイラ):丸ボイラの項目+電気伝導率,鉄,銅,ヒドラジン
 排熱回収ボイラ: 水管ボイラと同じ項目
 特殊循環ボイラ: 水管ボイラの項目+全蒸発残留物,酸消費量,塩化物イオン,りん酸イオン
 貫流ボイラ: 油脂類を除く水管ボイラの項目+シリカ
 
 ボイラ水の水質項目
 丸ボイラ,特殊循環ボイラ: pH ,酸消費量,全蒸発残留物,電気伝導率,塩化物イオン,りん酸イオン,亜硫酸イオン,ヒドラジン
 水管ボイラ(循環ボイラ):丸ボイラの項目+シリカ
 排熱回収ボイラ:pH ,電気伝導率,塩化物イオン,りん酸イオン,シリカ
 貫流ボイラ: ボイラ水の概念なし
 
 用語の定義
 給水
 給水ポンプによってボイラ入口[エコノマイザ(節炭器)がある場合は,エコノマイザ入口]に供給される復水と補給水との混合水。( JIS B 8223 )
 ボイラ水
 循環ボイラで,ボイラの内部で濃縮された水。一般には,ドラム内の水とする。( JIS B 8223 )
 アルカリ処理
 ボイラ水の pH を主として水酸化ナトリウムで調節し,りん酸イオンの濃度をりん酸塩(主としてナトリウム塩)で調節する処理方法。( JIS B 8223 )
 りん酸塩処理
 ボイラ水の pH 及びりん酸イオンの濃度をりん酸塩(主としてナトリウム塩)で調節する処理方法。( JIS B 8223 )
 揮発性物質処理
 ボイラ水又は給水の pH の調節にアンモニア又は揮発性のアミンを用い,溶存酸素の除去にはヒドラジンを用い,揮発性物質だけで処理する方法。( JIS B 8223 )
 酸素処理
 高純度の給水に微量の酸素を酸化剤として添加し,その酸化作用によって鋼面にα-酸化鉄(Ⅲ)(α-Fe2O3,ヘマタイト)を主体とした保護皮膜を生成維持して防食する処理方法。( JIS B 8223 )

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 【参考(ボイラ 表記)】

 一般には,ボイラー”と長音符合を付けた表記が多い。しかし,JIS B 8201 などでは,長音符合を省略したボイラの表記が採用されている。これは,次に紹介する表記法に関する JIS 規格に準じているためである。
 JIS Z 8301 「規格票の様式及び作成方法: Rules for the layout and drafting of Japanese Industrial Standards 」
 
 附属書 G (規定) 文章の書き方,用字,用語,記述符号及び数字,G.6 用語及び外来語の表記,G.6.2 外来語の表記
 G.6.2.2 英語の語尾に対応する長音符号の扱い
 英語の語尾に対応する長音符号の扱いは,通常,次による。
 なお,英語の語末の -er,-or,-ar などは,ア列の長音とし,長音符号を用いて表すものに当たるとみなす。
 a) 専門分野の用語の表記による。
 注記 学術用語においては,原語(特に英語)のつづりの終わりの -er,-or,-ar などを仮名書きにする場合に,長音符号を付けるか,付けないかについて厳格に一定にすることは困難であると認め,各用語集の表記をそれぞれの専門分野の標準とするが,長音符号は,用いても略しても誤りでないことにしている。
 b) 規格の用語及び学術用語にない用語の語尾に付ける長音符号は,表 G.3 による。
 表 G.3−外来語の表記に語尾の長音符号を省く場合の原則
 a) その言葉が 3 音以上の場合には,語尾に長音符号を付けない。 エレベータ(elevator)
 b) その言葉が 2 音以下の場合には,語尾に長音符号を付ける。 カー(car),カバー(cover)
 c) 複合の語は,それぞれの成分語について,上記 a) 又は b) を適用する。モータカー(motor car)
 d) 上記 a) ~ c) による場合で,長音符号を書き表す音(例 1 ),はねる音(例 2 ),及びつまる音(例 3 )は,それぞれ 1 音と認め,よう(拗)音(例 4 )は 1 音と認めない。
 例 1 テーパ(taper),例 2 ダンパ(damper),例 3 ニッパ(nipper),例 4 シャワー(shower)

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